ゲヘナ最強の双子の姉 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
「ぅ……ううん……」
「あら、おはようございますミツキさん」
おおぅ……?寝起きにハナコちゃんからおはようの挨拶なんて贅沢だなぁ……。やっぱり合宿って最高なんですわ……。
「ぉはよぉ……」
……ん?ハナコちゃんだって?
眠そうに猫の手でぐしぐしと目を擦りながらハナコに挨拶を返したミツキだったが、途中でピタリと動きが止まり、バッと顔を上げた。
「あれ!?みんな!?」
なんでみんないるの!?おかしい!!瞬間移動か!?さっきまで暗かったはず!!こんな明るい朝日が差し込んでいるなんてありえない!!……まさか、私は未来に来ている!?*1
「うふふ、ミツキさんがぐっすり眠っている間に帰って来ちゃいました」
な、なんだって……!?寝ていた……だと……!?この私が……!?
「えぇ!?そ、そんなぁ……私いつの間に寝ちゃってたんだろう……」
がっくり、って感じだね。本当いつの間に寝てたんだろう。あーあ、もっと起きていたかったなぁ。
……てかみんなこっち見てどうしたんだい?じろじろ見ても面白くないでしょ。別に面白いこともできないぞ。もしかして寝てる時アホ面してた?それだったら見ちゃうのも分かるけど……いや、それなら見ないで?気を遣って?
「み、みんな……?」
「……」
「……」
「……」
テンション低すぎやしないか?荷物の整理をしてたのか全員自分のベッドの近くにいるけどさ、ヒフミちゃんは困ったような表情してるし、コハルちゃんは下向いてるし、アズサちゃんに至っては目が合ったら逸らされたんですけど。いったい何が……あっ。
「……し、試験は、どうだったの?」
「……」
ものっそいテンションガタ落ちの三人はそっとしておいて、ハナコちゃんに問いかける。すると、ハナコちゃんは静かに首を左右に振った。
「試験会場が爆発に巻き込まれたんです。私たちは無事でしたが、試験用紙はそうもいかなくて……試験すらできませんでした」
「そっか……」
うむ、このみんなのお通夜状態は多分私が悪いねぇ。一応原作は知ってたはずなんだけど、完全に頭から抜けてたな。最近はいろいろありすぎて……というかみんなと仲良くなることしか考えてなかったわ。毎日をエンジョイしちゃってたわ。記憶も結構あやふやだしなぁ……。
結局私はどこまでも役立たずなんやなって。なーんにも秀でてないし、唯一のアドバンテージはアドバンテージの形を成してないし。いや、これはもう少しでもみんなに元気になって貰わなくては!みんなを労ってあげないと!
「みんなお疲れ様、頑張ったね。大変だったよね」
「ミツキさん……」
よし、これからみんなをどうにか励まして元気付けるんだ!みんなに暗い顔なんて似合わないんだぞ!笑顔になってください!私はみんなの笑顔が見たい!
「頑張った……頑張ったのに……ここまで、頑張ってきたのに……」
「コハルちゃん……」
コハルちゃんんんんんん!?やめて!!泣かないで!!コハルちゃんの泣き顔が私の心にダイレクトアタック!!私も泣きたい!!しかも泣いてるコハルちゃんを見てみんなの顔も曇っていく!!ぐああぁぁぁ!!私の言葉選びが間違えてました!!安易に言葉を放ってすみませんでした!!私が絶対悪です!!腹を切ってお詫びします!!
見てられないよ!!な、なんとか慰めないと!!急げ!!コハルちゃんの元まで!!……でも人の慰め方とか知らない!!どうすれば!?目の前で泣いている子に私は何をしてあげれば……!?え、ええいままよ!!
「コハルちゃん」
コハルのすぐ目の前まで近付いたミツキは最後まで何も思いつかず、俯いて涙を流しているコハルをそっと抱き締めた。そしてコハルの帽子を外して横の机に置き、頭と背中に腕を回してポンポンと優しく叩いている。
「辛いよね。悲しいよね。私はみんなと一緒に行けなかったからみんなの苦労は分からないけど……でも、コハルちゃんが今まで頑張ってたのは知ってるよ」
優しくゆっくりと、心に直接伝えるように、丁寧に言葉を紡いでいく。
「コハルちゃんはえらいよ。コハルちゃんはすごいよ。ずっと努力してきたのは、私だけじゃなくてみんな知ってるよ。……だからね、今は、今だけは、泣いてもいいんだよ。少しだけ、気を緩めてもいいんだよ」
ミツキがそう言うと、コハルはゆっくりと腕をミツキの背中に回し、顔は俯いたまま口を開いた。
「みつき……」
「なあに?」
「わたし、がんばったよ……」
「うん」
「わたし、ばかだし……べんきょうもきらいだったけど……でも、いっぱいがんばったよ……」
「うん」
「いっぱい……がんばったのに……」
「うん……うん……」
コハルはぎゅっとミツキのシャツを握りしめ、ボロボロと溢れ出した大粒の涙が頬を伝ってミツキの肩を濡らしていく。そして、堰を切ったように泣き出した。
「うっうぅっ、うああああぁぁぁ……!」
「……」
ミツキはポンポンと叩くのを止め、泣き叫ぶコハルを何も言わずに抱き締めている。そんな二人を、他の三人は静かに見守っていた。
しばらくの間泣き続けていたコハルは、力尽きたのかプツリと電源が切れたように眠りについた。ミツキはコハルの体が崩れ落ちないように支えながらそっとベッドに寝かせ、軽くその頭をなでている。コハルの閉じられた目の周りは赤くなっており、頬には涙の跡があった。
「ミツキさん、コハルちゃんは……」
コハルのもとを離れてみんなの方へ近付いてきたミツキに、ヒフミは心配そうに声をかけた。
「大丈夫、コハルちゃんは疲れて寝ちゃっただけだよ。みんなも寝てないんでしょ?今日はシャワーは後にして寝ちゃったら?」
「はい……今は少しだけ、休ませてください」
「ゆっくり休んでね」
そう言ったヒフミだがベッドには入らず、どこか思い悩んだ表情をしながらその場に立ちつくしている。そして、おずおずとミツキに話しかけた。
「その……私もハグしてもらえませんか?ちょっと、落ち着かなくて」
「うん、いいよ」
ミツキは体をヒフミの方へ向け、そのまま両手を広げた。ヒフミは引き寄せられるように足を動かし、ミツキの腕の中にすっぽりと収まってミツキの体を強く抱き締めた。
「ヒフミちゃんもいっぱい頑張ったね。いつもみんなのためにたくさん動いてくれてありがとう」
「……はい、ミツキさんもありがとうございます」
「ううん、これくらいしか出来なくてごめんね。みんなの力になれなくてごめんね」
「いえ……十分です。十分ミツキさんは私たちの力になってくれています」
「……そっか、それならよかった」
そしてヒフミはゆっくりとミツキから離れた。
「すみません、ありがとうございました」
「ふふ、どういたしまして」
ヒフミはミツキに感謝を伝えた後に自身のベッドに向かい、倒れるように横になった。肉体的にも精神的にも疲れが溜まっていたのか、早くも安らかな寝息が聞こえてくる。
そんなヒフミを見届けたミツキが動こうとしたその時、今度はハナコが後ろからミツキを抱き締めた。
「わっ……ハナコちゃん?」
「私も少しだけ、こうしててもいいですか?」
「うん、いいよ」
珍しくハナコはそれ以上何も言わず、無言のままミツキを抱き締めていた。ミツキもお腹の前に回された腕をポンポンと優しく叩いている。
「……」
しばらくの間そうしてじっとしていたハナコは、フッと腕の力を緩めて口を開いた。
「ふふふ、こうしてるとミツキさんの匂いでいっぱいですね♡」
「に、匂い……?私もシャワー浴びてないし……く、臭くないよね……?」
「ええ、とってもあまーいいい匂いですよ」
「そ、そうなの?……恥ずかしいからあんまり嗅がないでほしいけど……」
それを聞いたハナコはミツキのもふもふの頭に顔を突っ込み、そのままスゥーっと深呼吸をした。
「はぁー……♡一日熟成されたとっても濃いミツキさんの匂い……このまま嗅いでいたいくらいですね♡」
「うぅ……は、離して……」
ミツキ吸いをしてご機嫌なハナコとは裏腹に、ミツキは羞恥心から顔を赤くさせてお腹に回されたハナコの腕を引き剥がそうとしている。ハナコはそれに逆らうことなくにこやかなままミツキを解放し、ミツキから離れた。
「ふふ、ありがとうございました♡」
「……どういたしまして」
そしてハナコは上機嫌なままベッドに寝転んだ。少しだけ不満気なミツキを置いて。ミツキは自分の腕を鼻に持ってきて匂いを嗅いでみたが、自分の匂いはよく分からなかったためハナコがからかっているだけだろうと見当をつけてその話は置いておくことにした。
「アズサちゃんは寝ないの?」
「……あぁ、今は寝れそうもない」
アズサはベッドに腰掛けて、特に何をするでもなく俯いている。ミツキはそんなアズサのもとに移動して、そっと隣に腰掛けた。
「でも休める時に休まないと大変だよ?明日からはまたお勉強しないといけないし……」
「……」
「ほら、横になろう?少しだけでも休もうよ」
ミツキはアズサがベッドに寝転がるよう促し、自身は枕元に腰掛けた。そして上半身を軽く捻って仰向けになっているアズサの頭を優しくなでている。
「やっぱりいろいろと心配?」
「そう、だな……心配なんだと思う。これからのことが……」
「そっか……」
「……」
アズサはミツキの方へ寝返りをうち、横になった。そして手足を曲げて小さく丸まっている。ミツキは相も変わらずにアズサの頭をなでていた。
「それに、怖いんだ」
「怖い?」
「コハルが、ヒフミが、ハナコが、ミツキが……みんなが悲しむような結末になるのが怖いんだ。今日のみんなを見て、ずっとそれだけが頭に浮かんでる」
「……」
「でも、だからこそ、最後まで私は諦めない。諦めたくない。足掻けるだけ足掻いてみせる」
ミツキに宣言するように、自分に言い聞かせるように、アズサは言葉を紡ぐ。ミツキはいつの間にかぎゅっと強く握りしめられていたアズサの拳を、頭をなでていない方の手で優しくなでながら語りかけた。
「……うん、アズサちゃんならきっと大丈夫。私はみんなのことをずっと応援してるからね。なにがあってもみんなの味方だよ」
「……あぁ、ありがとう」
アズサは握りしめていた拳を開き、そっと目を閉じてそれ以上何かを話すことはなかった。そのままミツキが頭をなでていると、静かになった室内には全員分の寝息だけが聞こえるようになっていた。
「……」
するとミツキは静かに立ち上がり、一人部屋を出て先生の部屋の扉を叩く。
「先生、いますか?……先生?」
一切の返事が無く、先生も休んでいるのかと思ったミツキがどうしようか悩んでいる最中、廊下の向こうから先生が近付いてきた。
"ミツキ?どうしたんだい?"
「あ、先生。みんなが休んでいるので少しお話をと思いまして……先生はどこに行ってたんですか?」
"私かい?少し建物内を歩き回ってたんだ。なんとなく落ち着かなくてね"
「そうですか……」
"でも丁度いいかな。私もミツキに聞きたいことがあったんだ"
「私にですか?」
"ああ、私たちが試験に行っていた時の話さ。立ち話もなんだし部屋に入ろうか"
「はい」
そうして二人は先生の部屋に入っていった。
そして次の日……
「次の試験までは後6日!諦めずに頑張りましょう!」
「「「おー!」」」
丸一日休んだ補習授業部のみんなは、次の試験に向けて勉強に励んでいた。悲しみや不安を抱えながらも、それでも全員が前を向いている。こうして、最後の試験までの6日間を過ごしていった。
なんか想定よりも雰囲気が重くなってしまいました。前半と後半で空気感違いすぎて草も生えない。やっぱりミツキ目線って強制でギャグみたいになりますね。原作編の後半はミツキ目線の頻度低くなりそうです。あまりに雰囲気が壊れるので。
さて、この後は特にイベントが無いので次回はもう第3次特別学力試験の前日、そして当日のお話になりそうですね。……アズサのカミングアウトとハナコのお話はどうしましょう。飛ばすかもしれません。ミツキがいても多分本編とほとんど内容が変わらないので。