それでは、どうぞご覧ください。
「……起きてください!先生!」
「っ!?」
突然聞こえてきた大声で明錬は目を覚まし、声の主である見知らぬ女性の方を見た。
「ここは……?」
「…漸く起きられましたか。少々待っていて下さいと云いましたのに、お疲れみたいだったですね?中々起きられない程に熟睡されるとは……」
そう話し掛けてくる女性の耳は、ゲームなどに出てくるエルフのような耳をしており、長い黒髪で眼鏡を掛け、白のコートを羽織った格好をしていた……明錬は目の前の状況に困惑し、次に辺りを見回すと………
「っ!指輪と剣は……!」
「!?」
急にそう言いながら立ち上がり、何かを探すような素振りを見せる。そんな明錬に、女性は思わず驚いた反応をする。
「………ある……!」
明錬自身の格好は普段通りの格好だが、ボロボロではなくきれいになっていた。右手と左手の中指にはそれぞれ青とオレンジの宝石がついた銀の指輪がはめられ、傍らには紫色のレンチ型の剣が立て掛けてあった。
「それに……」
明錬は懐から本のようなものを取り出し開いた。そこには……
(!100体……みんないる)
様々な生き物や乗り物などの絵が描かれた100枚のカード………ケミーカードが入れられていた。
「………ん?」
自身のものがあることを確認していた明錬だが、ふとあることを思う。
(そもそも、何で僕はこんなところに……?それに、僕はあの時確かに―――)
見知らぬ場所で眠っていたこと、そして自身が何故ここにいるのかを………そんなことを考えていると……
「あの……大丈夫ですか?先生」
「え?」
考え込んでいて、ずっと喋らないでいる明錬を心配したのか、目の前の女性が声を掛けてくる。
「……どうやら夢でも見られていたようですね?ちゃんと目を覚まして、集中してください」
「……」
「……どうやら、かなりお疲れの御様子……無理もありません…先生はここに来たばかりで、混乱しているのでしょう……」
すると、明錬は……
「それで、いくつか訊きたいことがあるんだけど?」
ここに来てから、訊きたかったことを問い掛けていこうとする。
「それは今からちゃんと説明しますので……落ち着いて、よく聞いておいてください」
「……」
そして……
「では……私は七神リン、学園都市『キヴォトス』連邦生徒会所属の幹部です」
リンは明錬に、そう自己紹介をする。
「学園都市……キヴォトス……?」
今まで聞いたことのない地名に明錬は困惑するが、リンの話を聞くことに集中する。
「そして貴方は恐らく、私たちが呼び出した先生……のようですが……」
「?ですが……?」
(何で推測形……?)
何故か推測形で話すリンに、明錬が疑問を覚えていると……
「……ああ。推測形でお話したのは、私自身も先生がここに来た経緯を詳しくは知らないからです」
「……はい?」
リン自身も、明錬が何故キヴォトスに来たのかを知らないと言われてしまう……。
「混乱されていますよね。分かります」
「まぁ、正直混乱はしてるけど……」
「こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でもとりあえず、今は私についてきて下さい……先生には、どうしてもやって頂かなければならないことがありますので」
「……分かった」
その言葉の通りに、明錬は傍らに置いてあった剣………ヴァルバラッシャーを背中へと背負い、リンの後をついていく。
「それで……僕は何をすればいいの?」
「学園都市の命運を賭けた大事なこと………ということにしておきましょう」
そうしてリンに促され、エレベーターに乗ると……
「――!」
明錬の目の前には、前にいた荒廃した場所とは比べ物にならない程の美しい景色が広がっていた……。
「『キヴォトス』へようこそ―――先生」
「………凄い……」
「キヴォトスは数千の学園が集まって形成されている巨大な学園都市です。加えて、これから先生が働くところでもあります」
そんな景色に、明錬は素直に感動していた……。
「……」
「先生……?」
「!あぁ、ごめん」
「……先生がいらっしゃった場所のことは、私は存じ上げませんが………きっとその場所とは色々なことが違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれません……ですが、先生ならそれ程心配することもないでしょう。あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」
「連邦生徒会長………そういえば、その人は何処に?」
明錬は自身を選んだ連邦生徒会長について、リンに訊いたのだが……
「……それは後でゆっくり説明することにして」
「……?」
「さぁ、着きましたよ」
それと同時にエレベーターが目的の階に到着した様で、明錬はその話を後で訊くことにして、リンの案内でその階へと足を進めていく。
「ここがレセプションルームです」
「へぇ……中々広いんだ」
すると………
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
「……!?」
突然、黒いスーツのような制服に、上から白いジャケットを着た少女、早瀬ユウカが大声でリンにそう言いながら迫ってくる。さらにその手には、さも当然のように銃が握られていた。
(銃……!?何で普通に持って……まさか、ここでも何か―――)
そんな光景に驚いていると……
「……って、うん?隣の方は一体……?」
ユウカがリンの隣にいる明錬に気付き、珍しいのかじっと見つめてきた。
「首席行政官。お待ちしておりました」
それに続いて、黒い制服に大きな黒い羽の生えた長い黒髪の少女、羽川ハスミに……
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
さらには、医薬品などが入った大きな鞄を持った少女、火宮チナツも話し掛けてきた。
「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」
「面倒って……」
その三人を見たリンの口から、そんな言葉が出てしまう………三人にはギリギリ聞こえていないようだが……。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん……こんな暇そ―――大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています」
「……」
(今、凄く言葉に棘があったような……)
「今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために………でしょう?」
リンがユウカたちが訪問してきた理由について言うと……
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で矯正中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒を襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
ハスミの後ろにいた白い髪の少女、守月スズミも含めて、自身の学園での状況を伝えていく。
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
「……」
話を聞いていた明錬はというと、声には出していないものの、その状況に困惑していた。何せ聞く限り現在の状況は、治安が悪いとかいうレベルの話ではないからだ………もちろん、明錬のいた世界がまだ平和だった時と比べてだが……。
「……」
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
「……?」
(連邦生徒会長が、姿を見せていない……?)
そんなユウカの言葉に、明錬は疑問を覚えるが……
「……連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「……え!?」
「……!!」
「やはりあの噂は……」
「……」
(行方不明……なるほど、だからさっき……)
リンが告げた事実に、明錬を含めユウカたち4人も少なからず驚いていた。そんな様子を見て、リンは話を続けていく。
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが………先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
ハスミのその言葉に、リンが明錬の方を向き……
「この先生こそが、フィクサーとなってくれるはずです」
『……!?』
「え……僕が……?」
そう口にしたのだった。その言葉と同時に、4人の視線が一斉に明錬の方を向いた。
「ちょっと待って。そういえばこの先生は一体どなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」
「はい。こちらの暁明錬先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「行方不明になって連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃないの……」
さらに困惑しているユウカたちに対し……
「じゃあ……初めまして、僕は暁明錬。呼び方は……みんなの好きにしてもらって構わないよ」
明錬は自己紹介と簡単な挨拶をする。
「!こ、こんにちは、えっと…明錬先生。私は、ミレニアムサイエンススクールの……い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと「だ、誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてくださいね、明錬先生!」……」
「あ、あぁ…よろしく、ユウカ」
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」
「部活の顧問……?」
「……連邦捜査部『シャーレ』」
「シャーレ……?」
「はい。単なる部活動ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを制限なく加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」
『……!?』
そのシャーレの説明を訊いた全員が、驚きを隠せずにいた。何せ、そのシャーレの権限………つまりは、先生である明錬の権限が途轍もないほど大きいものであったからだ。
「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下にとあるものを持ち込んでいます」
「とあるもの……?」
「そこに、先生をお連れしなければなりません」
すると、リンは端末を取り出し……
「モモカ、シャーレに直行するヘリが必要なんだけど……」
モモカという人物に連絡をし始める。すると、明錬たちの前にホログラムが映し出され、そこに映っていたのは桃色の髪をツインテールにした小柄な少女、モモカであったのだが……
『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
「大騒ぎ……?」
『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ?』
「……うん?」
『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしているみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れたみたいだよ?』
「巡航戦車……?」
『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしているらしいの。あそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』
「……」
『まぁでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大したことな―――あっ!先輩、お昼ご飯のデリバリーが来たから、また連絡するね!』
その言葉を最後に、モモカは通信を切った。
「……」
急に通信を切られたリンは、立て続けに起こる問題に対して苛立っていたが、それを何とか抑えていた。
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫です……問題が発生しましたが、別に大したことではありません」
「いや、大したことではあると思うけど………でも、急いだ方が良さそうか……」
「えぇ、そうですね………」
そう言って、早速明錬はその地区へと向かおうとする……が、
「……」
「……?」
「な、何?どうして私たちを見つめているの……?」
何故かリンは、その場でユウカたちをじっと見つめ始める。
(!まさか……)
明錬だけは、リンが何を考えているかに気付いた様で……
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「……えっ?」
「っ……!?」
「キヴォトスの正常化のために、あなたたちの力が今、切実に必要です」
どうやらリンは、ユウカたちを巻き込んで事態を解決しようとしているようだ。
「さぁ、それでは行きましょうか」
「ちょ、ちょっと待って!?どこに行くつもりなの!?」
「……あなたも想像できているのでは?」
「!?な、何で私がこんな―――」
「それに、ヘイローのない先生を一人で行かせるつもりですか?」
「ヘイロー……?」
(……みんなの頭の上に浮かんでいるあれか………けど、何でそれがないと―――)
「っ……わ、分かったわよ!こうなったら、さっさと終わらせるわよ!」
そうしてレセプションルームを出て行くユウカの後ろを、他の面々も追っていく………そんな中……
「……」
(あの子たちは……絶対に―――)
明錬はそんな様子を見て、何かを思っていたようで―――
『ホッパー!』
「!ホッパー1……」
すると、オレンジ色のバッタ……ホッパー1がケミーカードの中から出てきて、明錬へと飛びついてきた。
『ホパホ……』
明錬はそんなホッパー1を上手く受け止める。どうやらホッパー1は、今の明錬の様子を心配して出てきたようだ……が、
「……大丈夫だから、今は戻って」
『ホパ……?』
「……戻って」
『ホパ……』
明錬は少し冷たくそう言い、ホッパー1をカードの中へと戻し……
「……急ごう」
先に出ていったユウカたちの後を追うのだった……。
読んでくださりありがとうございます。
ついに生徒たちと邂逅した明錬ですが………最後に一体、何を思っていたのか……。
ブルアカとのクロスオーバー小説を書くのは初めてで、上手く書けているか分かりませんが、良ければ感想や評価などをしていただけると励みやモチベーションになります。
また、オリ主の設定については、第1章を始める前に出そうと考えています。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。