マブラヴif短編集   作:地獄の一丁目

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武ちゃん何周目? 93式不知火開発裏話し④ お正月・帝都・京都編

《1992年12月30日水曜日・帝都京都》

 

「純夏の正月は、雅之おじさんの実家がある奈良県明日香村と、純歌おばさんの実家三重県伊勢神宮か・・・」

 

 武は年末年始に滞在する5つ星ホテル帝都京都のハイアットリージェンジーホテルのスイートルー厶で、地図と観光パンフレットを見ながら呟く。

 

「やっぱり純夏の家にも何かあるんだな・・・」

 

 鑑雅之の実家が在る奈良県明日香村には幾つもの古墳と皇室絡みの観光名所が存在し、鑑純歌に至っては伊勢神宮の現宮司の娘だ。

 

「これで何も無いと思うのが不自然だ・・・・」

 

 武は地図と観光パンフレットを畳む。

 

 武が次に手をしたのは、光菱重工の精密機器関連会社に製作を依頼していた3Dプリンターの開発進捗状況だ。

 

 3Dプリンター技術の開発が上手く行けば、生産力が飛躍的に向上をする。3Dプリンター技術を使えば、従来の製造技術でベアリング1個作るの間に、10個のベアリングを作れる様になる。

 

 報告書では春にはいくつかの試作品が出来上がると言う。

 

 武的には数年以内に、軍関係の主要部品や砲弾の大半を3Dプリンターで作れる様にしたかった。

 

「純夏に変化は無しか・・・」

 

 武が今の能力に目覚めたのが2年前の誕生日だった。

 

 当初は混乱はしたが、時間が経ち落ち着くと、純夏にも変化がないかと注意を払ったが、全く変化が無いと判ると安堵した。

 

「雅之おじさんと純歌おばさんの2人は、家同士の繋がりでお見合い結婚したんだっけ・・・」

 

 武は好奇心旺盛な子供を装って、純夏と一緒に鑑家がどんな家なのかの探りを入れた。

 

 分かったのは純夏の両親が見合い結婚なのと、背後にどうも『皇室』の二文字が浮かんで来た事だ。

 

「と言う事は、鑑家は皇室の流れを組む家なのか。そう考えると色々と辻褄が合って来るんだよな・・・」

 

 皇室の実態に関しては菊紋扉に閉ざされているので、分からない事だらけだ。

 

「木を隠すのなら森の中か。もしこの能力に目覚めなかったら少しも疑問にも思わなかったんだろうな・・・」

 

 何故か夜寝ると夢の中で記憶領域の向こう側虚数空間へとアクセス出来る様に。ったのかは不明だ。この能力に目覚めた事でこれから起きる未来を知る事になったし、自分の人格にも影響を与えた。

 

「これ以上、調べたら逆に怪しまれるよな・・・」

 

 それでなくても武を取り巻く周囲は騒がしい。横浜市神奈川区と北区には各国の諜報員が入り込み、マスコミを含めた有象無象が、白銀家の一挙手一投足を見張っているのだ。

 

 逆に誘拐等の危険性は減ったが、下手な動きをすると藪蛇になる恐れも高くなる。

 

 武としては否が応でも対応と行動は慎重になる。

 

「でも、その前に煌武院家の問題をどうするかだよな」

 

 武は年始の挨拶と称して両親と一緒に、徳永家本家と煌武院家に招かれていた。

 

 白銀家は一般家庭なので、今までは縁が無かったが、武が発明家として八面六臂の活躍をしている今、白銀家を昔の様に煌武院家派の譜代武家として、武家に復帰させようとしているのは知っている。

 

「煌武院家との繋がりが欲しく無いと言えば嘘になる」

 

 武と煌武院家の現当主は同い年で同じ誕生日。

 

 血縁で言えば再従兄弟に近い関係。

 

 そして煌武院家も十年に一人の英才の評判が高い斑鳩家次期当主の斑鳩崇継を擁する斑鳩家。次期政威大将軍候補筆頭との声が高い崇宰家次期当主の崇宰恭子を擁する崇宰家の両家に押されているのが実情。

 

 五摂家は煌武院家を筆頭に、斑鳩家がNo.2、崇宰家がNo.3と続いている。

 

 筆頭の煌武院家が劣勢なのは煌武院家現当主である煌武院悠陽が未だ9歳で幼いのと、煌武院悠陽の両親が3年前に交通事故死したのが大きく響いていた。

 

「あの交通事故後、色々と噂が飛び交ったよな。他殺だの、謀殺とかさぁ」

 

 そして一番真っ先に疑われたのがNo.2の斑鳩家。

 

 次に疑われたのはNo.3の崇宰家。

 

 その次に疑われたのは現政威大将軍の実家である斉御司家。

 

 そして何故か全く疑われなかった九條家。 

 

 斑鳩家が真っ先に疑われたのは、武家No.2だったのと、十年に一人の逸材と言われ、斯衛軍士官学校に首席で入学した斑鳩家嫡男にして次期当主斑鳩崇継の存在が大きい。

 

 崇宰家は五摂家の中で一番序列が低かったが、自派の篁家当主である篁祐唯が国産戦術機開発で大きな役割を果たした事で、崇宰家の影響力が増大。そこに女性初の次期政威大将軍候補として挙げられる崇宰恭子の存在が大きい。

 

 斉御司は現政威大将軍を擁する家で、現政威大将軍の斉御司経盛は、自分の息子にして斉御司家次期当主である斉御司隆明を次の政威大将軍に据えたがっているとの噂が疑われる理由の一つに上げられた。

 

 九條家が疑われなかったのは、九條家長女の九條瞳子が煌武院悠陽にとって姉替わり的存在だったのと、事故の報せを受けた九條瞳子が真っ先に煌武院悠陽の元に駆け付け、煌武院悠陽の傍から離れ様としなかったのが大きい。

 

 交通事故から3年経った今でも、九條瞳子は煌武院悠陽を公私に渡っての相談役を引き続き続けている。

 

「あの交通事故死が無ければ、悠陽様の父親が次の政威大将軍だったに違いない」

 

 別の見方をすれば、煌武院悠陽が若干15歳の身で政威大将軍に就任する道筋が出来たとも言えなくもない。

 

 他の四家にしても、煌武院悠陽を政威大将軍に据える事で邪推が入るのを嫌い権力争いをする意思は無いのを国内外に証明したかったのかもしれない。

 

「斑鳩家に勢いがかるのは、次期当主である斑鳩崇継の存在が大きいんだろうな・・・」

 

 この世界の武本人は斑鳩崇継との面識は無いが、数百数千世界の白銀武にとって、香月夕呼と並んで縁がある人物。

 

「・・・嫌でも意識するよな・・・」

 

 この世界の武としては、自分がこれ以上動き回り、自分の家が譜代武家となり、煌武院家に取り込まれたら、良好な父親同士の関係が悪化するのではと懸念する。

 

「既得権益を嫌い、閉鎖的な武家や斯衛軍を変えたいと考えているのは間違いなく斑鳩崇継の方だ。煌武院悠陽の方は保守派寄りの現状維持派で、次点で崇宰恭子。なら、現状で武家で味方にするとしたら斑鳩崇継の方だ。でも俺の方から斑鳩崇継に近付いたら、色々と面倒な事になるのは確実か・・・」

 

 考えるのが面倒になった武はソファーの上に寝転がる。

 

「父さんの方で断ってくんないかなぁ・・・」

 

 どこに行くにしても、常に警護に囲まれてしまい、最初は仕方なく妥協し、警護を受け入れてはいたが、最近は疎ましくさえ思えて来た。

 

「これで武家になったら、今度は斯衛軍まで家の警護に加わるンだよなぁ・・・」

 

 東海道新幹線では景観が悪いグリーン車一階個室の使用が義務付けられ、景観が良い二階席は防犯対策を理由に使用を禁じられ、トイレ以外はグリーン車個室から出られなく殆ど監禁状態だった。

 

 更にシュールなのは、グリーン車の隣の指定席車輪が各国の諜報員が呉越同舟で乗ってもいた事。

 

 車内の空気はかなり微妙で、互いに牽制し合う視線が彷徨っていたと言う。

 

「純夏も余り喜んでいなかったよなぁ・・・」

 

 京都駅まで鏡家とは一緒だったが、純夏は景観が悪い新幹線グリーン車一階席個室に監禁状態だった為、最初は武と同じ個室で上機嫌だったほが、余りの景観の悪さに次第に不機嫌となって文句垂々に。

 

「武ちゃん、富士山が余り見えないよ・・・」

 

 

 

「外出も出来ないって辛いなぁ。何の為に観光都市京都に来たんだか分からねぇ~」

 

 全く外出が出来ない訳ではないのだが、横浜市以外で外出するには公安警察、内閣調査室、外事警察、情報省保安課、斯衛軍警備部の許可が必要となるし、許可が出たら出たでぞろぞろと護衛を連れて回らなくてはならない。

 

 両親は両親で忙しいらしく、京都に着いた早々、あちこちに挨拶に回っていた。

 

「これじゃあ仕事と同じじゃあないか。なんの為の正月休みなのか分かんねぇ~」

 

 武は仕方なくガンマ線レーザー砲装備の対地攻撃衛星【創世】の設計図作りの為に、意識を虚数空間へと飛ばす為に寝る事にした。

 

「・・・何とかして抜け出せないかなぁ・・・」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「巌谷少佐、少し話しがあります」

 

 富士教導団での年内最後の訓練を終えたキルケ・シュタインホフ少佐は、年明け後のスケジュールの打ち合わせを終えた直後、日本帝国陸軍側の窓口である巌谷榮二少佐に言葉を掛ける。

 

「ああ構わないよ、シュタインホフ少佐」

 

 巌谷榮二もそろそろキルケ・シュタインホフが何かしら動く頃合いと思っていたので、話しに応じる事にした。

 

「それで話しと言うのは?」  

 

 会議室から自分達以外が退出した後、巌谷榮二から話しを切り出す。

 

「まず、話しをする前にお礼を言わせて下さい」

 

「お礼?」

 

「はい。この度は欧州連合の無理な頼みを聞いて頂き、誠にありがとうございます。欧州連合及び東西ドイツを代表して感謝をしています」

 

 キルケ・シュタインホフは巌谷榮二に深々と頭を下げる。

 

「・・・頭を上げて下さいシュタインホフ少佐。今度の件は日本帝国にとっても利があるので、貴方方を受け入れたに過ぎません。どうか、お気になさらずに」

 

「ですが、どう見ても日本帝国側の貸し出し超過です。日本帝国にどんな利が有るあのですか?」

 

 彼女は巌谷榮二には一定の信頼を抱いていた。毎日毎晩怪しげなパーティーが開かれている貨客船《ハンブルク号》のパーティーに一度も参加せず、欧州連合の要望を叶える形で欧州連合の第3世代機の開発に協力してくれている。

 

 日本帝国の有力者に身請けされた女性達には、日本帝国での幸福な日々があるのを祈るしかないが、巌谷榮二は全く誘いに応じないはかりか、興味も関心も示さないと言う。

 

 女性を物として売り買いしない点で信頼が置ける人物と評価していた。

 

「・・・軍事機密な事なので他言無用で願いたいのですが、我が日本帝国には、【不知火】を軽量化しつつ安価で調達が可能なもう一つの第3世代機の開発計画があるからです」

 

「もう一つの第3世代機ですか?」

 

 キルケ・シュタインホフからしたら、目が眩む様な話し。

 

 欧州連合諸国は欧州失陥前に、自国の産業基盤をカナダ東海岸、南米大西洋沿岸諸国、アフリカ大西洋沿岸諸国に移しはしたが、必ずしも工業生産が上手く言っているとは言い難いのが実情で、第3世代機の開発も難航していた。

 

 第3世代機の開発・量産が出来るまで、第2世代機【F-5E Tornado】のアップデートで凌ぐ方針でいた。だが、【F-5E Tornado】はアメリカ・ノースロック社が開発した第1.5世代機【F-5 フリーダム・ファイター】が元な為、量産性、整備性、機動性には優れていたが、軽量機故の悲しさか、拡張性に乏しい機体だった。

 

 もうこれ以上のアップデートは無理と欧州連合の技術者達は諦めていたが、日本帝国が独自の第3世代機を開発したばかりか、新OSと新型CPUを搭載しただけで、戦術機の性能を一世代分と、即応性を20%以上も向上させる事に成功したとの情報と模擬戦の映像が入る。

 

 そして欧州連合軍と技術者達は歓喜した。

 

『これこそが、私達が求めていた新技術ではないのか!』

 

 第2世代機の登場で、一時は崩壊仕掛けていた東ドイツ戦線を立て直し、ポーランド領内へと押し戻し掛けた時は、第2世代機さえあれば、BETAを押し戻せると各国は確信し始めた。が、その直後にBETAは軍団規模の地中侵攻を実施して東ドイツのオーデル川防衛線を突破して、一気にベルリン市内へと突入し、ベルリン市を蹂躙し破壊した。

 

 世界各国は冷水を浴びせられた。第2世代機さえあればBETAを押し戻し、BETAに勝利出来ると確信に近い思いを持ち始めていたからだ。

 

 国連軍とNATO軍はこれ以上のBETAの西進を阻止しようと総力を上げてベルリン奪回に挑むが、5度の攻防戦の末にベルリン奪回を断念し、東ドイツの放棄が決まる。

 

 最初は優勢に立つが、BETAが大規模地中侵攻を行う度に、戦局が引っくり返されては、戦線が崩壊してしまう。

 

 人類がBETAの物量に負けてしまう以上、質で対抗するしか手段がなく、第3世代機の開発が急がれていた。

 

 それと同時にジレンマに立たされてしまう。

 

 戦術機の高性能化が進めば、どうしても1機辺りの調達コストが増大してしまう。実際に第3世代機を開発・量産をするには、高水準な工業生産力が求められる。

 

 そんな事が単独で可能なのは、日本帝国とアメリカだけと言うお寒い状況だ。

 

 だからこそ、欧州連合は技術革新を急激に推し進める日本帝国に縋り頼ったと言える。

 

「正直に言って日本帝国が羨ましいですね・・・・」

 

 これはキルケ・シュタインホフの偽り無き本音だ。

 

 『神童』と言われる発明家白銀武を擁し、日本帝国の戦術機の権威とも言える『三羽烏』が武を中心に、技術革新と第3世代機の開発を進めている。

 

 何かと纏まりを欠ける欧州連合とは雲泥の差だ。

 

 地中海打通作戦もシチリア島からの撤退が決まり、イベリア半島を維持しつつ、ジブラルタル海峡⇄マルタ島⇄クレタ島⇄キプロス島の海上交易ラインを死守する構えだ。

 

 欧州連合は戦術機改修開発計画を新たに決め、PHASE1では新OSと新型CPUを使い、戦術機の即応性を最優先で大幅に向上させる方針を決定したばから。

 

『他の技術は後回しでいい。戦術機の即応性を大幅に向上させるのを優先する』

 

 水素系技術も同時に導入したかったが、いかんせん、水素系技術は欧州連合にとって未知の分野だ。

 

 日本帝国では水素系技術の研究・開発は1980年代から始まっていたのだが、爆発的エネルギーの制御が難しいのと、長期間の保存の問題が出来ず、技術的問題から基礎研究の段階に留まっていた。武がこの技術的問題を解決するまでは。

 

『ですがそれですと、戦術機の心臓部と頭脳を日本帝国に握られてしまう恐れが・・・』

 

 欧州連合内にも日本帝国の新技術を導入に対し、反対意見は一定数存在している。新OSは兎も角、新型CPUを作る技術は日本帝国しか持っておらず、欧州連合が新型CPUを独自開発をするには、どんなに急いでも数年の時間が必要になるからだ。

 

 特に半導体問題は深刻だった。欧州連合は半導体分野では日本帝国、アメリカに比べて遅れていたのと、欧州失陥の後遺症で半導体製造業が壊滅。カナダとアメリカに大きく依存していた。

 

 日本帝国が開発した新型半導体は、既存の半導体の十年先を行っており、今の欧州連合では新型CPUは疎か、高性能半導体を複製すら間々ならない。

 

 そして非白人国家への根強い不信感も併せ持つ。

 

 カナダ、アメリカは同じ白人兼キリスト教系国家として一定の信頼感を持つが、日本帝国は非白人国家にして、第二次世界大戦で、自分達からアジア・インドの植民地を奪った有色人種国家として根強い不信感を持つ。

 

 その日本帝国に大きく依存する事への警戒心も強い。

 

 だがそうも言っていられない現実的事情も抱えている。

 

 地中海打通作戦での損耗率の高さが、高いライセンス料を支払ってでも、最優先で新OSと新型CPUの二つを導入を後押しする。

 

『今はそんな事を言っている場合かね。地中海打通作戦での50%を超える損耗率の高さを見て言っているのかね?』

 

『ですが、新OSにしても新型CPUにしても、実戦経験がありません。どんなに性能が良くても、実戦経験が無い物を導入する訳にはいきません。どうかご再考を』

 

『だったら、我々がその初めてをやればいいだろう。何事も初めては存在をする。失敗を恐れて二の足を踏めば、同じ失敗を繰り返すだけではないかね?』

 

『分かりました。では試験部隊はどうしますか?』

 

『キルケ・シュタインホフ少佐の部隊にやらせる。今、少佐の部隊は日本帝国にいるはずだからな。日本帝国で改修された【Tornado】がどの程度アップデートしたかを確かめる』

 

 日本帝国で【Tornado】が報告書通りに第3世代機へとアップデートに成功したかを確かめたかった。

 

 欧州連合軍で日本製特殊装備の扱いに慣れたキルケ・シュタインホフ少佐と、その部下達が適任だろうと。

 

『了解しました・・・』

 

 

 

「まあ我が国にしても、欧州連合にはBETAに負けて貰っては困るからな。とは言っても、東ユーラシアも何時まで持ち堪えられるか分からない状況だ・・・」

 

「何年持ち堪えられるでしょうか・・・・」

 

「持って5年だろうな・・・」

 

「たったの5年ですか?」

 

 キルケ・シュタインホフは驚いて目を丸くする。日本帝国の今の軍事技術なら、BETAの侵攻を食い止められるのではと見ていただけに。

 

「余り言いたくはないのだが、他が弱すぎる。だから我々も君達を受け入れたのだ。戦線構築能力と、即応性に優れた【不知火】の兄弟機を作る為にだ」

 

 巌谷榮二としては、輸出が可能な【不知火】の兄弟機を開発する事で、東ユーラシア諸国の防衛線を強化維持する計画を持っていた。

 

 ここで問題になって来るのは、東ユーラシア諸国の基本的国力の脆弱さ。使用しているアメリカ製戦術機とユーラシア戦線の実情がマッチングしていない現実だ。

 

 アメリカ政府とアメリカ軍は近接戦闘を軽視しており、むしろ機体保全とパイロットの生存率重視から、近接戦闘を忌避する傾向が強い。他国の追随を許さない圧倒的な国力と生産力に物を言わせて、大量に砲弾をばら撒く中長距離砲戦戦闘を好む。

 

 当然の事ながら、アメリカ製戦術機は近接戦闘仕様には出来ていない為、アメリカ製戦術機を採用している前線国家は現地改修しないとならない二度手間を余儀なくされている。

 

 日本帝国政府は東ユーラシア諸国からの悲鳴に近い嘆願要請に応える形で、二度手間の現地改修に協力をしていた。

 

 『だったら最初からBETAとの近接戦闘使用を前提にしている日本帝国や統一中華、それにソ連の戦術機を採用すれば良いんじゃね?』の話しにもなるだろうが、話しはそう単純ではないのだ。

 

 日本帝国が採用している戦術機は全てアメリカとのライセンス契約機だ。アメリカとの契約の縛りが厳しく、ライセンス契約生産機は輸出が出来ないでいた。

 

 中国とソ連は度重なる消耗戦で、自軍への調達数を揃えるのが精一杯で、他国への輸出処ではない。

 

 しかも両国共じわじわと後退を余儀なくされており、内陸部の重工業地帯と兵器生産工場を失っていた。

 

 ここに中国共産党政府は不倶戴天の間柄と言っていい台湾政府と統一中華戦線を発足させ、政府機関のみならず、残った兵器生産工場を台湾へと移し継戦能力を維持しようとしているが、如何せん台湾も単独で兵器開発・大量生産が出来る国ではなかった。

 

 ウラル以西を完全に喪失したソ連も似たり寄ったりで、東シベリアとアラスカ北部に生産拠点を移しつつあるが、元々何も無い場所に生産拠点を移した所で、兵器生産が大幅に向上する筈もなく、自軍の分しか生産する余裕がない。

 

 だからこそ日本帝国はアメリカとのライセンス契約の縛りが全く無いとは言わないが、輸出規制外に当たる第3世代機の開発に執念を燃やしていたのだ。

 

 ハイを担当する【不知火】は日本人限定だが、ローを担当する兄弟機は、前線国家への輸出を前提にしているので、日本人限定にはしない方針だ。

 

 量産性、整備性に優れた【Tornado】は【不知火】の兄弟機を開発する当たって、理想的な戦術機でもある。

 

「つまり【不知火】はハイの高機動型で、兄弟機はローの戦線構築機と言う訳ですね」

 

「察しが良くて助かるよ。正しくシュタインホフ少佐の言った通りだ。【不知火】型は最終的に亜音速機化を目指しているが、今でも時速900キロは出せるから、高機動型としては十分合格点と言えるだろう」

 

「水素プラズマ・ジェント・エンジンによるものですね」

 

「エンジン出力は従来の跳躍ユニットの倍だが、燃費が数分の一のおかげで、跳躍ユニットと燃料タンクを大型化せずに済んだのは大きい。最終的には亜音速飛行を前提にした【高機動型不知火】を5年以内に開発予定だ」

 

 戦術機の航続距離を伸ばそうとすれば、燃料タンクも大型化するしかなく、それに伴って機体も大型化し被弾面積が増える。跳躍ユニットも同様だ。

 

 混戦の最中、燃料タンクと跳躍ユニットが被弾し、帰還出来なかった機体も数多く存在する。

 

 戦術機開発のジレンマがそこに存在する。

 

 新OSと新型CPUと水素燃料と水素電池の4つは、戦術機開発に伴うジレンマを解決したと言って良いだろう。

 

 これを実現した白銀父子の功績はデカかった。

 

 だからこそ煌武院家は、白銀家を自派の譜代武家として復権させたかった。

 

 そして武からの個人的な依頼で、核爆弾とG元素を使ったEMP兵器の起爆装置の開発を設計図込みで依頼され、年明けの春には試作の起爆装置が出来る見込みだ。

 

 だが日本帝国は核爆弾もG元素もない。

 

 纏まったG元素を保有しているのはアメリカだけ。

 

 そして核兵器の開発・保有は日米安全保障条約で、日本帝国は禁止されている。

 

 武と起爆装置の扱いについて話し合った結果、アメリカ以外の核兵器保有国と協議し、他国の核兵器を使ってハイヴ一つを無力化しBETAの進撃を食い止め、連隊規模の【不知火】を使ってハイヴの反応炉を破壊。EMP兵器構造の正しさを証明すると言う物。

 

 ハイヴ一つを攻略すれば、纏まった量のG元素の確保は見込めるし、そのG元素を使ってG元素EMPを作り、一気にオリジナル・ハイヴ事《喀什・ハイヴ》攻略しようと、武と巌谷榮二は決めた。

 

 既成事実さえ作ってしまえば、アメリカも自分達の計画に追随するしかなくなると。

 

 巌谷榮二は現時点でキルケ・シュタインホフや部外者に話す気は更々なかった。

 

 武も今は構想段階のガンマ線レーザー砲対地攻撃衛星【創世】に関する事は話していない。

 

「巌谷少佐。もう一度だけ、エルフィンダー・タケル・シロガネと、その父親・カゲユキ・シロガネに会わせて貰えないでしょうか?」

 

「済まないが、その要望には応えられない」

 

「何故ですか・・・・」

 

「理由は簡単だ。横浜に血の雨が降るからだ」

 

 巌谷榮二は遠い目をして天井を見る。

 

「血の雨ですか・・・」

 

「楓君は嫉妬しやすい性格で、影行は恐妻家で、武君は重度のマザコンだからな(武君済まない)」

 

 巌谷榮二は心の中で武に謝った。白銀楓が嫉妬しやすいのは確かだし、白銀影行が恐妻家なのは確かだが、武がマザコンと言うのは真っ赤な嘘だ。

 

「えーとー」

 

 彼女は何処から突っ込んで良いのか困り、返答に窮する。

 

「そこに加えて楓君は過保護だからなぁ。未だに小学3年生の武君と添い寝して上げたり、一緒にお風呂に入ったりしてだなぁ。その過保護ぶりは関係者の間で有名だ」

  

 巌谷榮二は態とらしく腕を組んで、うんうんと頷きながら自慢げに話す。そして目を見開いて言う。

 

「君の性癖に付いて私はとやかく言う気はないが、武君に手を出す気でいるのなら、最低でも楓君と決闘沙汰になるのは覚悟したまえ少佐」

 

「要は会わせたくないんですね巌谷少佐。どうか安心してください、私の性癖は至って健全ですので」

 

「なんだ、乗ってくれないのか詰まらん」

 

 心底詰まらなさそうに溜め息を吐く巌谷榮二。

 

「何とかなりませんか?」

 

 大の大人が揃いも揃って、小学生の子供に頼るのは情けないの一言だが、そうも言って要られないのが本音だった。

 

「済まないが無理だ。我々にしても白銀家の安全確保には神経を使っているし、白銀家の周りに他国の間者が取り巻いている間はな」

 

 彼女からしたら頭が痛くなる話だ。一つでも多くの技術情報を9歳の子供から得ようと、欧州連合の諜報員も参加をしている。

 

(恥やみっともない感情は存在していないのか?)

 

 スパイの世界にそんなもんを説いた所で、鼻先で笑われてしまうのが関の山とは分かっていても腹が立つ。

 

 だからと言って会うのを諦めるかと言えば、やはり諦め切れなかった。

 

「何とかなりませんか?」

 

「そうだな、少なくとも東京都と神奈川県の両方から、各国の間者が居なくなるのが最低条件だな」

 

 それこそ難題に思えた。個人的には最低条件とやらを飲んでも構わないのだが、欧州連合軍上層部と情報部がそれを飲むはずがないからだ。

 

 スパイの世界では昨日今日の友人は存在せず、明日明後日の敵は存在するのが常識。

 

 欧州連合さえ飲むはずがない最低条件を、他国が飲むはずがないのだから。

 

「まぁそうだな、あの夫婦の馴れ初めの話しでもしよう」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ふむ、シュタインホフ少佐はかなり焦っているな・・・」

 

 巌谷榮二には彼女の心理状態が読み取れていた。

 

 富士教導団での自室に戻った巌谷榮二は、欧州連合軍が行った地中海打通作戦の結果に目を通す。

 

「やはり旧OSと旧型CPUを搭載した戦術機では、新人衛士に死の8分を乗り越えるのは難しいか・・・」

 

 この結果は日本帝国軍にとっても笑い事ではない。

 

 日本帝国軍も経験を積ませるを名目に、小規模の戦術機を中心とした機甲機械化部隊を中国戦線に送ったが、似たり寄ったりだったのだから。

 

 日本帝国政府は国連からの強い要望で、4月から本格的に重慶方面に日本帝国陸軍を軍団規模の派兵を開始をするが、新OSと新型CPUが無ければお寒い状況が続いたのは誰の目にも明白だった。

 

 帝国陸軍技術廠でも独自に、水素エネルギー技術を利用した純水素爆弾&地雷の開発を進めていた。

 

 爆弾型は大気圏再突入殻に純水素爆弾を搭載し、重金属運を展開した後に広範囲に純水素爆弾を投下し、BETAを跡形もなく吹き飛ばそうと考え、地雷型は戦術機部隊で陽動と誘引させ、水素爆弾地雷源にBETAを誘導。BETAが水素爆弾地雷源に網に掛かれば、これまた纏めて吹き飛ばそうと言う荒っぽい戦術だ。

 

 問題は起爆装置だが、幸いな事に武が考案・設計したEMP兵器用起爆装置が使えそうなので、帝国陸軍技術廠は純水素爆弾の開発に、年明けから取り掛かる手筈だ。

 

「武君は重慶方面にハイヴを絶対に作らせないで欲しいと言っていたな・・・」

 

 武が危惧するのは重慶と帝国本土の距離だ。

 

 BETAの一度の行動距離は未だに不明だが、最大3000キロと見積もられていた。

 

 重慶と北九州の距離は2343キロ。

 

 BETAがその気になれば、重慶から一挙に日本帝国本土侵攻が可能だと言う。

 

『巌谷少佐、重慶方面にハイヴが作られてしまったら、日本帝国は事実上前線国家の仲間入りです。それだけは阻止したいのですが、もし建設を阻止出来なければ、出来るだけ早く1年以内に重慶・ハイヴをEMP兵器と【不知火】の二段構えで早期に攻略しなくてはなりません。言うは易し行うは難しいのは自分も承知しています。その承知の上でやって貰いたいのです』

 

 武の必死の形相と懇願に負けて、巌谷榮二はつい承諾をしてしまった。 

 

「やはり彼には未来が見えているんだろうな・・・」

 

 帝国政府と軍部の一部では不気味に囁かれていた。

 

『白銀武は、もしかしたら予知能力者ではないのか?』

 

 白銀武のBETA関連の予測的中率は高く、殆ど外れが無いばかりか、1992年のH∶14= ドゥンファン・ハイヴ、H:15=クラスノヤルスク・ハイヴの建設を、細かい座標も含めて的中させてしまう。

 

 二度あることは三度あるで、武が言う重慶・ハイヴ建設

が的中して仕舞えば、帝国政府と軍部内では疑う者は居なくなる。

 

 武の価値が益々高くなり、帝国政府と軍部は武の保護と安全確保に更に神経質になるしかなくなる。

 

「だが果たして、今の戦力で重慶・ハイヴ建設を阻止出来るかはかなり難しいな」

 

 それが巌谷榮二の実直な感想だ。

 

 今の大陸派遣軍の全戦術機部隊には、新OS、新型CPU、水素電池、水素燃料、水素プラズマ・ジェット・エンジンを採用させるが、如何せんパンチ力に掛けている。

 

「遅滞防御戦術で、重慶・ハイヴ建設を半年遅らせれば良い方か・・・」

 

 巌谷榮二にしてもこれ以上のハイヴ建設は阻止したい。これ以上のハイヴの建設を許せば、人類の反抗と勝利は遠退いてしまうのだから。

 

「問題はどうやって核兵器保有国を説得するかだ・・・」

 

 それこそ至難の業に思えてはならない。

 

「アメリカ以外の核兵器保有国はイギリス、フランス、ソ連に中国か。最近ではブラジルとアルゼンチンと南アフリカが核兵器の開発を始めたと言う話しだが、詳細は今の所不明だ」

 

 詳細が不明なブラジルとアルゼンチンと南アフリカは交渉相手から除外する事にした。

 

「核兵器保有国に取って虎の子の兵器で、対米交渉の切り札に等しい。それを効果が不明なEMP兵器への転用をそう簡単に認めるとも思えない。こうなってくると、日米安全保障条約で核兵器の保有を禁じられてくるのが痛いな。やはりアメリカを説得するしかないのか?対米交渉の切り札は幾つもあるが・・・。そうなってくると、今度は国内が収まらなくなる恐れがある。特にアメリカが白銀家のアメリカ移住を交換条件に持ち出したら・・・」

 

 巌谷榮二はそこまで思考を進めて頭を振る。

 

「我ながら度し難いな。国内で国粋派や保守派が反乱を起こず等と考える等・・・」

 

 薄氷を踏む思いだった。日本帝国は武を失わない限りは、対BETA戦争では国際的主導権を握れるが、それをアメリカが黙って傍観するとは思えない。

 

 今は大人しくしているが、いずれはアメリカは動き出すのは目に見えていた。

 

「全く柄ではないよ、国を動かす等と・・・。影行、楓君、君達夫婦はとんでもない子を世に送りだしてくれた。おかげ胃薬が手放せなくなったよ」

 

「まあやるだけの事はやろう。でなければ、この国がそう遠からず戦場となる。それだけは阻止せねばな・・・」

 

 日本帝国の国土は決して狭くはない。だが居住可能面積が国土の3割しかなく、国土の七割が山岳地帯や森林に覆われているので、総人口が1億2000万の国民を他の居住地に避難させ難いのだ。戦争相手は人類を交渉相手と見做さない異星起源種のBETA。一度上陸を許せば、生き残りを賭けて生残極まる焦土戦術を取るしか選択しかない。

 

 武は秋に帝都大学に現状でのBETAの帝国本土侵攻があった場合、どの様な被害結果が出るのかシュミレーションを依頼。

 

 帝都大学は武が提出した未来予測モデルを元にコンピューター・シュミレーションを何度も繰り返した結界、このまま手を拱いていれば国土の40%から50%が焦土となり、国民の2割強から3割強がBETAに踏み潰されるか食い殺され、更には餓死、疫病死が蔓延。帝国国内に最低でも二つのハイヴが作られてしまう最悪の結果が出た。

 

 この結果に帝国政府、帝国軍、斯衛軍上層部は顔面蒼白となり、中には泡を拭いて卒倒する者も出た程だ。

 

『・・・百回死んでも、地獄の特等席が我々全員に約束されたのも同じだな・・・地獄が実在していればの話だが』

 

 そう呟いたのは外務大臣の榊是近だ。

 

 この呟きに反論出来る者は誰一人としていなかった。

 

 何が何でもBETAの帝国本土上陸を阻止する事で日本帝国政府、帝国軍の方針が定まり、斯衛軍も必要に応じて、大陸派遣軍への戦力抽出を約束。斯衛軍も【不知火】の正式採用へと舵を切り、斯衛軍分の【不知火】は遠田技研に任せ河崎重工に戦術機開発の経験が浅い、遠田技研にサポートさせる事に。

 

 なお、斯衛軍専用機として開発が始まっている【武御雷】は一時凍結が決まる。

 

 遠田技研に斯衛軍分の【不知火】を遠田技研に生産させるのは、【武御雷】開発計画を一時凍結した事への謝罪弁済の意味合いが強かった。

 

 実際問題として、白銀親子が引き起こした技術革新で戦術機の開発生産技術が十年以上も進歩してしまった結果、経験の浅い遠田技研に、【不知火】を上回る戦術機を作れるとは思えなかったし、誇り高い職人気質で知られる遠田技研も白旗を掲げるしかなかった。

 

 そもそも遠田技研は、戦前から存在し、兵器開発の蓄積と技術を持つ3大重工(光菱、富嶽、河崎)とは違い、戦後に発足した会社でバイクメーカーだった。

 

 つまり、1980年代に入るまで、兵器開発・生産とは無縁の会社だった。

 

 だったら何故その遠田技研が、畑違いの戦術機開発に名乗り出たかと言うと、愛国心からではなく、バイクや自動車の輸出先であるユーラシア大陸がBETAに目茶苦茶にされ、会社の業績が急激に悪化。このままでは会社がそう遠からず倒産してしまう危機感が背景に合った。

 

 だが、日本帝国の戦術機市場は3大重工(光菱、富嶽、河崎)の独占市場で、戦後の新興企業で経験値0の遠田技研が割って入り込む余地はなかった。

 

『申し訳ありません。お帰りはあちらです』

 

『もう間に合っています』

 

『遠田さんね。大人しく軍用バイクや軍用車を作っていればいいんじゃないですか』

 

『本当に諦めが悪いですね。何度来ても返事は同じですよ』

 

 と帝国軍や3大重工に営業を掛けるが、門前払いされてしまう。

 

 最早これまでかと諦め掛けていた遠田技研に、一つの転機が訪れた。

 

 帝国政府城内省と斯衛軍が、斯衛軍独自の第3世代機、しかも【不知火】の上位互換機を開発する計画を発表した。

 

 これには帝国政府、帝国軍、3大重工も驚いた。世界初の第3世代機として【不知火】を開発中なのに、更にその上位互換機を開発しようとする城内省と斯衛軍の非常識にだ。

 

 しかも【上位互換機】とありながらも、【不知火】との部品交換率は50%以下、徹底的に近接戦闘使用の機体な為、機体の半分以上が専用部品で構成され、量産性、整備性、拡張性は最初から捨てている有様。

 

 城内省と斯衛軍が求める性能と使用要求を見た巌谷榮二と白銀影行の2人は、即座に篁祐唯斯衛軍主査と連絡を取る。

 

 そして2人揃って頭を抱えている篁祐唯を見ながらも、開口一番に口にした言葉は『城内省と斯衛軍の連中は正気か!?』だった。

 

 日本帝国初の完全国産戦術機と謳っている【93 式不知火】でさえ、アメリカのライセンス生産機【89式陽炎】との部品交換率は50%台を超えていた。

 

 この使用要求の戦術機が開発されたら、国内は兎も角国外では怖くて使えない機体が出来上がるのは確実だから。

 

 当然の事ながら、帝国陸軍技術廠、3大重工は斯衛軍専用機【武御雷】開発計画に関わる気はなかった。

 

 城内省と斯衛軍にしても最初は3大重工に任せたいのが本音だったし、帝国陸軍技術廠の協力を欲したし、遠田技研に任せる気は更々なかった。

 

 会社の倒産の危機を前にして、遠田技研は立ち上がり手を挙げて【武御雷】開発計画を引き受け様とした。

 

 遠田技研の熱意に城内省と斯衛軍は折れ、遠田技研に河崎重工に技術協力をさせる事で、【武御雷】の開発を任せるに至る。

 

 だがそこに城内省、斯衛軍、遠田技研に取って青天の霹靂とも言える事態が。

 

 光菱重工が新OS、新型CPU、水素電池、水素燃料、水素プラズマ・ジェット・エンジンを開発、高性能半導体、新型液晶画面等。

 

 【不知火】は当初想定した性能を遥かに上回る高性能化に成功したとニュースが飛び込んで来た。

 

 しかも量産性、整備性、機動性、即応性、交換性の高さを維持しながら、これから開発予定の斯衛軍専用機【武御雷】の性能を上回る機体を。

 

 それ以外にも、耐久性と寿命を大きく延ばした新型電磁伸縮炭素帯、駆動間接用小型電磁モーター、間接部の衝撃を和らげる合成樹脂ゴム等、新機軸も盛り込んで。

 

 新機軸の技術を発展させれば、光菱重工は10年以内に第4世代機の開発も可能になると、専門家達は太鼓判を押す。

 

 これを知った城内省と斯衛軍は、顔面蒼白状態の遠田技研に問いた。

 

 『【武御雷】を【93式不知火】の性能を上回る世界初の第4世代機として開発出来るか?』

 

 それに対して遠田技研の返事は『無理』だった。

 

 それでなくても遠田技研にとって戦術機開発は初の出来事であるし、しかも河崎重工の技術協力があればこそだ。

 

 積み重ねて来た技術の蓄積が違い過ぎた。

 

 光菱重工は城内省と斯衛軍に対して牽制球を投げる。

 

『我が社が開発あるいはこれから開発予定の新技術を、我が社への『報・連・相』も無しに遠田技研や河崎重工に使わせたら、城内省、斯衛軍、遠田技研、河崎重工に対しての高額訴訟も辞さない』

 

 そして言った側から大弁護団を形成し、訴訟の準備をこれ見よがしに高額訴訟の準備を進め出す。

 

『済まないが、河崎重工は【武御雷】開発計画から離脱させて貰う』

 

 河崎重工は真っ先に逃げ出して、遠田技研は裁判しても勝ち目無しと判断、楚々くさと白旗を掲げた。

 

 城内省と斯衛軍は大蔵省から、『裁判費用と特許料の工面はお前達で何とかしろ、大蔵省はビタ一文も出さない』と三行半を突き付けられ、河崎重工は形勢不利と判断したのか、早々と【武御雷】開発計画から逃げ出す。 

 

 城内省、斯衛軍、遠田技研は話し合いの末、【武御雷】開発計画の一時凍結を泣く泣く決定し、斯衛軍専用機制度を廃止して、【93式不知火】の正式採用へと舵を切り、斯衛軍使用分は遠田技研に生産を一任した。

 

 高機動機を不知火一本に絞りたかった武に取っては、思わぬ嬉しい誤算だったが、結果的に斯衛軍専用機制度を潰した恰好の武は、武家保守派の恨みを買う事となり、武の大陸での初陣での『白銀武暗殺未遂事件』の遠因となる。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「はあ〜、疲れた・・・・」

 

 キルケ・シュタインホフは提供された佐官専用個室のシャワーを浴びた後、バスタオル姿1枚でパイプベッドの上に寝転がる。

 

「まさかカエデ・シロガネがあんな女傑だったなんて・・」

 

 斯衛軍山百合女子士官学校を首席で卒業。卒業後に衛士適性検査を受け合格。

 

 合格した後は衛士になる為の訓練を受け、五位以内の成績で衛士になった。

 

 当時の日本帝国はBETAとの激戦が続く西ユーラシア諸国とは違い、空軍のパイロットが大量に戦術機乗りに転向した為に、表面的には戦術機乗りが足りていたのもあって士官教育を3年間、その後に衛士になる為の訓練を2年間受けさせる余裕かあった。

 

 また、戦術機開発の黎明期なのもあって、戦術機の運用事態がまだ試行錯誤だった。なので、じっくりと時間を掛けて戦術機乗りを育てる必要なのもあった。

 

 白銀(徳永)楓は身体は小柄だが、小さい頃から剣術、槍術、薙刀術に優れ、『舞姫』『剣姫』と人気は抜群だったと言う。

 

 ただ身長が150cm届くかどうかだったので、身体面ではぎりぎりの合格基準でも合った。

 

 斯衛軍にしても耐久力的な問題で女性でも身長は160cmは欲しかった。でも彼女は、生まれ付きの天性な身体能力の高さと、人の倍の訓練を自分に課して、周囲の心配をよそに無事戦術機乗り、つまり衛士になれたと言っていい。

 

 そんな彼女には多くの武家から、お見合い結婚の話しが殺到したが、本人は全く取り合わなかった。

 

 だからこそ、彼女が民間人の一技術者白である銀影行と結婚すると決めた時には、城内省、斯衛軍、武家は上から下への大騒ぎに。

 

 彼女の実家徳永家には、彼女と白銀影行の結婚に反対をする家々と個々から、『彼女(徳永楓)を思い直す様説得すべき』との意見が相次いだが、徳永家は家の跡取りが長男な予定通りに家督を継ぐことがもう既に決まり、次男も一般家庭出で当時としては珍しい女性衛士との婚約したばかりなのと、白銀影行のアメリカから導入した《統計的品質管理論》の成功と、《77式撃震》と《82式瑞鶴》の開発で重要な役割を果たしたのを見て、娘・楓と白銀影行の結婚を認めてしまう。

 

『あの頃は何かと身の危険を感じた』 

 

 とは白銀影行の便だった。

 

 白銀影行には親藩譜代武家『鳳家』、譜代武家『篁家』、外様武家『巌谷家』が、白銀影行の視野の広さと功績を高く評価して、嫁の世話をしようと動いてはいたし、斯衛軍と帝国軍の複数の女性士官・下士官から何故か異様にモテていた。

 

 だがそれに猛反発したのは【82式瑞鶴】のテストパイロットの白銀(徳永)楓だ。

 

 並みいる競争相手を蹴散らして、白銀影行を押し倒してゴールインに至る。

 

『あれじゃあ狂犬押し掛け女房だな』

 

 押し倒された翌日『あ〜あ、やっちまった』と頭を抱えていた白銀影行の元に、新潟県の銘酒『かたふね』の一升瓶2本を持って訪れた巌谷家二からニヤニヤと冷やかされた。

 

『年貢の納め時だな影行』

 

『喧しい。そう言うお前はどうなんだ?お前こそ、いい加減結婚しなければ駄目だろう』

 

 白銀影行からしたら武家の巌谷榮二が二十代後半になっても独身なのは問題に思えた。

 

『俺はな、結婚出来ないんだよ・・・』

 

『は?何故だ』

 

『俺は結婚出来ない身体なんだ・・・』

 

『出来ないって、どう言う意味だ』

 

『前提的に子供が出来ないんだよ。つまり子種がないのさ』

 

『すまない・・・』

 

 武家は基本武家間の結婚が当たり前で、結婚したら即座に子供を誕生させるのが義務だ。

 

 武家は『武家村』と皮肉られる程に閉鎖的な社会だ。

 

 法律上では一般人と武家の結婚は問題無いのに、武家の方は容易に認めない傾向が強い。

 

 一般人が武家と結婚する場合、一般人が余程の功績を立てているか、帝国軍か斯衛軍に所属していなければならない。

 

 その上で元老院が結婚を認める功績を立て、元老院の認可が必要なのだ。

 

 徳永家は元老院に議席を持つ家で、日本帝国産業界の底上げの成功と、《77式撃震》に《82式瑞鶴》の開発実績もあって何とか認めて貰えそうな状況だが、2人の関係には元老院でも反対意見が多く依然不透明と来ている。

 

 だが法律上問題は無い以上、2人が揃って役所で婚姻届にサインをすれば特に問題は無かったりする。

 

 一般人と武家の結婚に元老院の許可が必要なのは、武家の血が薄れるのを恐れる保守派を中心とした伝統派、血統派、復興派の意向が強かった。

 

 巌谷榮二は自分の身体の問題は兎も角として、今の閉鎖的な武家の在り方に疑問視していて、いずれ一般社会との乖離か酷くなり過ぎて、血統と伝統の重みで押し潰されてしまう時が必ずやって来ると冷ややかに見ている。

 

『まあお前が来てくれて助かったよ。《82式瑞鶴》の開発も一段落をして実戦配備に漕ぎ着けられるよ』

 

 白銀影行は最初から《82式瑞鶴》の開発に関与していた訳ではない。

 

 《77式撃震》の開発と生産と《統計的学的品質管理》の普及活動が一段落した為、そこに《82式瑞鶴》の開発が行き詰まっていたので、知人の巌谷榮二と篁祐唯の推薦で急遽呼ばれたのだ。

 

 城内省と斯衛軍が要求した斯衛軍専用機《82式瑞鶴》は無茶に等しい使用要求だった。

 

 当時の日本帝国の戦術機開発能力・技術では、実現出来るか怪しい物。

 

 《77式撃震》をベースにした機体で、機動力重視の徹底した軽量化を計り、第2世代機並の機動力と戦闘力を持たせる使用要求。

 

 最初に集められた光菱、富嶽、河崎の3大重工の技術者達は、この使用要求に『無茶』だと反対した。

 

 《77式撃震》を軽量化した機体で、しかも第2世代機並の機動力・戦闘力を持たせるとは口で簡単に言うが、戦術機が高度な工業水準で作られている以上、機体の基本的なバランスとフレー厶の強度の見直しが必要と、技術者達は異口同音に反対した。

 

 それでも《77式撃震》よりも高性能な戦術機を求める城内省と斯衛軍は折れない、妥協しようとはしなかった。

 

 当然の事ながら《82式瑞鶴》の開発計画は直ぐに行き詰まった。

 

 この行き詰まりを解決したのが、光菱重工から急遽派遣された白銀影行だった。

 

 白銀影行は到着した早々、開発チー厶を集合させ、問題点を精査した上で、全てをガラス張りにし、開発統括部門を作り、そこに全てを集約させ、統括責任者には篁祐唯を据えた。

 

 『機体を軽量化、高機動可、戦闘力を強化するのなら、使用するフレー厶の材質の見直しと強化、ボルトやナットの耐久性向上から始めなければならない』

 

 白銀影行はそう言うと、実際に大阪下町の町工場にフレー厶、ボルト、ナットを持ち込んで、町工場の職人達と一緒に旋盤を動かしながら、材質と部品の改良に取り組んだ。

 

 最初、町工場の職人達は驚いた。だが工場長、社長、地元組合会長が白銀影行の事を知っていた。影行の講演で知った《統計学的品質管理》を取り入れた結果、製品の不良品発生率が大幅な低下した、そこから生産性の向上で大きな収益増もあった。そのため影行に大きな好感度を持っていたので、町工場群が全面的に協力してくれた。

 

 そのかいもあって、1年は掛かると思っていた材質と部品の強化と耐久性の問題は半年で解決した。

 

 そこからはトントン拍子で開発は進み、試作機は納期ぎりぎりで間に合った。

 

 それからと言うもの、開発チー厶内での白銀影行への好感度と評価は上がり、ついでに女性陣からの人気も上がり、女性陣からのお茶への誘いは頻繁になったと言う。

 

『まあ俺はやるだけの事をやっただけだし、全員を基本に立ち返らせただけさ』

 

 白銀影行は肩を竦めて謙遜する。

 

『謙遜するな影行。口にするのは簡単だが、そう簡単に誰にでも出来る事じゃない』

 

 これは巌谷榮二の逸話ざる本音だ。

 

『俺はただの凡人さ。なら凡人らしく、他の人の数倍働いて汗水を流しかない』  

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 キルケ・シュタインホフは、白銀影行に関する最新の報告書を読んで複雑な気分だった。

 

 白銀影行は今の欧州連合に必要な人材ではと。

 

「来て欲しいと言っても、来てくれる訳ないわね・・・」

 

 一機の戦術機を作るに当たって、数万もの素材や部品が作られる。素材や部品の管理だけではなく、開発製造にまで目配り気配り出来る視野の広さと行動力、技術者は自分の専門分野に拘りがちになりやすく、自分の専門分野への自信があればある程、他者との協調性に掛けやすい。そういった者達を纏められるリーダーシップに、人脈の広さ。新型戦術機の開発が上手くいかず、寄せ集めの欧州連合の悪癖ゆえに纏まりが無いのが現実。

 

 日本帝国で世界初の第3世代機を開発に当たって、主任として辣腕を振るい、光菱重工、富嶽重工、河崎重工の技術者達を纏め開発期間僅か3年で試作機を作り上げた。日本帝国が後方国家で、天才発明家の息子を擁していたとしてもだ。

 

 欧州連合上層部が日本帝国から引き抜きたい最優先人材候補に上げるのも無理はないと思った。

 

 だが安全な国、社会的地位、可愛い妻子を置いて、全く知らないアフリカに来る理由が見当たらない。

 

「分かっているわよ。何の犠牲を払わずにして、何も得られないぐらいは。彼をアフリカに引っ張って来るには、誰かがその代価を払わないのは・・・」

 

 だからこそ、30歳になっても独身で、男がおらず、男性経験が無い生娘の自分が選ばれた。男性経験は無くても、知識だけは持っている。

 

 白銀影行に近付いて、彼を籠絡し、泣き落としで彼の同情を誘い、日本帝国在住中に彼の子供を妊娠して、子供を楯にしてアフリカ行きを決意させるのだと。

 

「本当に嫌な役割ね・・・」

 

 欧州連合の悲願、欧州奪還実現の為に、形振り構わって要られない。

 

 地中海打通作戦は半分成功、半分失敗に終わった。

 

 シチリア島をBETAから奪還し、地中海航路の安全を確保しつつ、イギリスとアイルランドへのBETAの圧力を緩和させる作戦だったが、シチリア島の奪還に失敗した以上地中海航路は未だに危険な状況が続く。

 

 作戦参加部隊の損耗率は依然として高く、どの部隊も5割を超えているのが実情。何とかしてイベリア半島だけは確保してはいるが、BETAが大規模攻勢に出て来たら、呆気なくイベリア半島から蹴落とされてしまう。

 

 彼女の幾人かの教え子も還らない人となった。

 

 態々戦死者のリストも報告書に添えられていた。

 

「流石はシュタージね。私への嫌味も忘れていないわね」

 

 あの男の顔を思い浮かべるだけでも殺意が湧く。

 

 北アフリカ地中海沿岸横断鉄道の建設は急いではいるが、一度に運べる量は船舶にどうしても劣る。

 

 アラビア半島の完全失陥は時間の問題。アフリカ連合軍、中東連合軍、国連軍が必死の思いで死守しているスエズ運河も果たしてどうなるか・・・。

 

「エジプトが陥落したら、北アフリカ戦線は一気に崩壊するでしょうね・・・」

 

 アフリカ連合軍と国連軍は数は多いが、兵器は西側の御下がりか、格安でライセンス生産が出来た旧式兵器が主力。

 

 南アフリカが兵器の増産を急いでいるが、広大なアフリカに大量全体を賄えるとは思えない。

 

 アフリカ連合はブラジルとアルゼンチンに支援拡大と直接参戦を要請してはいるが、支援拡大は了承しつつも直接参戦には及び腰だ。

 

 BETAのスエズ運河への侵攻は限定的なのが唯一の救いと言えるだろう。  

 

 アメリカに至ってはアメリカ至上主義勢力が拡大し、ユーラシア大陸から手を引きたがっている。

 

 それを裏で操っているのが、キリスト教恭順派の新指導者マスターこと、嘗て自分が思いを寄せた男。欧州の英雄だった元東ドイツ陸軍第666中隊の衛士。『重光線級キラー』の異名を持つテオドール・エーベルバッハなのだから笑えない。

 

 彼の目的はアメリカと国連の権威の失墜だ。

 

「こんなんでどうやって勝つと言うのよ。誰か教えてよ」

 

 悔しくて悔しくて、涙が溢れて来る。

 

 東ドイツ崩壊後、欧州戦線の崩壊はあっという間だった。

 

 エルベ川の防衛線も突き崩され、祖国西ドイツもあっという間に飲み込まれ、リヨン・ハイヴ建設され、フランスは北と南から挟撃されてしまい、ライン川防衛線を放棄。NATO軍と国連軍は命かながら重装備の大半を放棄。第二次大戦の再現となったダンケルクの撤退と為った。

 

 この時に日本帝国海軍が遠路遥々救援に駆け付け、大和級戦艦4隻の艦砲射撃でダンケルクの撤退を援護。それが無ければ西ドイツ陸軍は全滅していただろう。

 

『第二次大戦の盟友が駆け付けてくれだぞ!』

 

 この一言で、撤退の殿を務め、全滅を覚悟していた西ドイツ陸軍部隊は奮起し、BETAを退け、残存部隊はドーバー海峡を渡った。だが殿部隊の損耗率は7割を超えた。

 

 日本帝国海軍は弾薬庫が空っぽになるまで援護を続行した。

 

「あの時の恩を徒で返せと言うの?私に、誇り有るシュタインホフ侯爵家の私が」

 

 白銀影行を欧州連合に引き抜ければ、天才発明家の白銀武から協力も得られる。 

 

 欧州連合は虫の良い算盤を弾いている。

 

「私はそう思わない。誰が自分から家族を奪ったモノに協力するって言うのよ」

 

 日本帝国側は部屋の盗聴してはいないと言うが、その後のイベリア半島防衛線を含め、欧州の地獄を幾度となく生き抜いて来た彼女はそれを信じていない。

 

 半ばやけくそになっていた彼女は、盗聴するのなら勝手に盗聴しろの気分だった。

 

 彼女は欧州を救いたい気持ちと、自分の良心との間で葛藤していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか、話しがちっとも進まないorz
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