ゲヘナ最強の双子の姉 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
強い日差しが照りつけてジリジリと肌が焼けるような感覚に陥る夏の日。直射日光とアスファルトからの照り返しによってじっくりと体力を奪われていく。アスファルトの表面付近は熱せられた影響で景色がゆらゆらと揺らめいていた。
その暑さ、流れる汗によって張り付く髪や衣服、思わず目を瞑りたくなるような眩しい光。不快感と倦怠感とで足取りが重くなる中、どこからか複数の蝉の鳴き声が響き渡っていた。
「イロハちゃん……」
「なんですか……」
そんな中で二人、ミツキとイロハは暑さにやられてぐったりとしながら歩いていた。
「最近暑いよね……」
「そうですね……こんな暑さの中外なんかに出たら干からびちゃいますよ……というか干からびそうです……」
「えー、干からびちゃうの……?こう、でろーんって今にも溶けちゃいそうだけど……」
「アイスじゃないんですから……」
「アイス、食べたいねぇ……」
声にハリは無く、お互いがお互いを見ることも無い。少しでも体力を温存しながら……ということではなく、既に尽きた体力ではそんなことができないだけであったが。
「あついよ〜……」*1
「口に出すと余計暑く感じるじゃないですか……」
「だってあついんだもん……」
うだうだぐだぐだと言いながらも歩き続けること数分、二人は目的としていた建物に辿り着く。そこは普段万魔殿が集まる際に使用している教室がある棟であった。
イロハは正面の入り口を開け、そのまま中へと入る。続いてミツキも中へ入るとそのまま廊下を歩き出す。
「あー、建物の中ってだけでいくらかマシですね」
「う〜……でもあついよ……」
「はぁ、部屋に着いたらエアコン付けますからもう少し頑張ってください」
「がんばる……」
微かに体力が回復し始めているイロハの横で、ミツキは今もぐでーんと脱力しながら歩く。ようやく辿り着いた部屋の扉を力無く開けると、隙間からスゥっと涼しい風が二人の火照った肌を撫ぜた。
「「!!」」
弾かれたように勢い良く扉を開けると、涼しい空気が二人の体を包み込む。灼熱の地獄から逃げ出すべく室内へと急ぎ、少しでもこの熱風が自分たちのエデンを侵さぬようにピシャリと扉を閉めた。
すると、エアコンを付けたであろう張本人が二人に声をかけてきた。
「二人とも外は暑かったでしょう?お疲れ様。先に来てエアコン付けておいたわよ」
椅子に座りながらも扉が開いた音に顔を上げたサツキは、汗だくの二人に柔らかな笑みを向けている。そんなサツキに、ミツキはまるで街灯に集う虫のようにフラフラと引き寄せられていった。
「サツキちゃ〜ん……ありがと〜……」
「あらあら、ミツキちゃん元気が無いわよ?暑さでバテちゃったのかしら。冷たい飲み物でも飲む?」
「のむ〜……」
「じゃあほら、ここのソファに座って休んでていいからね。私が持ってきてあげるから。イロハちゃんの分も持ってきてあげるからここに座ってていいわよ」
「ありがとうございます、サツキ先輩」
足元のおぼつかないミツキの体を支えながらソファに座らせたサツキは、いつの間にか近くにやって来ていたイロハにもソファに座るよう促す。ポスンと二人が座ったのを確認したサツキはそのまま水分を取りに行った。
すると、一分と経たずに二本のペットボトルを持ったサツキが帰ってきた。
「ほら、これ飲んでいいわよ。あ、でも一気に飲むと頭がキーンってなっちゃったりお腹壊したりしちゃうから気をつけてね」
そうして渡されたペットボトルを見ると、それは水やお茶ではなくキヴォトスで広く流通しているスポーツドリンクだった。イロハが思わず視線を上げると、二人を見守っているサツキと目が合う。
「これってスポーツドリンクですよね。ここには置いてなかったはず……」
「最近すっごく暑いでしょう?だから私が沢山用意しておいたのよ」
「それって、ちゃんと経費で落としてます?」
「あら、そんなこと気にしなくていいのに。ほら、ミツキちゃんはゴクゴク飲んでるわよ?」
隣を見ると、既にミツキの持っているペットボトルの中身は半分以上無くなっていた。
「……んぇ?あれ?ど、どうしたの?」
二人の視線を受けてキョロキョロと二人を見比べる。頭に疑問符を浮かべて戸惑っているミツキにサツキは思わず笑みが漏れ、少し前屈みになってその頭を優しく撫で始めた。
「ふふ、なんでもないわ。美味しい?」
「うん、美味しいよ。本当にありがとうサツキちゃん」
頭を撫でる手を受け入れながらにへらと頬を緩めている。疲労が残っているのかそれとも気が抜けているだけか、それを至近距離で受けたサツキは思わず一歩近付いてミツキの頭を抱き寄せていた。
「やーん、かわいいわぁミツキちゃん。お礼もできてえらいわねぇ」
何故か服がパッカリと開いている自身の胸にミツキの顔を押し当て、そのまま頭を撫でる。満足気なサツキとは対照的に、突然胸の中にしまっちゃおうねぇされたミツキは頭の中に宇宙が広がっていた。*2
数秒の沈黙の後ようやく現実に戻ってきても未だ自身の顔はサツキの胸の中にあり、頭はガッチリと抱き締められていて抜け出すこともできない。キャップを閉めていないペットボトルの中身を溢さないように激しい抵抗はできず、ペットボトル本体とそのキャップを別々に持っている両手も使えない。
顔全体に伝わる柔らかな感触と体温、呼吸するたびに鼻と口と肺いっぱいに広がるサツキの匂い。自分達より先に来ていたサツキだが相応に汗をかいていたらしく、今でも肌が僅かにしっとりとしておりサツキの匂いはより濃く感じられる。
羞恥心やら何が何やら、ようやく涼んできていた体が熱を持ち、頭や顔がぼうっと熱くなるのを感じていた。
「ん、んん〜!」
だがそんなミツキの抵抗もサツキにとっては些細なもので、顔も見えない状態ではミツキの現状も分からない。サツキがミツキを解放する理由など無かった。
「……絵面が完全にアウトなんですが」
それを横から見ていたイロハは完全に一歩引いていた。
「アウト?なにかあったのかしらイロハちゃん」
「いえ、今私から見える景色がよろしくないとしか」
「あら?」
今度はサツキが頭に疑問符を浮かべている。自覚も何も無いらしい。だが、イロハのおかげで僅かに緩んだ腕の隙間から抜け出すことに成功した。
「あ、逃げられちゃ――」
サツキがイロハからミツキへ視線を戻すと、そこには顔を真っ赤にさせて潤んだ瞳を向けるミツキの姿があった。眉尻は弱々しく垂れ下がり、唇はピッタリと閉じたままもにょもにょと動いている。
そのまま持っていたペットボトルのキャップを閉め、サツキから逃げるようにイロハに近付く。
「み、ミツキちゃん?」
思わず手を伸ばすサツキだったがミツキは律儀に靴を脱いでからソファに寝転び、イロハの太ももの上に頭を乗せる。そしてくるりと体の向きを変え、イロハのお腹側に顔を向けながら体を丸めてしまった。
「あーあ、完全防御形態になっちゃいましたね」
「完全防御って……思いっきり無防備だけど……」
「それは言わないお約束です。これでもミツキさん的には必死なので」
「そう……」
イロハは落ち着かせるようにミツキの頭を優しく抱き寄せて撫でながら、もう片方の空いている手でサツキの胸元を指差した。
「駄目じゃないですか。情操教育が未だ初等部レベルのミツキさんにサツキ先輩のソレは威力が高すぎますよ。しかも夏の汗ばむ季節は特に。捻じ曲げたいんですか?」
「え?」
サツキがイロハの視線と指差す先を目で追うと、それは大部分が空気に晒されている己の胸だった。丁度今さっきまでミツキの顔を押し当てていた場所である。それに気付いた瞬間サツキの目は見開かれ、ほんのりと頬が朱に色付く。
「っ!?ちがっ、そういうつもりじゃ……!!ご、ごめんなさいねミツキちゃん!!悪気はなかったのよ!!」
自分がしたことを改めて理解したサツキがワタワタと慌てながらミツキへ近付き謝罪する。そのままイロハのお腹に顔を埋めて横になっているミツキの肩や頭をよしよしと撫で回していくが、ミツキは動かなかった。
「全く、端から見たらただ誘惑してる人でしたからね」
「ち、違うのよぉ〜!!」
バタンと音を立てながら勢い良く扉が開く。その扉の向こうから現れたマコトは頬に汗を垂らしながらも心地よさそうな表情をしていた。
「ハァー、気持ちいいなァ!冷房というものを考えた人間には敬意を示したいくらいだ!もう一歩もこの部屋から出ないぞォ!」
涼しい室内にテンションが上がり声量も大きくなる。しかし、誰からも声をかけられることがない。普段なら室内にいる誰かしらから挨拶が来るし、イロハがいればうるさいなんて小言が飛んでくるはずだ。
「……ん?」
疑問に思って室内を見渡すと、ソファに座るイロハとその正面に膝立ちの状態のサツキ、イロハの膝の上に頭を乗せてソファで丸まっているミツキがいた。
「そこで何をしているんだ。またミツキを甘やかしてるのか?」
「あー、まあ、なんというか……」
歯切れの悪いイロハに、今も静かなミツキの体を優しく撫でているサツキの姿。それを見て導き出される答えはただ一つ。
「そうか!この暑さにバテたかミツキ!やはりお前は貧弱だな!あのヒナに守られてばかりだからそうなんだ!キキキッ、このマコト様が直々に鍛えてやろうか?ええ?」
弱っている相手に強気に出る女、マコト。とはいえ煽るだけで実害のある行動に出ないのは流石に配慮しているからか、それともヒナを刺激しないためか。
しかし、どこか普段とは雰囲気が異なるサツキがマコトに言う。
「……ええ、そうね。そう。ミツキちゃんは暑さにやられちゃったのよ」
「サツキ?」
「ミツキちゃんは暑さにやられちゃったのよ」
「わ、分かった分かった、そうか」
異様な空気が流れているこの空間で、マコトだけは何も知らずに首を傾げていた。
以前ミツキを窒息させかけた経験を活かし、今回は窒息しない程度にぎゅっと抱き締めていたため汗が乾ききっていないしっとりとした肌の柔らかな感触と濃厚なかほりを押し付けることが可能に。あ^~捻じ曲がっちゃう。
純粋と純粋による三年生とは思えないアホみたいなやり取りに呆れつつ、その高火力に心の中で慄くイロハなのでした。でもミツキの方から膝にやってきて自然に独占できたため満足。なお、庇うふりをしてミツキの顔をぐっとお腹に押し当て、自分の匂いをミツキに嗅がせ続ける徹底ぶり。あ^~捻じ曲がっちゃう。
私は何を書いているんだろう。最初はもっとまったりゆるゆるとした夏の日の空気感を想定していたのに、いつの間にかサツキの胸とイロハのお腹に吸い込まれていました。おかしいな、あれもこれも最近の暑さのせいに違いない。そうに決まってる。
追記:投稿する話数の設定を忘れていたため、小さくなったミツキ編の最新話の位置に投稿してしまいました。困惑された方がいましたら、大変申し訳ないです。