ゲヘナ最強の双子の姉 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
助けて
今日もいつものようにお祈りをして清掃を行います。日々の安寧を願い、皆さんの幸福を願い、心を落ち着かせてシスターのお仕事を全うするのです。
毎日あるというわけではありませんが、ボランティアに参加することも多いです。ボランティアを通じて多くの皆さんのためになれたらと、私でも誰かの助けになれたらと、そう思っています。
ただ、最近は別のことを考えてしまうのです。普段の生活でもシスターとしての活動中でも、一人になるとふと頭に浮かぶのです。私はその度にそれを振り払い忘れようと試みるのですが、そう上手くはいきません。今だってこうして考えてしまうのですから。
どうしたものかと頭を捻りながら歩いていると、私はいつの間にかシャーレに到着していました。今日は当番なのです。先生のお力になるためにも、集中して取り組まなくては。
そう意識を改めている私でしたが、突如として背後から声が聞こえ、それと同時に体に衝撃が走りました。
「マリーちゃん!」
「きゃっ!?」
思わずたたらを踏み、悲鳴を上げてしまいました。後ろから回されている腕は私のことをぎゅっと強く抱きしめ、私の頭の左側に顔があるのか左肩には薄紫のふわふわとした髪の毛がかかっています。ふんわりと漂ってくるのは何度も嗅いだことのある甘い香りで……。
私の悩みのタネが、こうして枯れることなく育っていくのです。
「み、ミツキさん!?」
「えへへ、マリーちゃんこんにちは」
後ろから抱きしめられているせいでミツキさんの顔は見えませんが、きっとにこにことしているのでしょう。楽しそうな声がすぐ後ろから聞こえてきます。上がりそうになる口角を表情筋でなんとか押さえ、平常心を保ってシスターらしくミツキさんに注意を促します。
「ミツキさん、既に何度も申し上げましたが後ろから突然抱きつくのは危ないですよ。もし倒れてしまったら怪我をしてしまうかもしれません」
「だってマリーちゃんを見つけたら体が勝手に動いちゃって……」
少しいじけたように放たれたその言葉を受けてきゅっとなる口元を見せないように正面を向いたままにします。つい許してあげたくなってしまう心に蓋をして、お腹の前にあるミツキさんの腕にそっと手を添えました。
ですが、どうやら蓋をするのが遅かったみたいです。
「つ、次から気を付けていただければ……それで……」
……あぁ、またやってしまいました。結局、断ることができずになあなあにしてしまいました。いつもこうなのです。どうしてもミツキさんに強く言うことができません。
こうしてじっとしていると、背中にミツキさんがくっついている感覚に意識がいってしまいます。後ろから抱きしめられて、その腕を振り払うでもなく手を添えて。これではまるで、まるで……いえ、駄目です。変なことを考えてはいけません。
「ごめんね。じゃあ前からぎゅーってするから許して?」
「……ふぇ?」
すると突然、私の背中から離れたミツキさんが私の正面に回り込んで腕を広げたのです。そのまま近付いてくるミツキさんを見つめながら、それでも私の体は動かなくて。
いつの間にか、私は体の前にあった腕を動かしてミツキさんが正面から抱きしめやすいようにしていました。ミツキさんとより密着できるように。己の身を差し出すように。
「ぎゅー」
「ぁ……」
そうして間もなく、私の体はミツキさんに包まれました。背中からよりも鮮明に感じ取れる温かさと柔らかさ、すぐ目の前にあるミツキさんの顔、そして先程よりも濃いミツキさんの匂い。
胸の奥がふわふわと浮ついて、熱を持ち今にもだらしなく緩んでしまいそうな顔を押さえることができず、かと言ってそんな顔を見せられるはずもなく、私は頭を少しだけ右に動かしてミツキさんの首元に顔を埋めてしまいました。
ベール越しにミツキさんの頬と私の頭が触れ合って、息を吸う度にミツキさんの首元の匂いが鼻や口を通って頭も肺もミツキさんでいっぱいになっていきます。
「ふふ、マリーちゃんは恥ずかしがり屋さんだね」
そう言いながら、ミツキさんは私の頭を優しくぽんぽんと叩いています。あぁ、
これから、ミツキさんが満足するまで頭や耳を弄ばれてしまうのでしょう。大切な物を扱うような優しい手つきで、しなやかな指で、耳元でそっと好意を囁いて。
これから起こるであろう避けることのできない未来にミツキさんの腕の中で身構えていると、ミツキさんは私の頭から手を離し、そのまま私を解放しました。
「ぇ……?」
……どうしてですか?いつもなら――
「あんまりここで時間を使っちゃうのはよくないよね。先生も待ってるだろうし、そろそろ当番行こっか」
「……は、はい」
ミツキさんが離れ、少し前で私が歩き出すのを待っています。そうです、今日は当番の日。当初の目的を完全に忘れていました。ぼーっとしてしまう頭を働かせるために両手でパチンと頬を叩き、なんとか意識を切り替えます。熱かった顔もわずかながらに元に戻ってきたような気もします。
むんっと気合を入れて前を見ると、ミツキさんはそんな私を見て柔らかく微笑んでいました。
「……っ」
その表情を見ただけでまた顔に熱が集まっていきます。ミツキさんの視線から逃れるべく斜め下を向きながらミツキさんの隣に向かい、その横を通り過ぎます。すると、視界の端には何も言わずに隣を歩くミツキさんの姿がありました。
シャーレのオフィスに入ると、デスクにいた先生が顔を上げて目と目が合いました。
"やあ、こんにちはマリー"
「はい。先生、今日もよろしくお願いします」
"ミツキもおかえり"
「はーい、ただいまです」
そうして挨拶もそこそこにいざお仕事に取り掛かろうという時、私達当番の生徒が使用するデスクの方から声が聞こえてきました。
「迎えに行くにしては随分と時間がかかっていたみたいですが?」
そちらへ顔を向けると長い黒髪の少女が無表情のままジトっとした目でミツキさんを見つめており、持っているペンでこつこつとデスクを叩いています。あの制服はミレニアムの方でしょうか。どこか責めるような雰囲気すら醸し出しているその方はミツキさんの言葉を待っているようでした。
「えー、普通にお迎えしただけだよ?先生、そんなに遅かったですか?」
"うーん、言う程遅くはないと思うけど……迎えに行くだけにしては遅かった気もするね。入口まで行って帰って来るだけならササッと終わると思うし"
「でしょう?いったい何をしていたんですか?」
ジロリと私の方にも視線を向けられて、ぴくりと肩が動いてしまいます。
「あ、えっと……その……」
正直に全てを話すのは少し気恥ずかしいものがあり、とはいえ無視する訳にもいかず、なんと言ったらよいのかも分からないままあたふたしているとミツキさんはそっと私の背中を擦ってくださいました。
「そんな無理しなくてもいいからね?ほら、初対面なのに困らせちゃ駄目だよケイちゃん。少しお話してただけだし」
「……そうですか。ええ、分かってますよ。貴方がそういう人であるということくらい」
「あれ?なんか私馬鹿にされてる?ケイちゃん?おーい」
ケイちゃんと呼ばれた方は冷たくあしらうように言い捨てた後、視線をデスクに戻して書類作業を再開したようです。そんな対応をされたミツキさんはどこか納得がいっていないらしく、ケイさんに向けて言葉を投げかけています。
すると、ケイさんは視線を落としたまま口を開きました。
「肩」
「え?肩?」
「左肩にオレンジ色の糸のようなものが付いています。その人の髪の毛でしょう?それ」
「ぇ……!?」
嘘っ!?
「ホント?……あ、ホントだ」
ど、どうしましょう!?これでは何の言い逃れも――
「それでよく少しお話しただけなんて言えましたね」
「お話もしたもん。ただちょっとハグしながらだったってだけで」
や、やめ――
「その方は背中まで覆うようなベールを着けているので正面からじゃないと肩に髪の毛なんて付かないと思いますけど?……へえ、それとも正面から抱き合うのはお二人にとってちょっとしたことなんですか?」
もうやめてくださいお願いします。両手で覆った顔は火が出そうなほどに熱く、羞恥心で頭が沸騰しそうです。今日はただ当番に来ただけなのに……どうしてこんなことに……!
「そんな言い方しなくても……あ、もしかしてケイちゃんもハグしたかった?」
「……は?」
「なんだー、言ってくれればハグくらい喜んでするのに」
そうして、ミツキさんはケイさんの所へ歩みを進めていきます。にこやかなままに。
「ちょ、なんで近付いてくるんですか。止まってください。……止まりなさい。……聞いてますか!?止ま「ぎゅー」むぐっ」
「よしよし、ケイちゃんはかわいいね」
「んー!!むー!!」
ミツキさんは座っているケイさんの頭を抱きしめ、頭をなで回しています。ミツキさんの胸元にすっぽりと収まっているケイさんはミツキさんの体を引き剥がそうとはしていますがミツキさんが離れることはありません。
……おそらく、アレはそういう
……羨ましい。
……。
ぇ……?わ、私……今、なにを……?
「ふふふ、ケイちゃんの方から抱きしめ返してもいいんだよ?」
私の視線の先では抱きしめる腕を緩めたミツキさんと、それによってできた隙間から顔を覗かせて呆れたような表情でミツキさんを見上げているケイさんの姿がありました。
「何ふざけたことを……」
「……っ」
目が、合いました。こちらをチラリと見たケイさんと。その目は何かを見定めるようで、私の心の中まで見透かされているかのようで。すると、ケイさんは少しの間瞼を閉じて、再度ミツキさんを見上げました。その目は呆れどころか侮蔑しているようにも見えます。
「……ミツキ先輩、最低ですね」
「えっ!?」
え……?
「また女の子に手を出したんですか?」
「なんで!?」
えっ……そ、それって……
「分からないのならもういいです。ミツキ先輩はやはりそういう人だったのだと理解しました」
「ちょっと!私何も分かってないのに話だけが勝手に進んでるよ!せめて会話をしよう!?」
「貴方と会話をするだけムダです。どうせなんにも理解していないですし、してくれないですから」
「わ、分かんないじゃん!ね?ケイちゃんとのお話なんだからちゃんと聞くよ!私ケイちゃん大好きだもん!」
「……チッ」
「舌打ち!?」
何を、見られたのでしょうか。ケイさんは、私の何を……。私はそのときどんな顔をしていたのですか?私は、何を考えていたのですか?私は……私は、いったい……
「マリーちゃん」
「はっ、はい!?」
私の思考を遮るように、ミツキさんが私の名前を呼びます。突然のことに裏返った声で返事をしてしまったことへの羞恥心を感じていると、ミツキさんはデスクを指差して口を開きました。
「ずっとそこで待たせちゃってゴメンね。空いてるところをマリーちゃんが使っていいからね」
「……はい」
そうです、当番として来たのですからその役目を果たさなくては。いそいそと空いているデスクに座り、書類を広げます。ですが、書類に目を通していてもどうしてか集中できません。頭の中にもやがかかっているような、煮え切らない何かがあるような気がして。
「うわ……やっぱり最低ですね」
「なんでよ!?」
すぐ近くから聞こえてくるお二人の会話も、今は聞きたくありませんでした。
実はアリス(ケイ)とマリーの身長は1cm差。ほぼ同じ。なんならミツキとも3cmくらいしか差がない。うん、狂いそう。わけわからん。
ミツキに振り回されて悶々としたものを抱えながらなんだかんだ頑張っているマリー。頭の中ではなんとか平静を保っているつもりですが、ミツキに抱きつかれてるって自覚した瞬間から耳はピコピコしてたし、頭ぽんぽんされてるときはやりやすいよう耳を畳んでいたし、なでなでせずにミツキが離れた瞬間耳はへたりとしおれちゃいました。かわいいね。しかも最後の方はほとんど耳がしおれてます。どうしてだろうね。本人はそれに全然気付いてないけど。
その情報を持った上でもう一度見てみてみましょう。マリー視点でお話が進んでる中、「……そうは言っても今耳動いてるんだよなぁ」「今耳へなへななのかな」という気持ちでマリーを楽しめます。かわいいね!
※マリー過激派の方は許してください。