虹ヶ咲のシンガーソン軍師 ifルート編   作:初見さん

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彼方ルート3

「昨日はお楽しみだったねぇ」

「真面目に何の話ですか?」

「私の遥ちゃんと楽しそうにイチャイチャしてたでしょ〜」

 

 私の、その単語を強調させながら彼方が勘助に訴えると勘助は苦笑いをして、姉妹でヤンデレかと、呟く。

 

「あれはイチャイチャの類に入るんですかね?」

「あんなに楽しそうに話してイチャイチャしてないって言う方がおかしいと思うけど?」

「せつ菜がカッコ可愛いって話をカフェで数時間語り合ってたと言う内容を曝け出したら、せつ菜とイチャイチャしたいんだなって思いません?」

「そんな話してたの? それでも、勘助さん、大好きですなんて遥ちゃんは言わない。私の遥ちゃんは言わないよ。どうしてそんなこと言ってたのかな? ねぇ勘助君?」

「彼方さん特有の間延びした口調をやめないで下さい。マジで怖いんで」

 

 それにと、勘助は続けて彼方に言う。

 

「私は彼方さんが好きなので遥さんが好きだと言っても靡きませんよ」

「へぇ、勘助君は彼方ちゃんが好きなんだぁ」

「はい」

「うん?」

 

 勘助の言葉は真実であるが、彼方は信じられていない。だからこそ起こる言葉の解釈違いが少し続いた。しばらくして、勘助はエレキギターを手に取り、彼方に聞く。

 

「とりあえず、作曲するのでギター弾いていいですか?」

「大丈夫だよぉ、彼方ちゃんも練習行ってくるから頑張ってね」

「その一言で私はついでに法隆寺も建てられますね」

「どういうこと?」

 

 結局その時は勘助の言った意味も分からないのでそのまま部室で別れた。

 

 ☆

 

「そんなわけで菜々。遥さんがお前に会いたがってたぞ」

「それよりも勘助さんが彼方さんの事好きって言う事実が私の心を刺殺したんですけど」

「すまない。菜々の気持ちは嬉しかった」

「遥さんに愚痴って来ますね」

「やめて」

 

 そんな事をされたら勘助の将来の義妹が勘助を嫌ってしまう。だが、勘助はそれを踏まえてもやはり正直に言った方が良いと考えたので、一回否定はしたが、改めてやっぱりお願いすると、そう言った。

 

「彼方さんが気づいてくれない。ここまでハッキリと好きって伝えてるのに、私の弁当を食べて欲しいから昼ごはん一緒に食べてるのに。一緒に遥さんも連れて出かけてるのに……どうして私の想いが伝わらないんだろう?」

「恋する乙女より乙女なんですけど……」

「寮のベッドで寝てるとさ、彼方さんに抱きしめてもらいながら寝られたら最高だろうなとか、遥さんと彼方さんの3人で弁当作ってピクニックしたいなとか考えるんだよな」

「発想が女子高校生なんですけど」

「彼方さんが眠いって言って遥さんの膝に寝てるの。そんで、私と遥さんが2人で彼方さんの事について話して家族みたいに……うん。微笑ましいな」

「しずくさん並みの妄想癖ですね。というかその情景普通に違和感ないので私でも想像できます。公園デートしながら遥さんに隠れて少しばかりバードキスをするって感じですよね」

「き、キスはまだ早い……かな……」

「何でそんなに顔真っ赤なんですか!?」

 

 キスに関しては恥ずかしいと言う勘助に対して、驚くほどウブだなと思ったせつ菜。

 正直、今の勘助を見ると初恋をした女子高校生の様な、もっと言うと何もかも処女の様な、せつ菜から見ると過保護欲を掻き立てられる存在であった。

 

「勘助さんって本当に可愛いですよね」

「え?」

「勘助さんが女の子だったら私が勘助さんの処女全部貰えるのに」

「ちょっと待って菜々ちゃん」

「勘助君性転換しない?」

「しねぇよ!? 何言ってんの!?」

「あぁ、襲いたい」

「俺彼方さんに告白する用事出来たから帰るね」

「勘助さんの好意に気づかない女性より私を選びませんか? 私の方が幼馴染で殆ど勘助さんの事知ってますから満足はさせられると思います。朝も昼も夜も」

「私の理想は朝も昼も夜も彼方さんとすやぴする事なので無理です」

「すやぴとか下ネタじゃないですか」

「全国の彼方さんファンに謝れ。ついでにすやぴにも謝れ」

 

 暴走モードのせつ菜を相手に勘助はよく戦っていると思う。そして、勘助は改めてせつ菜に言い放った。

 

「いいか、菜々。俺は彼方さんが好きだ。愛してる。朝は俺が早く起きて朝食を作り彼方さんと遥さんを起こし、昼は俺の作った弁当で胃袋を掴みスクールアイドルとして2人の食生活をサポートするのだ。掃除洗濯は分担したい所だが、彼方さんと遥さんにはスクールアイドルをしてもらうために俺が全てやろう。その代わり夜は俺が彼方さんと遥さんにご飯を作ってもらってそれを食べる。最後は3人で川の字になって眠ればあら不思議、俺と彼方さんは家族になる」

「勘助さんが負担だらけなんですけど。そこまで苦労させる女性は勘助さんに合いませんよ!」

「遥さんが彼方さんのために動き、彼方さんは遥さんのために動くのならば、私は2人のために動こう。それが恋だ、愛だ、家族だ」

「それで勘助さんが過労死したら一生彼方さんを恨みますけど」

「とにかく俺は彼方さんを愛してる。それを認めたくないのなら今からでも俺の心臓をこれで貫けばいい」

「いや、そこまでの覚悟は……って何で私の前でカッター置いて制服脱いでるんですか!?」

「今からでも俺をそのカッターで貫け!」

「やりませんよ!? 謝りますから服脱ぐのやめて下さい!」

「菜々! 俺を殺せ!」

「勘助君は少し落ち着いた方がいいと思うんだけどなぁ」

「そんな事を言われても、菜々が俺と彼方さんの仲を認めないと言うのなら……」

「認めるも何もまだ勘助さん彼方さんに本気で告白してないじゃないです……か……」

「勘助君、せつ菜ちゃんと仲直りしないとお話し聞いてあげないよぉ?」

「菜々、今度飯行こうぜ。最近美味いとSNSで話題のラーメン屋の屋台が出来たらしくてな」

「切り替え早!? しかもいつ着替え終わったんですか!?」

「いや、学ラン羽織っただけだろ」

「恐ろしいスピードだねぇ、彼方ちゃんじゃなかったら見逃してたよ」

 

 せつ菜と勘助が自分達ではない声の方を向くと話題の中心であった彼方がそこにいた。

 勘助は冷静に菜々に話しかけてはいるが、恐らく話を全て聴かれていたと予想しているので心臓はバクバクと高鳴り続けており、顔も実は腫れていると勘違いするくらい真っ赤に染まっていた。

 

「それで〜2人は彼方ちゃんのどんな話をしていたのかなぁ?」

「え、えあえええいうあっとですねねね……」

「勘助さんが彼方さんにどうしても本気で伝えたい事があると。どうやったらそんな場になるかを私に相談して来たのです」

「せつ菜々さん!?」

「なるほどぉ、それで、勘助君は私に何を伝えたいのかなぁ?」

「勘助さん、ご武運を」

「待てやせつ菜々!」

「待ちません。頑張って、勘助」

 

 焦りまくり珍しく言葉も曖昧になった勘助のストップがありながら虚しくも去っていったせつ菜を恨み、同時に少しばかり感謝した。改めて静かになると、勘助は彼方の目を見た。

 

「え、ええっとですね彼方さん……」

「勘助君、少し座ろうか」

 

 彼方の言葉に戸惑いながら、勘助は目の前にある椅子に彼方の指示で座った。そして改めてあのですねと、一言勘助が言った瞬間。

 

「ごめんね、勘助君」

 

 そう彼方が謝った。一瞬告白する前に振られたのかと思ったが、それは間違いである。

 

「実は彼方ちゃん知ってたんだぁ、勘助君が私の事好きなの」

「まぁ……正直あれで気づいてくれないと私泣きますけど」

「え? 勘助君分かってたの?」

「何となくです。私は本気で彼方さんに好きだって伝えてましたし、遥さんにも断言してるのに、彼方さんが分かってないはずないかなって。なんだかんだ言って彼方さん頭も察しも良いじゃないですか」

 

 本当に何となくだが、はぐらかされてる気はしていた。彼方はよく寝てるしふわふわしてて勘助でもたまに年下が同い年くらいの雰囲気が出ているが、それでも彼方は特待生だし、勘助よりも1つ年は上であることは事実なのだ。

 

「正直に聞くけど、勘助君は彼方ちゃんで良いの?」

「彼方さんが良いんですけど、どうしました?」

「せつ菜ちゃんとかしずくちゃんとか璃奈ちゃんとかいるでしょ?」

「その3人より彼方さんを選んだんですけど」

「彼方ちゃん……貧乏だよ」

「それが本音ですか」

 

 頷く彼方だが、勘助は何となく理解した。彼方の家はそこまで裕福ではない。母親の収入だけでなく彼方と奨学金とバイト代で家計を守っている近江家、勘助からすれば大した問題ではないが、彼方の気持ちを考えれば大問題である。

 

「本音言うと彼方さんの経済事情とか何にも考えてないんですよね。ほら、彼方さんって遥さんが笑顔ならそれで良いって感じじゃないですか。そういう性格に惚れたんです」

「お金が無いなら私が彼方さん達の飯作りますし、みんなでお金かからないピクニックとか行きましょうよ」

「でも、勘助君も男の子でしょ? ゲームセンターとかカラオケとか行きたいとは思わない?」

「男にどんなファンタジー持ってるんですか。幻想ですよ幻想。私はギター弾いてれば満足ですし、起きて半畳寝て一畳、飯は食っても5合半なので」

「勘助君の鬼門は食費だけかぁ……」

「というか、一ついいですか?」

 

 勘助の疑問に彼方が首を傾げる。

 

「俺の思い込みだったら恥ずかしいんですけど、付き合ったら食費が鬼門とか、カラオケやゲーセンとか言ってくれてる時点で、俺と付き合っても満更じゃ無さそうなのは気のせいですか?」

 

 そんな勘助の言葉に少し照れながらも、彼方は頷いた。

 

「うん、勘助なら彼方ちゃんも嬉しいよ。遥ちゃんと仲も良いし、お母さんも勘助君の事好いてるから」

「それじゃあ、付き合ってくれますか? 俺は彼方さんが好きです。愛してます」

「もしも1億円あげるから私と別れろって言われたらどうする?」

「とりあえずその1億でデートしましょう俺と近江家みんなでいい温泉宿で飯食って笑いましょう」

「話聞いてた? 彼方ちゃんと別れるって話なんだけど」

「そんな事言った奴はユニコーンで頭殴って記憶どころか存在を消すので大丈夫です」

「彼氏君が犯罪者になるのは嫌かなぁ」

「はっきりと言いますね。1億くらい俺が稼ぎますよ。どうせミア・テイラーも頑張ってボコボコにするんで、ついでに大会とか優勝してファイトマネー貰えば、一ギター二鳥でしょ?」

「そんな簡単に言っていいの?」

「言うだけタダでしょう。まぁ、俺は本気で彼方さんのために稼ぎますけど」

 

 勘助は笑いながら言ったが、心は本気である。彼方は彼方でソワソワしながら勘助の話を聞いていた。

 

「というか、付き合う付き合わないの話だけでここまで将来の話をするって事はお互い合意なんですから両想いでは?」

「それも……そうだねぇ」

「どうします? 俺は彼方さんと生涯を前提に付き合いたいんですけど」

「勘助君ってそこまでガツガツ行くキャラだった?」

「彼方さんがいつまでもうだうだしてるからです。それに、俺も男なので覚悟はありますから……」

 

 そう言って彼方の目の前に立って、少し彼方の目線と同じ目線になるために膝を折り曲げた勘助。彼方が少し恥ずかしげに勘助の目を見ると、勘助はハッキリと……

 

「彼方さん、付き合って下さい」

 

 逃がさないという目で彼方に言う。

 

「え、ええっと……」

 

 彼方は勘助の言葉に顔を赤くしながら戸惑う。なので、勘助も言葉を続ける。

 

「愛してるよ、彼方」

「ふえっ!?」

 

 少しばかりしずくを見て身につけた演技でキャラを作りながらわざと彼方を呼び捨てにする。彼方は急に呼び捨てにされたので慌てながらも、愛してると言う言葉にさらに照れる。それでも、まだ堕ちない。よって、最終手段。勘助は彼方の首に手を回して顔を近づけてこう言った。

 

「彼方、俺のものになって……」

「ふぁ……ふぁあい!?」

「返事しましたね、じゃあこれで俺と彼方さんは恋人です」

「え……ふぇえ!?」

「可愛い声ですね」

 

 そう言って勘助は笑ったが、顔と耳が真っ赤であるのは彼方と同じであった。

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