山吹乙女の息子に転生し、狐に呪われた青年の物語   作:アルトリア・ブラック(Main)

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過去編。百物語組との戦いの話


『百物語組』

ー江戸ー

 

江戸の街・両国

 

(…ヒマ…)

 

鯉零4歳

 

山吹乙女が洗濯物を体調が良いからと干しているのを眺めながら縁側で寛いでいた。

 

「鯉伴ー!!!どこ行ったー!!」

 

首無の声が聞こえて来る。

 

「あら?」

 

ドタドタやって来た首無の方を向く乙女

 

「乙女様!鯉伴見かけませんでしたか?」

 

「さぁ、出かけたと思います」

 

そう言って洗濯物を鯉零の近くに持って来て畳む

 

「あの人!鯉零様が生まれてからおとなしくなったと思ったのにっ!」

 

ムキーと言う顔をする首無。

 

(…俺生まれても『奴良鯉伴』は早々変わらないけどなぁ〜)

 

本来生まれる存在じゃなかった俺が生まれて安心したのか、鯉伴は家にいる事も勿論増えたが、遊び歩くことも変わらなかった。

 

「乙女様!鯉伴を見つけたらよろしくお願いします!」

 

そう言ってまた玄関の方へ向かう首無

 

(…元気だなぁ…)

 

ヨイショと起き上がり、洗濯物を取って畳もうとするが、全然上手くいかない。

 

「あら、手伝ってくれるの?」

 

母の嬉しそうな微笑みにうんと頷くと

 

「なんでぃ、マセガキだなぁ鯉零」

 

首無が去って行った逆の方向から鯉伴が現れる

 

「あなた、お帰りなさい。首無が探してましたよ」

 

「今帰って来たばっかりだってのに、忙しないねぇ首無も」

 

そう言って俺を抱えて膝に乗せる

 

鯉伴の膝に両腕を伸ばして乗っかりつつ、二人の会話を聞いていた。

 

見たかった光景をマジマジ見ていると

 

「なんだ?鯉零、俺の顔に何かついてるか?」

 

「…ませがきー」

 

肉体年齢は一桁台だが、精神年齢は余裕で●0台だ

 

「…鯉伴様…?」

 

「ちょっ、鯉零、いきなり覚えるのは卑怯だろ!」

 

そして、乙女さんは変な言葉を覚えるのを嫌がる。

 

寺子屋の先生をしているだけはある。

 

祖母の珱姫も母の乙女も揃いも揃って勉学を重んじるタイプだから、変な言葉を覚えさせるのは言語両断みたいな所がある。

 

4歳になってある程度会話もできるようになって、地獄のオムツ替えの時期を通り過ぎて安堵している一方、自分の存在がリクオの誕生に繋がるのか不安で堪らなかった。

 

「鯉伴、抱っこしすぎよ、4歳児は歩かせてなんぼじゃない!」

 

器物落下事件から数年経っても鯉伴は俺の事を抱っこするのを好む

 

まぁ過保護が過ぎる

 

雪麗さんの腕に移動すると、地面に降り立つ

 

「とーさん、かほご、首無みたい」

 

そう言うとガーンと来ている鯉伴

 

「…首無のこと言えないじゃない」

 

 

タタタタと走って行った鯉零を眺めながら雪麗はいつまで経っても子離れ出来ない鯉伴を見てため息をつく

 

「あの子、アンタの時と違って成長速度が速いのよ、下手に人間の子供扱いしたら困るじゃない」

 

妖と半妖の子だから鯉伴の時よりも成長速度は速い気がした。

 

立って歩くのも鯉伴の時よりも早かったし、言葉なんて2歳の時から理解出来ているような節はあった。

 

「そうだけどなぁ〜鯉零を抱っこしてた時が短くてなぁ」

 

露骨にガッカリしたような素振りを見せる鯉伴に「親バカねぇ」と返す

 

鯉零が庭に行き、池を見るためにしゃがんでいた。

 

「少なくともアンタとは違って罠を仕掛けないから良い子ね」

 

「…まだ根に持ってんのかぃ?」

 

鯉零に話しかける納豆小僧達。

 

「ミニ初代だよなぁ〜!!」

 

「鯉零様〜追いかけっこしましょー!」

 

「いいよー」

 

そう言って立ち上がる

 

「隠れていい?」

 

「鯉零様が本気で隠れたら見つけられませんって!」

 

「ん?鯉零、もう、明鏡止水使えんのかぃ?」

 

「そうみたいよ、全く本気で隠れて二日見つからないことだってあるんだから」

 

「……凄くないか?」

 

「…親バカ」

 

 

 

 

半年後…

 

 

鯉伴が奴良組に帰って来なくなった。

 

首無達はまたムキーと探すようになった一方、祖父も帰ってこなくなったので百物語組との戦いが本気で始まったのかなと思い、庭でうーんと考えていると

 

「なーに子供らしくない顔してウンウン言ってるんじゃ」

 

「!!」ビクッ

 

「…そんな猫みたいに飛び上がらんでも良いじゃろ」

 

背後に無精髭の生えた祖父が立っていた。

 

「祖父さん、いきなり背後に立たないで…」

 

「鯉零は背後に立たれるの本当に苦手じゃな」

 

「………」

(まぁ、背後に立たれるのは悪寒がするし…)

 

「乙女さんが探しておったぞ、子供は早く寝る時間だと」

 

そう言って頭を撫でられる

 

「…眠くないから起きてたんだよ」

 

「そうかそうか、でも子供は寝てナンボじゃ、鯉零ぐらいの時の鯉伴なんてグースカ寝とったぞ」

 

「とーさんはとーさん」

 

そう言うとぬらりひょんが豪快に笑う

 

「鯉伴が二日も帰って来てないから心配でしょうがないんじゃろ」

 

そう言われて「別に心配じゃないし」と言うと『顔は露骨に不安そうじゃぞー?』と揶揄われる

 

「つんでれじゃのぅ〜全く心配なら心配と言えば良いじゃろうに」

 

「うわっ」

 

軽々と高い高いされる

 

「まーたく、お前さんは鯉伴と違って何でもかんでも悪く考えすぎじゃ」

 

そう言って腕に乗せられる

 

「もっと肩の力を抜いて考えんと牛鬼みたいになるぞ」

 

「…どういう意味?」

 

そう言うとぬらりひょんが笑うだけで答えは結局言ってくれなかった。

 

 

翌日、起きたら組の妖は大半出入りに行って居なくなっていた。

 

「乙女ちゃん!鯉零!アンタ達は外に出ちゃダメよ!もうあの子は何やってんのよ…!狒々!一つ目!アンタ達みに行ってよ!」

 

雪麗さんがソワソワしており、どう見ても百物語組との戦いが起きた後のようだった。

 

二人が出て行った後、結局雪麗さんも出て行き、乙女も不安そうにしていたので

 

「父さん帰って来るんじゃない?行こう、母さん」

 

「鯉零…」

 

乙女が全然出て行かなかったので乙女の手を引っ張って外に出る

 

門の前に行くと鯉伴達百鬼が帰って来ていた。

 

「…あなた、お帰りなさい」

 

そう照れくさそうに言う乙女

 

「あぁただいま」

 

「ずっと待ってたんですから」

 

乙女が鯉伴に抱きつくのを見て新婚ほやほやだなぁと思っていると

 

「ん?」

 

鯉伴がこっちを見て来る

 

(…あー…恥ずかし…)

 

精神年齢3●に子供らしくしろなんて無理な話だ

 

「お帰り、親父」

 

そう言うと鯉伴が何故かショックを受けた顔をする

 

「?」

 

「あら」

 

乙女が少し笑うので「??」と首を傾げると鯉伴が「お、親父…?父さんじゃねぇの…?」となんか言っていた。

 

(…別にどっちでも良くない?)

 

「ほっつき歩いてるからですよー二代目」

 

「わしは?」

 

何故かぬらりひょんまで参加して来て「祖父さん」と返すとぬらりひょんがなんでか鯉伴にドヤ顔していた。

 

(…だからなんで)

 

「とうさんって呼んで」

 

「別にどっちでも良くない?」

 

そう答えると鯉伴が落ち込んでいた。

 

首無が鯉伴の肩に手を置いて親指立ててた

 

(…もしかして、父さんの方が良いのかな?ま、別に親父の方が俺は良いし…)

 

そう思いつつどんちゃん騒ぎする一行の中に入りながら、この光景がもうすぐ終わってしまうことに少し悲しさを感じつつも着いていく

 

 

 

 

結果的に言えば終わらなかった。

 

乙女は病に伏せながらも生きており、自分は13歳になった。

 

「………」

 

あっさりと三代目を襲名して百鬼を率いて行くことになった。

 

成人した時の両親の嬉しそうな表情を見れてその時は幸せだった。

 

でも、違和感がもの凄かった

 

遠野で出会ったリオンとも仲良くなり、なんとなく三代目として務めていた。

 

本当にこれで良いのか、リクオじゃなくて良いのか散々悩み続けた。

 

それと、前世は人を引っ張って行くタイプでも無かったから百鬼の前にいて引っ張って行くのは本当になれなかった。

 

出入りの時も魚の骨が引っ掛かったような感覚になりながらもなんとなく過ごしていた。

 

「お前さんって本当は集団の長は向いてねぇんじゃねぇの?」

 

遠野からやって来た鎌鼬のリオンがそう言って来る

 

「…え?」

 

イタクに似ていても性格は正反対すぎたリオン。彼と仲良くなったのは気がついたら仲良くなっていた。

 

「一対一で戦っている時の方が凄い楽しそうだし、先頭切って行って部下たちに戦わせる方が向いていないと思ってよ、それに、普通に人間の方が強い気がしてな」

 

「……」

 

妖怪の時よりも人でいる時の方が着飾らなくて済んだのは確かだ。

 

妖怪の姿を見るたびに前世の若い時に憧れたヒーローであるリクオがチラついてしまって仕方なかった。

 

自分じゃなく彼が百鬼を率いているのを見たかった

 

「そう言われてもなぁ」

 

そうリオンに言って誤魔化したこともあった。

 

自分なんてイレギュラーが百鬼を率いるのは気味が悪かった。

 

だから、狐の呪いが発現して三代目でいられなくなった時も少しだけ安心していた。

 

父は酷く落ち込み、羽衣狐を倒すと躍起になっていた

 

「………ここで死にたいなぁ」

 

鯉伴が若菜さんと出会ってリクオを授かるのを見たかったけど、原作を俺なんて言う異分子のせいで破綻させるなんて最も嫌だった。

 

桜を見ながらそう呟く、柱に寄り掛かりながらそう思っていた。

 

それを聞いている人物がいるのに気づかず

 

 

 

 

 

『ここで死にたいなぁ』

 

そう孫が呟いたのを聞いてしまったぬらりひょんは、その場からしばらくは動けなかった。

 

珱姫を助けたことは後悔していない。

 

『貴様らの子は、孫は!この狐の呪いに縛られるであろう!』

 

羽衣狐の呪いが孫に発現した。

 

倒した自分でなく、鯉伴にも現れず、時を超えて無関係な鯉零に現れてしまった。

 

刀を持つことすら出来なくなった鯉零の弱りきった姿を見て激しく狼狽した。何故、自分ではない、何故無関係の子供達に発現した?

 

何故何故と

 

鯉零が死を願うほど苦しんでいる

 

ぬらりひょんはその場から足音を消し、客間に向かう

 

そこにいる鯉零の友人に話をつけるために

 

リオンは少し戸惑っていたが、結局は一つ返事で受け入れてくれた。

 

「総大将…」

 

鴉天狗の心配そうな声が聞こえて来る

 

「…わしは諦めが悪いぞ、鯉零。孫が生きていてくれるなら何でもするわ」

 

鯉伴に憎まれても孫が生きていてくれるならなんでも良い




主人公は初代ぬらりひょんの容姿にリクオと同じような赤い瞳です。

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