山吹乙女の息子に転生し、狐に呪われた青年の物語 作:アルトリア・ブラック(Main)
ー明治時代ー
山吹乙女と奴良鯉伴の息子として、長男として生まれ、100年少し三代目として総大将を勤めていたが、狐の呪いによって奴良組から去ってからはリオンと二人きりでいろんな旅をした。
時代が時代だっただけに、心の底から人間が嫌いになった。
国が国民を洗脳し、戦争を正しい事のように誘導していた。
「国なんぞのために自分の命を棒に振れるような奴らは頭がイカれてんだよ」
鬼楼丸と酒を呑みながら話す。
「まぁ、確かに、今の時代妖怪への恐れなんて微塵も人間は感じねえから妖怪としては住みにくい状態になってるし」
夜鷺と出会うまで、沢山の人間の殺し合いを見てきた。
(…別に人間なんて護らなくてもいいよなぁ)
空爆で燃え上がる街を見下ろしながら、50年後くらいにあるリクオの誕生を待ち望んでいた
人間なんてどうでもいい
「…ん…?」
記憶が飛び、気がついたら奴良組の屋敷の前にいた。
安倍有行達に攻撃を受け、鬼楼丸達と一緒に戦っていたはずのなのにいきなり東京に戻っていた。
(いや、これはどう考えてもおかし…)
ジジッと脳裏にノイズが走りふらつき、ドンッと門に手をつく
「?」
リクオに話をした後、鯉伴がいる場所に向かうと
「なんでぃ、15日も失踪してて不安になったじゃねぇか」
そう言って俺の頭を撫でてくる鯉伴。
そして、背を向けて『組に帰るぞ』と話している父とそんな父に何か話している鴉天狗
勝手に手が刀へ伸び、勝手に鯉伴を刺していた。
(…え?え…、あ…あぁ…?)
身体が勝手に動く
『君がイレギュラーなんだよ』
有行の言葉を思い出す。
何かされた、そう思い刀を離そうとしたが…
『ゆずれよ、よこせよ、よこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせ!!』
脳裏に響く『誰か』の声
「ぁぁああ!!!」
『本当なら、お前じゃなくて、俺が生まれる『身体』だったのに』
背中に何か乗り掛かってくる感覚に陥る。心臓を、魂を掴まれているような、強烈な悪寒を感じる
「こらこら」
宥めるように後ろに有行が現れる
「その"魂"を食べて良いのは晴明様の勝利が確定してからだよ」
足元に五芒星が現れる
「晴明様と同じ山吹乙女の血が流れてるんだ。頑張って奴良組を滅ぼすんだよ」
海の中に落ちるように意識が薄れて行く
『兄さん!!!』
リクオの叫び声が聞こえてくる。
「…り、くお…」
兄が、晴明の手に落ちた
そうリオンさんに言われ、意味が分からないまま兄と戦闘になる。
「っ…!兄貴!!」
兄はめちゃくちゃに強かった。普通の戦い方じゃない、晴明のような術を使いながらこちらを殺そうとしてくる。
「若!!」
「これはいってぇ…!」
「青!!親父を頼むっ!!」
その声に倒れている鯉伴を確認し「二代目ぇ!!」と向かおうとしているのを兄が視認する。
「!」
明鏡止水・桜で兄へ攻撃するが、兄が鏡花水月で交わしてしまう。
「退け」
地を這うような声、青田坊の真後ろに現れる
(…間に合わねえ…!)
走ろうとした時…
兄の真後ろに突然現れた人物に吹き飛ばされ、兄が壁に激突しながら離れる
「!夜鷺!?」
兄の部下が唇を噛み締めながら兄を見ていた
「…やっぱりこうなってしもうたな」
「お前は…」
13代目秀元が真横に立っていた。
「君のお兄さん、鵺に生かされてた理由が分かったわ、鵺は君のお兄さんにお父さんを殺させた後、君も殺すつもりや」
「じゃあどうやったら戻せる?」
兄に向けて銃を撃つ夜鷺
兄が、晴明が周囲の建物ごと燃やし尽くす
「あの様子やと、山吹乙女の血のせいで操られとる…つまる所、殺すしか術はあらへん」
「そ、そんな!」
つららが悲鳴を上げる
「…人間の部分だけは、出来ねぇのか」
絞り出すように言うリクオに秀元が
「君らがどういうモンか分からへんけど、そんな器用な事できひんやろ?君の人間の部分を殺したら生きてられるって自信あるん?」
「………」
「せやから覚悟せんと…『四代目!!!』」
夜鷺の大声が聞こえて来た瞬間、目の前に兄が現れ、刀で斬られそうになる。
「っ!!」
兄をなんとか押し返そうとしたとき、腹部に兄が放った術がぶつかる
「兄貴ッ!!!」
「うるさい」
冷ややかな目、まるで見た事ないほどの表情だった。
「テメェの弟殺そうとしてどうすんだ!」
鬼楼丸の放った雷撃を交わし一度離れる、それを見て夜鷺が銃を放つ
離れた時、兄が僅かにふらつく
リクオは歯を食いしばり称々利丸を構える
「リクオ様…?」
「……兄貴」
ー数ヶ月前…ー
「なぁリクオ、結構昔にリクオになら斬られても良いかなと思った事があるんだ」
「…なんだそれ」
夜、縁側にて二人で話している時にそう言われる
兄は俺の事が好きすぎて逆に気味が悪いと言うと兄は笑いながら
「弟のことは自分の命より大事だと思ってるぜ」
そう笑う兄、自分をほったらかしにしてこっちを守りにくるのは嫌でも想像ついた
兄が弱音を吐いたのは、あの京都の戦いの後で最後だった。
「兄貴は俺の事好きすぎだろ」
そう言って兄にお茶を渡すと撫でて来る
この身体にもう一人の自分が宿るなんて思わなかった
まぁ、晴明の術のせいなのも大きいが、人間の俺は前世の記憶なんて持たない純粋な『奴良鯉零』だろう。
(…俺は、結局…なんなんだろうな…)
リクオの称々切丸にブッ刺されている所で意識が戻る
油断して敵の攻撃にかかり、操られて、人間の俺に敵意を向けられこんな惨状を引き起こした
(…あー…親父は…大丈夫かなぁ)
性懲りもなく、晴明がまた操ろうとして来る気配を感じ、リクオから離れつつ、かろうじて動かせる左手に刀を移動させ、自分の心臓へ突き刺す
「…兄貴!!」
「悪いなぁ…リクオ」
そう言って地面に倒れる
薄れて行く中、山吹乙女が視界に映る
【鯉零について】
妖怪の鯉零・・・主人格。前世の人格があるのがこちら
人間の鯉零・・・空の魂。リクオのようにお互い認識しあっている訳でも鯉伴のように妖怪の部分に譲っている訳でもなく、基本的に沈んでいたが、晴明の術で『人格』を持ち「生まれたかった」という思いで主人格を乗っ取った。主人格を敵視している『本当は俺が生まれるべきだったのに』と
視点が入り乱れていらなぁと思いつつ、鯉零の視点→リクオの視点→鯉零の視点