「エマさん?」
「どうしたの? 勘助君」
「何で私の頭撫でているんですか?」
「ダメ?」
「い、いや、大丈夫なんですけど……」
「ダメ?」
「ダメじゃないです」
圧が強いと、勘助は思ったのは前からである。最近事あるごとに勘助はエマに撫でられていた。
勘助はギリギリ、約4センチ程エマより背が高いが、椅子に座ってしまえばエマの方が高くなる。両方とも椅子に座った時はそこまで変わりはしないが、エマの姿勢の良さもあり座高的な意味では勘助を抜く。
今は椅子に座って侑が作った練習メニューを見ながらエマに撫でられていると言う光景である。
「どうして私を撫でるのか疑問なだけですよ」
「え? 勘助君の事が好きだからだよ」
勘助はむせた。何かの冗談かと思ったが、声だけ聞いたら真剣に言われた感じがするので改めて聞いてみた。
「どういう意味ですか?」
「ん? どういう意味だと思う?」
「お、弟?」
「ふぅん……まぁ、わたしもハッキリしてないんだけどね?」
「何を……」
勘助が聞く前にエマが勘助の頬にキスしていた。勘助は一瞬止まった後顔を赤くして、慌てるが、エマは少し微笑んだだけであった。
「勘助君、好きって言ったら君はどんな反応する?」
「まぁ、嬉しいですけど……」
「じゃあそういう事です」
「はい?」
結局エマは勘助の頭を撫でながら微笑むだけで勘助には何も話してくれない。疑問に思いながらも勘助はエマに頭を撫でられながら練習メニューと睨めっこすることしか出来なかった。
☆
「そんな訳なのですけどエマさんのこれって何ですかね?」
「エマは勘助が好きって事じゃない? 最近エマが勘助の話するの多いしよく2人でいるのも私達は知ってるんだから」
「私は死にますか?」
「どうしてそうなるのよ……でもエマを悲しませたら私が裁くわ」
「悲しませる気はないですけど……付き合いますってなると……」
諸問題があると、勘助はエマの親友である果林に話した。果林は少し考える間もなく、勘助に惚れた3人を思い浮かべる。正直なところ勘助の優しさは果林も知っているので確かにと同意して、こう言った。
「でも、それならそれで良いんじゃない?」
「エマさんが泣きません?」
「確かにエマが悲しむのは分かるけど、勘助だって何も考えていない訳ではないでしょう? 貴方1人の我儘とかで泣かせるなら許せないけど、貴方の問題には璃奈ちゃん達がいるんだからどうしようもないんじゃないかしら?」
「大事なのは、それを踏まえてエマとどれくらい仲良くなりたいのか。それだけよ」
そう微笑んだ果林を見ると勘助も心が軽くなった。同時に、いつものペースが戻り勘助は果林に軽く仕掛ける。
「流石……テストは0点、人生相談は満点ですね」
「髪の毛千切るわよ?」
「怖いんですけど」
勘助はいつものペースで果林を揶揄う。果林の言葉に少し笑いながら答えた勘助だが、果林からすれば割と本気である。それでも、果林は果林なりに勘助に向き合って言った言葉。お世辞とかわざとらしさなんて無かった。
「まぁ……そうですよね。なるべくエマさんと仲良くなる程を伝えておけば、後は天に身を任せます」
「任せちゃダメよ、それは。ただ、エマと仲良くしなさい」
「うっす」
勘助は少し考えながら頷いた果林はその様子を見ながら、また大人びた顔で微笑んだ。
☆
「エマさん。お話しがあります」
「どうしたの勘助君?」
「私は、エマさんの事は好きですよ」
「本当!? 嬉しいな!」
「そのはんぺんの頭を鷲掴みにしてなければですけど」
「にゃ!? にゃー!?」
「あ、ごめんね、はんぺん」
勘助の言葉に少し驚いたエマは撫でていたはんぺんの頭を何故か鷲掴みにした。勘助は恐怖しながらも話を続けると、エマもはんぺんを床に置いて話を聞く。はんぺんはエマを怖がって勘助の元に向かい彼の膝で丸まった。
「よしよし、はんぺんごめんな」
「あーあ、逃げられちゃった……それで? もう少しわたしに言うことあるよね?」
「まぁ、正直好きでも色んな種類がありまして。親友という位置で私は好きなんですよ」
「それで?」
「3人からの告白を断ったから付き合いずらいってのは私の我儘です。でも、エマさんに対してそういう想いもあるし、エマさんの事も好きなんです」
「それで?」
「親友でも良いですか?」
「それで?」
「これ以上俺にどうしろと?」
それで? の連打に勘助は結局恐怖した。エマはからかい過ぎたと言いながら笑ってくれたが、勘助は苦笑いしている。
「勘助君の気持ちはわかったよ。でも、難しく考え過ぎかも……もっとフランクに言ってよ。わたしと親友になりたいって」
「そう……ですね」
複雑な言葉ほど、人は離れてしまうのもあり、今の勘助の話を聞くとどうにも好意的には取れなかった。
エマが言って欲しいのはただ2つ。自分を好きかと、自分とどういう関係を望むかである。
勘助はエマの思いを汲み取りながら言葉を考えてゆっくり口に出す。
「それじゃあ、改めて。大好きですエマさん、俺と親友以上になって下さい」
「上手に言えました〜」
「何で頭撫でるんですか!?」
結局のところ関係性が変わってもあまり変わらない。何やかんやいっても、エマは勘助が好きだし、勘助もエマが好きなのだ。付き合うのも時間の問題だろう。
「わたしも勘助君が大好きだよ」
「私もエマさんとはんぺんが大好きです」
「はんぺん鍋に入れて良い?」
「ダメです」
「いつか、わたし達付き合おうね」
「え? それってつまり……」
「今はこれで良いかな」
こうしてエマと勘助の物語はこれで幕を下ろしたのだった。その後どうなったかは同好会しか知らない。
☆
勘助が目を覚ましたのは、同好会の部室ソファーである。頭には装置が付けられており、それを外す。ふと、周りを見渡すと目の前にいたのは自分の最愛の彼女がもつトレードマークである桃色の髪とテーブルにある白いボード。勘助は恐る恐るこちらを見る彼女に話しかける。
「終わったぞ、璃奈」
「大丈夫? 体とか頭とか……」
「何ともない。寧ろ夢の内容がアレだったから心地は良かった」
そう、と言いながら璃奈は勘助に微笑んだ。勘助がつけていた装置は璃奈の発明品である。つけた人のifルート、こんな道もあったかもしれないという内容が疑似体験できる装置。
そしてその実験のために恋人である勘助が呼ばれたのだが……
「勘助さんが本当に私と付き合って良かったのかなって思っちゃって……同好会の人、私よりも魅力的な人が多いから」
そのために、勘助に装置をつけたと璃奈は言う。正直、実験に付き合えと言われた時には危ないことされそうで恐怖はあったが、その装置を説明されて、いざ飛ぶと璃奈以外の誰かと付き合った、または付き合う流れの部分が体験できた。
それでも勘助は璃奈を撫でながら言った。
「俺は、璃奈じゃないと嫌かな。勿論同好会のみんなは優しいし可愛いからたまに目移りするけどさ、俺にとって璃奈は1番なんだよ」
「確かに面白い体験だったけど、まぁ、璃奈じゃないとやっぱ物足りないな」
「そう……なんだ。よかった、もし私以外のルートに心打たれたらそこから目を覚まさないように設定してたから」
「dead or aliveじゃん」
恐ろしい言葉を恋人から聴きつつ、勘助は璃奈にキスをしたのだった。
ルート別ストーリーは終わりとなります。見ていただいてありがとうございました。またいつか、次の作品で会えたら嬉しいです。
ハーメルン小説はこれからも見続ける予定です。