ゲヘナ最強の双子の姉   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。

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夜は明けるもの

「ナギちゃんはどこに隠したのかな?大人しく教えてくれると楽なんだけど、そう簡単には教えてくれなさそうだよね」

 

私たちの前に立ちはだかったミカは、現状の雰囲気にそぐわない酷く落ち着いた声色でこちらに語りかけている。まるで日常的な会話をしているかのような態度とその朗らかな表情のせいか、私にはミカという存在がこの場から浮いているように見えた。

 

「戦場にしてるここら付近にはいないだろうし、あの子の姿がないことにも関係してるのかな?あの子はどこに行ったの?」

 

「あの子……?もしミツキさんのことを言っているのでしたら、ミツキさんは戦えないので避難させています。この戦いには巻き込めません。ですが、なぜそんなことを……」

 

「まあ、ここに居ても居なくてもあんまり関係ないんだけどさ。ナギちゃんの確保が最優先だし」

 

"ミカ、どうしてこんな……"

 

「……私は、ゲヘナが嫌い。心の底から、嫌いなの。あんな角が生えたやつらと平和条約を結ぶなんて、考えただけでゾッとしちゃう」

 

そう語るミカの表情はやはり薄っすらと微笑んでいるだけで、表情からも、声色からも感情の変化は感じられなかった。

 

「ナギちゃんは本当にゲヘナと手を組めるって思ってたのかな?ゲヘナとか普段から事件だらけで治安は終わってるし、背後から刺されちゃうかもしれないじゃん。みんなもそうは思わない?」

 

「で、ですが、それは条約が……」

 

「じゃあ想像してみてよ。ヒフミちゃんはゲヘナのやつらが条約をきっちり守ってくれると思う?本当に?本当の意味で私たちに平和が訪れると思う?」

 

「あ、あうぅ……」

 

「だがミツキなら大丈夫だ。私たちが知らないだけで、比較的温厚な人が他にもいるかもしれない。それに風紀委員会や正義実現委員会が協力すれば案外なんとかなるかもしれないだろう。まだ何も始まっていないのに諦めて切り捨てるなんてするべきじゃない」

 

「……へぇ」

 

アズサの言葉にピクリとミカの眉が動いた。それも一瞬だったが、それでも何か思うところがあったのかもしれない。

 

「白洲アズサ、知らなかったけどあなたって結構ポジティブっていうか、前向きっていうか……アリウスで生きてきた割に平和な頭してるよね。まあ、だからこうして任務もほっぽり出してアリウスに敵対することになってるんだけどさ。あなたも本当は分かってるんじゃないの?諦めが必要な時もあるんだよ」

 

「……」

 

ザッザッザッ

 

……足音?外から、それも複数……まさか!?

 

「ふふ、こんなゆっくりお話してくれるなんて思わなかったよ。おかげで追加の戦力も揃っちゃった」

 

"ミカ、君はいったい何をするつもりなんだい……?ナギサを攫うにしても数が多すぎる。まさか、戦争でもするつもりなんじゃ……!?"

 

「おっ、すごーい!流石は先生だね!そう、アリウスと私、私たちが再編したトリニティでゲヘナに全面戦争を仕掛けるの!これはそのための第一歩なんだよ!」

 

「なっ……」

 

「せ、戦争……」

 

楽しそうに、無邪気にそんなことを言ってのけるミカの姿に、ガツンと脳が揺さぶられたような衝撃があった。本気でそんなことを言っているのかい?たちの悪い冗談にしては、それこそアリウスの数が多すぎる。なら、やはり本当に……?

 

いくらミカでも、戦争なんて、許容できるわけが無い!

 

"ミカ!"

 

「先生、怒ってる?まあ、戦争に良い印象は持ちにくいよね。でも、これは既に決めたことだから。止めたかったら無理やりにでも止めてみてよ」

 

ミカは銃を持っていない左手を上げ、同時に大勢のアリウスが動き出した。

 

「作戦開始」

 

"くっ、みんな!"

 

 

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

あれから、みんなかなりの時間かなりの数と戦っている。誰一人倒れてはいないが、ある程度のダメージはあるしこのまま続けば誰か倒れてしまうかもしれない。

 

「うーん、これがシャーレかぁ、ちょっと面倒くさいかも。大人ってすごいんだね」

 

ただ、一切戦闘に参加していないミカの姿が気にかかる。後ろからアリウスと補習授業部の戦いを眺めているだけで、動く気配もない。アリウスの生徒が次々に倒れていく現状を余裕そうな表情で見つめている。

 

「結構減らされちゃったし、弱いなぁもう。先生含めてもたった5人にここまでやられちゃうとか困っちゃう。こんなんじゃゲヘナに勝てないじゃん。まあ、数だけは使えるかも?」

 

そんな呑気に独り言を言っていたミカの後ろから、慌てたように走ってきたアリウスの一人が声を上げた。

 

「トリニティの生徒が一部、こちらへ向かってきています!このままでは挟み撃ちに!」

 

……なんだって?

 

「え……?トリニティにはもう……」

 

「いえ、いますよ。ティーパーティーには命令できない、独立した集団が……!」

 

「確認できました!大聖堂からです!」

 

「それって……」

 

ドゴオォォォォンッ!!!!!

 

「わっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

突然、補習授業部のみんなが戦っていたアリウスたちのいる場所が爆発し、もくもくと黒い煙が立ち込める。そして、その煙の向こうからコツコツと大量の足音が聞こえてきた。

 

「……さっきハナコが話していたのはこれか」

 

「ええ、ようやく来てくれましたね」

 

足音が近付くにつれて煙は徐々に流れ、凛とした声が辺りに響く。

 

「ティーパーティーの聖園ミカさん。他のティーパーティーメンバーへの傷害教唆及び傷害未遂で、あなたの身柄を確保します」

 

「歌住サクラコ……あはっ、それは流石に予想外かなー。まさかシスターフッドが来るなんて思いもしなかったよ」

 

そうして煙が消え去り、足音の正体が姿を現す。その瞬間、私も、補習授業部のみんなも、ミカでさえも、驚愕と共に体が言うことを聞かずその場に固まっていた。

 

「なっ、なんで……」

 

シスターフッドのメンバーがずらりと並んでいる圧巻とも言える光景の最前列。マリーとヒナタの間で堂々とミカを見据えるサクラコのその後ろ。見覚えのある薄紫色の髪の毛が、見覚えのある特徴的な羽根が、私たちの視線を集めている。当の本人はいつもの穏やかな表情のままミカを見つめていた。

 

ミツキ……。

 

「なぜミツキさんを連れてきたのですか!?サクラコさん!これでは話が違います!」

 

「……これはミツキさん本人の意思です」

 

珍しく口調を荒げるハナコを申し訳なさそうな表情で一瞥したサクラコは強く握った銃を体の前で持ち、いつでも戦闘に入れるような体勢になっていた。そんなサクラコの背後から横にズレたミツキは、優しくミカに語りかける。

 

「もうやめようよ、ミカちゃん」

 

「……何を言ってるの?ここまで来てはい降参しますなんて、言うわけないじゃん。見て分からない?あなたのお友達になりたかった相手は裏切り者だったんだよ。そんなことにも気付けないなんて、バカなのかな?」

 

ミカの浮かべていた余裕そうな笑みは歪み、楽しそうだった口調は真剣なものになっていた。サクラコはミツキを守るようにミカとミツキの間に体を入れて銃を持っていない片腕でミツキをトンっと後ろに押した。

 

「ミツキさんは私の後ろに居てください!」

 

「……もう私は、行くところまで行くしかないの」

 

そうして、ようやくミカが銃を手に構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案外あっさりと決着はついた。私たちとシスターフッドに挟まれたアリウスは対応しきれずに次々と倒れ、最初は抵抗していたミカもアリウスが全員倒れた後に囲まれながらゆっくりと銃を下ろした。

 

「はぁ……あーあ、負けた負けた。一人じゃやれることに限りがあるし、こうなった時点で私の負けだよ。降参。まさかシスターフッドが参入してくるなんて思わなかった」

 

「ミカちゃん……」

 

サクラコの服の裾をつまみながらも、ミツキは体を晒してミカの名前を呼ぶ。それに気付いたミカがミツキの方へ体を向けた。

 

「ふふ、そんな顔しちゃ駄目だよ?裏切り者が負けたんだから、喜ばなきゃ」

 

「でも……」

 

「いいんだよ。きっと、こういう運命だったの。セイアちゃんが死んじゃったあの時から、こうなることは決まってたんじゃないかな」

 

そう話すミカの顔は悲しげで、諦めの感情を多量に含んだ弱々しい微笑みだった。

 

「私は別にセイアちゃんを殺したかったわけじゃなかったけど、セイアちゃんは体が弱いから……それに、アリウスの方は最初からそういう目的だったのかもね。そこはどうなのかな、アズサちゃん。最後にそれくらい教えてくれてもいいんじゃない?」

 

「……」

 

「……ミカさん、セイアちゃんは無事です」

 

「……え?」

 

「死んだと、偽装していたんです。まだ生きていると知られてはまた命を狙われる可能性がありましたから……」

 

「生き……てる……?セイアちゃんが……?」

 

ミカはハナコの言葉に大きく目を見開き、わなわなと体を震わせている。そんなミカに応えるように、ハナコはミカに向けてゆっくりと頷いた。

 

「……うん、そっか、それを聞けたら、もういいかな。セイアちゃんが無事なら、それで……。ほら、もう私のこと連れてっていいよ。捕まえるんでしょ?」

 

その言葉にサクラコとヒナタが慎重に近付いていく。

 

「ミカさん、このまま正義実現委員会へ引き渡します」

 

「うん、いいよ」

 

「ミカちゃん!」

 

すると、そんなサクラコの後ろから飛び出したミツキが、ミカに正面から抱きついた。

 

「わっ、ミツキちゃん……?どうしたの?」

 

「ごめんね、私何もできなくて。ミカちゃんが苦しそうなのは知ってたのに……そのせいでミカちゃんが……」

 

抱きつきながら自身を見上げるミツキに、ミカはふっと表情を緩め、銃を持っていない方の腕で優しく抱きしめ返した。

 

「なーんだ、そんなこと気にしてたの?全部私が隠してたんだからミツキちゃんは何も悪くないよ。大丈夫、ミツキちゃんのおかげで私はあの時、幸せな気持ちになれたよ。久し振りに穏やかな気持ちになれんだ。こんな取り返しのつかないことをした裏切り者には、それだけでも十分すぎるよ」

 

「……」

 

その時の記憶を思い返しているのか、嬉しそうに、穏やかに語るミカにミツキは抱きついたまま言葉を返すことができなかった。ただ強くミカを抱きしめており、ようやく搾り出した言葉は小さく、けれど近くにいたミカやサクラコ、ヒナタにはしっかりと届いていた。

 

「せっかく、お友達になれたのに……」

 

「……まったく、しょうがないなぁ」

 

困ったように笑みを浮かべ、抱きしめていた手でミツキの頭をゆっくりとなでているミカがサクラコの方を見ると、サクラコは重々しく頷くだけだった。それを見たミカはミツキに視線を戻し、なでる手を止めてミツキをやんわりと引き剥がした。

 

「ミツキちゃん、もう一回だけ聞くけどさ……悪いことをした人は許されると思う?」

 

「大丈夫だよ、ミカちゃんならきっと……私はミカちゃんの味方だよ」

 

「そっか……」

 

「……ではミカさん、行きましょうか」

 

「ばいばい、ミツキちゃん」

 

「またね」

 

「……うん、またね」

 

そうして、ミカを連れたサクラコとヒナタは私たちに背を向けて歩き出し、シスターフッドはそれに続いてゆっくりと解散していった。

 

喧騒が嘘だったかのような静かな空間にぽつんと立ち尽くす私たちを、明るい朝日が照らし始めていた。

 
















前回の投稿からかなり期間が空いてしまいました。申し訳ありません。実は先週末に体調を崩しまして、小説を書けるくらいまで復活したのが昨日だったんです。39℃を超えたのなんて何年ぶりでしょう……寒気やら倦怠感やら、久し振りの感覚のオンパレードで懐かしい気持ちになりました。嘘です。ただ死にかけてました。

あと戦闘シーンというものは存在しませんのであしからず。体調不良からの復帰作ということで手心を……ね?
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