山吹乙女の息子に転生し、狐に呪われた青年の物語   作:アルトリア・ブラック(Main)

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休みがねぇ…金もねぇ


『自分の生きる理由』

 

リクオが帰還し、羽衣狐と戦うと宣言した

 

「羽衣狐を倒して狐の呪いを解く、絶対に兄貴には生きて四代目襲名を見て貰わねえとな」

 

そう言うリクオにかっこいいなぁと素直に思う一方

 

(…羽衣狐って確か…)

 

特徴を花開院家の人間に聞いてみれば母・山吹乙女にそっくりだと言うのを聞いた。

 

つまるところ、原作の流れは変えられない。

 

自分の母親が利用されているなんて考えたくもなかった。

 

反魂の術は墓に埋葬されていても関係ないらしい。

 

リクオの百鬼に着いて行く形で後方から城に入る

 

リクオと戦っている羽衣狐を見て嫌な予感が現実のものになっていた。

 

山吹乙女そのものだった。

 

「人間のアンタに質問してるんだぜ」

 

京妖怪達と戦いながら二人の戦いを見ていた。

 

あの気色悪い鵺を倒しに行かなければ、原作を破壊してでも、壊しに行かないといけない。

 

 

『でも行きたくない』『破壊したくない』

 

 

その感情が脳裏を過ぎる

 

(…は…?破壊したくない?)

 

さっきから変な感情が胸を締める。

 

奴良鯉零としてなら、原作だなんだ関係なく破壊しに行かなければならない。

 

でも、足が動かない

 

「鯉零?」

 

俺は、誰の目線で話しているんだ?

 

鵺の殻が壊れて行く

 

『奴良リクオを殺せ』

 

脳裏に晴明の声が響く

 

「っ…」

 

痛い

 

「鯉零!!」

 

リオンの声に頭上で戦っていたリクオも反応する。

 

手が勝手に刀を持って上に行こうとしていた。

 

「っ…!」

 

右手で押さえてリクオに目だけで構うな、と思うと伝わったのか羽衣狐にぶつかる。

 

 

 

結局、鵺は復活してしまった。

 

防ぎきれなかった。

 

リクオの下に駆け付けて守るべきだった。

 

でも体が、自分の体じゃないように動いた。

 

上に行けばリクオを殺してしまう。

 

結局、俺は傍観者として鵺を下から睨んでいた。

 

自分が自分じゃないような感覚に支配されていた。

 

俺は『奴良鯉零』じゃなく前世の存在として物事を見てしまった。

 

身体が動かない、鉛のように重かった。

 

そんな身体が鵺が地獄に帰ってからは解放されたように軽くなった。

 

(…生きてる感覚がないってのは、こういうのを言うんだよな…)

 

奴良鯉零は存在しないイレギュラーだというのに、彼らに関わってはいけない

 

そう漠然と思っていた。

 

「あぁ…鯉零……あぁ…」

 

リクオの元にきたとき、母が己を見て動かないはずの体を必死に動かして近寄ろうとする

 

「お姉様…?」

 

目の前にいるのは、羽衣狐であって山吹乙女じゃない

 

「兄貴…?」

 

リクオが不安そうに聞いてくる

 

「鯉零…よかった、生きていて…くれて…」

 

俺を抱きしめてくる母に合わせる為にしゃがむ

 

「よかった……あい、たかった…」

 

「!」

 

母は俺の顔を見つめる

 

「あぁ…こんな、に…ボロボロになって…」

 

俺の頬を撫でてくる

 

「…ごめんなさい、不甲斐ない母で…あなたに、リクオに、全部背負わせて…それでも…」

 

母は涙を流しながら絞り出すように

 

「生まれて来てくれて、ありがとう…愛してる…わ」

 

そう言って力尽きる母

 

「……母、さん…」

 

そう呟くとリクオが近づいてくる

 

そのまま俺の隣に座って俺の手と母の手を同時に握ってくれる。

 

祖父もやって来て俺の頭を撫でてくれる。

 

生きてる感覚がなかった、自分は脇役だから、彼らを離れた所から見ているだけで良いと思っていた。

 

幸せそうにしている鯉伴と若菜さん達を見ているのだけで良かった。

 

でも、どうしても、俺は『奴良鯉零』は羨ましかった。

 

どうして、俺はそこにいられないんだろう。

 

その輪の中に入ってみたかった

 

母さんはどうして長生き出来なかった。

 

どうしても若菜さんじゃないとダメだったのか

 

そういうマイナスの心が働いているのを鯉伴は薄々理解してくれたのだろう。

 

 

 

 

 

 

兄さんは母を、山吹乙女を京妖怪に預けると選択した

 

本当は連れて帰りたかっただろうに、兄さんは黙って京妖怪に遺体を渡していた。

 

「兄さん、帰ろう」

 

そう言って手を握らないとどっかに行きそうで、生きる選択を放棄しそうで嫌だった。

 

「…そうだな」

 

リオンさんはイタクと話しながら少しだけこちらの様子を伺っていた。

 

「勝利の凱旋なんだから酒呑んでも良いのにな」

 

そう船の上で言う兄を見る

 

京の街を眺めながら言う兄の心はここにあらずだった。

 

「…兄さんは、強いよね、僕よりも長生きしてるし、兄さんが奴良組にいられなかったつらさは僕には分かんないと思う」

 

「………」

 

「兄さんはいつも、自分のことは二の次三の次で僕や周りのことばっかり心配してくれたけど、僕は兄さんのことが何より心配だったよ」

 

兄から目線を離す

 

兄は、きっと弱音を吐く方法を知らない。

 

幼い頃から狐の呪いに蝕まれて毎日血を吐いて、全身の激痛に耐えて

 

狐の呪いが無くなったのに人間のままでいるのは、僕を気遣ってくれているんだろう。

 

「………俺って生まれて来てよかったんだよな…」

 

そう呟く兄に『当たり前じゃん』と強く言う。

 

「…本当は、奴良組にずっといたかった。でも…そうしたらきっと、親父は前を向かなかっただろうし、リクオにも会えなかった。もっと早くに死んでただろうし、それはそうだったら親父は前を向いてくれてたかなと思ってもいたけど」

 

「思わないよ、兄さんが死んだら絶対に父さんは前を向かなかったし、僕は生まれなかった、生まれて来て悪い命なんてあるもんか」

 

あの鵺にだって「安倍晴明」として正義の味方として、生きる道もあった。しかし踏み外してしまった

 

「あー…なんと言うかまぁ言いたいこと言い切った感じだな」

 

そう言って兄は背伸びする

 

「良かった」

 

兄の方を向くと兄は妖怪の姿になっていた。

 

「すげぇ女々しかったよな」

 

苦笑いを浮かべる兄に『女々しくなんてないよ』と返す

 

自分の母親を利用された上、毎日狐の呪いに蝕まれて苦しんでいたのだ。

 

それなのに、あんなに強くカッコよかった。

 

「兄さんが女々しかったら僕は子供だよいつまでも」

 

「そうか?リクオはカッコいいけどな」

 

「兄さんはほんと、僕のこと好きだよね」

 

「たった一人の弟だからな」

 

そう笑う兄に釣られて微笑む

 

 

 

 

 

奴良組に帰ると鯉伴が待っていた。

 

つい先日目が覚めたらしい。

 

その事に歓喜した組連中はもうどんちゃん騒ぎだった。

 

「そうか…乙女が…」

 

本当は言わないつもりでいた。

 

でも、言いたかった。

 

鯉伴は山吹乙女が利用されていたことに憤慨し、また、俺に母親の死を見せつけた鵺の打倒により一層気合いを入れていた。

 

「でも、まぁ、お前とこうして一緒にいられるのは嬉しいな」

 

そう鯉伴が微笑んでくる

 

「もう、苦しくねぇか?」

 

「うん」

 

「良かった、ほんとに」

 

そう言って俺の頭を撫でてくる。

 

「まぁ、一瞬でも母さんに未練たらたらだったらキレてたけど」

 

「そこは厳しいな全く、俺はお前も乙女も若菜もリクオもみーんな愛してるよ」

 

ところでと鯉伴がニヤニヤしながら

 

「好きな人はいねぇのかぃ」

 

「…黙秘する」

 

そう言って去ろうとする俺に着いてくる鯉伴

 

そのままどんちゃん騒ぎしている部屋に向かうと酔っぱらった夜鷺の技が炸裂してとんでもないことになり、リオンがイタクに絞め技かけながら俺とリクオに絡んできた

 

「何してんだリオンと夜鷺」

 

そう言って俺が輪の中に入って行く。

 

後ろで鯉伴にぬらりひょんが何か話していたが鯉零には全く聞こえなかった。

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