ゲヘナ最強の双子の姉   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。

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見えないところで既に物語は変わりつつある

ミツキを私の部屋に招き入れ、椅子に腰掛けさせる。お茶を入れたコップを渡して私も椅子に座ると、ミツキはちびちびとコップに口を付けていた。

 

"さて、少しお話しようか"

 

「はい」

 

ミツキはコップを近くの机に置き、真っ直ぐ私の方を向いてくれた。

 

"まずは、ありがとう。ミツキのおかげで帰りは風紀委員との衝突も無かったよ。みんな安全に帰ってこれた"

 

事前に私がゲヘナへ話を通しておくべきだった。そうすればあそこまで事態は大きくならなかったはずだ。いくら突然の事態に焦っていたとはいえ、もう少し冷静に対処していれば良かったんだ。大人として不甲斐ない。そして、それをミツキにやってもらったからこそみんなが安全に帰ってこれたんだ。

 

私の不甲斐なさも、感謝の気持ちも、全てミツキに正直に伝えるべきだ。私の最初にすべき事はもう決まっている。

 

「いえ、むしろそれくらいしか出来なくて……」

 

"そんな謙遜しなくていいよ。今回は私がゲヘナに連絡するべきだったんだ。突然の出来事に焦っていたとはいえ、私の判断ミスだ。それをミツキにカバーしてもらったようなものだし、感謝してもしきれないよ。ありがとう"

 

そして、私は深々と頭を下げた。

 

「えぇ!?わ、分かりましたから頭を上げてください!」

 

視界の端で私の行動にギョッとしたミツキが椅子から立ち上がる様子が見える。私がすっと上体を起こしてミツキ見ると、ミツキは焦ったようにワタワタと両手を動かしながらこちらを見ていた。

 

"ふふ、そんなに慌てなくてもいいんじゃない?"

 

「うぅ、急に頭を下げられたら誰だってびっくりしますよ。ましてや先生に……」

 

ミツキは手の動きを止めてぽすんと椅子に座り直し、困ったように眉尻を下げている。

 

かわいいね。動作や表情の変化とか、見ててほっこりとした気持ちになるよ。癒されるというか……こういう面でも私は助けられているのかもしれないね。

 

"ごめんね、これは私にとって必要なことだからさ。きちんと伝えることは伝えないとね。ところで、みんなはどう?休んでるって言ってたけど"

 

「はい、疲れていたみたいでみんな寝ています」

 

"そっか、寝れたんだね。……もしかしてミツキがみんなを休ませてくれたのかな?"

 

さっきまでのみんなには気持ちを整理する時間が必要だと思ったし、いつまでも大人の私が近くにいたら休めないだろうという考えからみんなと別れた。そんな別れる前のみんなの様子からして全員がこんなにも早く寝れるとは思えない。だから、これはきっとミツキのおかげなのだろう。

 

「え……?見てたんですか?」

 

"いや、見てないさ。私はさっき廊下の奥からやって来てただろう?"

 

「あ、そういえばそうですね」

 

"またミツキに助けられちゃったみたいだね"

 

「……みんな、とっても頑張ったみたいでしたから。少しでも労ってあげたくて」

 

"あぁ、ありがとう。きっとみんな助かってるよ"

 

ミツキの穏やかな声色と心配しているような表情から、みんなのことを心の底から想っていることが伝わってくる。

 

あぁ、やっぱりミツキを見てると度々思うんだ。私はみんなにとって頼れる大人でありたいとは思っているけど、こういう時に心を癒してあげられるかどうかはまた別の話になってくるんじゃないかって。

 

事件だとか政治だとか、そんな生徒たちにとってどうしようもない事は私のような大人や問題解決力のある人物が頼られるのかもしれない。でも、精神的な問題になるとそうはいかない。心はそう単純なものじゃない。

 

どんな時でも寄り添ってくれて、等身大で全てを優しく包みこんでくれるようなミツキの存在はきっと、みんなにとって何よりも支えになっているのだと思う。私だってこうして話しているだけで気分が落ち着くしね。

 

"ミツキはみんなのことが好きかい?"

 

「はい、大好きです」

 

"ふふ、大好きか……いいね。みんなもそうだと思うよ"

 

「本当ですか?」

 

"あぁ、傍から見ててそう思うよ。みんなミツキといると楽しそうだ"

 

「えへへ、すごく嬉しいです」

 

にこにこと嬉しそうに笑っているミツキは背中の羽根をパタパタと動かして全身で喜びを表現している。

 

思わず抱き締めて撫で回してあげたくなるような、守ってあげたくなるようなこの純粋さや素直さがみんなから好かれる要因なのかもしれないね。

 

……流石に抱き締めたりはしないけど。ミツキのことを大切に思っている子たちに何をされるか分かったもんじゃない。ヒナとか。私も命は惜しい。

 

「先生もみんなの事が好きなんですよね?」

 

"もちろん。私は先生だからね。生徒みんなの事が好きだし、健やかに成長して欲しいと思ってるよ"

 

「じゃあ私と一緒ですね!」

 

かわいい。

 

ミツキは自分のことを指差しながら楽しそうにしている。こうやって会話の時にも動きがあって、話していて楽しさを感じられるというのも魅力の一つだね。

 

"ふふ、そうかもしれないね。当然ミツキのことも大切に思っているよ"

 

「えへへ、ありがとうございます。私も先生のこと信頼してますよ」

 

かわいい。

 

真っ直ぐに好意を伝えてくれるのもまた、魅力の一つだと思う。私も気を付けてるけど、こういうところを見倣ってしっかりと好意や感謝を人に伝えられる人間でいたいね。

 

「先生は最近ちゃんと寝てますか?シャーレにいるときは仕事ばっかりであんまり寝れてなかったですけど……」

 

"そうだ!聞いてよ!なんと合宿所にいる間は仕事が発生しないんだ!すごいよね!シャーレにいた時みたいに延々と仕事が湧き出てこないんだよ!だから最近はちゃんと寝れてるよ!"

 

こんな最高のニュースを前に、ミツキは何とも言い表せないような微妙な表情になった。いったいどうしたんだい?

 

「だ、大丈夫なんですか?それ、仕事が溜まっていってるだけなんじゃ……」

 

"えぇ?何を言っているんだい?そんなこと言って……今の私に仕事が無いんだからさ。そんな現実私は知らない。私は今を生きている"

 

「……今度手伝いましょうか?」

 

"……え?いいの?"

 

「はい、このエデン条約周りのあれこれが全てが終わったら私はシャーレじゃなくなっちゃいますけど……でも先生にはたくさんお世話になってますから」

 

な、なんていい子なんだ。かわいい。好き。現実逃避をしている私にも気遣ってくれるなんて……ちょっと抱き着いて愛を囁いてもいいかな。……いや、それ事案だな。思い留まれ私。最悪の場合社会的にも肉体的にも死んでしまう。

 

"じゃあこれが全部終わったらミツキもシャーレに入らないかい?"

 

「いいんですか?」

 

"いいよ、むしろ大歓迎さ。ミツキならきっといろんな子とも仲良くやれると思うしね"

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

"こちらこそよろしくね"

 

よし、これでシャーレに癒しが増えた。人手が増えれば作業効率も上がるし完璧だね。見えないけどきっとアロナもサムズアップしているはずだ。

 

「そういえば、私に聞きたいことがあったんじゃないんですか?」

 

"あ……そういえばそうだったね。忘れてたよ"

 

「えぇ……」

 

なんとなく引かれている気もする。いや、気にしないようにしよう。

 

"じゃあ単刀直入に聞くけど、昨夜……というかさっきの話だね。私たちがゲヘナに行っている間に何かあった?"

 

「え?……急にどうしたんですか?」

 

"いや、私たちが帰ってきた時の玄関、鍵がかかってなかったからさ。ミツキは無事にここにいるし、さっき見て回った時は建物内に変わったところも無かったから問題は無いはずだけど、一応ね"

 

「……」

 

ミツキの反応が鈍い。なんとなく困ったような表情をしている気がするし……まさか本当に何かあったのかな?となると、そうだな……

 

"ふむ、なら誰かと会ったのかい?言いにくそうにしてるし、「さっき会ったことは言わない」とかそういう約束でもしたのかな?"

 

「!!」

 

ミツキはバッと顔を上げて驚いたように私を見ている。うん、すごく分かりやすい。素直すぎるのも考えものなのかもしれないね。

 

"鍵がかかってなかった理由は……うーん……あぁ、そうだ。多分だけど、きっとその誰かはミツキが寝てしまったから帰る時に鍵をかけられなかったんじゃないかい?"

 

「……」

 

ビンゴかな?心当たりがありそうだ。口数も減ってしまったし、不安そうな表情をしている。

 

"誰と会っていたかは言えないのかな?無理にとは言わないけど、できることなら教えてくれるかい?何か悩みやトラブルがあるのなら私も力になれるかもしれない"

 

「……」

 

ミツキは私の言葉を聞いてからずっと黙り込んでいた。斜め下を向いて目は泳ぎ、両手は膝の上でぎゅっと握られている。私に言おうか言わまいか悩んでいるのだろう。

 

何秒か何分か、お互い無言のまま静かに時が過ぎていく。ミツキの次の言葉をジッと待っていると、ミツキはおずおずと顔を上げて小さく口を開いた。

 

「――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は過ぎて……

 

 

 

 

第3次特別学力試験までの6日間、補習授業部のみんなは毎日朝早くから夜遅くまで必死に勉強を続けていた。ハナコとミツキと私の三人はヒフミとアズサとコハルの三人に付きっきりで勉強を教え、音を上げる者はおらず誰もが試験に向けて全力だった。

 

試験前日の夜、誰もが不安を抱えて眠れずにいる中でミツキと補習授業部全員が私の部屋に集まり、それぞれの胸の内を明かしていくのであった。

 




アズサ、ハナコの告白は全カットさせていただきます。次回は二人のお話が終わったところからになります。多分。
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