明錬が先生となることで、果たしてどのような物語になるのか……。
それでは、どうぞご覧ください。
第1話 暁とアビドス
明錬がキヴォトスに来てから、約一週間が経った頃………
『見てください、先生!』
「どうかした?」
『ここ数日間、シャーレに関する噂も沢山広まっているみたいですし、他の生徒達からの助けを求める手紙も届いています』
シャーレ奪還の時のSNSでの記事の影響もあってか、明錬とアロナの目の前には連邦生徒会からの書類はもちろん、キヴォトスにある様々な学園からの手紙が届いていた。
「そうだね……幸先は良さそうかな?」
『はい!私たちの活躍が始まるということですから!』
そう口にしたアロナだったが……
『ですがその中に……ちょっと不穏な、こんな手紙が……』
「不穏……ちょっと見せてもらえる?」
『はい!』
明錬は、アロナの言っていた手紙を手に取り、読み始める。その内容が………
『連邦捜査部の先生へ
こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。
今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。
単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。
それも、地域の暴力組織によってです。
こうなってしまった事情はかなり複雑ですが……。
どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。
今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます……。
このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。
それで、今回先生にお願いできればと思いました。
先生、どうか私たちの力になってくれませんか?』
というものだったのだ。
「アビドス………ユウカに訊いた話だと、そこって確か……」
『はい、昔はとても大きな自治区でしたけど、今は気候の変化……砂漠化で街が厳しい状況になっていると……どれほど大きいかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難してしまう人がいるくらいだそうです!』
「遭難って……」
『あはは、まさか、そんなことあるんでしょうか……?いくら何でも街のど真ん中で遭難だなんて……まぁ、さすがにちょっとした誇張だと思いますが……』
「それよりも、学校が暴力組織に襲われているって……」
『只事ではなさそうですが……一体、何があったんでしょうか……?』
そんなやり取りをアロナとした明錬は……
「アロナ、助けに行くよ」
すぐにそう言い、アビドスに向かう準備をし始める。
『い、今からですか!?これが、大人の行動力……!』
「後はリンにもアビドスに行くことを話しておいて………アロナ、アビドスの地図とかってある?」
『それでしたら、私がナビゲートしますよ!』
「分かった。よろしく頼むよ」
『はい!』
そして、リンへの連絡なども終えた明錬たちは……
「……よし、じゃあ出発しようか」
『はい!』
『ダーッシュ!』
ゴルドダッシュへと乗り、アビドスへと出発した………のだが、
「……暑い」
『ダーッシュ……』
「というか……これ遭難した……?」
本当に街のど真ん中で、遭難してしまった………というのも……
『ま、まさか地図が数十年前のものだとは……』
「この砂漠化で、新しく地図を作ったとしてもすぐに地形が変わるから、意味が無いってことなんだろうね……」
アビドスの地図は、数十年前から更新が止まっており、地図としての機能が皆無だった………そのせいで、アビドス高等学校に辿り着けずにいた……。
「そろそろ水もないし……」
明錬はそう言いながら、地面へと座り込む。すると……
「……あの………」
「ん?」
「……大丈夫?何か困ってる?」
自転車に乗っていて、頭に狼耳が生えた一人の少女が話しかけてくる。
「大丈夫………ちょっと遭難してるだけだから」
「いや、それって大丈夫じゃないんじゃ………遭難者なんだね。ちょっと待って……」
少女はそう言って、一つの水筒を取り出した。
「はい、これ。エナジードリンクだけど、飲む?」
「え?いいの……?」
「ん、というか飲まないとまずいと思う」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「ん、はい。どうぞ」
そうして少女から渡されたエナジードリンクを受け取り、明錬はそれを少しだけ飲んだ。
「ありがとう。正直助かったよ」
「……ん、なら良かった」
明錬がエナジードリンクを少女に返した時、少女の顔が少しだけ赤くなっていたが、明錬がそれに気が付く様子はない……。
「見た感じ、連邦生徒会から来た人みたいだけど……」
「うん、それでアビドス高等学校を探してるんだけど……ん?もしかして……」
「ん、私はそこの生徒だよ。二年の砂狼シロコ」
「!そっか……僕は暁明錬。シャーレの先生だよ」
「!シャーレ……ってことは……」
「手紙は読ませてもらったよ。よろしくね」
「ん、こちらこそ」
そんな会話をしていると……
「あっ、電話が……」
「いいよ。気にしないで」
「ん、ありがとう」
シロコのスマホに電話がかかってきたため、明錬はそちらを優先するように言う。
「ん、私。どうしたの?」
シロコは、かかってきた電話に出たのだが……
「……え?ヘルメット団が?」
「……」
何かがあったみたいで、シロコは焦った様子を見せる……。
「ん、すぐに行く」
シロコは電話を終えた後、明錬へと向き直り……
「先生……実は今、襲撃され「乗って」!」
何かを言おうとしていたが、明錬は事情を察した様にゴルドダッシュの上に跨っており、シロコに後ろへと乗るように言う。
「!いいの?」
「もとからそのために来たんだよ?それに、さっきの恩返しもしないとだし」
「!……ありがとう」
そして、シロコが後ろに乗ったのを確認して……
「さて……飛ばすよ」
『ダーッシュ!!』
「ん?今、声が―――」
明錬たちは、アビドス高等学校へと急ぐのだった……。
アビドス高等学校の近く………学校を襲う暴力組織であるヘルメット団の背後へと接近する二人だったが……
「このまま行くけど、準備はいい?」
「ん、けど先生は安全な場所に―――」
シロコはキヴォトスの外から来た明錬を心配し、近くで自分を降ろした後、安全なところに隠れているように言おうとした………が、
「HOPPER1!」
「STEAMLINER!」
「ん……?」
明錬はその前に、ゴルドダッシュに乗ったままでケミーカードをドライバーにセットし……
「……変身!」
「ガッチャーンコ!」
「スチームホッパー!」
デイブレイクへと変身を遂げる。
「ん!?」
それを見て、シロコは驚いていたが……
「あれか……」
明錬たちは、既にヘルメット団のいるところの後ろまで来ていて……
「?何だあれ……?」
「おい!突っ込んでくるぞ!」
「ちっ、奇襲か…撃て!」
ヘルメット団が明錬たちに気が付いたのか、一部が銃を向けて近づけさせまいと発砲してきたのだ。
「先生!」
「大丈夫」
「!?」
明錬は錬金術で難無くそれを防いだ後、前方にジャンプ台のような坂を錬成し……
「しっかり掴まってて。後、合図したら撃って」
「!ん、分かった」
そう言われたシロコは、自身の愛銃に手をかける。
「フッ!」
『!?』
明錬は坂を利用し、ゴルドダッシュで加速したままヘルメット団の上を飛び越えるようにしてジャンプをした。そして、着地をした後……
「撃って!」
「ん!」
明錬はゴルドダッシュをヘルメット団の方に横を向けて停めながら、ガッチャージガンを相手の武器に向かって、シロコはアサルトライフルを団員に向かい、それぞれ撃っていく。
「なっ!?」
「うわっ!?」
「くっ!?」
突然の奇襲と二人の正確な射撃によって、次々と襲撃してきたヘルメット団の数を減らし、戦闘不能にしていく。
「シロコ先輩!……と?」
『だ、誰なんでしょう……?』
「敵……ってわけじゃなさそうだね~?」
「はい!それに今、私たちを助けてくれてますし~☆」
その様子を見ていたここの生徒らしき4人の少女たちは、仲間と見知らぬ人物の突然の登場に驚きながらも……
「私たちも……!」
「はーい、行きますよー☆」
残りのヘルメット団に向かっていき、それぞれの愛銃で戦っていく。
「あ、あんなのいるなんて聞いてな――」
「よし!」
「く、くそ――」
「ふぅ……」
アビドスの生徒たちが、残りのヘルメット団を無力化していく中……
「隙あり!」
「!」
「フッ!」
「なっ!?」
「えっ?」
「か、壁が急に……!」
明錬も錬金術でのサポートーや……
「BLIZZAMMOTH!」
「ガッチャージバスター!」
「っ!」
「うわっ!?」
「凍った!?」
「う、動けない……!」
遠距離からの攻撃を放っていく。そして、ほとんどのヘルメット団を戦闘不能にした後……
「さて……どうする?」
「え?」
残っていたヘルメット団の中にいた、リーダーらしき一人の団員に向かい、明錬は……
「このまま大人しく退くか……それとも戦いを続けるか」
「……!」
そう提案したのだ。
「僕としては、これ以上の戦闘はしたくないけど……そっちはどうかな?」
「……し、しなかったら……?」
「そのときは……多分……」
「ん、撃つ」
明錬の横に来たシロコや後ろにいる面々が、残っているヘルメット団に向かって銃を構える。
「だ、そうだけど……」
「……」
そして……
「て……撤退ーー!」
ヘルメット団は撤退していき、襲撃を受けていた学校を守ることができたのだった……。
ヘルメット団が完全に撤退していくのを確認した明錬は、仲間と話しているシロコたちの方を向く。
「ところでシロコ先輩、そちらの方は……?」
「私たちを助けてはくれたみたいけど……」
学校の校舎の中から出て来ていた少女が、シロコに明錬のことを訊いた。
「ん、この人は……」
「初めまして…だね」
『!?』
明錬は変身を解除し……
「僕は暁明錬。シャーレの先生だよ」
続けて、そう自己紹介をする。
「……え、ええっ!?まさか!?」
「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
「てことは……」
「うん、手紙は読ませてもらったよ」
「わあ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで……弾薬や補給品の援助が受けられます!」
援助が受けられることに、眼鏡を掛けた少女は嬉しそうにしていた。
「あっ、教室にご案内しますので、挨拶は道すがらでも……」
その少女の言葉で、明錬は教室へと案内される………そして、そこに向かう途中で、
「初めまして。私たちは、アビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している一年の奥空アヤネです」
「!君が手紙の……」
「はい!来てくださり、ありがとうございます!」
シャーレに手紙を出してくれた生徒が、奥空アヤネ。
「次に、私と同じく一年の……」
「黒見セリカ……よろしく」
アヤネに紹介された黒髪で猫耳の生えた生徒が黒見セリカ……
「こちらが、二年の十六夜ノノミ先輩と砂狼シロコ先輩」
「よろしくお願いします~☆」
「ん、改めてよろしく」
ベージュの髪色をした生徒が十六夜ノノミ、明錬と最初に出会った生徒が砂狼シロコ……
「そして、この対策委員会の委員長で三年の小鳥遊ホシノ先輩」
そして、ピンクの長い髪をした生徒が小鳥遊ホシノ………この五人が、アビドス対策委員会のメンバーのようだ。
「よろしくね~、先生」
「!うん、よろしく」
対策委員会の委員長であるホシノの挨拶に、明錬はそう返したが……
(無理もない、か………まぁ、急に信用する方が難しいけど。実際、散々僕も向けられたし、したこともあるし……)
ホシノのまるで自身を疑い、品定めをするような目に対して、そんなことを思っていた……。
「いやぁ~、それにしてもあそこから勝っちゃうなんてね。あそこで先生が来てくれなかったら、一体どうなってたことか」
「『勝っちゃうなんてね』じゃないですよホシノ先輩………負けたらここが、不良たちのアジトにされてしまうじゃないですか……けど、本当に助かりました……あっ、ここが教室ですよ」
「あぁ、ありがとう」
そんな話をしていると、室名札のところに『対策委員会』という貼り紙が貼られている教室へと着き、明錬はそこに通される。
「ん、弾薬があと僅かのところで尽きていた……先生のおかげで、あそこから勝つことができた」
シロコのそんな言葉を受けながらも、明錬は何やらシッテムの箱を操作しており……
「役に立てたなら良かったよ……はい、これを」
「!これは……!」
「支援物資は、これで良かったかな?足りなかったら、増やすこともできるけど……」
アヤネに向かって、弾薬などの支援物資の量が画面に表示されたシッテムの箱を見せる。
「はい!それで問題はありません」
「大量の支援物資に装備、それに戦闘まで……大人ってすごい」
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
「え?ぱ、パパ……?」
ホシノがそんなことを言い出すが……
「何変な冗談言ってるのホシノ先輩!先生が困っちゃうじゃん!それにホシノ先輩はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」
「そうそう、可哀そうですよ」
「あはは……」
アヤネが苦笑いを浮かべながら、話を進めていく。
「先生が来て下さったおかげで、私たちは危機的状況から脱することができそうです。先生が来なければ、今頃学校は乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません……」
「!いや……僕はすべきことをしただけだから、そんなに気にしなくていいよ」
そして、全員が教室へと入った後、明錬は……
「そういえば、対策委員会って何をするものなの?」
対策委員会とは何か、ということを訊いた。
「対策委員会は……アビドスを蘇らせるために、有志が集った部活です」
「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!全校生徒といっても、私たち5人だけなんですけどね」
「えっ?5人だけ……?」
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った」
「……」
(砂漠化の影響で、こんなことに……)
想像していたよりもひどい状況になっていることに、明錬は黙り込んでしまう……。
「学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われている始末なの。現状、私たちだけでは学校を守り切るのが難しい。在校生としては、恥ずかしい限りだけど……」
「もし『シャーレ』からの支援がなかったら………今度こそ、万事休すってところでしたね」
「だねー。補給品も底をついてたし、さすがに覚悟したね。なかなかいいタイミングで来てくれたよ、先生」
「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」
ぎりぎりの状況を乗り切れそうなことに、対策委員会は嬉しそうな声を上げた……が、
「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」
「確かに。しつこいもんね、あいつら」
「こんな消耗戦を、いつまでも続けるわけには………ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに……」
すると……
「というわけで、支援物資の問題が解決した今、ちょっと計画を練ってみたんだ。今ここには、不思議な力を使う先生もいるわけだしね」
委員長であるホシノが手を上げて、そう言ったのだが……
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「う、うそっ……!?」
「みんなその反応は少しひどくない?」
普段のホシノならまず言わない言葉に、後輩たちはそんな反応をしていた。
「おじさんだって、やるときはやるのさー」
「……で、計画って?」
セリカにそう訊かれたホシノは……
「うん、それはね―――」
自ら練った計画を、この場にいる全員に話すのだった……。
読んでくださりありがとうございます。
ついに明錬と対策委員会の5人が出会いました。ここから、どんな展開を見せていくのか……。
良ければ、感想や評価、あれば「ここすき」への投票をしていただけるとありがたいです。
それでは、次回もよろしくお願いします。