ゲヘナ最強の双子の姉 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
今日も先生のところでシャーレのお仕事のお手伝い……だったはずなんですけど……。
「……♪」
な、なんかすごい見てくる人がいるんですけど……!?頬杖をついて、ジーって音が聞こえてきそうなくらいに。な、なんで?私何かしましたか?この人とまだ一言も喋ってないですけど?
「ねえねえ」
言ったそばから喋りかけてきた……!?
「な、なんですか……?」
「私、空崎ミツキっていうの。貴方の名前も教えて欲しいな」
うっ、な、なんでそんな微笑みを向けてくるんですか……?眩しい……。なにが "アオバとも仲良くなれそうな子だから大丈夫" ですか!思いっきり私と正反対な側の人なんですけど……!
「う、内海、アオバ……ですけど」
「ふふ、アオバちゃん、今日はよろしくね」
や、優しい人、なんでしょうか……?そ、その善意らしきものを利用して騙そうって魂胆じゃないですよね……!?信じますよ先生……!
「よ、よろしく、お願いします……」
「そんな畏まらなくてもいいのに」
「い、いや、そ、そういうクセといいますか、そういう人間といいますか……人と一定のラインを引いてないとやっていけないといいますか……」
ああっ、初対面なのに何言ってるんですか私は……さ、早速この人に引かれて……
「……?」
な、何一つピンときてない顔!?
……でしょうね!私と違って初対面の人に笑顔で話しかけられる人ですし!?そ、それに空崎って、あの空崎ですよね!?羽根も角もありますし!身内にあんなのがいるのなら怖いものなしじゃないですか!やっぱり私とは全く違う人間なんですけど!
「その、私にはよく分からないけど、アオバちゃんは頑張ってるんだね」
へ……?
「人との距離感とか、そういうの。嫌なら逃げ出しちゃってもいいのに、自分の中で大丈夫なラインを見極めて毎日頑張ってるんでしょ?」
「い、いや……」
そ、そんな頑張ってるとかそうじゃないとか、そういう話じゃ……むしろ逃げてるというか……。
自分で考えてて気分下がりそうなんですけど……。
「アオバちゃんはえらいね、すごいね」
「うっ……」
だからなんでそう穏やかな笑みを向けてくるんですか……!?そ、そうやって人にいい面を見せて、自分の印象を上げてるんですね!?笑顔で話しかけて、すぐ人を褒めて……!
……。
……別に悪いところが一つもないですね。くっ、やってることに何の被害もないんですけど!
むしろただのいい人じゃないですか。そ、そんな人にも斜に構えてる私っていったい……そもそも先生がああ言ってたんですし、悪い人なわけないですし……。
「……つまり私が駄目な人間だったんですね……いや、知ってたんですけど……」
「あ、アオバちゃん?大丈夫?」
「……別に、あなたには関係ないですけど」
「……そっか、ごめんね」
「!?」
うぇぇっ!?な、なんかすごい申し訳なさそうな顔してるんですけど……!?そ、そんな真正面から言葉を受け取らなくても!私の自己嫌悪にあなたは関係ないだけっていうか、別に責めてるわけでは……!
この……!意識せずにこういうことを言ってしまう口が憎い……!というか私をそんな風にさせた環境が憎い……!ご、誤解を解かないと!
「す、すみません!悪気があったわけではなくて……!つい出ちゃったといいますか、いつも周りに振り回されてたせいで口走ってしまったといいますか……!」
ワタワタと両手を使って身振り手振りで弁明を続けていると、申し訳なさそうな顔はいつの間にかキョトンとしていて、穏やかな眼差しになっていきました。
「ふふ、そんな必死にならなくても大丈夫だよ」
「あ、そ、そう、ですか……?」
「アオバちゃんはかわいいね」
「ヒュッ!?」
な、なななっ!?急になに言い出すんですかこの人!?かわっ、かわいいとか、初対面なのに目と目を合わせて微笑みかけながら言うものじゃないと思うんですけど……!!私たちの関係性と空気感がなんかまだそういう段階じゃないと思うんですけど……!!
「照れてるの?かわいいね」
「うっ……」
はにかむように笑っているその顔を見ていられなくて、思わず帽子を両手で掴みながら顔の前まで下ろし、視界を遮っていました。顔が熱くなっていることを自覚しながらも、それを誤魔化すように口は動いていきます。
「きゅ、急に変なこと言ってくるからなんですけど……!あなたのせいなんですけど……!」
「あなたじゃなくて、ミツキだよ」
「っ……」
もうっ!今はそこじゃない!なんなんですかこの人!?こんな人が居るなんて知らないんですけど!先生!どういうことですか!嘘吐いたんですか!?仲良くとか、そういうライン飛び越えてるんですけど……!
この光景も見ているであろう先生に頭の中で訴えかけていると、椅子から立ち上がる音が聞こえました。それを疑問に思う間もなく足音は私の方に近付いて、そっと、頬になにかが触れました。
「ねえ、アオバちゃん」
「ぇ……?」
名前を呼ばれてふと視線を上げると、視線の先では先程から変わらない柔らかな笑みが浮かんでいました。
ドクンと、心臓が跳ねる。
「ミツキって、名前で呼んで欲しいな」
「ぁ……ぅぁ……」
バクバクと心臓がうるさい。心臓の鼓動以外の音が全然分からない。たった一瞬で指先から足の先まで、全身が熱くなって背中なんて汗でびっしょりで。
それなのになぜか目が離せなくて、口の中はカラカラで、思考もロクにまとまらなくて、僅かに震える体を抑えることもできなくて。そんな私の頬に添えられた手は、親指だけが動いて頬をなでていました。
「ね、お願い」
「み……みつ、みつき、さ、ん……」
「うん、ありがとうアオバちゃん」
そんな私のことなんて知ったことではないと、あいもかわらずミツキさんは微笑んでいます。そして、頬に触れていないもう片方の手で、帽子の上から私の頭をなで始めました。
「なっ……!?なにしてっ……」
「んー?かわいいアオバちゃんをいーっぱい甘やかしてあげようかなーって」
ま、またかわ、かわいいとか勝手なこと言って……!なんでそんなに声色が優しいんですか……!
……あれ?いっぱい?こ、こんなこと沢山されても困るんですけど!私を羞恥心で殺そうとしてるんじゃないですか……!?
「あ、あああんまりこういうことはよくないと思うんですけど……!ま、まだ出会ったばかりというか、なんか、その、こ、困るんですけど……!」
「そうなの?じゃあ最後にぎゅーってしておしまいにするね」
よ、よし、これで終わり……!
「……へ?ま、まってください、今なんて……」
「ぎゅーっ」
はへっ……?なん……やわらか……あったか……じゃなくて!!な、なんですかこの状況!?本当に抱きしめられてるんですけど!!
あ、頭が抱え込まれてるせいで、ミツキさんの匂いが……って、なに考えてるんですか私は!!違います!!私はそういう趣味はないです!!ノーマルです!!そもそも出会ってすぐの相手に心が動かされるわけないですから!!私は私ですから!!
「よし、アオバちゃんありがとね」
「……は、はい」
「これからも仲良くしようね」
仲良くするわけないですけど……!!こんな人の近くに居たら頭がおかしくなっちゃいますけど……!!
それから、ミツキとアオバは何度か顔を合わせる機会があった。そして、いくばくかの時間が流れ……
再度シャーレにやってきたアオバの目には、ミツキの目の前で特徴的な尻尾をフリフリしながらミツキのなでなでを堪能するノゾミとヒカリの姿があった。ミツキ自身も口元が緩んでおり、その時間を楽しんでいるように見える。
「ひ、人のこと散々弄んだクセに私の前でヒドいと思うんですけど……!」
「え?あ、アオバちゃん?」
「ミツキ!手が止まってるよ〜!」
「そうだそうだー。なでなでするのだー」
「あ、ごめんね、なでなでするからね」
「パヒャッ!やっぱミツキサイコー!」
「さいこー。ミツキだーいすき」
アオバのことを気にかけつつも、なでる手は再開している。そんな光景を見せつけられた*1アオバは手にしていた荷物を放り、ズカズカとミツキの元へ近付いて背後に回った。
そして、後ろから思いっきり抱きついた。
「わっ、アオバちゃん……?」
「全部全部、ミツキさんのせいなんですけど……!責任取るべきだと思うんですけど……!」
ミツキの髪の毛に顔を埋めながら、アオバは当分離れることは無かった。
会うたびに全肯定しながら強引になでなでやぎゅーをされ、感触やら匂いやらを強制的に覚えさせられたアオバちゃん。周囲のゴミみたいな環境に抱える不満も全部受け止めてくれて忘れさせてくれるミツキにいつの間にか中毒になってて、それに気付いたときにはもう遅くて「ミツキさんのせいなんですけど……!」って半ギレしながらミツキを求めてたらとってもかわいいよね。