ゲヘナ最強の双子の姉   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。

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ナギサ様が元気になって私は嬉しいよ

ナギサ、サクラコ、ミツキの三人でのお茶会は終始穏やかであった。ナギサの心が落ち着いており後押しをしてくれたサクラコへ感謝の念があったこと、サクラコもナギサのことを心配していたこと、サクラコの意味深な物言いがミツキを挟むことで正しく認識されたことなどが主な要因である。

 

とはいえ、心休まる時間も永遠には続かない。アズサの正式な書類の準備や諸々の後始末など、サクラコもナギサもまだやらなければならないことがある。そうして別れの時間になって、ナギサはミツキにとある提案をしたのであった。

 

そして、数日後……

 

 

 

「ごきげんよう、ミツキさん、先生」

 

「こんにちはナギサちゃん」

 

"こんにちはナギサ、話は聞いてるよ"

 

「それは良かったです。では、早速行きましょうか」

 

ナギサの元へ訪れた先生とミツキだが、三人は早くも移動を開始した。姿勢を正してコツコツとヒールを鳴らしながら歩くナギサの横に並び、ミツキを真ん中に三人は歩みを進めていく。

 

"元気になったみたいでよかったよ。私もみんなも心配してたからね"

 

「その節はご心配おかけしました」

 

先生の言葉を受けて先生の方へ視線を向けながら僅かに瞼を閉じたナギサだったが、そのまま視線を下ろして隣を歩くミツキを一瞥したのち、再度先生へと視線を向けた。

 

「……ですが、今はもう大丈夫ですよ」

 

"そうみたいだね。まったく、この調子だと私の立つ瀬がなくなってしまいそうだ"

 

「ふふっ、お二人の長所は異なる方向へ伸びているのですからそう卑下されなくてもよろしいかと。先生にも助けられていますよ」

 

"ふふ、冗談さ。でもありがとね。私は私のできることをするよ"

 

ミツキを挟んで行われる言葉の応酬にミツキが割り込むことはなく、静かに二人のやり取りを聞いていた。だが、その目はジッとナギサを見つめ続けており、長々と視線を浴び続けていたナギサが気付かないはずもなかった。

 

「ミツキさん?いかがなさいましたか?」

 

「ん?なにも無いよ?」

 

「そうですか?何やら私の方を見ていたような気がしたのですが……」

 

「あー、特に理由はないんだけど……」

 

「……?」

 

先生との会話に何か問題でもあったのか、言いたいことがあったのか、それとも全く別のことだろうか。様々な理由が頭に浮かぶが、ミツキ本人が特に理由はないと言っている。なら気のせいかと片付けようにも、歯切れの悪いミツキが気にかかる。

 

どうにも煮え切らない何かを抱えていると、ミツキは恥ずかしそうにはにかみながらナギサに告げた。

 

「ナギサちゃん綺麗だなって思って」

 

「なっ!?」

 

「えへへ、じーっと見ちゃってごめんね」

 

人差し指でポリポリと頬を掻いているミツキの前でナギサは羽根をバサッと広げた状態で固まり、その目は信じられないような物を見たかのように見開かれている。

 

想像もしていなかった言葉に驚愕していたナギサだったが、一度ぎゅっと強く瞳を閉じ、握った手を口元に持ってきてわざとらしく咳払いをすることでなんとか平静を取り繕う。

 

「んっ、んんっ……いえ、構いませんよ」

 

それによって少しは落ち着いたのか広がった羽根はゆっくりと元に戻り、声も震えたり上擦ったりはせず普段通りである。だが、その頬はほんのりと赤みが差しており、目を開けてもミツキのことを正面から見ようとはしない。

 

(お褒めの言葉は立場上慣れていると思っていましたが……いえ、これは不意打ちのようなものでは?それに、ミツキさんが恥ずかしそうな表情をして言うものですから、私の方まで……)

 

「?」

 

悶々としたままのナギサとは異なり、ミツキは既に自然体に戻って頑なに視線を合わせてくれないナギサに首を傾げている。そんな二人を温かい目で見守っている成人男性は静かに口を噤んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして三人は目当ての場所に辿り着く。目の前には扉が存在し、その扉の前にいる正義実現委員会の生徒に見守られながら重々しい扉を開く。自然と誰もが口を閉じ、意識を改める。中に入ると、歩みを進める度にカツーンカツーンと反響した足音が聞こえ、暗く冷たい印象を受ける。背後にある三人が入ってきた扉はゆっくりと閉まり、先生は早々に歩みを止めた。

 

扉の近くで壁にもたれかかるような姿勢になった先生に疑問に思うこともなく、先生を置いて二人は進む。普通とは異なる空気が漂うこの空間に入るのはミツキにとって初めてで、それでも一切引こうとは思わなかった。

 

すると、とある鉄格子が見えてきて、ナギサは口を開いた。

 

「……こんにちは、ミカさん」

 

「ナギちゃん!また来てくれたの?」

 

鉄格子の奥から聞こえる無邪気な声は二人にとって聞き覚えのあるもので、本心からナギサの訪問を喜んでいるのが伝わってくる。ナギサがその正面へ辿り着くと、鉄格子越しに見える顔は嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「ええ、また来ましたよ。今回は私だけではありませんが」

 

「え?それって、どういう――」

 

ナギサの言葉に聞き返すより早く、鉄格子の前にミツキがひょっこりと姿を現した。

 

「また会えたね、ミカちゃん」

 

「ミツキちゃん!?どうしてここに!?」

 

ミツキの視界には、鉄格子の奥で驚愕の表情を浮かべ、前のめりになった体勢のまま鉄格子を掴んでいるミカの姿があった。

 

――なんで?どうして?どうやって?

 

会えるはずがないと思っていた。捕らえられていても扱いは丁寧かつ不自由ないが、それでもゲヘナ生をここまで連れてこれるはずがない。監獄に捕らえられている犯罪者にゲヘナ生をそうやすやすと近付けたくはないはずだ。そんなこと簡単に想像できる。

 

だからこそ、もうミツキとの再会は半ば諦めていたミカにとって今の現実はあまりに信じられないものだった。

 

「ふふ、正義実現委員会に少し無理を言って連れてきました。しっかりとツルギさんとハスミさんに話は通してありますよ」

 

「おー!流石ナギちゃん!分かってるー!」

 

「そして、先生にも協力していただいたのです。立会人のようなものですね」

 

「先生?見えないけど……」

 

「私たちのことを気遣ってくださったのか、入り口の方で待機してくださっていますよ」

 

「そっか、あとでお礼を言わないとね。ナギちゃんも忙しいのにありがとう。もう明日なんでしょ?エデン条約……」

 

「ええ。ですが、それよりも優先するべきだと思いましたから。調印式が終われば、ミツキさんは外交官の役目を終えてゲヘナに戻ってしまいます。その前に、お二人を再会させてあげたかったのです」

 

「ナギちゃん……ありがとう」

 

ミカがそっとミツキの方へ視線を向ければ、ミツキはずっとミカのことを見ていたのか目と目が合う。しばらくの間見つめ合い、どちらからともなく微笑み合い、ミツキは鉄格子に向かって一歩踏み出した。

 

だが、突然腕を掴まれたミツキはそれ以上前へ進めなかったのである。

 

「……ナギサちゃん?わっ!?」

 

すると、後ろからミツキの腕を掴みながら近付いてきたナギサがミツキのお腹の前に腕を回して優しく抱き寄せた。

 

「!?!!??!?!?」

 

「あーっ!」

 

「……細いですね。もう少し食事の量を増やして運動をしてはいかがですか?」

 

「!?、!?……っ!?」

 

「ヒドいよナギちゃん!せめてもっとこっちでやってよ!届かないー!」

 

鉄格子の隙間から両腕を伸ばしてなんとか手を届かせようとするミカだがその手はブンブンと空を切る。ナギサに包まれているミツキは現実を理解しきれておらず、両手を胸の前に持ってきて縮こまっていた。

 

「こんなことをしでかしてくれたお返しです。本当に、どれだけ心配したことか……」

 

「ナギちゃん……」

 

「ミツキさんもそう思いますよね?」

 

「え?……あ、そう、なのかな?」

 

「ええ、そうです。ですから、ミカさんにミツキさんはお預けです」

 

そうして、ナギサはミツキのお腹の前にある手でミツキのお腹をすりすりとなで始めた。

 

「うぅ……少しくすぐったいよぉ……」

 

「ふふふ、ミツキさんにも先程のお返しです」

 

わずかに赤面しながら体を捩るミツキと、その背後で楽しそうに手を動かすナギサ。目のまえで繰り広げられるそれを見ていることしかできないミカは、いつの間にか伸ばしていた手で鉄格子を強く握りしめていた。

 

「……あはは、ナギちゃん、私そろそろ我慢の限界かも。ねえ、この檻壊してそっち行ってもいい?私なら結構簡単にできると思うんだよね」

 

(あはは……)

 

「ミカちゃん!?そんなことしたら駄目だよ!?ホントに駄目だよ!?」

 

(『あはは……』)

 

「……ぐふっ」

 

真剣な顔をしながら今にも鉄格子をこじ開けてこちらにやって来ようとしているミカを必死に呼び止めるミツキだったが、突如精神的ダメージを負ったナギサがぐったりともたれかかってきた。

 

(『あはは……』……『あはは……』……『あはは……』……)

 

「あ、あれ?ナギちゃん?」

 

「ナギサちゃん!?どうしたの!?大丈夫!?」

 

壊れたラジオのようにとあるワードばかりが脳内で再生され続けているナギサを心配しているらしく、どうにかならないものかとミツキはナギサの腕の中でもぞもぞと動いている。ミカもナギサの様子に驚いているようで、牢屋から出ようなんて思考は吹き飛び、目をまん丸にさせてナギサを見つめていた。

 

ミツキにもたれかかっているナギサは元の身長差とヒールのおかげでミツキの頭頂部に顔を埋めており、ミツキが動く度に髪の毛がふわふわとナギサの顔をなでる。

 

(……なんでしょうこれは……ふわふわ……もふもふ……そして甘い香り……?何やら嗅いだことのあるような……)

 

「すぅー……」

 

「……ナギちゃん?なにしてるの?」

 

「ハッ!?な、なんでもありませんよ。ええ、なんでもありませんとも」

 

ナギサが思わずバッと顔を上げると、怪訝そうな顔をしたミカがこちらを見つめていた。自身の行動を思い返したナギサはミツキを解放し、何事もなかったかのようにピシッと姿勢を正した。

 

「あ、ナギサちゃん大丈夫?どうしたの?」

 

「い、いえ、大丈夫です。ご心配なく……」

 

「そう?」

 

そうして、ナギサから解放されたミツキはミカの方へ近付いていく。ミツキが鉄格子のすぐ近くで止まれば、ミカはそれを迎え入れるかのように鉄格子の隙間から手を伸ばし、左手を頬に添えて右手でミツキの頭をなで始めた。ミツキはされるがままで心地よさそうに微笑みながらミカの目をじっと見つめている。

 

「ありがとね、会いに来てくれて」

 

「うん。またねって言ったから。ずっと会いたかったよ」

 

「ふふ、そっか」

 

ミカは嬉しそうに破顔し、頭をなででいた手はその範囲を広げ、ついには頬に添えてミツキの顔を両手でむにむにとこねくり回していた。

 

「……」

 

「ミカちゃん……?」

 

無言のミカはミツキをジッと見つめているにも関わらず、ミツキの言葉になんの反応も返さない。顔を挟んでいる手は徐々に徐々に力が強くなっていき、ミツキの頬はぐにぐにと変形していく。

 

「や……やめ……むぃ……」

 

流石に止めようとミカの腕を掴むがミツキの腕力で止められるはずもなく、声も届かずに頬を弄ばれている。それを傍から見ていたナギサはぷるぷると体を震わせて笑いだしそうになるのをこらえていた。

 

「……」

 

「うに……み……みかちゃ……にゅ……」

 

だが、頬を弄ばれているせいかまともに喋ることもできないミツキの弱弱しい声についに限界を迎えた。

 

「んふっ、ふふふふっ……ミカさん、少し力を緩めてあげてください……ふふっ」

 

「えっ、あっ、ごめんねミツキちゃん!」

 

「う、うん」

 

ミカがパッと手を離すと、ミツキは頬に両手を当ててくるくると軽くマッサージをしている。

 

「まったく、ミカさんはもう少しミツキさんのことも考えてあげてくださいね」

 

そう言いながらミツキの横にやってきたナギサは、変わらずに自分の頬に当てているミツキの手を優しく除けて代わりに自身の手を添え、覗き込むように顔を近付けながらミツキの顔をクイッと持ち上げた。

 

「大丈夫でしたか、ミツキさん」

 

「ぅぁ……」

 

突然視界いっぱいに広がるナギサの顔に、ミツキは顔を真っ赤にしながら言葉にならない声を上げている。

 

「むー……ナギちゃんばっかりズルい〜!」

 

「ズルいズルくないの話ではありません。ミカさんが乱雑な扱いをするのが悪いのです」

 

「ズルいよー!少し離れちゃったらここから何もできないじゃん!」

 

「……でしたら、早くそこから出てきてください。私はずっと待っていますから」

 

「……うん」

 

ワイワイと、それこそここが監獄であるとは思えない雰囲気から一変、二人の間にはしんみりとした空気が流れている。すると、ナギサはふっと表情を緩めてゆっくりとミツキの頬から手を離し、そのまま正面から抱きしめた。

 

「んぇっ!?」

 

「あっ!」

 

「さもなければ、ミカさんは見ていることしかできませんよ」

 

「ぐぬぬぬぬ……!やっぱりズルいー!」

 

「ふふふ」

 

そうして、三人だけの密会は賑やかで穏やかなまま続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカと別れ、ミツキと先生とも別れた後、ナギサは一人ティーセットを並べたテーブルの前に座りながら先程の時間を思い返していた。

 

(あそこまで気楽に会話を楽しめたのは久し振りでした。ミカさんとミツキさんと、何を気にすることもなく思ったままに……)

 

そうして脳裏に浮かぶのは、ミカとの気兼ねない会話や鉄格子の奥にいようが変わらぬ笑顔に明るい性格。今でも思わず笑みが溢れてしまうような、かつてはよくあった何気ない日常の一コマ。

 

(ふふ、どこか懐かしいような気さえしてきますね)

 

だが、思い出すのはそれだけではなかった。

 

後ろからミツキを抱きしめてお腹を撫で回していた自分に、ミツキの頭に顔を埋めて吸っていた自分、顔を持ち上げて至近距離で見つめ合っていた自分、正面から抱きしめていた自分。そして、ミツキの赤らんだ顔。

 

(……)

 

ナギサはピシリと固まった後、わなわなと震える手で頭を抱えた。その頬にはわずかに朱が差している。

 

「……いったいなにをしてるんですか私は……いくらテンションが上がっていたからといえど、これはあまりにも……」

 

(次からどんな顔をして会えば……?ど、どうしましょう……)

 

たった一人、ティーセットを前に顔を赤らめ悶絶するティーパーティーのホストが誕生した。

 




なんだかアレですね、年の離れたいとこのお姉ちゃん達に可愛がられてる女の子みたいですね。

ナギサ様はそこまで意識せずに行動しちゃうけど、その後自分の行動を振り返って悶えてそう。先生とかじゃない対等(だと思っている)な相手だからこそ、ね。無意識に距離が近いナギサ様……いいよね。






ちなみに、ミツキはサクラコに「ミカに会いに行くのはできないか」という質問を何回もしています。でもシスターフッドの独断でゲヘナ生を連れて行くとかできないので難色を示されてたんですね。今回ナギサ様のおかげでようやく会えました。やったね。
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