山吹乙女の息子に転生し、狐に呪われた青年の物語 作:アルトリア・ブラック(Main)
奴良鯉零(りれい)
原作知識あり。奴良鯉伴と山吹乙女の息子
漫画を読み始めた原点と呼べる漫画、俺が一番大好きで大人になってもずっと愛読していた漫画。
それが『ぬらりひょんの孫』
初めて見た漫画だったから大好きで覚えていた。
(…if物語は沢山読んでたから良かったけど…まさかねぇ…)
「鯉零様、どうされました?」
「考え事してた!」
元気に言うと首無が「そうなんですね」と返してくれる
(…なんで、ぬらりひょんの孫に生まれるかなぁ…しかも、山吹乙女の息子…!)
前世の記憶を思い出したのは一歳の頃、棚の上から複数の道具が落下してきて硬い物に頭をぶつけたタイミングでだった。
聞いたことないぐらいの声で俺を抱き上げる奴良鯉伴とバタバタ足音がした瞬間、蘇った記憶
打った衝撃で血も出たし、何より、思い出した時の記憶の巡りで吐きそうになった
(…あの時の半狂乱鯉は…父さんは忘れられないなぁ…)
結果的に頭の傷は大したことなく、二日は絶対安静、その後も経過観察と言われてしまった。
「よいしょっ」
俺が立ち上がって縁側に降りると首無も着いて来る
(…分かっちゃいたけど、過保護だなぁ…)
特に首無
庭に埋まっていた山吹の花を抜く
「首無ー、花瓶ってある?」
「花瓶ですか?台所にあると思いますので取って来ます」
「一緒に行く!」
首無と一緒に台所へ行き、花瓶を貰い生ける
「アンタ、花を生けるの得意ね」
雪麗さんに言われて『そう?』と首を傾げて言うと「うっ」と心臓を抑えながら悶える
(…俺の顔って、祖父似って言うけど…)
鏡を見た時に確かにと思ったが、これではリクオが生まれるのかなおのこと不安になった。
(それに…)
本来、ぬらりひょんは妖怪との間に子供は生まれないという呪いをかけられていたはず。
なのに自分が生まれたのには理由があるんじゃないか
(…俺が代わりに『あの時』に死ねば…)
「乙女ちゃん、ご飯持って来たわよ」
「母さん、あ、父さんもいた」
鯉伴が死ななくて済むんじゃないか
家族三人でご飯を食べ始める
「俺って甘やかされてると思うか?」
「クソ甘やかされてる」
鎌鼬の友人(多分イタクの親父)にそう言われる
数年後、12歳になった俺は今後のことを考えて強くなりたいと言って遠野に来た。
その道中、いろんな出逢いと戦いがあった。
3代目になるのはほぼ決定事項なもので、別に反抗もしようと思わないが、同時にリクオじゃなくて良いのか、俺なんかで良いのかと悩む日々だった。
雪麗さん曰く俺は祖父に似ているし(人間時は母方譲りらしい)妖怪の血が強いから父が抱えていたであろうハンデもないと思っている。
江戸後期から繰り返される戦争に対応しつつ、3代目を早めに襲名した。
父の百鬼と時折参加して来る狒々や牛鬼とも仲良くはなっていると思いたい
そんな中、母はいつまで経っても寝たきりのままだった。
よくなる事は一生なく、でも母は笑って俺の成長を喜んでいるようだった
鴆がやってきて父と何か話しながら母の部屋に入って行ったのを見て、明鏡止水でそばに寄ると
「乙女様、私に出来るのはここまでです」
申し訳ありませんと頭を下げる鴆
「そうですか」
乙女はありがとうございますと微笑む
「鯉零様にいつお知らせしますか」
「鯉零にはまだ…」
「百鬼を背負う身になったんだ。話しても良いと思うぜ」
両親の話し声
「鯉伴様…あの子は繊細です。出来るなら…」
母の苦しそうな声
「…あの子が知ったら自分が代わるなんて言ってしまいそうで、狐の呪いで苦しむのは妾だけで良いです」
「……!」
狐の呪い、それを聞いてビクッとなる
「あの子が生まれてからもずっとあの子を呪い殺そうとしている狐の夢を見てきました。妾が代わりになる、だからあの子を殺さないでと必死に願い、あの子へ呪いが行かないように食い止めてきました。だから…あの子が生きている限り私も死ぬわけには行かないのです」
その言葉を聞き、明鏡止水で姿を消して玄関の方へ向かう
明治の街並みに変わった端に着き、物思いに耽っていた
(…まぁ確かに都合が良すぎると思ったけど…)
妖怪と半妖の子供で、狐の呪いがあるはずなのに俺には一切何も無かった。
『あの子が知ったら自分が代わるなんて言ってしまいそうで…』
母の言葉を思い出し、自嘲気味に笑う
前世は母親に愛されたことなんてなかったからわからなかったが、今世の母親は本当に優しかった。
息子のために苦しみも痛みも堪えて呪いに耐えて、俺が言うことも分かっていたなんて
「……代わってはやりたいけど…」
自分なんてイレギュラー存在しない方が良いんじゃないか、リクオが生まれるには奴良鯉伴と奴良若菜が出会わなければならないのに
『生きていてなんの意味がある?』
「!?」
前世、散々聞いた狐の声が聞こえて来てビクつく
『其方はイレギュラーな存在。憎らしい、本当に、ぬらりひょんの血、絶やせ、その手で母親を殺し、お前も死ねば解決するであろう』
心臓が異常なぐらい跳ねる
九尾狐が纏わりついて来る
刀に手をかけようとしたとしたが、刀が無くなっていた
(…刀が…)
なんとか逃げようと思っても何もかも動かない
すると
「鯉零!!!」
雪麗さんの声が聞こえて来る
吹雪が羽衣狐を追い払うように弾く
起き上がると、そこは奴良組の屋敷だった。
「雪麗…?」
頭を抑えながら起き上がると『寝てなさい、まだ熱下がってないんだから』と強制的に横にされる
「…熱?」
「街外れで倒れてたのを首無が連れて来てくれたのよ、鯉伴呼んで来るから待ってな…『ゲホッ…』鯉零!?」
咳をしたら口から血が大量に出て雪麗さんが真っ青な顔で戻って来る
『殺せ、奴良鯉伴を殺せ、山吹乙女を殺せ、そうすれば全て解決する』
頭に木霊する声で雪麗さんの叫び声が聞こえなくなる。
鴆がやって来て何か指示をしているが、全く聞こえない
(…俺が…死ねば、解決する…)
誰も傷つけたくない、死ぬ方法しか考えられなくなっていると…
「鯉零…!」
目の前に母の綺麗な黒髪が見える
俺の頭を抱き締めて
「妾が代わるから…!お願いっ…連れて行かないで…」
震える母の腕、代わらなくていい、今ここで死ねば幸せだし、母さんには悪いけど、ありのままの原作世界の方がきっといい
鯉伴様と話をしていたら突然、狐の声が聞こえなくなり、身体の痛みも無くなった。
それと同時に玄関が騒がしくなり、首無が『3代目が!!』と叫ぶ声が聞こえ、最愛の息子が担がれて戻って来たとのことだった。
最愛の息子が生きるのを諦めてるように、血を吐いて頭を抑えていた。
まるで、狐の呪いが息子を蝕んでいるようだった。
「お願い…連れて行かないで…」
そう必死に願うと
「……かあさん、が笑ってくれるのがいちばん…だな」
そう呟く息子の声
「鯉零っ…!」
気絶した鯉零がぐったりともたれかかって来る
端的に言えば、狐の呪いが俺にも現れた。
転生特典なんて俺にはなかった。
妖怪の姿に変化すれば吐血騒ぎ、それからだんだん身体が思うように動かなくなって行った。
人間の姿なら動けるが、妖怪の姿にはなれない。
狐の幻聴や呪いが凄まじすぎて妖怪の姿では居られなくなった。
そうなった自分に古参幹部達はもとい妖怪達の中でもチラホラ三代目の後はどうする、呪いに侵され、こうも出入りに支障が来るならと不満がちらほらだった。
母は自分に生きて欲しいと願っていた
父も同じくそう願ってくれていた。
でも、俺が死んだら、辞退したら組の存続はどうなる、と堂々巡りだった。
そうこうしてる内に母は亡くなった。
狐の呪いに侵されて
父が悲しみに暮れつつも、俺には死なないで欲しいと原作のようには行かなくなった。
だから…
「大量の血をぶち撒いちゃったまま出て来た」
「………分かるけどなぁ…親父さんを思っての行動なら分かるけどよ…にしたって心臓に悪い」
遠野の里にて、リオンにそう話す
派手に顰めっ面される
「ちゃんと置き手紙残して来たし、ウン100年かけてでも、次の恋に目を向けて欲しいしさ」
そう笑うとリオンは「たかが100年で忘れられるかねぇ」と呟く