僕のヒーローパラドックス   作:(福笑)

1 / 1
早速、新キャラ、オリジナル展開です。
あたたかい目でご覧いただければと思います。


グゲン:オリジン

崩壊の序章

夕暮れ時の空は、まるで燃え上がる炎のように赤く染まっていた。その色は、極東亜細亜恒久平和(きょくとうアジアこうきゅうへいわ)極東亜細亜恒久平和中学校――通称「極アク中学」の暗い噂と奇妙な符合を見せるようだった。この学校は、表向きには孤児や個性が暴走してしまう生徒を預かり、優秀な生徒を育て上げる教育機関として知られていたが、実際にはその陰で数々の闇を抱えていた。

 

校舎の奥深く、地下研究施設では、いくつもの機械が静かな低音を響かせながら稼働している。その中心に立つのは、黒髪の少年、シオン。彼もまた孤児であり、この施設で教育を受けた生徒の一人。その優秀さと物分かりの良さに実験器具のメンテナンスを任されている。彼はいつものように黒縁メガネを光らせ周囲を観察していた。

 

「シオン、どうだ? 今日も何も問題ないか?」

突然の声に、シオンは振り返る。そこには、彼の恩師であり、この施設の研究主任である榊原龍之介が立っていた。彼は白髪混じりの髪を撫でつけながら、優しい笑みを浮かべていたが、その目にはどこか冷たさが宿っていた。

 

「先生。はい、特に異常はありません。ただ…何かが変わり始めているような気がします。」

シオンは言葉を慎重に選びながら答えた。彼の心の奥底には、何かが引っかかっていた。最近の被験者たちの様子が、どこかおかしいと感じていたのだ。

 

「心配しすぎだよ、シオン。すべては計画通りだ。問題があるとすれば、それは我々がまだ見つけていないだけのことさ。」

榊原はそう言って、軽く肩を叩き、施設の最奥部へと向かっていった。シオンは恩師の言葉に潜む冷酷さを感じたが、ただその背中を見送った。

 

施設の最奥部、特別研究室

 

その頃、施設の最奥部にある特別研究室では、別の緊張が高まっていた。部屋の中央には、淡々とした表情の少年が一人座っていた。彼の名前はグゲン、そう名付けられた。幼少期、施設の前でポツンと立ち尽くし、親の帰りを待っていた。捨てられたのだと気付くには時間の問題だった。彼は無口で、自分の感情を表に出すことがほとんどなかった。しかし、内心では常に不安と恐怖が渦巻いていた。

 

「君の個性は驚異的だよ、グゲン。」

研究員の一人が彼に語りかける。グゲンは顔を上げずに、その言葉を聞き流した。彼は、自分の個性――具現化の力がどれほど危険かを理解していた。それを使えば、どんな現象でも現実で引き起こすことができる。だが、彼が望んでいるのは平穏であり、誰にも危害を加えないことだった。

 

「今日も実験を行う。今度は、さらに大きな力を引き出してみよう。」

研究員は機械的な声で命令を下した。グゲンは抵抗しようと力を込めるが、途端にこめかみ辺りに鋭い電撃のような痛みが生じ、なす術がなかった。彼は機械に繋がれ、心拍数が上がるのを感じた。

 

崩壊の引き金

 

「グゲン、君は"最高傑作"だ。

私の研究が正しかったのだと、証明される。

この能力を世界のために使う事ができれば、君は賞賛を受け、君をイジメた子達や、君を捨てた両親をぎゃふんと言わずことができるだろう!」

榊原龍之介が到着し、グゲンに語りかけた。

しかし、グゲンは知っている。

グゲンをイジメたカズ君、リョウ君、アケミちゃんや、俺を捨てた両親は、既に、死んでいるという事を。

ーー何を隠そう、俺が、殺したのだから。

その瞬間、何かが弾けた。グゲンの中で抑えていた感情が、何かを超えてしまったのだ。彼の口から、無意識のうちに言葉が漏れた。

 

「…この世界が…消えればいい。」

 

突然、施設全体が揺れ始めた。警報が鳴り響き、研究員たちは慌てて制御装置に飛びついたが、もう遅かった。グゲンの具現化の個性が暴走し、施設中のエネルギーが狂い始めたのだ。グゲンを拘束していた機械も粉々になっていた。

 

「先生! 何なんですか、この反応は!?」

シオンが榊原の元へ駆け寄る。

「フフフ…! 最高だ!! やはり、グゲン。君は、我が"個性発現研究所の最高傑作"だ!!!!!」

シオンはその異常な事態に気づき、冷静に指示を出し始めたが、混乱の波は止まることを知らなかった。

 

壁が崩れ落ち、天井から瓦礫が降り注ぎ、榊原はその瓦礫の下敷きとなった。シオンはこれ以上危害が広がれないように何とかして状況を抑えようとした。しかし、目の前で広がる光景は、もはや手に負えないものとなっていた。

目の前には、個性が暴走し、瓦礫が頭部に直撃して気を失っているグゲンがいた。

 

「逃げよう…」

シオンはそう呟き、崩壊する施設から生き延びるためにグゲンを肩に抱いて必死で駆け出した。

 

そして、始まりの地へ

 

通報を受け、ヒーロー達が救援活動を行う頃には、施設は完全に崩壊していた。多くの命が失われ、数人の生存者だけが辛うじて逃げ延びた。その中には、シオンとグゲンが含まれていた。

「こちらD班、二名の生存者を確認!

どちらも軽傷だが、内一人は気を失っているもよう!これから保護したいと思いますが、イレイザーヘッド、ご指示を!」

「ザザッ)応急処置を行い次第、救護車へ届けれてくれ。こちらも一名生存者を確認した。」

無線でのやり取りを聞きながら、シオンは極度の疲労と緊張によりまもなく意識を手放した。

 

彼らは心の中に深い傷を負いながらも、新たな運命を歩み始める。目指す先はどこなのか。彼らの中で、光と闇が交錯する物語が、ここから始まるのだった。




人物紹介
・グゲン 個性:具現化 性格:無口
幼少期、極アク中学前で捨てられていた所を研究員が保護。以降、個性発現の研究対象となる。
イジメられた過去があり、加害者の悪口を言うと、後日、その通りの現象が引き起きた事をきっかけに自己の個性を自覚する。
周囲に危害を与えないよう無関心に努め、無口となる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。