狼畜生だってヒーローになりたい!   作:個性「投稿」

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合格の狼

 

『来いよ!ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 とある家の敷地内。縁側に座った一匹の狼がいた――もはやこの時点で普通の光景からは外れた、異常な光景だ。

 

 その狼は、目の前に置かれた投影機に映る今をときめくナンバーワンヒーロー、オールマイトによる言葉を受けていた。その言葉は、その狼の胸の中に響くものだった。

 

 そして、その姿は()()()()()()()()()平和と象徴とたらしめるような、そんな志を感じられる立ち姿をしていた。

 

 オールマイトの言葉を最後に電源が落とされると、少しの静寂が辺りを包み込む……投影機を見つめる犬は、少し体を伸ばすとクゥンと小さくないた。

 

 すると、そんな狼――いや、()の後ろから声がかかる。

 

「ケンスケ。流石だね!首席合格とは凄いじゃないか!」

 

 そう言って声をかけてくるのは二足歩行のネズミ――あるいは犬、あるいは熊にもみえる謎の白い生物だった。

 

 彼にはきちんと名前があり、根津、根津校長と世間では呼ばれている。

 

 そんな根津校長に呼ばれた狼……ケンスケは、またも日常とは外れた異常な行動に出た。

 

「……勉強は根津さんが見てくれたから。あとは実技で只管に敵を倒してたからかな!」

 

 静かな口調で、ケンスケは、さも当然かのように喋りだしたのだ。それを見て、根津校長はウンウンと頷く……驚きもしない。

 

 それは、慣れた光景だからというのも勿論あるが……彼も自分と同じ――仲間意識に近いものがより彼を受け入れやすくさせていた。

 

 この世界は、個性と呼ばれる特異能力が世界の人口8割が持っている。超人社会とも言われている時代だ。そんな超人社会だからこそ、様々な個性が溢れている。

 

 単純に炎や氷、稲妻などを起こす物、体を変化させる異形の物、元々異形の姿を持つ物、人から人へ受け継がれていく物、数え始めたらきりがない程にだ。

 

 根津校長も当然個性を持っている……名は、ハイスペック。この個性を持つ根津校長……彼は、実を言えば人間ではない。

 

 彼は、動物が人間並みの知能を得るト言う個性を持つことで人権を獲得した世界でも類を見ないケースなのだ。

 

 ……ここまで言えば、ケンスケがどんな存在なのか想像が付く者も居るのではなかろうか?

 

 彼……ケンスケは、根津校長と同じく()()()()()()()()()と言う類を見ないケースの存在なのだ。

 

「敵を倒していただけじゃないだろう?君は、怪我をした生徒を運んであげていた!」

「足を怪我してたから、なんか……ほっとけなかった。」

「それが人助けをするって事なのさ!」

 

 そう言って根津校長はまたもや頷く……彼らがはなしているのは、先日あった雄英高校と言う根津校長が校長を務める学園の入学試験についてだ。

 

 今、世界では個性を使った犯罪が多く増えている……そんな彼らはヴィランと呼ばれ、日々人々に恐れを与えていた。

 

 反対に、そんなヴィランと対峙する者達はヒーローと呼ばれ、人々に称賛の憧憬の目を向けられていた。雄英高校とは、そんなヒーローを目指す者たちにとっては聖地と言える場所。

 

 数多くの有名プロヒーローを排出してきた……先ほど投影機にもでたナンバーワンヒーロー、平和の象徴、オールマイトも雄英高校出身だ。

 

 ケンスケも、ヒーローを志し、雄英高校を受験することになったのだ……受験するまでの日々も大抵長かったが、その話は追々とさせてもらおう。

 

 根津校長は、ケンスケに優しく問いかけた。

 

「何か不安なことはないかい?……これからは、今までより多くのニンゲンと過ごしていくことになる。動物から人間になった先輩から言わせると、なかなか大変なのさ。」

「大丈夫だよ……あぁでも、根津さんからのコネ入学と思われないかは不安だな。」

 

 そう言ってケンスケは笑みを見せる。根津校長はハハハハハ!!と笑いながらケンスケの頭を撫でる。ケンスケも、頭を撫でられるのは悪い気がしないのか、そっと頭を寄せてくるのだ。

 

 ケンスケも所謂()()を持っており、保護者は根津校長となっている。

 

 故に、ケンスケは校長の息子と言っても差し支えない存在……そんな彼が雄英高校首席入学とは……そこに関連性を見出されてもしょうがないだろう。

 

 無論、根津はそんなことはしていない。首席合格と言うのは、間違いなくケンスケが自力で掴み取った称号だ。

 

 しかし、世の中心のない人間はいくらでもいるものだ。そんな風に言われることもあるかも知れない……それが、ケンスケは不安だった。

 

 だが、根津校長は一通り笑い終えるとケンスケへと笑顔を見せながら言う。

 

「大丈夫なのさ!それに……いざとなったら君が実力で証明すれば良いだろう?」

「……そう、だな!」

 

 ケンスケも、くしゃりと笑顔を見せる。

 

 そうだ。たとえ何を言われようが、実力で示せばよい。狼流に言うなら、マウンティングしてやれば良い……俺の首席は校長からのお情けでもらった称号じゃないと言う事を。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()俺が成れたんだから、どんな人間だって人を救える。それを俺は証明してみたい。

 

「根津さん、俺なるよ。ヒーローに……俺を実験施設から出してくれたオールマイトみたいに、誰かを助けるヒーローに。」

「ふふっ、頼もしいなぁ!君も立派な時代の後継者なのさ!」

 

 そう言って根津はケンスケの背を叩く。ケンスケはその場に座り込むと、天を見上げて一つ大きく遠吠えをするのだった。

 

 

 

 ケンスケ――個性名は「ヴェアヴォルフ」

 人狼を意味するその単語は、狼の様な人間では無く、人の様な狼であるケンスケを揶揄する形で、彼の個性につけられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所で、そろそろ僕の事をお父さんと呼んでみてはくれないかい?」

「さすがに恐れ多いので……まだ勇気が出ないです。」

 

 根津の言葉にケンスケは狼ながらも、なんとも言えない複雑な表情で答えたという。

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