ゲヘナ最強の双子の姉   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。

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理性が飛び立つのも時間の問題

今日もいつも通りに事務所へ足を運ぶが、その足取りは重い。先日の仕事で社長が"いつもの"をしてくれたおかげで私たちのお財布は寂しいことになっている。こんなのはよくあることではあるけど、だからといってそれを気にせずにいられるわけではない。このままだとまともな食事にすらありつけなくなってしまう。

 

資金が完全に底を尽きる前になんとかしないといけないのに今は仕事の依頼もないしどうしたものか。ただ事務所へ向かっているだけだというのに漏れ出るため息がこのどうしようもない状況に対する私の100%素直な反応である。

 

いつも以上に重みがあるような気もする事務所の扉のドアノブに手をかけ、扉を開く。そして気だるい表情を改めることもせずいつものように部屋へと向かった。

 

「……?」

 

もう何度も利用している見慣れた場所に覚える違和感。この空間には見慣れない、されど私にとっては見慣れた人物がソファに座っている。ミツキだ。後ろ姿しか見えないけど見間違いなんかじゃない。もう2年以上の付き合いになる相手を見間違えたりはしない。

 

それにしても、なんでミツキがここにいるんだろう。今日来るなんてそういった話は聞いていないし、何か用でもあったのかな。まあ考えるより本人に聞いた方が早いか。

 

……でもミツキはずっと下を向いたまま動かない。寝てる?それともスマホを見てるの?

 

ふと湧き上がる好奇心を抑えることはできず、まだこちらに気付いていない様子のミツキにバレないよう忍び足でゆっくりと近付いていく。

 

そうして手を伸ばせば届く位置まで近付いてソファ越しに斜め上から顔を覗かせてみれば、ソファの背もたれによって入り口からは見えなかった位置でムツキが膝枕をしてもらっているのが見えた。

 

「……」

 

「……」

 

目と目が合い、お互いの体が一瞬硬直する。何をしてるのかと私が口を開くすんでのところでムツキは楽しそうに顔を歪め、視線を私からミツキに移して声を上げた。

 

「ミツキちゃんナデナデしてー」

 

「ふふふ、いいよー」

 

「……」

 

出かかった私の言葉を上から潰しておきながら頭を撫でてもらってご満悦な様子のムツキはミツキの手が頭を往復する度に僅かに目を細め、楽しそうな顔に心地よさげな色が滲み出ている。ここから見えるミツキの横顔はとても穏やかで、慈愛に満ちた表情をしていた。

 

……ほんの少し、ほんのちょびっとだけ苛立ちを覚えた私に気付いたのか、ムツキは白々しくも今私に気付いたかのように振る舞う。

 

「カヨコちゃんいらっしゃーい」

 

「カヨコちゃん?わっ、いつの間に後ろにいたの?気付かなかった。こんにちは!」

 

こちらに振り返りただ挨拶をするだけだというのに笑顔を見せるミツキに思わず言葉が詰まる。ムツキに何か言ってやりたいが、何を言うにしてもミツキがいるし言葉を飲み込む他ない。ムツキはそんな私を見て、ミツキが見ていないのを良いことに口元に手を当てていたずらが成功したようなしたり顔をしていた。

 

「……くふふ」

 

「こんにちは、ミツキと……ムツキも」

 

私はただ挨拶を返し、ムツキに対しては軽く睨むだけにしてあげた。すると、ムツキはもう片方の手も口元に持っていき「きゃーこわーい」という声が聞こえてきそうなくらいキャピキャピし始めた。なんだコイツ。

 

「ムツキちゃんどうしたの?かわいいけど……」

 

「んーん、なんでもなーい。そんなことより手が止まってるよ〜?」

 

ムツキはそう言って誤魔化すようになでなでを催促しており、ごめんごめんなんて言いながらなでるのを再開したミツキとだらけきったムツキを横目に私は適当に荷物を置いて2人の対面に座った。

 

「それで、なんでミツキがここに?来るなんて聞いてないけど」

 

「実はさっきムツキちゃんと会ったの。それでお話してたら来ない?って誘われたから来ちゃった」

 

「来ちゃったって……悪いけど私たちは今お金がないから何もできないよ」

 

「うん、それは別に大丈夫だよ。ただみんなと会いたかっただけだもん」

 

「……そう」

 

「くふふ、やっぱり来る理由とかミツキちゃんって感じがするよね〜」

 

ムツキがミツキの膝からバッと起き上がりながら言う。前から変わらないその有り様はたしかにミツキらしいが、正面から会いたかったと言われるのはどこかむず痒い。

 

「ねえねえカヨコちゃん。私とミツキちゃんって名前似てるじゃん?」

 

「そうだね」

 

突然なんの話だろう。たしかにミツキとムツキは一文字違いだし、ミとムは50音でも前後の並びだけど、それに何か意味が……?

 

「目の色も似てるじゃん?」

 

「うん」

 

「髪色も似てるじゃん?」

 

「……まあ、そうかも」

 

2人とも目の色は紫。多少の色の濃さは異なるが似ている。髪色はムツキが白で……まあ、ミツキの髪は紫が入ってるけど白っぽいし似ていると言ってもいいだろう。

 

「それでどっちもカワイイじゃん?」

 

「……」

 

「だからさ、なんとなく他人って感じがしないんだよね!」

 

「わっ!?」

 

そう言いながらムツキは隣に座っていたミツキの肩に腕を回して両手でピースを見せつけてきた。なんだコイツ。「いえーい」じゃない。うるさい。

 

「??……ぴ、ぴーす」

 

突然のことに戸惑いながらも、ミツキもムツキの腕の中からピースをしている。嫌ならそいつ突き飛ばしていいんだよ。

 

「ほらね!!」

 

「なにが?」

 

ピースしたミツキを見て一層目を輝かせたムツキがこちらに何かを訴えてくるがわけがわからない。日本語で説明して。ほらねで伝わるわけないじゃん。

 

「まあいいや。そんなことより私いいもの持ってきたんだよねー」

 

そう話すムツキはじっとミツキの顔を見つめている。

 

「……え?」

 

「じゃあちょっとあっち行こうねーミツキちゃん」

 

「え?え?」

 

ムツキは突然立ち上がり、何が何だかといった様子のミツキの腕を引っ張って部屋を出ていく。……まあいいか。いくらムツキでもそうそう悪いことにはならないはず。

 

静かになった部屋の中で特にすることもなくぼーっとスマホをいじっていると、ホクホクとした表情のムツキが帰ってきた。ミツキは?

 

「ミツキはどうしたの?」

 

「気になる?」

 

「……そりゃあね。ムツキが連れ出したんだし」

 

「くふふっ!多分もう来るよ!」

 

すごく楽しそうというか、ワクワクしているというか……気になる。一体何が?

 

「そ、その……本当にそっちいかなきゃダメ?」

 

「ダメだよミツキちゃん!ほらほら!」

 

私が疑問に思っていると扉の向こうからミツキの声が聞こえてきた。その声はかなり弱々しいが、ムツキはそんなの知ったことかとミツキにこっちにくるよう催促している。テンション高くない?

 

「う、うぅ〜……でも恥ずかしいよ……」

 

そう言いながらミツキは扉を少しだけ開けて……

 

「――っ」

 

顔を覗かせてこちらを窺った。それだけなのに、たったそれだけなのに、私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を覚えていた。

 

ほんのりと頬を赤くしているミツキのその頭上には、猫耳が生えていたのだから。

 

「な、なにあれ……」

 

思わず言葉に詰まるが、平常心を保とうとなんとか言葉を吐き出す。

 

「すっごくカワイイでしょ?ぴったりミツキちゃんに合うやつ見つけちゃったからさぁ。そんなの買うしかないよね!」

 

ミツキの髪色とそっくりな色をした猫耳は、基本的に薄紫色で耳の内側が白くもふもふしている。全体的にふわふわとしたそれはミツキの雰囲気とも合っているように思えた。

 

「ほら、ミツキちゃん。こっちにおいで」

 

そう手招きするムツキに最初は応じなかったミツキだが、数秒か、数十秒か、変わらずにミツキを待ち続ける私たちに観念したようでおずおずとその姿を私たちの前に曝け出した。

 

「……そ、そんなに見ないでよ……はずかしいし……」

 

両手でスカートを握りしめながら視線を上げないミツキに何か言おうとした。言おうとしたが、私の口から言葉が発されることはなかった。とある場所に視線が奪われそれどころではない。

 

……尻尾だ。尻尾が生えてる。ミツキの後ろ側だからほとんど見えないが、足の間からチラチラと見えているアレは尻尾だろう。これも同じく薄紫色で、まるでミツキが猫になったかのような……。

 

「……」

 

「わー!ばっちり似合ってるよ!このムツキちゃんの目に狂いは無かったね!……はいチーズ!」

 

「あっ!と、撮るのはなし!だめ!」

 

「くふふ、そんなこと言える立場なのかな〜?もう私の手元には猫ミツキちゃんの写真があるんだよ?これがばら撒かれたくなければ……ね?」

 

……それはただの脅しでは?

 

「うぅ……うぅぅ〜……!!」

 

「ほらほら、モモトークで簡単に送れちゃうよ〜?」

 

「絶対、絶対誰かに見せたらダメだからね?」

 

「もっちろん!じゃあさっそく猫の手でカワイくポーズとって!」

 

ウッキウキでスマホを構えながらポーズを指定してくるムツキの言う通りにミツキはゆっくりと両手を握り手首から先を前に倒して猫の手を作った。そして、それを顔の横に構えて……鳴いた。

 

「……にゃ、にゃぁ?」

 

……は?

 

「うぐっ!急に鳴き真似も入れてくるのはズルいじゃん!サイッコーだよ!」

 

「あ……」

 

別に鳴き真似は指示されてなかったことに今気付いたのか、さっきまでよりもさらに顔を赤く染めて両手で顔を覆ってしまった。そんなミツキをムツキは構わず写真に収めていく。

 

「……ミツキを呼んだ理由ってこれ?」

 

「そうだよ!衝動的に猫耳と尻尾を買ったらタイミングよく出くわしたんだもん。試すなら早い方がいいでしょ!」

 

「……ムツキちゃんのうそつき。久し振りに皆でゆっくり話でもって言ってたじゃん」

 

「んー、もちろんそれは嘘じゃないよ?それに私はそれだけなんて言ってないしー?」

 

「……」

 

ミツキは「私不機嫌です」とでも言いたげな表情でムツキを睨んでいるが、その顔は真っ赤だし睨み慣れていないのか全く怖くない。むしろ猫耳と尻尾のせいでかわいらしくなっている。

 

「もう外してもいい?」

 

「えー?今日一日は付けててよ」

 

「ゃ、やだよ……」

 

「ぶーぶー、別にいいじゃん。ね、カヨコちゃん」

 

「……え?私?」

 

なんで急に私?

 

「だってさっきからぜーんぜん喋らずに興味津々でずーっとミツキちゃん見てるし。手なんかめちゃめちゃ力入ってて触りたそうだし。猫ミツキちゃん大好きでしょ?」

 

「……ムツキの気のせいでしょ」

 

「ふーん?本当に?」

 

それこそニヤニヤという音が聞こえてきそうなくらいに口角を上げて私を見ているが、そんなことはない。今ムツキが言っていたのは全部ムツキの妄想で、私の意思とは一致していない。ないったらない。気付いたら爪が手のひらに食い込むくらいに手を握りしめていたけど、その手はもうパーカーのポケットの中に突っ込んだし。

 

「か、カヨコちゃん……」

 

チラリとミツキに目をやると、ミツキは懇願するように、期待するようにこちらを見ていた。

 

……。

 

「……今日一日くらいはいいんじゃない」

 

「えぇ!?」

 

「やっぱりカヨコちゃんならそう言うと信じてたよ!」

 

……ごめんミツキ。ちょっと無理かも。

 




これは多分続きます。絶対にあるであろうシーンがないもんなぁ!!




最近忙しくて週1投稿になってしまっています。許してヒヤシンス。その代わりといってはなんですが、激オモロギャグ思い付きましたので供養しときますね。


"""久方ぶりに登場したカヨコ、久方カヨコ。"""


……。

笑えよ。
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