我はチヲハウハネ……モフるな!ヒーローを目指す者……モフるな!   作:モフモフノハネ

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ハンノウトコウヒョウ

 モニター室に戻れば、先ほどまでの健闘をたたえるように拍手が巻き起こる。そして始まるのは……講評の時間だ。

 

「さて、今回のMVPは蒲生少年になるが……何故か、わかる人いるかな!?」

「はい!」

 

 そう言って手を挙げるのは、轟と同じく推薦組である八百万だ……露出がどうこうはこの際置いておくことにする。

 

 実質全裸が2人いる教室だ。それと比べれば誤差だろう……たぶん。オールマイトが八百万を指名すると、彼女は嬉々として解説を始める。

 

 曰く、轟は最初の奇襲で油断を生んでしまったこと。あれ程の威力の凍結をして、弱体化を一切してないと言うのは中々に予想しづらいが、それと油断しないとでは別の話だ。

 

 障子も索敵を怠らなかった点は評価できるが、油断があったのも事実。

 

 葉隠はひたすらに自身の役割であるステルスに徹していたのはかなり高評価。自分にできる事を理解し行うというのは大事なことだ。

 

 障子確保後も独断でステルスをして機を伺い続けた。そのお陰で、轟を確保できたのだ。仮に葉隠がMVPでも文句はないだろう。

 

 そして本命の千翅……最小限の建物の破壊での奇襲。その気になれば個性把握テストで見せたぼうふうで轟を吹き飛ばせたのに、仲間を気遣ってそれをしなかったこと。

 

 それらも相まって、千翅がMVPと言う訳だ。

 

 「うん、八百万少女!ありがとう!……それでは、次行ってみよう!」

 

 オールマイトの合図の元、次の試合の準備が進められる……そこから、授業はつつがなく進行していった。千翅も疲れた身体を休めながら、同級生たちの戦いぶりをしかと目に焼き付けていた。

 

 そして、授業が終わるとオールマイトは緑谷の元へ向かうと猛ダッシュで駆け抜けていった。

 

 余韻もクソもない授業の終わりに、皆唖然としていたが……突っ立っていてもしょうがないので、皆教室へと戻るのだった。

 

 

□◇□◇□

 

「そう言えばよ、蒲生の個性ってどんなのなんだ?」

 

 授業が終わり、帰りのホームルームも終えて放課後の時間帯……話題はやはり戦闘訓練に移る。その中でも、見た目と活躍も相まって印象に残った千翅に注目の目は集まった。

 

 やはり高校1年、派手な活躍をした人には目線が行くというものだ。

 

 特に千翅はただでさえ目立つ異形に、炎を扱う能力も持っている。色々と詰め込みすぎて渋滞状態だ。切島の問いかけに、千翅は首を少し動かして悩む。

 

「うぅん……説明が難しいな。」

 

 そう言って数拍置くと、千翅は静かに語りだす。

 

「我の個性は『古代活性』……色々出来る。例えば、炎を出したり出来るし、相手を痺れさせたり毒に侵す鱗粉も出せるし、翼を羽撃かせて風も起こせる。あとは、やろうと思えば電気も出すことができるぞ。」

 

「「「いや盛り込みすぎだろ!?」」」

「個性被ったぁ!」

 

 そのあまりの詰め込み様に、皆がそう言って声を上げる……同じ電気系の個性を持つ上鳴は、個性が被ったことについて頭を抱える。

 

 しかし、千翅は少し肩を落とすように体を揺らすと、首をふるった。

 

「いや、実は我の個性そんな万能じゃないんだよね。色々出来るとは言ったけど実状は器用貧乏に近い。電気に至っては出すと俺も反動を食らうから、上鳴さんのほうが上位互換ぞ?」

 

 電気を発生させてもできるのは身に纏うだけ……出来るのはそのまま突進するだけだし、おまけに電気のダメージは自分にも行き渡るからそんなに使えたもんじゃない。

 

 上位互換と聞けば上鳴も自信を取り戻した様子だ。千翅は少し考えると、自身の個性の一番の能力に触れる。

 

「まぁ……一番の能力は……」

「「「一番の能力は……!?」」」

「POWERだよね。」

 

 そう言うと、千翅は少し自慢げに腕を出す。果てしなく短いリーチだが、当たれば轟の氷をも砕くほどの威力をもっている。

 

「どんな小細工もっても最終的にはPOWERが勝つから。」

「パワーかぁ!男らしいな!」

 

 切島に男らしいと言われて、悪い気はしないのか、千翅は自慢げに腕を振るって、短いリーチのパンチを空振らせる。

 

「これでも昔は格闘技習ってたんだ。異形型も使える格闘技。」

「もう色々と滅茶苦茶だね……」

 

 炎、毒、電気……これらがある程度操れるだけでもだいぶ無法なのに、その上異形の巨体とパワー。更に格闘技を習っていたということは技術も持っていると言う事。

 

 そりゃあ強い訳だ……各々が納得する。だが、千翅は自身の短い手足を見ながら肩を落とした。

 

「まぁ、手足がこの様に短いから……リーチがね。」

「あぁ……」

 

 確かに、千翅の手足はかなり短い。ある程度接近すれば当たるだろうが、リーチの短さは接近戦において致命的にもなる弱点だ。

 

「あとは、遠距離攻撃が少ないのも弱点かな。」

「少ないって事は持ってるのかよ!?」

「両極端なんだよ。ライター程度の()()()を出すか、反動で動けなくなるくらい威力の高い光線かの二択なんだ。」

 

 欠点といえば、やはり遠距離は乏しい点……接近しなければどうにもならないというのは、やはり近接個性の永遠のジレンマだ。

 

 しかし、千翅の場合は代わりに速度を上げるニトロチャージという技をもっている。近接戦に置いてスピードを上げられるというのは、かなりのアドバンテージになることは言うまでもない。

 

「まぁ、我は個性で結構苦労してきたからここで受け入れられてホッとしてる。」

「苦労……そうか。」

 

 すると、先程戦った相手である障子が目をつむり頷く……どうやら彼も似たようなことがあった様だ。

 

 ()()()()()()()()()()()()……障子は千翅に近付くと手を差し出す。

 

「蒲生、次は負けんぞ。」

「ん、次も我が勝つ。」

 

 千翅は差し出された障子の手に握手で応える。その様子を見て、切島は「男らしいなぁ!」と感涙している。すると、千翅は皆の方へと向き直り首を傾げた。

 

 

「それより、我も教えたんだからみんなの個性も教えてくれよ。」

「それもそうだな!よっしゃ、まず俺の個性はな――!」

 

 そうして、1-A組はそれぞれ己の個性についての自慢合戦を始めるのだった。その間……千翅は、初めての()()と呼べるような時間が、とても心地よく感じた。

 

 かつて言われた言葉、化け物、怪物、人喰い虫……さも当然のようにヴィラン扱いされ、迫害されていた過去の日々が一瞬、千翅の能力に浮かんでは置き去りするように過ぎ去っていくのだった。

 

 

□◇□◇□

 

 

 

 場面は変わり職員室、机に座り、物思いにふけりながら作業を行っているのは金髪でやせ細った男……その姿には何処となくオールマイトの影を思わせる。

 

 ……当然だ。このやせ細った男こそ、今日本を支える平和の象徴、オールマイトその人なのだから。

 

 彼は職員室の中で色々ともの想いにふけっていた……自身の後継者たり得る少年、緑谷出久に、彼を異様にライバル視している爆豪勝己。

 

 彼ら二人のことは気がかりだが、もう一つ気がかりなことがある……それは。

 

(蒲生千翅少年……)

 

 様々な属性の能力を持つ蒲生千翅、そんな彼の存在にオールマイトはある男の影を見てしまっていた。

 

 いや、そんなことはないと必死に自分に言い聞かせてはみるが、疑いはどうしても持ってしまう……かつて、オールマイトの腹に風穴を開けた人物。

 

 オール・フォー・ワン……かつて魔王と呼ばれた男。千翅の多彩すぎる能力には、あの男の影があるのではなく勘ぐってしまう。

 

 しかし、相手は生徒、手荒な真似はできないし、そうでなくても疑いがあると言うだけでそんな手段を取る気はオールマイトには無い。

 

 ……それよりも、オールマイトが気になるのは千翅の個性、古代活性についての備考に書かれていた内容だ。

 

()()()()()()()時には要注意……でも、今日もそれなりに日が出てたけど平気そうだったよな?」

 

 オールマイトは戦闘訓練が始まる前、外での説明を受けていたのも千翅の様子を思い出す……しかし、千翅は普通に過ごしてきたし、その後も変化はなかった。

 

 ……千翅の古代活性、その恐ろしさが顕現するのは、もう少し先の話だ。

 

 

 

 

 





千翅「おーるふぉーわん?ラグビーですか?我ラグビー好きですよ。」
当人に聞いてもこの始末の模様。
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