「うーん。やらかしてしまった」
真っ赤に染まった床を見下ろして溜息を吐く
なんで床は真っ赤に染まってるのかっていうと単純に赤い液体で濡れてるせいで、勿論トマトジュースとかケチャップとかそんなオチはなく正真正銘、一人から出たならば致死量を越えた血の海だ
えげつない絵面だけど、耐えられない物ではない
そうなんだけども、こんな状況になってるのが自分の部屋であることと、血の海の中心で倒れている人物が"彼"であろうことがなにより問題だった
「見た目は完全にそうだし、ちょっと聞こえた声もぽかったもんなあ
・・やっぱり、冬木の殺人鬼だよねえ。この人」
雨竜 龍之介
冬木での第四次聖杯戦争に無自覚に参戦し、自身のサーヴァントであるキャスターと町中の人を殺し回っていた殺人鬼だ
そんな彼がなんで冬木から離れた私の家に居るか不思議でならなかったが、ちゃんと考えたら聖杯戦争まで後数ヵ月あるんだから別の地域に居る方が自然だった
けど、この地域に来なくてもよかったじゃないか
しかも私の家に侵入してくるとかなんていらない偶然。・・いや、まあ鍵をかけてなかった私も悪いといえば悪かったのだが
しかしどうしようか
死体自体の片付けはまだいいとしても、血の始末が面倒くさいことこの上ない。
鉄臭いし落ちないし調べられたら一発だし。流石に既に床に広がってる血は飲みたくないし。ああ面倒くさい
はあ、なんて溜め息を吐く
いっそこのまま放置して国外逃亡でもしてしまった方が随分楽に・・・
「・・・あ、そうか。そうすればいいのか」
なんてばか正直だったのか
そうだ。逃げてしまえばよかった
そうと決まれば早く荷物をまとめなければならない
血の海を避けて部屋を歩き回って貴重品や衣服を集めて、確かキャリーバックはクローゼットの隅で眠ってたはずだ、それに詰めて近い空港へ行こう
あぁ、そういえば犯罪者の引き渡しが約束されている国もあったはずだ。そこは避けなくては
大まかな事は決まった
あとは動きながら決めればいい
そこでようやく足を動かす。部屋に広がってる血を踏むまいと動いているため、端から変な動きだろう
出来るだけ床に触れる面積を減らそうと爪先立ちで、不規則な広がった血を避けるためあっちへこっちへ足を動かし続ける
それを続けて約1分
ようやく別の部屋に移動出来た
「いったー・・爪先立ちキツいなあ」
珍しい酷使に悲鳴をあげた爪先を労りつつ、さっきまで居た部屋を見る
・・さっきまでさほど意識はしていなかったが、私はこの世界の(恐らく)重要人物を殺した
彼が死んだということは、この世界は遠い昔に見た物語とは違う運命を辿るのだろう
もしかしたら、彼が死んだ事で私の知る物語より幸せな終幕を迎える可能性があるかもしれない
そうなら同じように、彼が死んだ事で私の知る物語より不幸せな終幕を迎える可能性があるはずだ
たとえば冬木以外、いや日本全体にも大災害の被害が及んだりしたりして・・?
「うわぁ、とっとと逃げよう」
この後起こる第四次聖杯戦争の被害は誰も知らない