ミデンを翔ける黒い鳥、ボーダーで何を成す? 作:AC6はいいぞ!!
「迅、あれはどういうことだ?」
信二は今、上層部との会談を終え、迅を問い詰めていた。
無事に話がまとまったものの、まとまらなければボーダーとブランチの全面戦争が起きていた。信二が煽ったのもあったが、ボーダー側が正体をバラして無理やり交渉したのも問題だった。レイヴンとしてなら、ある程度の話し合いに応じていたため、そちらで話をまとめれば良かったのだ。
「それだと君と本当の意味で信頼を構築することができなかった。こんな形で正体を明かして申し訳なかった」
そう言うと、迅は申し訳なさそうに頭を下げた。
(ふぅ~・・・落ち着け、落ち着け、俺)
信二は今すぐぶん殴ってやりたい衝動に駆られるが・・・何とか気持ちを落ち着かせ、とりあえず話を聞くことにした。
「それで俺を怒らせてトリガー技術を得たわけだが、そこまでする必要があったか?」
「あるよ。君は誤解しているけど、君たちの保有しているトリガー技術はネイバーフッドでも屈指の技術だ。現にボーダーのトリガー技術を大きくさせることは確定している」
「小規模な開発を行っていただけでネイバーフッド屈指?ボーダーは小規模で活動していたから技術がないのはわかる。だが、ネイバーフッドの国々のほうが」
「上だと言いたいんだろうけど、普通に君らの技術は凄いよ。なんなら、一部の技術に関しては頭一つ飛び抜けている」
たった5年の開発で追い越せるわけがないと信二は思ったが、エアがトリオン兵とトリガーの開発に特化した能力を持っており、ネイバーフッドの国々の文化レベルが中世なことも考慮するとおかしな話ではなかった。
(身分制や技術の独占は技術の進歩を停滞させる。戦争をやっている国ならある程度マシだろうが、全ての国が戦争をしているわけじゃない)
今までは物差しがなかったため、自分たちの技術が小国程度だと信二は考えていた。だが、迅の話を聞いて考えを改めた。自分たちの持っている技術が相当優れており、相当な危険をはらんでいることに。
「それでも、正体をバラす理由にはならない」
「まあね。本当の理由はあそこで君の正体を明かして、本当の意味での信頼関係を築かなければ君は将来、ボーダーと敵対していたからだ」
(俺がボーダーと敵対か。あり得ない話ではないな)
ブランチとボーダーの決定的な違いとして、ボーダーはミデンの人々を守るが、ブランチは特定の人を守るのみ、ほかは守れるなら守る程度の認識だ。その考えの違いはいずれボーダーとの対立に発展する火種となることは想像に難くない。
それに技術面に関しても、ボーダーのことを警戒して出し渋っていた可能性は高い。技術を最大限提供してもらうという意味でも一蓮托生の関係にするのは悪くない手であることは間違いなかった。
「だから、互いに弱みを握らせ一蓮托生の関係を構築させたのか」
「そうすれば、君も上層部も不用意には動けない。そうだろ?」
迅の言う通り、下手なことをすれば互いに致命的な損失を被る。そうならないよう互いに妥協点を見つけ、協力し合うだろう。信二としては、出し抜くこともできなくはないが、それをやるほど人としての心がないわけじゃなかった。
「それも永続的ではない」
「でも、ある程度続けば本当の意味での信頼関係の構築もできるはずだ」
「夢物語だな」
「俺はその夢物語、嫌いじゃないけど」
(信用ならない男だが、ボーダーのため、ミデンのために行動している。そして、守るべきものの中に俺も含まれているかもしれない。だが)
場合によっては、未来のために今を切り捨てるのではないか。それこそ、ブランチを切り捨てるのではないか。そう言う考えが頭をよぎった。
考えすぎかもしれない。だが、一笑して切り捨てることもできなかった。
・・・・・・
その後、信二は迅と共に玉狛支部にやってきた。既に支部があることに驚いたが、元々はボーダーの本拠地だったことを迅から聞き、信二は納得した。
(川の上に立ってるのか。水質調査を行う施設を買い取ったのかな?)
信二はそんなことを思いつつ中に入り、リビングに行くと、奥から玉狛支部の隊員の木崎と小南がリビングにやってきた。
「迅、そいつ誰よ」
「こいつか?こいつ、実は俺の弟なんだ」
「ええっ?!!迅に弟がいたの?」
「いや、こんな奴の弟じゃないから」
(それにしても・・・こんな嘘に騙されるとは)
信二が迅のついた嘘について否定すると、騙されたことに気づき、迅を締め上げた。
「いつも騙されてるんですか?」
「まあな、それで君は?」
「ああ、そいつはうちで生活することになった訓練生だ。レイヴンでもある」
「レイヴンね・・・はあっ?!!」
木崎の質問に対して、迅は特大級の爆弾を投下した。
さすがの信二もまさかここまでアッサリとバラすと思ってなかったので、あまりの驚きに言葉を失った。
「迅、どういうことよ!!こいつがレイヴンだって、レイヴンはこんな子供じゃなかったでしょ」
「トリオン体を調整して成人男性にしていたんだ」
「そうなのか?」
「迅、考え合ってのことだと思うがお前を処分した方がいいか、本気で今考えているところだ」
「待ってくれ、ちゃんと考えてるから」
自分が処される未来が見えたのか、慌てて弁明する迅に対し、信二は心中穏やかではいられなかった。
仮に彼らから信二に関する情報が洩れれば、迅もそうだがボーダーはただでは済まない状況になる。いずれは情報を知る人を増やそうと考えているし、防諜と言う点で噂も流す気ではあるが、それをやるにはまだ早すぎる。
「安心してよ。彼らは俺らの仲間で口も堅いし信用もできる。小南はちょっと心配だけど」
「なによ!!私だって口が堅いわよ!!」
ポカポカと迅を殴りつつ小南は弁明する。その姿を見て信二はだいぶ不安に感じていた。
(ボーダー本部ではだいぶ重苦しい感じだったが、こちらは一転してだいぶ緩いな。ただ、戦闘力に関しては本物。侵攻時にも戦っている姿を見たし、実力者なのは間違いない)
先の侵攻時にいた彼らを信二は見ており、実力が本物だと言うことを知っていた。
「まあいいわ。あんたがレイヴンだというなら証明なさい!!」
「証明って・・・どうするんだ?」
(まさか、戦うとか言わないよな)
信二がレイヴンとして戦い、市民にでも見られれば相当厄介なことになる。ここには訓練施設もなさそうだし、ブランチで開発した訓練施設を設置しようにも時間がかかる。
「安心なさい。地下に訓練施設があるからそれでやるわよ」
「いや待て小南、忘れたのか?彼のトリガーと俺らのトリガーでは性能差があり過ぎる。だいたい、あっちはずっと飛んでられるんだ。上空から撃ちおろされて終わりだ」
「ううっ・・・そうだった」
(まあ、トリガーの性能差も相まって勝てる要素がない。ボーダーのトリガーはまだ未熟もいいところだからな)
エアが調べた限りでは、ボーダーのトリガーはブラックトリガーを除いて性能は低い。8つのトリガーチップを埋め込み、それらを組み合わせて使用するが現時点では使用できるトリガーが少ない。
逆にブランチのトリガーは多彩だ。様々なトリガーを展開することが可能であり、性能も高い。戦えば間違いなく圧勝するだろう。
『武器は弧月、アステロイドのみ。オプションでシールド、バッグワーム、エスクード』
『小規模組織だったせいか、この辺りのトリガーが全然開拓されていない。そりゃあ、開発に力を入れるわけだ』
マザートリガーを信二と同様に手に入れているから、てっきりもっとトリガー技術が進んでいると思ったが、どうやらそうでもないらしい。ここ最近の組織拡大のことを考えるに、マザートリガーを手に入れたのは最近かもしれないと信二は思った。
「じゃあ、ボーダーのトリガーを使って勝負なさい!!」
「断る」
(使い方もわからないトリガーを使って勝負をする気はない)
「小南、彼はまだボーダーのトリガーについて知らない。まずはボーダーのトリガーに慣れさせるべきだ」
「じゃあ、その後に勝負なさい」
「まあ、それなら」
(正直、あまり自信はないが、木崎にトリガーの使い方を習った後に一度勝負してみるか)
信二としては、自身の実力を知りたいという思いがあった。実力者であることは間違いないと思っていたが、どの程度通用するのか、身内での訓練しかやってこなかった信二には物差しがないため判断ができない。そのため、物差しを作るという意味でもこの提案は悪くないと思った。
・・・・・・
「戻りました・・・って、どうしたんだ?」
「何があったの?」
リビングで意気消沈している小南を見て、玉狛支部のエンジニアのクローニンと林藤支部長の姪のゆりが近くにいる迅に尋ねた。
「ああ・・・実は今、新入りが来ていて・・・その、なんだ。負けたんだ、その新入りに」
「そうよ、負けたわよ!!2勝8敗よ!!」
「思った以上に負けが多いな。君がその対戦相手かな。初めまして、ミカエラ・クローニン、ここでエンジニアをやっている」
「始めまして、林藤ゆりです」
(カナダ人のクローニンと支部長の姪のゆりか。クローニンのほうは訳ありそうだな)
そんなことを思いつつ、先ほどの戦闘ログをクローニンが開き、観戦することになった。
互いのトリガーを弧月、アステロイド、シールド、エスクード(信二のみ)で構成して戦い、最初の2戦は練度の差から小南が接近戦に持ち込み勝利した。だが、それ以降の試合では小南が接近戦が得意なことに気づいた信二が徹底的に距離を取り、アステロイドでゴリ押した。
「それだけじゃないわよ!!こいつのアステロイド、メチャクチャ威力が高いし、置き玉を使ってくるし、それを避けるためにシールドを使って接近しようとしたらエスクードが真下から生えてくるし、しまいにはシールドを足場代わりに空中ジャンプして逃げるしでメチャクチャよ!!」
「ほう・・・今日初めてボーダーのトリガーに触ったのにもうそんな応用までできるのか」
様々なトリガーを活用した戦法にクローニンは感心した様子でリプレイ映像を見る。
「初戦で弧月を使っていたが太刀筋も悪くない。かなり実践的な剣術を身に着けているみたいだ。接近戦も腕がいいのに中距離戦はそれ以上か・・・というか、アステロイドの弾の大きさがバケモンなんだが」
(それはトリオン保有量のせいだろうな)
信二は訓練時にマザートリガーに接続していないが、それ抜きにしても一般人を凌駕する量のトリオンを保有している。
「トリオン量もそうだけど、戦闘慣れし過ぎよ」
「まあ、無理もないだろ」
「第一次侵攻時が初の実戦」と信二は迅に語っており、実戦経験がほとんどないのは嘘ではなかった。だが、信二は訓練で相当実践的なことをやっていたため、この結果はある意味当然だった。
信二としては、この対戦ではとても有意義なものであったと同時に、ボーダーに不足しているトリガーがどんなものかを感じ取るきっかけにもなり、後日鬼怒田室長の元に突撃するのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
原作ではかなりの強い小南がボコボコにされてましたが、今回に関しては相手が悪かったです。オリ主のスペックはかなり高くまた、実戦経験が少ないとはいえ、かなり実践向けの訓練を行っていたため普通に強いです。
オリ主はトリオン量の高さを活かした中距離以降での戦いを得意としており、中距離戦に関しては小南では歯が立たないです。逆に言えば、近距離戦では小南のほうが強く、そのため初戦で近距離まで詰め寄られた結果、1負しています。ちなみに、置き玉やシールドを足場にした空中ジャンプなどに関しては、トリオン体に慣れていたことや器用なこと、トリガーの使い方を工夫することが得意なため思いついてすぐに実践しました。
トリガーの種類に関しては原作でも明言されていないのですが、以下の理由で今回はボーダー創設時には存在していた。ということにしました。
弧月:「初期の頃はアタッカー用のトリガーは弧月しかなかった」という原作の発言から
アステロイド:さすがに遠距離武器がないはずがないという理由から
シールド:さすがに防御手段がないはずがないという理由から
バッグワーム:少数精鋭だったと言うことは、隠密も重視していたはず
エスクード:「古いトリガーだからトリオンの消費が多い」という原作の発言から
ほかのトリガーについては明言されていないものも多いですが、少数で活動していたためトリガーの数がない。という推察もこの5つを初期装備とした理由です。