ゲヘナ最強の双子の姉 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
以前の「名前の無い感情」の続きです。見返してからの方が内容が理解しやすいと思います。別に見なくても分かると思います。好きにして。
前はもやもやしたまま終わってしまいちょっとかわいそうだったので反省しました。後は私に任せろ!(根拠のない自信)
「ね〜え〜、ケイちゃ~ん、私の何が悪いの〜?マリーちゃんに何も酷いことしてないよ〜?」
「……」
私のすぐ近くには座って書類仕事をしているケイさんと、そんなケイさんを抱きしめるように後ろから腕を回して左右にゆらゆらと揺れているミツキさんの姿があります。前傾姿勢になってケイさんの肩や頭にベッタリとくっついているミツキさんはケイさんに質問を繰り返していました。しかし、ケイさんが何か言葉を返すことはありません。
ミツキさんを無視して黙々と業務を続けていたケイさんでしたが、ミツキさんが一際大きく揺れた勢いによって持っていたペンがあらぬ方向へぐにゃりと線を引いてしまい、わなわなと肩や腕を震わせてからペンを机に放り投げました。
「あーもう!邪魔です!」
カラカラと音を立てて転がるペンはいくらか転がった後クリップによって止まり、空間はシーンと静まり返りました。横目で見ているだけだった私が思わず顔を上げてそちらを見ると、ケイさんは上半身を前に倒しながら振り返り、ミツキさんを睨みつけていました。
「だってケイちゃんが教えてくれないんだもん。教えてくれればやめるもん」
そう言いながらミツキさんはツーンと拗ねたように口元を尖らせています。仕草と表情の子供らしさが、普段私があまり見ることのないミツキさんが、すぐ目の前にいます。普段の全てを優しく包み込んでくださるような柔らかい微笑みとは打って変わって、可愛らしい表情のミツキさんから視線が外せませんでした。
「はぁ……本当に何も分からないんですか?今のコレみたいなことを当たり前のようにやっている時点でおかしいんですよ」
「えー、でもケイちゃんは受け入れてくれたじゃん」
「は?」
「だって私が大きく揺れてペンがズレちゃったから怒ってるんでしょ?じゃあぎゅーってするのはいいんじゃないの?」
「……どうせ引き剥がしても繰り返し抱き着いてくるでしょう?毎回毎回引き剥がす労力と我慢することを天秤に掛けただけです」
「むー……」
嘘です。本当に嫌なら、最初から拒否すればいいのです。ミツキさんは優しいですから本気で嫌がる人にしつこくスキンシップは行いません。仕方なくさせてあげているという体を取っているだけなのです。
ミツキさんは気付いていないのでしょうか。本日が初対面の私ですら……いえ、そういった感情の機微に聡いのなら、ここまで私が頭を悩ませることもなかったのかもしれません。
ですが、もし……もしも、もしも全て分かった上で、ミツキさんの手のひらの上で、手玉に取られているのだとしたら……?
「マリーちゃん」
「はっ、はいっ!?」
ヘンな事を考えていたせいか、素っ頓狂な声を上げて肩がビクッと跳ねてしまいました。ミツキさんからは心配そうな目を、ケイさんからはジッとこちらを伺うような目を向けられています。
「ボーっとしてるけど大丈夫?」
「だ、大丈夫です。少し疲れてしまっただけですから……」
ミツキさんから顔を背け、ほんのり熱くなった頬を自覚しながらなんとか誤魔化します。すると、コツコツとこちらに近付いてくる足音が聞こえてきました。ミツキさん……?
「大丈夫?あ、お仕事結構終わってるね!頑張ったんだね!」
ミツキさんは私の頭にポンっと手を置き、そのままスリスリと頭をなでてくださいました。
「はっ……はい……」
堪らずグッと体に力を入れて堪えます。膝の上に置いた手を強く握って、靴の中で足の指もぎゅっと丸めて。そうでもしないと感情を抑えられそうにありません。先程シャーレに入る直前にしてもらえずお預けされてしまったせいか、ミツキさんになでてもらえているという事実だけで今にも喉を鳴らしてしまいそうでした。
「……そういうところだって言ってるんですよ」
「え?なでなでが駄目ってこと?」
「はぁ、もういいです。やっぱり会話なんて意味ないじゃないですか」
「ヒドくない!?」
お二人は何を話しているのでしょうか。ただミツキさんの手の感触が私を支配していきます。耳に届く声を言葉として理解しようとしてもミツキさんの手のことしか考えられず、わちゃわちゃと聞こえてくるお二人のやり取りが今はあまり理解できていません。
「もー、ケイちゃんの言ってることヒドいよね?」
「そ、そうです……ね……?」
「だよね?マリーちゃんはいい子だね〜。よしよしよしよし」
「ぅぁ……」
先程よりも強くグリグリと頭をなでられます。胸の奥から幸福感がぽわぽわと溢れ出し、体は更にミツキさんを求めて動き出そうとします。そんな衝動を抑えるように僅かに俯き、握りしめた手を見つめてなんとか耐えます。ベールが無ければ、私の真っ赤になってだらしなく緩んだ顔が見られてしまっていたのかもしれません。
「まったく、そんなことばかりしていると仕事が進みませんよ」
「あ、そっか。ごめんねマリーちゃん」
「ぁ……」
ふっとミツキさんの手が頭上から離れていきます。まだいつもしてもらっている量には足りないのに。まだ少ししかなでてもらってないのに。いつもなら嫌というくらいなで回すのに。耳だって触ってもらってないんですよ?さっきお預けしたのにまたお預けするんですか?
「私はやる事が終わったので先生の方へ行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい。そろそろ私も行こうかな」
バッと顔を上げて見ればケイさんは既に立ち上がってこちらから離れていき、ミツキさんも私に背を向けていました。ミツキさんが離れてしまう。それを理解した私はいつの間にか立ち上がり、ミツキさんの背中に抱き着いていました。
「わっ!?ま、マリーちゃん?」
……ど、どうしましょう!?なんで私はミツキさんに抱き着いているんですか!?こんなつもりじゃ……!!でも、ふわふわの髪の毛に顔を埋めるの幸せ……いい匂いです……。
「どうしたの?」
「す、すみません……つい……」
ミツキさんのお腹に回した私の手にそっとミツキさんの手が添えられて、そのしなやかな指が私の手の甲を優しくなでています。私に問いかけているその声はとても優しくて、どうしてか気恥ずかしさが増していきます。
「ふふ、マリーちゃんかわいいね」
「うぅ……」
や、やめないと……こんなこと、こんなこと……私は……
「いつも頑張っててえらいね。シスターとして毎日人のために献身的に動いてるんだから、こういうときくらい甘えてもいいんだよ」
私は……私は、頑張っていますか?甘えてもいいのでしょうか?どうして、やめないといけないんでしたっけ。ミツキさんがいいと言っているのですから、いいのではないでしょうか。今が幸せなのですから、それで……
「……」
きゅっとミツキさんの服を掴む。甘えたいという私の深層心理か、今の状況をやめなくてはならないと本気で考えている私のかすかながらに残っている抵抗の意思か、私自身にも分かりません。しかし、私の体はそれ以上動くこともなく、そんな私の手をミツキさんは優しく握ってくださいました。
「大丈夫だよ、マリーちゃん」
あぁ……きっと、大丈夫なのでしょう。きっと、何もかも。
こちらを気遣う柔らかな声、私の手に重なる手のひら、体の柔らかさと温かさ、顔をくすぐるふわふわとした髪の毛、甘い甘い香り、そしてふと目を開ければミツキさんで視界が埋まります。
ここにいるだけで、今こうしているだけで、私の全てがミツキさんに溶けていくような……五感全てがミツキさんに囚われていくような気がします。ミツキさんしか感じ取れなくなっていきます。視覚も、聴覚も、嗅覚も、触覚も。唯一逃れたはずの味覚すら、口の中で甘くとろけていくような錯覚を起こしているのです。
きっと、甘いのでしょう。美味しいのだと思います。そうでないとおかしいですから。
「……」
試してみたい。一度だけでいいですから、一瞬だけでいいですから、想像するしかない感覚を、この身で。
ミツキさんの手の中にあった右手を引き抜き、そのまま首元にかかっている髪の毛を横にずらしました。顕になった色白の首筋に顔を埋めるとミツキさんの匂いはより濃くなって、ゆっくり深呼吸すると鼻も口も肺までもがミツキさんの匂いでいっぱいになっていきます。
幸せという感情が私の脳を埋め尽くし、胸の鼓動が高鳴っている実感があります。この幸福から離れないようもう一度右手をお腹の前に回してミツキさんを両手で強く抱きしめ、思わずすりすりと顔を擦り付けるとミツキさんは僅かに体を震わせています。
「ふふっ、ふふふっ、くすぐったいよマリーちゃん」
依然として声は優しいままで、私を拒絶することもなく受け入れるようなそんな姿に私は途轍もない安心感を覚えていくのです。そしていつの間にか……口元にある首筋に舌を沿わせていました。
ぴちゃ
「ひぁっ!?」
「……?」
どうしたのでしょうか。突然甲高い声を上げて肩どころか全身が跳ねて……。
「ま、マリーちゃん!?」
ミツキさんは首筋を手で覆いながら振り返り、頬を赤く染めて目を大きく見開きながらこちらを見ています。
あぁ、隠れてしまいました。甘くて美味しかったのに……。
……。
「ど、どうしたの……?な、なんで急にこんな……」
……。
……あれ?
わ、私……今、なにを……なにを……っ!?!?!?!?
「す、す、す……すみませんでしたぁ!!」
私はなんてことを!?何が『甘くて美味しい』ですか!?勝手に人の首を舐めるとかおかしいですよ!!猫みたいに顔や頭を擦り付けてマーキングまでして!!こんなの、こんなの、まるで変態じゃないですか!!
バッとミツキさんから離れ、先程まで座っていた椅子に座りデスクに突っ伏します。もう何も考えたくない。何も見たくないし聞きたくない。
「うぅーー……」
死にたい。
「……で?アレはどういうつもりですか?」
「そ、そんなジトーって見なくても……」
「バカなんですか?散々言いましたよね?本当に何してるんですか?」
「いや、その、後ろからぎゅってされただけなんだけど……」
「本当にそれだけならさっきの声はなんだって言うんですか」
「い、いやぁ、突然舐められてビックリしちゃった。でもマリーちゃんも自分で驚いてたみたいだし、ついスリスリしてペロペロしちゃうとか猫ちゃんみたいだよね。やっぱりマリーちゃんって猫ちゃんなんじゃない!?あれだけかわいいんだもん!やっぱり猫ちゃんだよね!」
「……もう根本的に考え方を改めさせる必要があるんじゃないですかこのヒト」
"(大丈夫なのかな、いろいろと……)"
勢いのままに書いてたらマリーが猫というか行くところまで行ってしまった気がする。どうして……?シスターってなに……?
※マリー過激派の方は本当に許してください。
マリー:恥ずかしい。自己嫌悪。死にたい。……やっぱり甘かった。
ミツキ:マリーちゃんはやっぱり猫ちゃんだったんだ!んぎゃわいい!
ケイ :は?煽るだけ煽って無抵抗でされるがままとか頭おかしいんじゃないですか?今も呑気に舐めたこと言って……やっぱり理解らせないと……ブツブツ
先生 :後ろからひしっと抱き着いて甘えるマリーにほっこり。からの衝撃の展開にお口あんぐり。こっちに来てたケイから謎の圧発生。ナニコレ。やば、近寄らんとこ。……何かあったら助けるからね、多分。