あの……ここに集まんないでもらいます?え?モーセ?違いますけど? 作:今日和
「と言うわけで今日はアパートの清掃会を行います」
アパートの1階にあるちょっとしたスペースにはオジマンさん、ニトちゃん、清姫、徐福っちゃん、最後に俺の5人が集まっていた。
今日はこのアパートの清掃会の日。まあアパートや団地とかではよくある皆で掃除をしちゃって同時に親交も深めましょう会だ。簡潔に言うと合コンだな。
「全然違うと思います」
はいそこノリ悪いですよニトちゃん。罰として今日は肩揉みと腰ふみを命じマッシュルブリンバンバンボン。
「ですが……清掃などという行いは下賤の民が行うもの。偉大なるファラオオジマンディアスに行わさせるのは不敬です」
「良いではないですかニトクリスさん。こうやって大勢で掃除をするのも悪くはないですよ?ねえ安珍様。この後私と一緒に組んず解れつで夜の大掃除でもいかがでしょう」
うむ。とりあえず清姫は粗大ゴミに出すこと決定な。あ、生物だから粗大ゴミじゃなくて可燃ごみか。でも清姫って炎の蛇だし燃えなさそうだよなぁ……やっぱ粗大ゴミに出してゴミ収集車で砕いてもらうか。
あと安珍じゃなくてモッセです。
「ですが……」
「良いニトクリス。我が根城を余、自らの手で手入れを行うのもまた一興よ」
「さ、流石はファラオオジマンディアス!!私では到底及ばない器の大きさ……敬服いたします!!」
ニトちゃんって本当にオジマンさん大好きよね。でもわかるわぁ……オジマンさん普通にかっこいいしな。なんなら抱かれてもいい。
そしてそんなオジマンさんが大好きなニトちゃんもこれまた……ご馳走様です!!
「それじゃあオジマンさんも参加は確定っと」
後は……
「これさ、私は参加しなくて良いんじゃない?」
このヒキニートだけか。
「良いかい徐っちゃん。自宅警備員のお前さんもたまには肉体労働が必要だ。普段の俺のようにな」
「ふっ」
なにわろてんねんガキ。この中で1番ペチャパイの癖に。オジマンさんよりペチャパイの癖に。
「な!?あ、あるから!!少なくともAはあるから!!!だからその眼をやめろぉぉ!!!」
あっ、スワンスワン。あまりにも残酷な現実につい暖かい目をしてしまった。
「落ち着け餅つけ徐っちゃん。どうせならニトちゃんにバストアップの方法を聞いてあげようか?」
「ありがた迷惑!」
「ならば聞いて差し上げよう。おーいニトちゃん!徐っちゃんが胸を大きくしたいらしいんd」
「ふん!!」
あっちょんぶりけ。せっかくの俺なりの優しさだったと言うのに。
「じゃあこうしよう。徐福っちゃんが掃除をしなかったらニトちゃんにバストアップの方法を聞く」
「む、卑怯な……」
そりゃ逃す気ねえから。お前の逃げ道ねえから。今から入れる保険すらもねえから。
「はぁ……わかった。素直にやるから」
結局徐っちゃんは根負けする形で参加することになった。
うむ。こうやって自主的*1に参加してもらうと嬉しいものだな。やっぱ徐っちゃんを誘って*2良かった。
「あ、そうだ。参加してくれたご褒美にニトちゃんにバストアップの方法聞いてあげるけど」
「それは結構」
コケコッコーってか。はい黙ります。
◆
はーい。よーいスタート。
誰よりも早く終わらせたい、清掃会RTA。はっじめっるよー。
「え、なんか急に始まったんですけど」
「「「おーー!!!」」」
「あれ!?ノリにノれてないの私だけですか!?」
今回は『コーポ冬木』の全体をお掃除しちゃうよー。
いやー、最近はこのアパートもだいぶ年季が入ってきちゃって。壁は薄いし階段は錆びてるし、1階にある裏庭は雑草がボボボーボ・ボーボボだし。
今日はそんな住めば都、住まないとボロ屋敷『コーポ冬木』の清掃をしちゃいまーす。
それじゃあまず初めにそれぞれ役割を決めちゃいマッスル。
まず1番手、声のでかい人オジマンさーん!!
「まずは余からであったか!!流石、余のことを理解しているだけはある!!」
「いや二つ名!!否定してくださいファラオよ!!」
オジマンさんはまず最初にラム*3って天候を晴れにしてくださーい。その後はミニスフィンクス軍団で角や窪みなんかの汚れの清掃をお願いします。
「うむ!!心得たぞモーセよ!!王の中の王であるこのオジマンディアスたる余に任せるが良い!!」
ありがとうございまーす。あとモーセじゃなくてモッセです。
じゃあ次。燃える粗大ゴミ清姫とAAAの期待の新人徐っちゃん!!
「私ですね」
「誰がAAAだ!!胸いじりいい加減にしろ!!」
二人は裏庭の雑草取りをお願いしまーす。取った雑草はちゃんと袋に入れて捨ててくださいねー。
「承知しました安珍様。それが終わったら……ぐひゅ」
「えぇ……なんか一番のハズレくじじゃない?」
引きこもりにはいい運動ですよー。清姫さんは終わったらゴミ収集車にダイブしてくださいねー。あと安珍じゃなくてモッセです。
最後はノリ悪い所を気にしてるのがかぁいいニトちゃーん!!
「ちょ、言わないでください!」
ニトちゃんは階段と廊下、屋根の清掃をお願いしまーす。ネブタ祭り*4開催しちゃってOKでーす。汚れや菌をバンバンぶっ殺大魔王しちゃってくださーい。
「はぁ……わかりました。モッセさんは何を?」
俺は全体の監督と手伝いでーす。あと料理とかも作り置きしとくので皆さん頑張ってくださーい。
それじゃあ第……何回か知らないけど『コーポ冬木清掃会RTA』開始でーす。
◆
さーってと……とりあえずご飯の準備はこれで問題なシングトゥーザマッチそーれ!!だな。
俺の部屋の机の上には下拵えの済んだ食品が所狭しと並んでいる。
うーむ……我ながら素晴らしい出来栄えだ。惚れ惚れするぜ。これをあと食べるのが楽しみで仕方ない。
そんじゃ……さっさと飯にあり着くためにもお手伝いしに行きますかねっと。
「おーい。オジマンさーん」
「むっ、来たかモーセよ」
オジマンさんの所へ行くと、そこには既に大量の小型の青いスフィンクスが雑巾を持ちながら隅々まで動き回っていた。
「どうですか調子は」
「余、そして我が下部達の行いに不備があるとでも?」
自信満々な態度で俺を見つめるオジマンさん。彼が手のひらを上に向けると一匹のミニスフィンクスがその上に乗った。
このミニスフィンクスちゃん達可愛いよね。手のひらサイズですっごい懐いてくるしさ。顎を擦ると尻尾をフリフリしてくれるんだぜ?顔はないけど其処もまた愛いというか……
あとモーセじゃなくてモッセです。
「ありがとうございます。オジマンさんの場所は俺の手じゃ届かないところだったので」
「良い。ファラオは寛大である。故に、モーセの手の届かぬところは我が代わりに手を伸ばそう」
本当にイケメンだなこの人。天候もちゃんと晴れにしてくれてるし……やっぱこのメンツで一番頼りになるのはこの人だな。
てかイケメンすぎてファンになっちゃいそう。いっそファンクラブ作っちゃう?作っちゃうか。
えー……只今より、オジマンさんファンクラブを創設いたします。会員No.1モッセが会長を勤めさしていただきます。誠によろしくお願いいたします。
「はい!よろしくお願いします!」
「どうした急に」
一人で勝手に妄想してたらニトちゃんがその中にぶっ込んできた。
「会員No.2ニトクリス!清掃終わりました会長!!」
急にノリ良くなったなニトちゃん。さっき言われたこと気にして無理くり……いや、違うなこれ。好きなやつだと急にノリが良くなるやつだわ。オタクくんにありがちなやつだわ。
「オタクくんさ〜。ちゃんとできたんだろうね〜」
「はい!完璧に終わらせました!あとオタクくんじゃなくて副会長です会長!!」
そこは副会長じゃなくてニトクリスだろ。
「イェッサー会長!!」
会長じゃなくてモッセです。いや会長だけども。
ニトちゃんに任せた所を見ると、まあそれはそれは綺麗さっぱりお肌ツヤツヤになっていた。ニトちゃんの技って便利よね。菌や汚れまで即死させてくれるから清掃が捗る捗る。
「よくやった副会長。貴様には後ほどオジマンさん隠し撮り集を譲渡しようではないか」
「は!ありがたき幸せ!」
普段だったら『隠し撮りなんて不敬です!』って言うはずなんだけどな。好きって人を変えちゃうんだなぁ……恐ロシア。
◆
オジマンさんとニトちゃんは問題なさそうだな。もう殆ど終わりかけてたし。あとの問題はあの二人か。
嫌な予感しかしないな。特にスーパー変態蛇女の方。なんも問題起こしてなきゃいいけど……
「ふふふ!その程度ですか徐福様?」
「うるさい!!絶対に負けないから!!」
一級フラグ建築士とは俺のことです。
これは酷い。酷すぎる。徐っちゃんは謎のチェーンソーで雑草を切っているらしいが、根っこから取ってないから殆ど意味がない。
清姫は
「あ、安珍様見てください!!私頑張りました!!雑草を燃やして燃やして燃やしまくりました!!褒めてください!!」
「おう頑張ったな。ついでにアパートの柱まで燃えてるけどな」
「ぐっさm──モッセさん聞いてよ!!私は真面目にやってのに清姫がいきなり『雑草を多く取った人が安珍様に褒められるゲームをしましょう!』とか言い出して!」
「おう頑張ったな。そのチェーンソーのせいで塀に切れ目めっちゃ付いてるけどな」
ミスったな。この二人を一緒にするべきじゃなかったか。これは僕ちんも反省しないと。
「とりあえず君ら有罪。ギルティ。後で罰としてこちょこちょの刑な。失神するまでやるから」
でもこいつらもしっかり断⭐︎罪しなきゃね!俺は自分にも厳しいけど他人も厳しいタイプなのさ!!
「ええ!?なんでよ私頑張ったのに!!そりゃ少しミスはしたけど……清姫もなんか言ってよ!!」
「罰というよりご褒美なのです」
「やっぱ黙ってて」
はい無視虫蟲。絶対にやるから。もうカッチーンだカンナ。泣いて『やめてよし子沢田研二夏目漱石』って言っても許さないカンナ。
「じゃあ火を消すぞー」
「はい!喜んで!!」
「ちょ、待ってってば!!」
◆
「はーい皆さん。今日はお疲れ様でした」
夕方頃、俺達はなんとか清掃を終わらせることができた。本来は昼過ぎには終わる予定だったが……どっかのバカ二人のせいでだいぶ時間がかかっちまった。
まあそれももう許そう。罰は既に実行済みだしな。そのせいか徐っちゃんはかなりゲンナリしている。若干一名はツヤツヤしてるけど。
「皆さんのおかげで『コーポ冬木』は凄い綺麗になりました。これも一重に皆さんの力あってこそです。本当にありがとうございました」
なんだかんだでこのアパートは祖父が大事にしていた場所だ。祖父が帰ってきた時に汚い状態じゃ嫌な思いをさせちまうしな。
今日はなんとか綺麗にすることができて良かったわ。
「それじゃあお待ちかねのご飯にしますか。用意はできてるんで座ってください」
そう言いながら少し焦げた匂いのする裏庭に設置した折り畳みテーブルに四人を案内する。
「今日は皆さん頑張ってくれたので……BBQにしちゃいましょう!」
「「「おー!!!」」
「お、おー!」
あ、ニトちゃん副会長モードが解けてらっしゃる。それでも頑張ってノリにノろうとしてますね。そのぎこちなさ良いですねぇ!!堪りませんねねぇ!!
「さあて!!ジャンジャン焼いちゃいますんでどんどん頼んでください!!」
「余は肉を所望する!!」
「私はお野菜から行きましょう。白菜とピーマンと人参をお願いします」
「私はソーセージかな。あと蛤二つ」
「食べ頃になった安珍様をお一つくださいまし」
んんんんん聖徳太子!!!順番で言えよ!!!一気に聞けるわけないだろ!!!
……ん?ちょっとオジマンさん?何勝手に焼き始めちゃってるの?
え?ここは余が統治するだって?なんでそんな急に鍋将軍みたいになるわけ?ファラオってそうなの?ファラオってBBQファラオのことだったの?
あと清姫も一旦落ち着け。俺別にお前さんのオーダーをOKしたわけじゃないから。
何?否定しませんでしたよね?いや否定するより先にツッコミしちゃっただけだから!
助けてニトちゃ──なんか凄い不機嫌!!徐っちゃんも目が怖いよ!?
と、とりあえず落ち着け清姫。お前は俺のこちょこちょで可笑しくなっただけだ。だから無言は承諾と見なしますとか言わないでくれ!そしてその歩みと怪しい手つきをやめてくれ!痴女認定するぞ!!
あ、ちょ、本当に……らめええええ!!!!
こうして各々好きなものを食べ、好きなものを飲み、好きな歌を歌い、好きなものを食べ(意味深)、時間は驚くほど早く過ぎ去っていった。
五人の馬鹿騒ぎは夜が更けるまで続いたとかなんとか。
あっ、清姫を粗大ゴミに出すの忘れてた。
「見つけた……見つけたぞ父上!!!」