虹ヶ咲のシンガーソン軍師 ifルート編   作:初見さん

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エマルート3

「エマさん、お疲れ様です」

「勘助君、お疲れ様……って猫?」

 

 部室に入ってきた勘助に挨拶したエマが見たのは白い猫。はんぺんである。

 

「少し寒かったので、部活の間だけでも中に入れて暖めようかと」

「わたしは大丈夫だよぉ、その猫さんはなんて名前なの?」

「はんぺんです。璃奈さんとミアさん、愛さんによく懐いてます」

「可愛いねぇ」

 

 そう言ってエマがはんぺんに手を差し出すと、はんぺんは手の匂いを嗅いでそのまま頭をエマの手に預けた。

 

「人懐っこいねぇ」

「ええ、野良猫なのに大人しいんですよ」

「にゃん」

「美味しそうだねぇ」

「にゃ!?」

「怖いんで冗談でもやめて下さい」

 

 はんぺんはエマに撫でられた後、勘助の元に来て彼の膝で丸くなった。

 

「勘助君ってよく動物に懐かれるよね」

「エマさんもヤギに懐かれてたって聞きましたよ」

「動物って可愛いんだよぉ」

「それは理解出来ます」

 

 話しながら勘助ははんぺんを撫でる。

 

「なんだか家族みたいだねぇ」

「私とはんぺんですか?」

「うん! 凄く仲良しさんに見えるよ」

「にゃ」

「なんだ、お前も嬉しいのか。ありがとう」

 

 はんぺんが1つ鳴くと勘助の目を見て縦に頷いた。勘助とエマの視点での感想ではあるが、そう見えたのだ。

 

「エマさんも家族になりませんか?」

「え? どういう……」

「行ってこい、はんぺん」

「にゃん!」

 

 勘助がはんぺんに指示を出すと、はんぺんはエマの膝に飛び乗った。驚いたエマだが、ゆっくりと目を細めてはんぺんを撫でていく。

 

「可愛いでしょう?」

「うん……可愛い」

「エマさん、私達はファミリーですよ」

「ファミリー?」

「別に組の人って事じゃなくて、エマさんが仮にホームシックになった時でも、同好会のみんなやはんぺんだっているんです。家族みたいな私達を存分に撫で回したらそんな時でも笑えると思うので」

 

 勘助の言葉に驚きながらも、エマは微笑んで、頷いた。

 

「うん、ありがとう。勘助君」

「だからこそ、私とエマさんは家族なんです」

「へぇ……勘助さん。いつからエマさんとご家族になったんですか?」

「いつからとかはないって。ファミリーに期間とか関係な……」

 

 勘助が声のする方を振り向くと、そこには目は笑っていないが大変良い笑顔を浮かべたしずくが黒いオーラを纏って仁王立ちしていた。

 

「し、しずくさん? なんでそんなに怒ってんだ?」

「勘助さんがエマさんに家族になってくれと告白どころかプロポーズしたからですけど?」

「誤解なんですけど!?」

「なんだぁ。勘助君、わたしの事が好きならそう言えば良いのに」

「え? いや!? いや、エマさんは好きですけど、告白とは違くてですね……」

「え? 違うの?」

「あーあ、勘助さんがエマさんを泣かせた。悪い人ですね」

「明らかに演技だろ!?」

「男の人ってみんなそうですね、私達のことをなんだと思っているんですか!」

「人間」

「か・ん・す・けさん?」

「その前に私の話を聞けぇ!!」

 

 結局話を聞かせるために数分格闘した。

 

 ☆

 

「璃奈さん、しずくさんの妄想癖をどうにかしてくれ」

「今回はしずくちゃんの味方」

「なんでさ?」

「私達とは仲良くしたいって上部の言葉並べてエマさんに猛アタックしてるから」

「だからそれはさぁ……」

 

 誤解のようで誤解ではなかった。エマに告白したのは誤解である。ただ、勘助がエマを同好会の中で贔屓までいかなくても大切に思っていたのは事実。それでも、愛してるまではいけない。

 

「まぁ、勘助さんがエマさんを選んだのならそれは勘助さんの選択した事。だけど、私達からしたら勘助さんが地獄を見るように祈るのも必然」

「撃っていいのは撃たれる覚悟が……ってやつか?」

「それに近い。エマさんを好きになるのはいいけど、振った私達の怨念も一緒についてくることは忘れてはいけない」

「だろうな。ありがとう璃奈さん」

「お礼を言われる筋はないけど……」

「本気で恨むなら、隠れて祈祷でもしてるだろ。璃奈さんなら薬でどうのとか出来るんじゃないか?」

「まぁ、できるけど」

「できるんかい」

 

 少し冗談で行ってみたが、本気で返された。

 それでも、璃奈は少しだけ柔らかくなった顔で言う。

 

「惚れた弱みって本当にあるんだね。もしも勘助さんがエマさんと付き合ったり、仲良くなりすぎても、それを喜んでる私もいる。恨み嫉みより、そっちの方が大きい。璃奈ちゃんボード『めった刺し』」

「言ってる事とボードが一致してないんだけど」

「ありがとう」

「怖いわ」

 

 少し間を置いて、勘助は璃奈を撫でる。

 

「何?」

「いや、なんとなくだけど。私もさ、菜々や璃奈さん、しずくさんとは仲良くしたいのは確かなんだ」

「エマさんの事は、まぁ好きだけどさ。それでも同好会のみんなは私を支えてくれたから、あまり優劣もつけないでしっかりと向き合って仲良くしたい」

「天然タラシだね」

「そんな言い方ある?」

「勘助さんはいつもそう。どんな女の子にも可愛いって言うし、やってみたいって事もやってみろって言うし、肯定し過ぎてみんなを甘やかしてる」

「そんなつもりはないけど」

「そんなんだからせつ菜さんが勘助さんにドロドロになるまで甘やかして欲しいって願望を向けられる」

「それ知らない、怖いんだけど」

 

 あいつそんな事考えていたのかと、勘助は笑いながら恐怖した。璃奈としては割と真面目な話であったので、真剣に伝えたつもりである。

 

「エママさんと勘助さんでみんなをドロドロに甘やかしてあげれば良いんじゃないかな」

「みんなが家族って別にそう言う意味じゃ無いんだけど」

「ものは試し、面白そうだからやってみて」

 

 無茶苦茶だろと、勘助は璃奈の言葉に溜息1つ吐いたのだった。

 

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