果たして、明錬はあの会議にどのような反応をするのか……。
それでは、どうぞご覧ください。
ヘルメット団からセリカを救出し、明錬たちはアビドス高校へと戻ってきた………が、
「っ……!」
「おっと……」
セリカは身体に疲れやダメージがたまっていたのか、その場でふらついて倒れそうになってしまう。そんなセリカを明錬は受け止め……
「大丈夫?もう休んだ方がいいよ」
「うぅ……」
「シロコ、セリカを保健室に」
「ん、分かった」
シロコにセリカを保健室へと連れていくように頼んだ。それを聞き、シロコはセリカを支えながら、保健室へと連れて行く。
「セリカちゃん……」
「Flak41の対空砲を食らったんだもん、今はゆっくり休ませてあげよー」
「でも、本当に良かったです。先生がいなかったら、どうなっていたことか……」
「うんうん。先生のおかげで、セリカちゃんの居場所を逃さずに追跡できました。やっぱり凄いです☆」
改めて、セリカを助けてくれたことに、アヤネとノノミが明錬に対してお礼を言う。
「……それとみなさん、これを見てください」
そう言ってアヤネは、端末に映っている何かの部品を見せる。
「これって……」
「戦闘中に回収した、散らばった戦車の部品です。それを確認したところ、キヴォトスでは使用が中止されている違法機種と判明しました」
ヘルメット団が使用していた戦車は、キヴォトスでは違法となっている機種だったようで……
「もう少し調べてみる必要はありますが……」
「どう考えても、ヘルメット団が簡単に手に入れられるものじゃないね」
「はい」
明錬のその言葉に、アヤネも同意するように頷く。
「そしておそらくは………よし、それはこっちでも調べてみるよ」
「ありがとうございます」
「でもこれで、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せますね」
「はい。それに、チンピラがなぜここまで執拗に私たちの学校を狙うのかも、明らかになるかもしれません」
それから少し話をした後、明錬は保健室で休んでいるセリカの様子を見に行くのだった……。
「はぁ……」
「セリカ、起きてる?」
保健室に静かに入った明錬は、セリカが起きているかどうかを、小さく声をかけて確かめる。
「あ、れ……?先生!?ど、どうしたの?」
セリカは既に起きていた様で……
「お見舞いだよ。あれから身体の具合はどう?」
「……あぁ、私なら大丈夫。いつまでもこうしているわけにもいかないし……」
明錬に向かって、そう返したのだ。
「アヤネちゃんや他のみんなも心配してるし……バイトにも行かなきゃだし……」
「……無理はしない方がいいよ?」
「大丈夫よ……だ、だから、お見舞いとかいいから!」
「今からリンゴ切るけど、食べる?」
「……食べる」
「了解」
明錬は近くの椅子を持ってきて座り、持ってきたリンゴを切り始める。
「あと……もう元気だとしても、今日はしっかり休むこと。いい?」
「!……分かったわよ」
「よし、できた」
「はやっ!?(しかもウサギだし……)」
明錬に切ってもらったリンゴを食べながら、セリカは……
「あのさ……何で先生は、私たちにここまでしてくれるの?」
今まで何もしてこなかった大人たちとは違い、自分たちにここまで協力………それも、自身の命を懸けてまでしてくれる明錬に、その理由を訊いた……。
「何で、か………もちろん、みんなを助けたいっていうのはあるよ?でも、一番は……」
「?」
明錬は一呼吸置き……
「誰かに……何かを失う思いをしてほしくないから、かな」
「?それってどういう……?」
手に持っていたナイフを置きながら、セリカにそう言ったのだ。それから少しして、セリカが帰る準備をし始めるのと同時に、明錬も皿やナイフを片付け始め……
「それじゃあ、気をつけ「ま、待って!」?」
片付け終わった後、そう言って立ち上がったが、セリカがそれを止め……
「えっと……今日は、助けてくれてありがとう……でもっ!この程度でアビドスの役に立てたなんて思わないことね!この借りはいつか必ず返すんだから!」
「うん、分かってるよ」
「じゃあ……せ、先生、また明日ね!」
「うん、また明日」
改めてお礼を言ってから、保健室から出ていくのだった……。
とある海上の貨物船。その貨物船は、先程まで順調に航海をしていた………のだが、
「っ……ターゲット確保ですね」
突然、船の側面が爆発したかと思えば、それと同時に一隻のボートが猛スピードでその貨物船から離れていく……。
「アルちゃーん、盗まれた品物を取り返すのに、ここまでする必要あったのー?」
「仕事中は社長と呼びなさい?ムツキ室長」
そのボートには4人の人物が乗っており、この4人がヘルメット団のアジトを襲撃した便利屋68………社長の陸八魔アル、室長の浅黄ムツキ、課長の鬼方カヨコ、平社員の伊草ハルカなのだ。
「依頼を達成するには、多少の犠牲はつきもの……こんな些細なこと、いちいち気にしていられないわ。それが、アウトローというものでしょう?」
「くふふっ!またアルちゃんの悪い癖が出た!」
「っ!」
そんなやり取りをしていると……
「!……ねぇ、社長」
「な、何かしら?カヨコ課長」
何かに気付いたカヨコがアルへと声をかけ……
「確かターゲットは無傷でっていうのが、クライアントの最低条件だったよね?」
「もちろんよ。それがどうかしたの?」
「……」
そのまま黙って、そのターゲットをアルへと見せた。そこには……
「!?な……な……」
ケージに入れられた猫がいたのだが、明らかにさっきの爆発のせいで無傷ではなくなっていた……。
「しゃ、社長、これって………」
「ただ働き確定だね?」
「はぁ……」
「な……なな……ななな………
なんですってーー!?」
セリカを救出した翌日……
「それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」
対策委員会の教室では全員が集まり、定例会議がというものが開かれていた。
「本日の会議は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが……」
「は~い☆」
「もちろん」
「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない……」
「うへ、よろしくねー、先生」
「うん、よろしく」
「では……早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題………『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します」
今回の定例会議では、借金返済に関する議論をするようだ。
「ご意見のある方は、挙手をお願いします!」
アヤネがその言葉を発した直後……
「はい!はい!」
「はい、1年の黒見さん。お願いします」
すっかり元気になったセリカが挙手をした……のだが、
「……あのさ、まず名字で呼ぶのやめない?ぎこちないんだけど……」
「せ、セリカちゃん……でも、せっかく会議だし……」
名字で呼び合うことに対し、それを止めようと提案したのだが……
「いいじゃーん、おカタイ感じで。それに今日は珍しく、先生もいるわけだし」
「珍しくというより、初めて」
「ですよね!なんだか委員会っぽくてイイと思いま~す☆」
「はぁ……ま、先輩たちがそう言うなら……」
ホシノ、シロコ、ノノミがそう言ったことで、セリカも納得して本題へと戻る。
「……とにかく!対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわっ!このままじゃ廃校だよ!みんな、分かってるよね?」
「うん、まぁねー」
「毎月の返済額は、利息だけで788万円!私たちも、指名手配犯を捕まえたり、ボランティア活動に苦情の解決、私のバイトとかの稼ぎを返済に充てて頑張っているけど……正直、利息の返済も追いつかない。今まで通りやっていても、これじゃ埒が明かない!何かこう、でっかく一発狙わないと!」
「でっかく……って、例えば?」
アヤネがそう訊くと、待ってましたと言わんばかりに……
「そう!これこれ!街で配ってたチラシ!」
セリカはとある一枚のチラシを取り出した………そのチラシに書かれていたのは……
「どれどれ……」
「!これは……」
「『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金』……ねぇ……?」
明らかに怪しげな文言だったのだ……。
「そうっ!この間、街で声をかけられて、説明会に連れていってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのを売っているんだって!」
『……』
「これね、身に着けるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの3人に売れば―――」
そう説明するセリカに……
「「却下」」
「えーっ!?」
明錬とホシノは同時にそう言い、その案を却下したのだ。
「な、何で!?どうして!」
セリカは驚きながら、二人にその理由を訊いたが……
「セリカそれ……明らかにマルチ商法だよ。あと、こういう話には必ず裏があるし」
「儲かるわけない」
「そういうことだよー」
「!?」
それを聞いたセリカは、ようやく自分がマルチ商法に引っかかっていたことを理解した。
「う、嘘……私、2個も買っちゃったんだけど!?」
「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」
「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねー?気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうよー?」
「そ、そんなぁ……そんな風には見えなかったのに………せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに……」
「大丈夫ですよセリカちゃん。お昼、一緒に食べましょう?私がご馳走しますから」
「の、ノノミせんぱぁい……!」
セリカがノノミに抱きつく光景を見た明錬は……
(……今度、何かご馳走してあげよう。あと、詐欺業者はこっちで何とかしておこう)
そう心に決めるのだった。
「えっと……黒見さんの意見はこの辺で………それでは、他にご意見のある方は……」
そして、次に手を挙げたのが……
「はい!はい!」
この対策委員会の委員長であるホシノだった。
「えっと……はい、3年の小鳥遊委員会。ちょっといやな予感がしますが……」
(いやな予感……?)
明錬がアヤネのそんな言葉に、疑問を覚えていると……
「うむうむ、えっへん!」
ホシノが自分の案を話し始める。
「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる5人だけってことなんだよねー。生徒の数イコール学校の力……トリニティやゲヘナみたいに、生徒の数を桁違いに増やせれば、毎月のお金だけでもかなりの額になるはず」
「えっ……そ、そうなんですか?」
「そういうことー!だからまずは、生徒の数を増やすところから始めないとねー。そうすれば議員も輩出できて、連邦生徒会での発言権も与えられるしね?」
「鋭いご指摘ですが……一体、どうやって生徒数を増やすんですか……?」
アヤネはホシノにそう訊いたのだが、返ってきた答えが……
「簡単だよー!他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」
「はい!?」
「!?」
そんな案だったのだ……。
「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするんだよー。これで、生徒数がグンと増えること間違いなーし!」
「ほ、ホシノ?流石にそれは「それ、興味深いね」え?」
「ターゲットはトリニティ?ゲヘナ?それともミレニアム?どこを狙うかによって、戦略を変える必要があるかも」
「し、シロコ……?」
「お?……えーっと。うーん………そうだなぁ、トリニティ?いや、ゲヘナにしよーっと!」
ホシノとシロコの間で、どんどんバスジャック計画の話が進んでいるのを見て……
「2人ともそこまで。それはさすがにアウトだよ?」
明錬はその話を止めさせる。
「というか……それで転校って、ありなの?」
「それに、他校の風紀委員が黙っていませんよ……」
「あ、やっぱそうだよねー?」
「『やっぱそうだよねー?』じゃありませんよ、ホシノ先輩……もっと真面目に会議に臨んでいただかないと……」
「いつもこんな感じなの……?」
そして……
「いい考えがある」
「……はい、2年の砂狼シロコさん……」
「……」
次はシロコが案を話すようだが、今までの流れから明錬はいやな予感が止まらずにいた……。
「ん、銀行を襲う」
「はいっ!?」
「……」
予想通りの方向性の提案に、明錬は黙り込んでしまう……。
「確実かつ簡単な方法。ターゲットは、市街地にある第一中央銀行。金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートも把握済み」
「さっきから一生懸命に見ていたのはそれですか!?」
「5分で一億は稼げる。はい、覆面も用意しておいた」
シロコはそう言いながら、人数分の覆面を紙袋から取り出し、自身は青色で正面に数字の2が書かれた覆面を被った。
「いつの間にこんなものまで……」
「うわー!これって、シロコちゃんの手作り?」
「わあ、見てください!レスラーみたいです!」
「いやー、いいねぇ。人生一発でキメないと」
それを見て盛り上がっていたが……
「準備が良すぎる………って、それも普通に犯罪だからね?」
「そうよ!却下!却下ー!!」
「そっ、そうですっ!先生の言う通り、犯罪はいけませんっ!」
普通にこれも犯罪だったので、明錬、セリカ、アヤネがその案に反対した。
「……」
シロコは渋々覆面を脱ぎ、ふくれっ面をしてみるが……
「そんなふくれっ面をしてもダメなものはダメです、シロコ先輩っ!」
アヤネには通用しなかったようだ……。
「はぁ……みなさん、もうちょっとまともな提案をしていただかないと……」
すると……
「あの!はーい!次は私が!」
「……はい。2年の十六夜ノノミさん。犯罪や詐欺はなしでお願いしますよ……?」
ノノミが挙手をするが、先ほどの流れからアヤネにそんなことを言われる。
「はい!犯罪でも悪質商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!」
「!ノノミ先輩……!」
その言葉に、アヤネは一縷の望みを見い出す。そして、ノノミが提案したのは……
「それはですね……
アイドルです!スクールアイドル!」
「えっ……?」
予想外の提案に、アヤネは思わず固まってしまう……。
「アイドル……?」
「そうです!アニメで観たんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルです!私たち全員がアイドルとしてデビューすれば……」
ノノミの出した案は、今までのどの案よりもクリーンな方法であった………だが、
「却下ー」
ホシノがそう言い、反対されてしまう。
「あら……これも駄目なんですか?」
「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに」
「うへー、こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」
「残念です……決めポーズも考えておいたのに……」
「決めポーズ……?」
明錬がそう訊くと……
「はい!水着少女団のクリスティーナで~す♧」
ノノミは決めポーズやアイドル名、メンバー名まで披露したのだ。
「あのぅ……これじゃ議論が進まないんですけど……」
奇抜な案(2つは犯罪)しか出ていない状況に、アヤネはそう言うが……
「アヤネちゃんアヤネちゃん……
ここは先生に任せちゃうっていうのはどうかな?」
「えっ?」
「僕?」
「じゃあ先生……今日出た意見の中で、もしやるとしたらどれがいい?」
ホシノがそう言い、今までの案の中から明錬に選ばせようとしてきたのだ。
「えっ!?この中から選ぶんですか!?も、もう少しまともな意見を出してからの方が……」
「大丈夫だよー。先生が選んだものなら間違いないって」
「ちょ、ちょっと待ってください!何でそう言い切れるんですか!?いや、先生は信頼できますけど……!」
「え?待って?本当にこの中から選ぶの……?」
予想外の事態に、明錬も戸惑ってしまう……だが、そんな明錬の前には……
「まさかアイドルをやれなんて言わないわよね?」
そう言って、明錬に圧をかけてくるセリカに……
「いやいや、バスジャックでしょー?」
こちらを見つめてくるホシノ……
「アイドルで!お願いします☆」
笑顔でポーズを決めているノノミ……
「……」
覆面を被り、黙ってこちらを見つめてくるシロコがいたのだ。
「っ……」
(これ、犯罪は絶対にダメだとして……けど、アイドルも全員が賛成しているわけじゃ……)
何とか結論を出そうと考え込んでいた明錬だったが……
「い……」
「……?」
「あ、アヤネ……?」
「いいわけないじゃないですかぁ!!」
『!?』
結論を出す前に、アヤネがそう叫んで目の前のテーブルをひっくり返したのだ。
「出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」
「……」
「きゃあ!アヤネちゃんが怒りました!非常事態です!」
「うへ~、キレのある返しができる子に育ってくれたねぇ。ママは嬉しいよーん。ほら?パパも喜んでるし」
「ホシノ、今こっちに振らないで……って、アヤネ!一旦落ち着いて!」
明錬は予想外の振りを受けるものの、何とかアヤネを落ち着かせようとする……が、
「誰がママとパパですかっ!ちゃんと真面目にやってください!いつもふざけてばっかり!銀行強盗とかマルチ商法とかそんなことばっかり言って!」
「!(ギクッ)」
「……」
騙されたとは言え、マルチ商法の案を出したセリカや、ストレートに銀行強盗の案を出したシロコは黙り込み……
「いい加減に、してくださいっ!!」
その他の案を出した面々も、まとめてアヤネに説教されるのだった……。
読んでくださりありがとうございます。
明錬が最終的な結論を出す前に、アヤネのちゃぶ台返しが発動していましたね………そして、少しだけあの4人が登場しましたが、本格的に出てくるのは次回からです。
良ければ、感想や評価、あれば「ここすき」への投票をしていただけるとありがたいです。
それでは、次回もよろしくお願いします。