Blue Archive vol.AGITΩ 作:mukugawa
ゆっくりですが書き進めたいと思います。
「しつこいなあ……」
ホシノはヘルメット団らしからぬ粘り強い戦いに舌を巻く。
いつもならば突っ込んでくる敵を片づけるだけの作業だが、足止めのみを念頭に置いたヘルメット団の攻撃は陰湿であった。
アヤネからの連絡を受けて戦闘の早期決着を狙ったアビドス生だったが、遮蔽物に身を潜めることに専念した敵を倒すのは容易ではなかった。
「みんな一回──」
ホシノが言いかけたその時だった。
空から降ってきた装甲車が敵の陣地に突き刺さった。
「……?」
ホシノは混乱した。
敵の攻撃ではない。
こんなことができる奴はヘルメット団にはいない。
味方の援護か。
こんなことができる者は味方には────
「!」
砂煙で隠れてしまっていた車体が露わになる。
前面がひしゃげ、倒立する車体のその上に
「……あれが、アギト?」
黄金の鎧を輝かせた戦士を見たホシノはそう呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ほんの数秒の空の旅。
投げた装甲車の上に飛び乗ったのは良い判断だったと思う。
「う、うええ、気持ち悪い……」
足場となっている装甲車から聞こえるうめき声。
自分の知る普通の人間ならばシェイカーにかけられた果物のようになっているはずだが、本当にキヴォトス人は頑丈だ。
もう手加減せずガンガン殴ってもいい気さえしてきた。
というか、情状酌量の余地がないこいつらなら殴っても許されるのでは?
この様子なら一発二発殴った程度では気を失うくらいですみそうだし。
「な、なんなんだお前!?」
「なんなんでしょうね」
一言で「通りすがりの~」とか自己紹介できる人間を尊敬する。
パッといいフレーズが口から飛び出せるようになったら、社会人としてのスタートなのかもしれない。
そんなことを思う。
「聞いてんのかてめー!!」
「聞いてる聞いてる、聞いてますよもちろん」
必死にお前らへの対処法を模索してるからちょっと黙っていてほしい。
日頃から殺伐とした日常を送っているテロリストと一般アギトを一緒にしないでくれ。
とりあえず近くにいた黒いヘルメットから銃をむしり取り、トンっと手で押してみる。
「ひょああああああああ!?」
すごい勢いで飛んでった。
人間があんな速度で飛んでくのはギャグマンガの世界だけかと思っていたのに。
……いや、十分ギャグみたいな世界だよな。
外なら血しぶきが飛ぶはずなのに痛いで済むんだからさ。
「撃て撃て撃てーー!!」
「いてててて」
ちょっとちくちくするな。
注射ほどではないが、鋭いものを押し当てられるような痛みがある。
「き、効いてないのか!?」
「いや、効いてる効いてる」
籠手を盾にしないと少しきつい。
被弾するたびに気力を持っていかれる。
弾丸に何か特殊な細工が施してあるのか?
警察のGユニット、戦闘スーツを身に纏っていた部隊は未確認生命体用に特殊な弾丸を使っていたが、キヴォトスでもそんな技術が使われているとは思えないが。
ともかくこのまま撃たれ続けるのは危険だ。
装甲車の影に隠れる。
「え~と、これは……」
手にあるのはアサルトライフル。
詳しい種類はわからないが、引鉄を引けば弾は出るだろう。
影から身を乗り出し、こちらに向けて射撃を続けていたヘルメットを狙ってみた。
「当たれ!」
放たれた弾丸は敵の横を掠めた。
「まだだ」
次に撃った弾丸は足元に。
「……」
最後の弾丸は虚しく空を切った。
駄目だこれは。
戦闘に向いた体になっているというのにクソエイムが過ぎる。
オンラインゲームならチャットで暴言を飛ばされるだろう。
せめて単発式から連射できるセミオートとかいうのに切り替えたいが、どこを弄ればいいのかまるでわからない。
というか、経験がないというだけでここまで狙いがつかないものなのか。
そもそもの射撃のセンスが壊滅的なのかは判断できないが、とりあえずキヴォトス流の戦い方は今の自分には荷が重いことは確かなようだ。
まあ、それならそれでよしと銃身を握りしめる。
考えたのだが、やはり人をこの姿で殴る蹴るというのは気が引ける。
鉄板を容易く貫通するパンチやキックが、いかにキヴォトス人といえど大怪我を負わせてしまうのは嫌だ。
ならば妥協点として、
「くらえ!」
銃で殴ってみよう。
最寄りの敵目掛けて突っ込み、
「は!? 何を───」
「そい!」
赤いヘルメット目掛けて振り抜いた。
「ぶぅえ!?」
銃が音を立ててヘルメットを打ち据える。
ヘルメット越しなら間違っても死ぬことはないだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
一方的な暴力という言葉はこの場面を指すのだろうなとホシノは思った。
「ぎゃあ!?」
「く、来るな! 来るぼえあ!?」
「ぐへえ!?」
ヘルメット団千本ノック。
この惨状に名をつけるならそうなる。
戦場に殴り込みをかけてきた新たなる後輩、新条テツヤの戦いは未だかつてないイレギュラーであった。
ホシノとて盾を使った接近戦で蹴りやシールドバッシュの経験はあったが、自ら盾を振りかぶって敵を殴りに行くようなことはまずない。
キヴォトスにおいて肉弾戦を繰り広げる機会など格闘術の試合ぐらいしかないのだ。
どこまで敵が近づいて来ようと銃で制圧しようとするのがキヴォトスの戦いなのである。
だが、テツヤはそんなことを知らない。
話によれば彼はキヴォトスに来て数日。
銃も持っていなければ、戦闘なんて経験したこともないド素人の中のド素人。
変身できるという話を聞いたが、とても戦線に加えることなどありえないというのがアビドス生の共通意見だった。
という話だったはずなのだが。
「あぎゃあ!?」
気づけば誰よりも多く敵を殴り倒している。
一撃で敵の意識を刈り取るパワーもそうだが、躱しながらとはいえ少なくない被弾をしてなお戦線を維持する防御力には、タンク役を引き受けるホシノだからこそ驚きを隠せない。
「すごいですね新条君」
ミニガンを撃つノノミが呟く。
「本当になんの経験もないの?実は特殊部隊帰りだったり…?」
「いやあ、あれは間違いなく素人ではあると思うよ。思うんだけどね……」
セリカの疑問にホシノが答える。
格闘家のような型のある佇まいではない。
アサルトライフルをバットのように振り切る動きに特筆すべき点はない。
動きを見れば素人であることは一目瞭然である。
本人の動きと戦果の釣り合いが取れていない。
なんとも奇妙な光景だとホシノは思った。
「……あれ、シロコちゃんは?」
「シロコちゃんは新条君の跡を追っていったと思いますけど」
「───あ!? シロコ先輩いました!」
セリカが指をさす方向にシロコはいた。
「ホームラン」
「お、お前もか───ぎゃん!?」
哀れなヘルメット団は頭を打ち抜かれて地べたに転がる。
───なぜそんなことを?
シロコを除く3人の心は一つになった。
自らのアサルトライフルを背負い、敵の銃を奪いながら戦う姿に違和感はない。
テツヤと違う点はちゃんと弾を消費しながら戦っているという所。
銃撃を続けながら敵に近づき、射程に入ったらバッティングタイム。
テツヤよりも戦い慣れてているからか、動きは非常にスムーズだが、そんな戦い方をする必要はない。
銃撃戦オンリーでもシロコは強かった。
「とりあえず、二人の援護に行こうか」
ーーーーーーーーーーーーーーー
終わりました。
途中から砂狼さんが援護に来てくれたからスムーズに片付いた。
「さすがと言わせてもらうぞ、砂狼さん。俺は砂狼さんを目指すべきなのかもしれない」
素晴らしい戦いだった。
なんなら力に物を言わせた自分が少し恥ずかしくなるぐらいすごかった。
銃の腕もそうだが、体捌きが全然違う。
色々学ばせてもらいたい。
「ん。道は険しい。精進するといい」
「押忍」
今後の自分の方向性が定まってきたところで、向こうの片もついたのか小鳥遊先輩たちが近づいてきた。
「ちょ~とそこは待ってもらおっかな。シロコちゃんはお手本にするにはちょっと尖り過ぎかなって」
「ホシノ先輩、問題はないはず。私はできる女。新人の面倒も見られる」
「いや、シロコ先輩はちょっと……」
「駄目です☆」
言い渋った黒見さんとは対照的にものすごい笑顔でノノミさんが断言した。
「ノノミ、私ならテツヤを立派な───」
「駄目です」
「!」
なぜそこで俺の影に隠れるんだ砂狼さん。
君が普段どんな態度で生活しているのかはわからないが、ここまでのやりとりで癖の強い人物であるということはまるわかりだぞ。
ノノミさんが差し出せと仰るのならば平身低頭で君を差し出す用意がある。
というか────
「反応薄いっすね。結構物騒な見た目してると思うんですけど」
最初に変身した時はそれなりの騒ぎになったものだが、ここまで平然と受け入れられるとこっちもどうしたらいいのかわからない。
まあ、鳥頭にロボ頭が跋扈する中では今さら驚くことでもないと言われればそこまでだが。
クワガタムシの化け物だぞ。
「まあ、ね。事前に聞いてたのもあるけど、想像よりもなんというか~」
「カッコイイですよ、新条君」
「嘘でしょ……?」
顔見知りにバケモノ呼ばわりされたこの顔がカッコいい?
キヴォトスに長くいるとこうなのだろうか?
普通と言われるならまだしもこの格好に需要があるというのか……
「俺の時代はここにあった……?」
「ここはキヴォトス。クワガタ頭が怪物扱いされると自惚れないほうがいい」
君は一体どんなキャラなんだ砂狼さん。
ツンデレの先輩キャラを演じたいのならいい加減、俺の影から出てノノミさんと向き合うべきだ。
あの人先から一言も喋っていないからちょっと怖くなってきたぞ。
戦闘以外で頼もしい面をぜひ俺に見せてくれ。
後輩はいつだって先輩のカッコいいところを見て見たいものなんだぞ。
さあ、出番だぞ砂狼さん!
「……待った、距離をとらないで」
「年貢の納め時……と言うほど君を知らないが、観念したほうがいいぞ。俺は君を庇う気なんかこれっぽっちもないんだ。さあ、毅然とした態度でこの逆境を跳ね返してくれ」
「あのノノミは無理」
「うふふふ……2人とも、私を何だと思っているんですか?」
「「怖い……あ」」
やっちまった。
ノノミさんの笑顔から発せられる圧力がどんどん高まっていく……!
「あの、新条先輩」
「あ、はい。黒見さんでいいのかな?」
いいところに来てくれたぞ黒見さん、グッジョブ!
「ま、待って」
「シロコちゃんはこっちですよ」
さらば砂狼さん、君のことは今日の晩飯まで忘れない。
ノノミさんにハグされる砂狼さんを尻目に目の前の黒見さんに向きなおる。
……というか、いい加減に変身を解くべきだろう。
「───よし」
「……戻った」
初対面の時と比べて、少し警戒する目線が和らいだ気がする。
そう思ったのは、黒見さんのキリっとした目つきだ。
最初の顔合わせの時はこちらと目を合わせてくれなかったが、今は真っすぐに目線が合っている。
戦闘を通して多少は打ち解けることができたと思えば、先ほどまでの戦いの甲斐があったというものだ。
「さっきは自己紹介を遮られたから、改めまして。新条テツヤです」
「黒見セリカです。よろしくお願いします」
黒見さんは丁寧な自己紹介の後に長いツインテールを揺らしながらぺこりと頭を下げた。
奥空さんと同じ1年生で、話によれば中学からの同級生らしい。
「ところでそのブレスレットは? なんかすごくギラついてるけど」
「このブレスレットですか? 実はコレ幸運を呼ぶ隕鉄で作られたもので……そうだ、新条先輩もどうですか? 今ならセットで金運アップのネックレスが────」
「ああ、うん。なんとなくわかった」
詐欺師とかインチキ霊感商法にカモにされるタイプだ、この子。
自分にインチキ開運グッズを薦める目は透き通った綺麗なもの。
真っ直ぐすぎて一度信じると思考が完全にロックされる人のそれだもの。
「セリカちゃん。騙されてるよそれ」
「ホシノ先輩…?」
「黒見さん。運は金で買えないから運なんだよ」
確率は収束すると言うが、ツイてないときはとことんツイてないのが運なのだ。
人に都合のいいようにできるものなら誰も苦労はしないんだ。
「また、騙されたの私……?」
茫然とする黒見さんが痛々しい。
これだから人をだます奴は気に食わんのだ。
ましてやそれを商売にする人間の気持ちは今後一生わかることなんてないだろう。
そうであれと願う。
「まあまあセリカちゃん。今日は私の奢りで紫関ラーメンに行こ? 新条くんの歓迎会も兼ねて、ね?」
小鳥遊先輩のフォロー。
ちょっとこなれているあたりがますます黒見さんの痛々しさを加速させている。
クーリングオフはキヴォトスにもきっとあるはずだから心配はないだろうが……あるよな?
「じゃ、みんなで校舎に戻ろっか───ね、新条くん」
ーーーーーーーーーーーーーーー
夕暮れの時間。
帰宅ラッシュなのか車の通りが倍増した車道を眺める。
キヴォトスにも外の世界と重なる景色があると自然と視線が吸い寄せられてしまう。
これがホームシックというやつなのだろうか。
そんなことを考えながら集団から離れないように歩みを進めていた。
「どうしたんですか、新条くん。気になるものでもありました?」
気を使わせてしまったようで、少し心配した顔でノノミさんが話しかけてきた。
「いや、なんでもないよ。でも悪いね、みんなに俺の買い物に付き合ってもらっちゃって」
最初は奥空さん一人に付き合ってもらう話だったのだが、会議の結果、全員でついて来てもらうことになってしまった。
それぞれに予定もあっただろう。
ここまで手厚くしてもらうとやはり申し訳なさが勝ってしまう。
そっと太ももに巻かれたホルスターへと手を伸ばし、刺さっている拳銃を確認する。
先ほどガンショップによって買ったばかりの相棒だ。
ゲーム機よりも安い値段で売ってたのは驚いたが。
海外のガンショップもこのくらいの相場なのだろうか?
「大丈夫。今日はみんな予定を開けている。新人の歓迎会があるから」
「そうですよ。全然気にしないでください」
砂狼さんと黒見さんが答える。
話によれば銃を持たない人間は裸で出歩く人間よりも少ないという超銃社会のキヴォトス。
相棒のおかげでようやく一般キヴォトス人を名乗れるというわけだ。
……射撃練習の結果は芳しくなかったけど。
「がんばって活かせるようになりたい……」
「焦らなくても大丈夫です。みんな最初はあのくらいですから」
奥空さんのフォローが身に染みる。
射撃場で10発撃って、的に当たったのが2発……1発は隣の台の的だったけど。
今後も精進が必要だ。
正直、フレンドリーファイアが一番恐ろしい。
ヘルメット団には悪いが今後しばらくは肉弾戦がメインになるだろう。
「まあ、俺には変身があるし……」
「……あー、そのことなんだけどね、新条くん」
「はい」
何か言いづらそうな顔でホシノ先輩が話し始めた。
「新条くんが射撃訓練している間に話し合ったんだけどさ、新条くんにはやっぱりアヤネちゃんの護衛を頼もうかなって思ってね~」
「というと……気になっちゃいますか」
「うん。気力が尽きたら変身が勝手に解けるって話を聞いたらね。やっぱり私たちとしても心配だよ」
言われると思ってはいた。
小鳥遊先輩たちからすれば、時間経過式で消える防弾装備を着込んだだけのただの人間だ。
圧倒的なパワーがあったとしても、最悪の事態になる状況を避けたいと思うのは当然だろう。
多分、素の状態でも銃で撃たれた程度では死なない気がするのだが、それを口にすることは憚られた。
戦略的な面でも、近接戦闘メインになってしまう自分は邪魔にしかならない。
味方の射線を遮ってしまうからだ。
一つの生き物という自分の感想は正しかった。
正直、自分が入る余地がない程にみんなの部隊としての完成度は高い。
2重の意味で、自分の戦線参加にはいい顔をするわけにはいかないのだろう。
「わかりました」
「うんうん。わかってくれて良かったよ~」
そんなことを話していると鍵覚えのある臭いが鼻孔をくすぐった。
「いいにおいがする……」
「あ、つきましたよ。ここが紫関ラーメンです!」
ノノミさんが臭いの正体を示す。
オーソドックスなラーメン屋さんの建物がそこにはあった。
ラーメン屋に来るのは実は初めてである。
心が躍る……!
「大将!お客様6名です!」
「お、セリカちゃん…にアビドスのみんなじゃねえか!そこの彼が噂の新入りかい?」
頭にタオルを巻き、和装に身を包んだ柴犬がそう答える。
店主。俺はもう驚かないぞ……というか。
「黒見さんってここで働いてたりする?」
「!? い、いやーなんのことだか……」
違うのか。
すごく店員さんぽい第一声だったけれど。
「さ、さあ! 早く席に座りましょうか!」
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……美味かった。
すごく美味かった。
やっぱりラーメン屋のラーメンは違うな。
出汁も麺もなにもかも。
ラーメンもあるよ、という店のラーメンとは筆舌に尽くしがたい差をありありと感じる。
いやあ、来れて良かった。
ラーメンはラーメン屋で食った方がいいという人の気持ちが初めて理解できた。
そりゃあ、そうだ。
ラーメン専門店の方がうまいに決まってんだ。
「ごちそうさまでした、大将」
「あいよ」
ラーメン屋のドアを閉める。
すっかり暗くなってしまった。
「じゃ、今日は解散ってことで~」
「また明日です☆」
「「お疲れ様でした」」
「ん」
小鳥遊先輩の号令でみんながそれぞれの家路へと向かう。
俺も帰って、早めに寝よう。
変身した日はかなり疲れる。
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後姿が見える。
キヴォトスでは見慣れない男の後ろ姿。
新たな後輩。
新たな仲間……。
「……駄目だな、私は」
あの金色の姿が重ならない。
同じ声色で話して、元の姿に戻る所もこの目に収めたというのに。
どうして、彼とアギトを別の存在として考えてしまうのだろうか。
疑問に思いながら、彼の行動を振り返る。
問題などない。
彼の行動の全てが私たちのためになることで、受け入れない理由も今のところ思いつかない。
完璧な後輩だ。
頼もしい味方だ……味方のはずだ。
「また、疑ってる」
────なんであの部屋の前にいたのだろうか?
学校探検の通りすがりだったのだろう。
────なんで私たちを助けるのだろう?
アビドスの一員として役に立とうとしてくれたに違いない。
───なんで、アビドスに来たのだろう?
「……ダメだ、ダメだ」
彼は違う。
今まで散々騙してきたきた汚い大人とは、自分たちの利益のためだけに誰かを踏みにじる奴らとは違う。
「……私は」
いつから、こんな狭量な人間になったのだろう。