山吹乙女の息子に転生し、狐に呪われた青年の物語   作:アルトリア・ブラック(Main)

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ぬら孫は大好き


『狐の呪いに侵されて』

 

狐の呪いに侵されて10年後、のらりくらりと隠れつつ過ごしていたら雪麗さんに見つかった。

 

「…組からアンタがいなくなって大騒ぎよ、三代目は弱っていたからそんな遠くになんて逃げてないはずだって言ってたけど、まさか、こんな所まで来てたなんて…」

 

雪麗さんにそう言われ、苦笑いを浮かべる

 

運命というのは本当に厄介だ。

 

「結構、長旅して来た」

 

そう言って笑うと雪麗さんが派手にため息をつく

 

と同時に何か言いたそうにしていた。

 

その言いたそうにしている理由が分かり苦笑いを浮かべ

 

「最近、父さんは元気?」

 

そう聞くとビクッとしながらも

 

「アンタが居なくなってから目も当てられないわよ!自分の知らないところで息子が死んでたら…乙女ちゃんに置いて行かれて、その息子にまで先立たされたら!あの子はもうただの二代目としてしか機能しないわよ」

 

鯉伴は、乙女の死を引き摺っていた。

 

その傷が癒えたのは若菜が生まれてから少しだ。

 

今から数えても100年以上あるし、自分もそこまで長生きできるか分からない。

 

でも、人間としてならある程度活動できること、妖怪の時に発症する呪いをどうにかすれば生きながらえられる自信はある。

 

勘だが

 

自分というイレギュラーがいる以上、鯉伴は最悪、若菜と出会っても恋をする所まで行かない気がする。

 

だから…

 

(…死んだことにして、物語を裏から助けたいと思ったんだけどなぁ…)

 

雪麗さんにバレてしまっては無理もない。

 

「俺が三代目のまままで居続けても先がないし、それこそ呪いで先に死んじまっても父さんはどっち道、後妻を迎えなきゃならないわけ」

 

「…!!そんなことまで…」

 

空を眺めながら

 

「俺の事を引き摺って全滅しちゃうより、父さんには前を向いて欲しいし、父さんのことだから絶対に良いお嫁さん次にも見つけてくれるだろうし、心配してねぇよそこは」

 

「アンタ…帰って来る気ないのね…」

 

雪麗さんの悲しそうな表情に

 

「うん、帰んない、俺がいたら祖父さんも苦労するだろうし、心機一転で…」

 

「アンタはそれでいいの!?乙女ちゃんは大切な人に囲まれて死んだけど、アンタは一人きりで死ぬ事になるかもしれないのよ!」

 

第二の母親として俺の事を口すっぱく説教していた雪麗さん。

 

俺が一人で死なないか不安で堪らないのだろう。

 

「大丈夫、遠野には友人がいるし、父さんが前を向き始めたらその内顔を見に行くから」

 

 

 

雪麗さんをなんとか説得した後、リオンがジト目で

 

「…遠野は療養施設じゃねぇんだが?」

 

そう怪訝そうな瞳で言われ『比喩だよ比喩。鍛えて貰うし勿論、雑務だってするし』と言うとリオンはなんとも言えない顔になる

 

「…呪いの活用方法、書物でも取り扱いしてる本なんてねぇぞ」

 

リオンが頭を掻きながら言う。

 

「じゃあ、俺が独自で開発していくしかねぇな」

 

そう言って笑うとリオンは渋々納得してくれる。

 

 

50年後…

 

 

狐の呪いをなんとか武器に変えられないかと鬼纏のような考え方でなんとか編み出した。

 

妖怪の姿はせいぜい5分しか持たなかった。

 

結果的にそれ以上その姿でいようとすると吐血からの意識消失を引き起こすので出来なかった。

 

そんな中、俺は旅の中、多くの仲間と出会った。

 

第一次世界大戦が始まった辺り、人間から妖怪に変化した鬼軍曹こと(ダークギャザリングのキャラ)夜鷺と出会った。

 

まぁバカ強くて、俺よりも多分数十倍は強い彼が助けた理由が理由だからか、結構慕ってくれている。

 

そして、驚きなのは京妖怪に組みさない鬼妖怪達と出会ったことだった

 

彼らは晴明が闇落ちした辺りで主君に見切りを付けて離反した関係か京妖怪達とは関係が悪かった。

 

そんな彼らの一人である鬼楼丸と戦って結構な重傷を負いながらも味方に引き込めたのは大きいと思った。

 

そして、冒頭から分かると思うが、俺は50年以上経っても不自然と生きながらえていた。

 

妖怪の血によるものなのか分からないが、父親との文通は続けている。

 

俺が帰る気がないこと、組のことを考えて欲しかったことを雪麗さんから聞いた鯉伴は初めは納得してくれなかったらしいが、俺が生きていてくれるならと遠野に家出するのも理解してくれた。

 

そして、俺は奴良鯉伴が死ぬ運命の日まで力を蓄えることにした。

 

羽衣狐から、父を守る為

 

 

100年後…

 

 

親父が結婚したい相手がいるというのを手紙から貰った。

 

相手は若菜で乙女を失ってから彼女がいるおかげでなんとなく前を向けるようになったらしい。

 

でも、俺が嫌がるんじゃないかと、俺が許してくれるならば、と手紙に再三書いてあった。

 

「俺としては親父が再婚してくれるのは嬉しいけどな」

 

そう呟くとリオンが『複雑極まりねぇだろ、その相手からして見ても前妻の子供がいる奴との結婚でなおかつ、その結婚を考えている親父もお前の存在と母親を引きずってるわけだし…』

 

リオンがうんざりしたようにいう。

 

「そういうもんか?俺は親父が幸せになってくれるなら嬉しいけど」

 

「おまえさんはいっつも他人のこと他人のことだな」

 

そう遠い目をされる

 

悪いことじゃないだろうに

 

「相手のことを考えるのはまず、自分を大切にしてからだと思いますけどね俺も」

 

夜鷺からも追撃されて「えぇ」となる。

 

「他人を思いやる以前に貴方は自分を軽んじ過ぎですよ」

 

またも追撃されてえぇとなる

 

「…そう言う性格だし」

 

不貞腐れながら言うと二人にハァとため息をつかれる

 

手紙の最後に組に顔を出してくれないかと書かれていたが、超絶帰りにくいが、鯉伴の死を事前に防げることを考えれば行かないといけないだろう。

 

 

 

数時間後、奴良組の前に来た鯉零と後ろにいるリオンと夜鷺

 

「……」

 

「…入れよ」

 

リオンからつっこまれて『激しく入りにくい』と伝えると派手にため息をつかれる

 

「奴良組元三代目・奴良鯉零が帰還したぞーー!!!」

 

「おまっ」

 

馬鹿みたいな大声を出すリオンに門が僅かに壊れる

 

すると、門の近くにいたのか雪麗さんが顔を出して来る。

 

「お帰りなさい、鯉零」

 

嬉しそうにそう言って来る雪麗さんが俺の頭を撫でて来る

 

「本当…乙女ちゃんにそっくりなんだから、そういう引っ込み思案な所」

 

「…親父再婚するんだろ…?前妻の名前出して…」

 

「私はアンタが帰って来るまでいるだけよ、終わったら一回里に帰るの」

 

「………」

 

「別に奴良組が嫌いになったわけじゃないのよ?アンタが無茶して死なないかずっと不安だったから、アンタのことだし、鯉伴の結婚式見たらさっさと帰るつもりなんでしょ」

 

「……サトリかなんか?」

 

「私を誰だと思っててんの、アンタを子供の頃から見てんのよ」

 

そう話していると

 

「よう、鯉零、相変わらず元気そうで良かった。本当に」

 

「!」

 

父の声が聞こえて来てビクつく

 

リオンと夜鷺がそそくさと組の中に入っていく

 

「…親父」

 

顔を見られず逸らしていたが、恐る恐る見ると

 

「お帰り、鯉零、血反吐吐いていなくなるなんて洒落にならねぇ消え方すんじゃねぇ、あれからも手紙でしか連絡しねぇし」

 

ギュッと抱き締められる

 

親父の手が震えていた。

 

子供の頃を思い出し、ギュッと胸が熱くなる

 

ここにいたい、そう切に願っているのに、呪いが、狐の呪いが鯉伴を殺せと五月蝿い。

 

俺がそうしないのはリオンのしごきと夜鷺に殺されかかった理由もあってなんとか凌いでいられる。

 

「ただいま」

 

 

 

あれから派手に組員達からは泣きと説教と歓迎の言葉が入り乱れていた。

 

「鯉零くん!すごくカッコいいわね!私は若菜。よろしくお願いします」

 

そう笑顔で言われる。底なしに明るい若菜さんに挨拶する。

 

若菜さんは私のことをお母さんの代わりなんて思わなくて良いの!でも、いつでも帰って来てね!と言われる

 

底なしに明るい瞳と性格に多分こういうところに惚れたんだろうなと思いつつも暗いモヤモヤが胸を掬っていた。

 

 

 

 

深夜、奴良組に泊まることになったのだが、最悪なことに妖怪の姿でもないのに呪いが発動し、鯉伴を殺せ殺せと煩い。

 

そして、ジワジワと俺を蝕む狐の呪い

 

「…三時間ぶっ通しで血を吐くのは流石にねぇだろ…」

 

便所で血を吐き続けて三時間。

 

なんとか綺麗にした後、身体を引き摺りながら部屋に戻ろうとしていると

 

「鯉零様…」

 

そう声をかけられて振り向くと夜鷺がいた。

 

あれからヤケに俺を心酔してくれる

 

「…血反吐吐きすぎてちょっとシンドイ」

 

「肩貸しますよ」

 

そう言って支えてくれる

 

「…そこ鯉零様の部屋だぞ」

 

リオンが部屋の中で酒盛りをしていた。

 

「良いだろ、コイツ具合悪い時はいっつも見張ってて欲しいって言ってたし」

 

「それもそうだが…」

 

ベットにぶっ倒れると夜鷺が甲斐甲斐しく世話してくれる

 

(…情けねえ)

 

「情けないとか思ってんのか?」

 

「………心読まねえでくんねぇか?」

 

「何百年お前と一緒にいたと思ってんだよ、幼馴染だぞもはや」

 

そう言われそうだけどなと返す

 

それから結婚式は無事に終えた。

 

俺は早々に遠野に帰ろうかと思った。でも、もう少しだけ自分に無理をさせてでもいたかった。

 

俺なんてイレギュラーが存在しなかった原作そのものの姿

 

「………」

 

その光景を見つめている後ろで夜鷺が複雑そうな表情を浮かべていた。

 

(…後は奴良鯉伴の事件だけだな)

 

鯉伴さえ助ければあとのことなんてどうでも良かった。

 

狐の囁き声が聞こえて来る。

 

(…お前を連れて地獄に落ちてやるよ)

 

そう内心思っていた。

 

 

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