ゲヘナ最強の双子の姉 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
『ミツキ……?まあ、その、悪いヤツじゃないといいますか……優しくて、つい甘えたくなっちゃうといいますか……あっ、その、普通にいい人、です』
コハルさんが
『ミツキは優しいんだ。不安な時は寄り添ってくれるし、私たちのことを第一に考えてくれる。なんて言えばいいのか分からないんだが……強くはないが、強いんだ。あとなでるのが上手い』
アズサさんが
『きひひっ、そうだなァ……優しい子だ。おそらく、私たちの中で誰よりも。だが純粋で素直すぎるところが少し困るところか。誰かがついていないと危ういだろうな』
ツルギさんが
『正直、今でもミツキさんがゲヘナ生だとは思えないのです。人を思いやる心、寄り添える優しさ、純粋な性格……一緒にいることが心地よいと思える人柄は手放しで褒められるものだと思います』
ハスミさんが
『ミツキさんは私の大切な友人です。かなり人との距離が近く積極的ですが、嫌な感じは一切なく、むしろ受け入れてしまいたくなっていくのです。ミツキさんの底無しの優しさや無邪気さに思わず癒されるような、心を揺さぶられるような何かを感じるのです』
サクラコさんが
『ミツキさんですか?まさかナギサ様もミツキさんが気になってるんですか!?ミツキさんはとっても優しいんですよ!ご自身は関係ないのに私たちの試験のためにずっと勉強を教えてくれましたし、辛くて挫けそうになったときも優しく包みこんでくれたんです!それに距離が近くて真っ直ぐ好意をぶつけてくれまして……あっ!この間合宿明けに初めてお会いした時なんて、私に気付いた瞬間ぱぁっと花が咲いたかのような笑顔になってトテトテとこちらに近付いて来てくださったんですよ!もうすっごくかわ――』
ヒフミさんが
『そうですね……もう、色んな方に聞いたのではないですか?……ええ、私の話すことも他の方と変わりませんよ。ですが、一応全てを話しておきましょう。ナギサさんが変に誤解したままこれ以上苦しんでしまうのは、流石に見てられませんから』
ハナコさんが
そして……
『ミツキちゃん?ふふ、そっか。勘違いしてたって気付いたんだね。あの子は私が今まで見てきた中で誰よりも優しいんじゃないかな。……あれ?私が隠れて会ってたの気付いてなかったんだ。……
ミカさんが。
誰もがミツキさんを好意的に見ており、その優しさに満ちた言動を教えてくださった。その度に私の認識が誤りであったのだと、私の判断が間違っていたのだと、そう突きつけられているかのような感覚に陥っていく。
ミツキさんのことを考えれば考えるほど、私の抱いていた感情やミツキさんへの扱いが酷く醜いものに思えて「やってしまった」という後悔のような思いが頭の中をぐるぐると駆け巡るのです。
いったいどうすればよかったのでしょうか。
分からない。
あのときからずっと。
なにも分からない。
なにも見えない。
私はただ、トリニティを、ミカさんを、守りたかっただけだというのに。
結局私は、いたずらに補習授業部の皆さんを苦しめ、一人悩んでいたミカさんにも気付けず、ミツキさんを悪と決めつけ理解しようともしませんでした。あまつさえ、私の知らない内にそのミツキさんがミカさんの心を癒していたなんて……それも、すべてが終わってからミカさん本人に聞くまで知りもしなかったのです。
……ミカさんとはずっと一緒にいたはずなのに。
正しいと思ってしてきたことは何もかもが正しくなくて、悪だと思っていた人は誰よりも善に近い存在で。私のしてきたことはいったい……私は何のために……?
……もう、一人になりたいのです。誰もいない、物音もしない部屋で……ですが、私の立場がそれを許してはくれません。セイアさんの無事は喜ばしいことですが未だに目覚める兆しは見えず、ミカさんは牢屋の中。逃げてなどいられません。引きこもってなどいられません。ティーパーティーとして対処しなくてはならないことがたくさんあるのです。私がやらなくては、私が……
「ナギサさん、立場上忙しくなるのは致し方ないとはいえ、少し無理をしすぎなのではないでしょうか。このままですと倒れるのも時間の問題ですよ」
「……サクラコさんですか。これくらい大丈夫です」
「大丈夫ではありません。声に覇気が無く顔色もよくないですよ。それに、時折ふらついているようでは仕事なんて……満足に眠れていないのではないですか?」
「……」
「沈黙は肯定と捉えますよ」
たしかに、最近は全然眠れていません。眠れない。これは"できない"という意味ではなく、"したくない"という意味で。瞼を閉じるのが怖い。暗闇が怖い。夢を見るのが怖い。孤独が怖い。
独りになると、どうしてもこれまでのことばかりを考えてしまうのです。周囲へかけた迷惑を、妨害ばかりしてきたくせに守ってもらった弱さを、自分の不甲斐なさを……そうして自分を赦せなくなっていき、自己嫌悪はやがて憎しみへと形を変え、いつしか愚かな自分への憎しみの感情は憎悪へと成長していました。
……今だけは、私の抱えている膨大な仕事の山が少しだけありがたいと感じます。家に一人でいるときも変なことを考えずに済みますから。そして体力の限界が来たとき、ようやく眠ることができるのです。何かを考えるような時間も無く、倒れるように、気絶するように。
「どうしてそこまで……私も、ハスミさんやツルギさん、補習授業部の方々も、ナギサさんを責めてはいませんよ。ナギサさんの置かれた状況も、行動原理も、私達が納得するだけのものがありました」
「……」
それでは、駄目なのです。たとえ皆さんに責められていないとしても、赦していただいているとしても、私が私を赦せなければ意味が無いのです。誰よりも私を赦せないのは私なのですから。むしろ、一思いに……
「……少し、休んでみてはいかがでしょうか。今のナギサさんは危ういように思えます。一人だと良くないことを思案してしまうようでしたら、私がついていましょう。ナギサさんはヒフミさんとも仲がよろしかったようですし、ヒフミさんにも協力していただきましょうか。それに、ミツキさんも快く手を貸してくださるでしょう」
「っ……」
思わぬ所から聞こえてきた名前に思わず肩が跳ねる。
……やってしまいました。疲れているからか動揺しないようにすることなどできず、そんなあからさまな反応をしてしまったことで目の前にいるサクラコさんに違和感を持たれてしまったようです。
「ナギサさん……?そういえば、ミツキさんはほとんどずっとシスターフッドに居たような気も……ということは、まさか、まだ……」
「……えぇ、まだ、お会いできていません」
サクラコさんは驚いたように表情を変え、私を見つめている。私が皆さんの所を回って頭を下げて謝罪の言葉を述べたというのに、まだミツキさんにはできていないということがどうやら想定外だったようでした。
「な、なぜ……ミツキさんなら、きっと赦してくださるでしょう。それに、私にミツキさんのことを聞いたのは謝るためでは……」
「……合わせる顔が無いのです。一方的に疑って、勝手に悪者だと決めつけて、今更どんな顔をして会いに行けばいいのでしょうか」
「ナギサさん……」
私を心配そうに見つめるサクラコさんと目を合わせていられず、私は逃げるように斜め下の床へ視線を向ける。そこには誰もいないというのに。
「サクラコさん、私は……私は、そもそも私に疑われていたことすら知らないミツキさんにどう謝ればいいのでしょうか。私は、謝って何を許してもらうつもりなのでしょうか。ましてや、ミツキさんとは一度も……」
……あぁ、そうです。一度も、たったの一度も、私はミツキさんと会っていません。近くにいたはずです。ずっとトリニティにいたはずです。会おうと思えばすぐにでも会えたはずです。
それでも、会おうとしなかったのは……
「――!――さん!ナギサさん!しっかりしてください!」
「っ、さ、サクラコさん……?」
サクラコさんの顔が近い。それにいつの間にか両肩を掴まれていたようで、そのことに私は一切気付いていなかった。
「一度、ミツキさんとお話しましょう。無理そうなら謝罪をしなくとも、ここまでの話をしなくとも構いません。ですから、一度でいいですから、しっかりと
すぐ目の前で真剣に語るサクラコさんに思わず息を呑む。それと同時に、サクラコさんの言葉には妙な納得感のようなものがあったのです。
向き合わなくてはと、そう思ったことが今まであったでしょうか。補習授業部の皆さんに、ミカさんに、ミツキさんに、私は向き合おうとしたでしょうか。そもそも最初から、補習授業部を作る段階から私がしなくてはならなかったのは
そこまで考えて、ストンと胸に落ちたのです。
「……サクラコさん、お願いしてもよろしいでしょうか」
「ミツキさん、こうしてお会いするのは初めてですね」
「うん。私ナギサちゃんとお話してみたかったんだ」
「……ええ、私もです。トリニティでの生活はどうでしたか?」
そうして、私とミツキさんのお話は始まった。私の目の前に座るミツキさんは補習授業部の皆さんと過ごした毎日が楽しかったと笑顔で語っている。あんなことがあった、こんなことがあった、と楽しそうに思い出を語る姿からはスパイだなんて毛頭思えなくて。
こうして話していると申し訳ないという感情がふつふつと湧き上がっていくのです。ミツキさんの補習授業部の皆さんへの思いは本物で、そんなミツキさんを疑ってしまっていた自分がどんどんと赦せなくなっていきます。
私からミツキさんを知ろうともせず、勝手に疑い勝手に遠ざけた。ティーパーティーである私が、責任者である私がミツキさんの真意を判断するべきだったというのに……私はずっと逃げていただけだったのです。
「……ミツキさん」
「どうしたの?」
「……すみませんでした」
「え!?何が!?あ、頭なんて下げなくても……顔を上げて、ね?」
両手を膝に乗せ、上体を前に倒して頭を下げれば、ミツキさんは慌てたように止めようとしてくださいます。ですが、それでは私の気持ちは収まりません。ゆっくりと上体を起こしてミツキさんの目を見ると、ミツキさんは心底心配そうに私を見つめていました。
「ど、どうしたの……?突然……大丈夫……?」
こんな優しい方を、私は……
「……私は、ミツキさんをずっと疑っていました。いつか裏切るのではないかと、トリニティに仇なすのではないかと……ミツキさんと顔を合わせたことすらなかったというのに」
「でも、それは……」
「仕方のないことではありません。ミツキさんと向き合おうとしていれば、心に余裕があれば、私に勇気があれば……もっとやりようはあったはずです」
「ナギサちゃん……」
疑うばかりで確かめようとしなかった私が、前に進む足を動かせなかった私が、全ての元凶なのです。せめて報告書だけで判断せずに自分で動いていれば、何か変わっていたのかもしれません。ですが、もう全ては後の祭り……。
「このままでは私の心は晴れません。謝っても謝っても謝りきれないのです。こんなことを初対面のミツキさんに頼むのもアレですが……私を思いっきり叩いてください」
「ええ!?」
「遠慮はいりません。どうぞ、ミツキさんの気の済むまで……優柔不断で疑心暗鬼で皆さんに迷惑をかけた過去の私を罰する意味もあります。補習授業部の皆さんにこんなことを頼むのは少々難しいですし、先生は絶対に止めるでしょう」
「でも……」
「私はミツキさんが好きだった補習授業部の皆さんを退学させようとしました。ミツキさんにとって到底許せることではないでしょう?さあ、思いのままに……」
瞼を閉じて両手を膝の上に乗せた状態で姿勢を正す。そして訪れる静寂。
……そうして気付くのです。私はやはり、何も変わっていないのだと。
私はただ、明らかに分かりやすい罰が欲しいだけなのです。酷いことをした私を、他の誰かに頼めないからとミツキさんの手で
ああ、私はどこまでも私のままでした。心優しいミツキさんに人を叩くよう強要するなんて、本当にミツキさんのことを思っているのなら出てこない発想のはずなのに。ここまできて私には何も、目の前にいるミツキさんすら見えていなかったのです。
私は、あれから何も学んでいない。
湧き上がる自己嫌悪と再度頭に浮かぶ「やってしまった」という感情。罰を受けたい、もう助かりたい、そんな私の弱さが全てミツキさんに降りかかっているのです。私の弱さを人に押し付けているのです。
「……」
「っ……」
ミツキさんが席を立つ音が聞こえる。自ら欲に塗れたお願いをしておきながらそれでも少しの恐怖はあって、思わず手を握りしめて目をぎゅっと強く瞑って衝撃に備えている。コツコツと聞こえる足音はどんどんと私に近付いてきて、そして、私のすぐ近くで音は止まった。
……いつでも、来てください。
1秒か2秒か、いつかくるであろう衝撃に備えるこの時間が無限に引き伸ばされているかのように感じられる。暗闇の中で音も聞こえず、何も感じ取れないままいつ衝撃が訪れるのかも分からない。
構えれば構えるほど緊張感は張り詰めていく。だが、いつまで経っても衝撃は訪れず、疑問に思い始めていた私の頭は突然何かに包まれたような感触があった。
「……え?」
「ナギサちゃんは背負いすぎちゃったんだね。何もかもを抱えて、誰にも頼れなくて、それでもトリニティを守らないといけなくて……大変だったよね。もう大丈夫だよ。自分を責めなくていいんだよ」
ミツキさんはまるで幼子に言い聞かせるように、私を安心させるように優しく語りかけながら頭をなでている。思わず閉じていた瞼を開ければ、私の頭はミツキさんの胸元にあるということだけが分かった。
こうして誰かの胸に優しく抱き留められることなんていつぶりでしょうか。幼い頃にこんなことがあったのかもしれませんし、なかったのかもしれません。ただ、どこまでも安心できるような……
「ミツキさん……」
「ナギサちゃんはいっぱい苦しい思いをしたんだから、少しくらい自分に優しくしてあげてもいいんじゃないかな。きっとバチは当たらないよ」
ミツキさんから伝わる体温も、ゆっくりとなでられている頭も、その柔らかな声色も、そのどれもが私の胸をぽかぽかと温かくしていって、力んでいた体からはふっと力が抜けていく。
「ナギサちゃんは偉いよ。別に私に被害は無かったし、私に言わなくてもいいことだったのにこうして正面から打ち明けて謝ってくれるなんて」
「……違います。私は、私はただ、謝ることで自分の中にある罪悪感を和らげたかっただけなのです。崇高な考えもなく、心からミツキさんを思っていたわけでもなくて……私は……」
やはりどこまでも汚い私の心に嫌気が差す。ミツキさんの優しさを前にして押さえきれなくなった口からはポロポロと心の奥底にある醜さが溢れ出し、言わなくても良いことまで全てを吐き出していく。こんなことを言われてもミツキさんは困るだけだというのに。
そんな私を、ミツキさんは変わらずに抱きしめている。
「ナギサちゃんは真面目で優しいんだね」
「な、なにを……」
「知らんぷりできなかったんでしょ?私には何も気付かれてないだろうからいいやって開き直らなかったんでしょ?ナギサちゃんは、ただナギサちゃんの頭の中で考えてただけのことに罪悪感を持って、ちゃんと謝ってくれたんだよ」
「ですが……」
「大丈夫、もう大丈夫だよ。私はナギサちゃんに怒ってないよ。少しは自分を赦してあげて」
もう、大丈夫……なのでしょうか……私は、何もできずに……私のせいで皆さんが傷ついて……赦されるようなことでは……
「ナギサちゃんが自分を赦せなくても、私は赦すよ。誰に何と言われようとも、私はナギサちゃんを責めたりしないよ。大丈夫、大丈夫だから……」
ふんわりと抱きしめられながらポンポンと叩かれる頭、優しく投げかけられる言葉、とくんとくんと小気味よくリズムを刻む心臓の鼓動……これら全てが私の頭を、心を、容易に溶かしていく。
本当に心の底から「大丈夫」なのだと、「ようやく赦された」のだと思えるような安心感が私を満たし、私の中にあったはずの重々しい感情が流されて、代わりにミツキさんの温もりが私の心に流れ込んでくる。
私の心を満たしていく温かな優しさに思わず泣き出しそうになるのを必死に堪え、わずかに歪み始めた視界の中で声を震わせながら感謝を述べた。
「……ありがとうございます……ミツキさん」
私の握りしめていた手はいつの間にか開かれていて、私の頭を抱きしめているミツキさんの背中に回されていた。ぐちゃぐちゃとした感情にわけもわからずぎゅっとミツキさんの服を掴み、必死にミツキさんにしがみついて……情けない顔を見せられないという感情と、この温もりから離れたくないという感情だけで体が動いていた。
「ううん、むしろ私が感謝したいくらい。私を補習授業部のみんなと出会わせてくれてありがとう。他にもハスミちゃん、ツルギちゃん、イチカちゃん、サクラコちゃん、マリーちゃん、ヒナタちゃん、ミカちゃん……色んな人と仲良くなれたんだ。ナギサちゃんとも、仲良くなれるかな?」
「っ……ええ……ええ、もちろんです……私の方から、お願いしたいくらいです……」
もう溢れる涙も震える声も抑えることはできず、ただ私の本心を伝えることしかできませんでした。
「えへへ、ありがとうナギサちゃん。これからもっと仲良くなろうね」
「……はい」
そうして、私は心が落ち着くまでミツキさんの胸元に顔を埋めて抱き着いているのでした。
めでたしめでたし。
ヒフミがぺろぺろ様レベルにミツキに入れ込んでるのを見てナギサの罪悪感は限界突破してるよ。その後実はミツキがミカの恩人のような人だったと知って罪悪感メーターぶち壊れてるよ。
でもミツキがミカのメンタル回復させてるのでこっちのミカはナギサにそっけない態度は取ってないよ。ちゃんと素をさらけ出してお話してくれるし、自分のしたことをちゃんと理解して謝ってくれるよ。原作でのすれ違いみたいなことは起きてないよ。まあ、ナギサはそれどころじゃないんだけどね。
ちなみに、もしミツキがナギサの言う通りにナギサを叩いた場合、叩いてくださいとか言ってたナギサは慣れない衝撃に放心状態になるし、ミツキは手を上げたことに耐えきれずナギサを抱きしめてなでまわしながら謝り続けます。
ごめんねごめんねって、私はナギサちゃんのことが嫌いなわけじゃないんだよって、本当は好きなんだよって、そうして謝罪と共に延々と甘やかすんです。
暴力をふるってからめちゃめちゃに甘やかすとかいうDV彼氏も真っ青な所業……あっ(察し)