我はチヲハウハネ……モフるな!ヒーローを目指す者……モフるな!   作:モフモフノハネ

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イインチョウトマスコミ

 

 

 ある日の登校時間。雄英高校の校門前にはたくさんの人だかりが出来ていた……ただの人だかりではない。その全員がカメラやマイクを持っている。

 

 マスメディアであることは火を見るよりも明らかだ。……そんな光景を、千翅は遠くから、ものすごく嫌そうな目で見ていた。

 

 オールマイトの授業がどうのこうのと、生徒に聞き回っている……このままでは遅刻者もでそうな勢いだ。何より、千翅はマスコミが気に食わないのだ。

 

 ……これは、千翅が子供の頃の話になるのたが、とあるテレビクルーが千翅へと取材を試みたことがある。

 

 人から外れた異形、異形専門の特別クラスに通う少年として密着取材を試みられたのだ。しかし、マスコミ達はまるで千翅を珍獣か何かのように扱ったのだ。

 

 結局、少しして千翅の母さんと父さんが「人の子供を玩具にするな」とブチギレ、テレビクルーを追い払ったのだ。

 

 宇留賀と火花も、初めはちゃんとテレビクルーが差別される異形個性の子たちの現状を伝えてくれるのだと信じていたが、結果裏切られた形だ。

 

 あの後、千翅は宇留賀と火花にすごい勢いで頭を下げられた。それ以来、千翅はああいう人の迷惑を考えないマスコミが大っ嫌いになってしまったのだ。

 

 と、遠くで見ているだけでもしょうがないので千翅は意を決してノシノシと歩く……すると、マスコミ達は千翅の姿を見るやいなや化け物でも見るかのような目を向ける。

 

 その証拠に、千翅には全く以ってマスコミが寄り付かない……いや、むしろそれはそれでよいのだが、何故かこう複雑な気分だ。

 

 千翅は兎に角気にしないようにと、雄英高校の中へと入る……しかし、最近は忘れていたが、あの化け物を見るような視線……雄英の他の生徒とは偉い違いだ。

 

 雄英の他の生徒は大なり小なりあれど、千翅の姿を見ても驚くだけで化け物や怪物を見るような目は向けてこない……やはり、その辺の志は高い人間が多いのだろう。

 

 千翅が少し羽を下ろしながら歩いていると、後から葉隠が声をかけてくる。

 

「蒲生くん……大丈夫?」

「葉隠さん、いや……まぁその、ぼちぼちかな。」

 

 千翅はごまかすように笑いながらつぶやくと、葉隠は千翅を軽くチョップする。

 

「もう、辛い時は辛いって言わなきゃ!何かあったの……?もしかして、外で誰かに何か言われた?」

 

 ……本当に、俺は周りに恵まれているのかも知れない。ただのクラスメイトにここまで言ってくれるなんて……千翅は体を起こして声を上げる。

 

「大丈夫、大丈夫!それよりも、このままだと遅刻するかもだぜ?早く行こう!」

「う、うん……」

 

 葉隠に背を向ける千翅……葉隠は千翅の後ろ姿を見た瞬間、ある衝動に駆られた……良くないことだというのはわかっている。

 

 けれども、体は()()を求めてしまう。

 

 ……葉隠は次の瞬間、千翅のモフモフな体に顔を埋めたのだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?

 

 千翅は、声にならない声を上げながら体を揺らす。葉隠はある程度千翅のモフモフを堪能すると、おとなしく千翅から離れる。

 

「な、何をするかぁ!?ヘンタイ!ドスケベ!

「ご、ごめん……我慢できなくて……」

「何がぁっ!?」

 

 千翅は汚されたと言わんばかりに顔を真っ赤にして威嚇するように立ち上がり羽を広げる。すると、葉隠は申し訳無さそうに……しかし何処かスッキリした様子で呟く。

 

「実は……前に蒲生くんに抱きついた時から、その……モフモフが気持ち良くって、お日様の匂いがして……」

だからってモフるな!

「ごめん……つい……」

「モフってる!体掴んでる!我いい加減怒るよ!?」

 

 葉隠は謝る最中でも千翅の体を掴んでモフモフする……実際、千翅の身体のモフモフ具合は心地よい。千翅のモフモフに包まれて寝れる券が売っていたら大金払って買う人がいるくらいには心地よいのだ。

 

 まるで人を駄目にするクッションの様に、人を虜にする……葉隠も、千翅のモフモフの魔力にとりつかれたのだ。

 

「ごめん……今度からは許可取ってからするよ。」

「なんで我が許可する前提!?そもそもモフるな!」

 

 千翅は身体を膨らませて葉隠を怒るのだった……それが過ぎる頃には、千翅はマスコミから言われた言葉なんて、綺麗さっぱり忘れていたという。

 

 

□◇□◇□

 

 

「今日はお前らに……………学級委員長を決めてもらう」

「「「クソ学校っぽいの来たぁ!」」」

 

 昨日の戦闘訓練の酷評の後、相澤先生から告げられるのは……学級委員長を決めると言う学校らしい課題だ。

 

「はい!委員長やりたいです!それ俺!」

「僕のためにあるやつ☆」

「リーダーやるやるぅ!」

 

 各々が自己推薦を上げる……普通なら雑務という感じでなかなかやりたがるものがいない職ではあるが、このヒーロー科では人を導くというヒーローの素地を磨くことのできる役割であるのだ。

 

 千翅はどうだろうか……?

 

「リーダー、やりたいが……手が、手が上がらん!」

 

 短い手のせいで挙手できずに困っていた。そんな最中……声を上げるのは、眼鏡を掛けた真面目系男児――飯田だ。

 

「皆静粛にし給え!多を導く重要な役目だぞ!?やりたいものができる仕事ではあるまい!」

 

 飯田の言葉は最もである……さらに飯田は続ける。

 

「信頼が試される役割であるのならば……これは投票で決めるべき事案!」

「「「腕そびえ立ってるじゃねぇか!?」」」

 

 そう、飯田の言葉はもっともだが……その腕は、まるでエッフェル塔の様に真っ直ぐに手が伸びていた。

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん。」

「そんなんみんな自分に入れらぁ。」

「だからこそ!ここで多く票を手に入れたものこそがふさわしいとは思わないか!?どうでしょうか先生!?」

「時間内に決めればなんでも良いよ。」

 

 飯田の言葉に、相澤はそう返す……やがて、学級委員長を決めるやり方は投票で、という風に固まっていった。

 

 千翅はと言うと……

 

(……飯田に入れてみようかな。)

 

 飯田に自身の票を使おうとしていた。飯田の言葉は最もだし、事実飯田の言葉を元に委員長の決め方が投票に決まっていった。

 

 そんな風にまとめられるのも、飯田くらいなものだろう。ならば、ここは飯田に票を入れるのが的確だろう。千翅は配られた投票用紙に飯田の名前をさっと書いた。

 

 そして結果発表……なんと、委員長に輝いたのは緑谷。2位に八百万さん……飯田はと言うと……

 

「一票!?馬鹿な、誰が!?」

「他に入れたのね……」

「お前もやりたがってたのに、何がしたいんだ……」

(なんか益々気に入った。)

 

 投票で決まった結果に文句を言うつもりはないが、やはり委員長を任せるなら飯田くらい堅実な人に任せてみたい……と思ったのだった。無論、緑谷も緑谷で良いリーダーに成れそうだが。

 

□◇□◇□

 

 お昼の時間、千翅は教室でお弁当を貪っていた……因みに今日のレシピはサンドイッチだ。勿論上のパンは()()。これが我が家流のサンドイッチだ。

 

 しかし、味は変わらないのだからこれで十分……すると、突然雄英高校全体に緊急放送が鳴り響いた。

 

 曰く、セキュリティ3が突破……つまり、雄英高校内に侵入者が入ったとのことだ。

 

 学生は避難するように促されるが……既に廊下は避難しようとする人でいっぱいだ。千翅は慌てるわけでもなく、落ち着いて窓から辺りを見回してみる。

 

「こういうときこそ慌てず騒がず状況確認……」

 

 千翅が辺りを見回すと、そこにはマスコミが敷地内に入っているのが見えた。

 

「マスコミか……サンドイッチ食べよ。」

 

(((マイペースすぎだろ!?)))

 

 千翅で千翅で変なところがあると、その時教室にいた面々は唖然とするのだった。因みに、その後放送で侵入者はマスコミだと言うことが発表され、徐々に騒がしい昼休みは過ぎていく。

 

 しかし、雄英高校のセキュリティを突破するマスコミとは一体何者なのだろうか……?

 

 千翅はそんなことを気にしながらも、その辺は後に先生が対応してくれるだろうと、考えるのをやめてまたサンドイッチを貪る。

 

 因みに、この事件で何か功績を挙げたのか、委員長になった緑谷がその座を飯田に譲ることにしたのは、また別の話だ。

 

 

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