ある男と馬の話   作:七篠ライア

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ふたつでひとつの魂

私の人生は平々凡々、と言いたいところだが

正直なところ世間一般とはかけ離れたものであった

 

私は牧場の次男として生まれた

名前は……いや、覚えてもらう必要は無いか

ともかく、馬の生産や休養などを主とする牧場に

上に姉一人、兄一人がいる状態で産まれてきた

そしてその日、これも運命だったのだろうか

私が生まれたのと全くの同時刻に

一頭の馬が生まれた

青毛の牝馬

幼名はライ

流星の曲がりが電気のように見えたから、らしい

 

ひとりと一頭は種族の垣根を越え

本当の兄妹のように仲が良かった

何故か目を離した隙にライの背に私が乗っていた時は

周囲の全員度肝を抜かれたという

 

さて、割と裕福な家庭

まあ具体的には中央の馬主の権利を持つくらい

そのくらいの資産は軽くあった我が家で

スクスクと何不自由なく育つ……

という訳にはいかなかった

少なくとも世間一般的には

 

私は生まれつき目が見えなかった

先天的な全盲と言うやつだ

 

別に私がこれで苦労していた訳では無いのだけれど

可哀想だね、なんて言われる度に

なんで私が憐れまれなければ行けないのだろう

などと思ってしまうくらいには不自由しなかった

代わりとでも言うようにとても耳が良かったし

何歳かになる頃にはエコーロケーションと言うやつも

そこそこ上手くできるようになった

ちなみに私の瞳は

”輝きを失った宇宙のよう”

だったらしい

 

ところでライも、こちらは耳が遠かったようだ

あまり耳が動かず、音に反応も薄い

 

とまあ、なかなか普通とは言い難い私達だったが

そこそこ上手くやれていたように思う

私は特に問題なく高校を卒業し

ライはエレクトロノーツとして競走馬となった

GIは勝てなかったが、GIIひとつとGIIIをいくつか

それを持って繁殖入りとなった

メジロラモーヌ産駒だった彼女は

サンデーサイレンス系の血が入っていないため

そこそこ予約が入っていた

 

その後のことといえば……そうだな

私の事で言うなら

20歳になったあたりで目の手術をして

かなりの弱視くらいに視力が上がったくらいか

眼鏡があればはっきり見えるようになったのは

正直いってかなり嬉しかった

 

そのあたりの時期で繁殖から外れた彼女については

ウマ娘という企画に名前を使わせてくれ、と

企業の人が来たくらいか

彼女は当時のマイルから中距離のGIには

皆勤賞と言えるくらいにはでていて

有馬記念も何度か出走していた

私は一応彼女に聞いてみてから

企業にOKを出した

彼女はあまりウマ娘については理解していなかったが

名前を使われるのは嫌ではなかったようだ

しばらくしてウマ娘としての

エレクトロノーツのデザインが届いたので

彼女と一緒に見てみた

上手いこと特徴を捉えたデザインを

私たちは気に入った

もちろん彼女はこれが自分だと理解していなかったが

……ただ、何故か身長は低いのに

胸は大きかったのが気になる

エレクトロノーツは小柄だから身長はわかるのだが

 

さて、なんだかんだと幸せだったこの生涯は

ある日唐突に終わりを迎える

20代も半ばの春

いきなり胸が苦しくなって目の前が真っ暗に

音も聞こえなくなり、なんとなくだが

私は自分が死ぬことを悟った

私が最後に思ったのは

エレクトロノーツのことと

そういえば今日は私の誕生日だったこと

 

……いつか彼女と共に走りたい

 

そして、別の場所で

同じタイミングで一頭の青毛の牝馬が

ひっそりと息を引き取った

 

……

…………

………………

(さて、ここまで思い出せたのはいい)

(問題は)

 

目の前には青毛のウマ娘

自分の手を見下ろすと、ものすごく小さい

 

(これは、あれか)

 

「あら、目をあけたわ」

「おはよう、エレクトロノーツ」

「私がお母様ですよー」

 

(転生と言うやつか)

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