アグネスタキオンは研究者だ
普段の服装からも察せる
意外でもなんでもない事実だ
あまり尊敬はできない先輩だが
その頭脳は私には原理がよく分からないものを
数多く作り出している
逆にスカーレットちゃんは
なぜあれほどにもこのウマ娘を尊敬できるのか
ウマソウルの力にも限りがあると思うのだが
ともかく、彼女と私は同じチームである以上
かなりの割合で行動を共にすることになる
その中で結構な回数実験に付き合ってきた
人格はあまり尊敬できないが
実験の方は面白そうだと思うから
とりあえず被検体として声をかけられている以上
向こうからの好感度はそこそこあるようだ
(被検体を頼むのはチョロいかある程度仲がいい相手であることが多いことからの推測、私はチョロいとは思いたくない)
ここまで多少なりとも語ってきたが
この話に特に意味がある訳では無い
多分聞いている誰かもおそらく知っていることだ
とにかく何が言いたかったかと言うと
彼女は確かに研究者だ
しかしそれ以前にウマ娘であり
どうしようもなくアスリートだということだ
「いや、チームイトカワには例外が多いけどねぇ」
「例えば謎の技術を持ってるトレーナー君とか」
「………君も相当だねぇ」
「そうですか?割と平凡だと思うんですが」
「私の実力でGI取れるか怪しいですよ?」
「GIIなら取れると言えるのは平凡じゃないねぇ」
「それに走れる範囲、作戦については君」
「デジタル君より上じゃあないか」
「デジタルさんとかはそれで強いからすごいんですよ」
トレセン学園グラウンド
そこで私はタキオンのデータ収集に付き合っていた
「それでもその適正の広さはすごいが」
「なんで等速ストライドまで再現できるんだい?」
「あっさりできていいもんじゃあないんだがねぇ」
「パワーが足りなくて加速が足りないとか」
「正直いって私がやっても使い物になりませんけれど」
「走り方だけなら何とかなりますよね?」
「ならないから伝説なんだけどねぇ……」
等速ストライド
かの2代目ビッグレッド、セクレタリアトが使う
”どんな場所も走れる”走り方
私は昔から、見た走り方なら割とあっさり真似できた
まあ、真似できるだけだが
体格とかその辺の”自分に合わせた走り”では無いので
使い物になることの方が圧倒的に少ないのだが
例えばトウカイテイオー先輩の走り方とか
真似はできても、実行すると怪我しかねない
あれはテイオー先輩の体のやわらかさがあってこそだ
私も柔らかい方だがあれほどでは無い
そんなわけで、私が等速ストライドを使ったところで
昔映像で見たあの加速やスピードを落とさないコーナリングができる訳でもないので
一発芸程度の使い道しかないのである
「惜しいねぇ」
「君が私とマトモな勝負になるのは何年先か……」
「今の君がどんな走りで走っても」
「私は大差勝ちできてしまうだろうねぇ」
「それはそうですねぇ」
「……約束したまえ」
「私が一緒に走って面白くなるくらいまで」
「そのくらいまで強くなってくれたまえ」
「……私が全力で走れるうちに」
アグネスタキオンの目を見る
そこにあったのは研究者としての色でなく
アスリートとしての期待
答えはもちろん決まっている
「ええ、喜んで」
それを聞いて彼女は満足そうに笑い
「それじゃあ体育館に行こうか!」
「何をするかって?決まっているじゃあないか」
「色んなウマ娘を再現して君と走らせる」
「そうやって走りの練度をあげてもらう」
「どこまで君が再現できるか実験だねぇ!」
……これさえなければ尊敬できるのに
エレクトロノーツがアグネスデジタルをデジタルさん呼びしているのは向こうがある程度こちらを同類判定しているからです