マブラヴif短編集   作:地獄の一丁目

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さて、結末は如何に。


武ちゃん3周目、もし1年以上早く来て至ら?④

《2001年8月上旬・グランド・テール島》

 

 国連第4軍所属グアドループ基地の直ぐ近くのグランド・テール島には、アメリカ軍大西洋総軍指揮下に属するルゴジェ空軍基地が存在しており、小規模ながらも同基地にはアメリカ海軍第4艦隊、陸軍、海兵隊も駐屯し、アメリカの裏庭と言ってカリブ海全域への睨みを聞かしている。

 

 国連第4軍は国連軍の中で一番規模が小さく、後方支援を主任務とし、その他には国連軍訓練部隊、大西洋方面諸国の技術的試験評価を行っていた。

 

 そのルゴジェ・アメリカ空軍基地に、アメリカ軍特殊部隊デルタフォースが国連グアドループ基地を強襲し、強奪した【フリーダム・ガンダムMarkⅢ】が運び込まれていた。

 

「大手柄だよカブス君良くやってくれた」

 

 アメリカ合衆国大統領補佐官ターナ補佐官は厳重にルゴジェ空軍基地に運び込まれた【フリーダム・ガンダムMarkⅢ】の姿に目を細める。

 

「はっ、ありがとうございますターナ補佐官」

 

「まあ私は最初は余り期待していなかったんだがね。流石は特殊部隊上がりと言っていいだろう」

 

 運び込まれた【フリーダム・ガンダムMarkⅢ】にはアメリカ軍の分析班・整備班が取り付き、赤外線やX線を使い解析を開始していた。作戦の発案者としては満足行く結果と言っていいだろう。

 

「まぁ仕方ないでしょう。本来特殊部隊を使う作戦は最低数カ月の準備期間が必要ですから」

 

 カブス大佐は苦笑いを浮かべる。

 

 だがカブス大佐には【フリーダムMarkⅢ】を強奪作戦を成功させられる自信があった。

 

 元々国連第4軍は規模が小さく、後方支援を主任務としているからだ。特にグアドループ基地は常駐している実戦部隊は皆無で、年数回同基地で技術的耐環境試験を行う国連軍や他国軍が利用しているだけ。

 

 対空、対艦、対潜装備は殆ど無いに等しい。

 

 それに国連グアドループ基地は国連横浜基地とは違いアメリカ軍に対しては友軍意識が強かった。

 

 実際に奇襲攻撃を行ったアメリカ軍部隊が拍子抜けする程に国連グアドループ基地の抵抗はなく、呆気なく同基地の制圧は成功し、【フリーダムMarkⅢ】の強奪に成功した。

 

「あー君、【フリーダム・ガンダム】の解析にはどのくらい掛かるのかね?」

 

 ターナ大統領補佐官は分析班の責任者に声を掛ける。

 

「解析それ事態は今日一日あればある程度可能かと?」

 

「そうか、では大事に扱い給え。【フリーダム・ガンダム】は今後アメリカ軍で扱う機体だからね」

 

「はぁ分かりました。ですがアメリカ軍で扱えるかはどうかは保証できませんよ」

 

「何故だね?」

 

「早くもですが、【フリーダム・ガンダム】の装甲には未知の分子構造が確認されたからですよ」

 

「未知の分子構造?」

 

「例えばこの間接部分の装甲なんですが、最初は単に金色に塗ってあると思っていたのですが、どうやら特殊な金属装甲が使われているらしく、我々が使っている金属装甲とは全く異なる技術で造られた装甲の可能性が大です。そんな機体をどうやってアメリカ軍で扱うと言うんです」

 

「それを含めて解析するのが君の仕事だろ。違うかね?」

 

「はあ分かりました・・・・」

 

 分析班の班長は長年の経験から、この手の輩には逆らうだけ言うだけ無駄なのを知っているので、自分の仕事に没頭する事に決めた。

 

「・・・・カブス君」

 

「はい」

 

「シロガネ中佐はどうしているのかね?」

 

「我々への協力を拒否していますので、美人の婚約者ユイ・タカムラ中尉と一緒に同じコテージに軟禁させています」

 

「まぁ仕方なかろう。だが折角のゲストだ。扱いは丁重かつ丁寧にな」

 

 ゲストとは言っても、客人としてではなく、対日本帝国及び国連本部及び国連日本支部への人質としてだが。

 

「はっ、了解しました。ですが、この機体・・・」

 

「うん、何だね?」

 

「佐渡ヶ島・ハイヴ攻略に必要不可欠な機体なのではありませんか?」

 

「そのパイロットは必ずしも日本人で有る必要はなかろうカブス君」

 

「では誰に?」

 

「アルフレッド・ウォーケン中佐だよカブス君」

 

「彼ですか?」

 

 カブス大佐はウォーケン中佐とは直接的な面識はないが、次期大統領候補の有力候補ジェラルド・ウォーケン上院議員の息子なのは知っている。そして現大統領デリンジャーと同じ共和党に属してはいるのだが、現大統領デリンジャーのモンロー主義とオルタナティブ5に否定的立場だ。

 

 現大統領デリンジャーは2期目で任期終了は2005年2月までだ。

 

「ああ、ここでウォーケン上院議員には貸しを作って置きたいからねぇ。次の大統領選挙に向けて」

 

 次の大統領選挙と自分自身の政界進出を考えたら、ジェラルド・ウォーケン上院議員には貸しを作って置きたいのだ。

 

「政治ですなぁ」

 

「まぁそう言わないで暮れ給えカブス君。だが彼なら【フリーダム・ガンダム】を扱えるだろうし、また扱って貰わないと困るのだよ。今のアメリカには英雄が必要だ。創られた英雄がだ」

 

「つまり、ウォーケン中佐に佐渡ヶ島・ハイヴ攻略戦で【フリーダム・ガンダム】に乗って貰い、アメリカと人類の英雄になって欲しいと」

 

「そう言う事だカブス君、アメリカが自滅テロで喪ってしまった人類の盟主の座を取り戻すのだ佐渡ヶ島で」

 

 自滅テロ事件でアメリカ太平洋艦隊壊滅と第一海兵軍団消滅の痛手は大きく、アメリカ太平洋艦隊と第一海兵軍団の再建には十年は掛かると見られた。中南米やアフリカ等ではRFF(難民解放戦線)を中心とした反国連・反アメリカ勢力が派手に暴れていて、アメリカ人、国連職員・関係者、アメリカ資本、国連施設を狙ったテロや事件が絶えない。

 

 日本帝国も同様で政府と軍の中枢は国際協調路線派が掌握してはいるが、大伴中佐を中心とした反国連・反アメリカ勢力が勢力拡大の一途を辿っている。国際協調路線派が何時失脚するか分からない情勢だ。五摂家内でも次席に座る斑鳩家当主斑鳩崇継が、国連横浜基地と連携して、度重なるアメリカの内政干渉を跳ね除けられる政治体制の確立を模索しているとの噂も絶えない。

 

 ここで何とかしてでも【フリーダムMarkⅢ】を手に入れてその秘密を解き明かして、その力をアメリカ合衆国の物にしなくてはならない。

 

 だが彼らは知らなかった【フリーダムMarkⅢ】には自己防衛機能が組み込まれているのを。

 

「しかし、凄い戦術機ですなぁ。大気圏を突破し、宇宙を自由に高速で飛び回り、大気圏突入もやってのけ、小型台風並の低気圧の嵐の中でもびくともしないとは」

 

 いくつもの実戦を経験したカブス大佐は、目の前の電源を落とした鉄廃色の機体を眺めながら呟く。

 

(果たしてこの戦術機は我々の技術で造られた物なのか?)

 

 何となくだが、漠然とした嫌な予感が過ぎる。

 

「だからこそ、我々は【フリーダム・ガンダム】の謎を解き明かして、その力を手に入れなければならない。どの様な手段を講じてでもだ」

 

 

 

 

 

 コテージの中で武とほとんど一緒に軟禁状態の唯依は時折外の様子を伺う。

 

 自分達が宿泊しているホテルとコテージには、アメリカ軍のMPが大量に徘徊し自分達を外に出さない様にしている。

 

「唯依、落ち着きなよ」

 

「ですが中佐・・・・」

 

 唯依からしたら今すぐにでも泣き出したいのが本音だ。

 

 自分が遭難さえしなければ、このグアドループ基地がアメリカ軍の奇襲攻撃を受ける事も無かったし、【フリーダム・ガンダム】がアメリカ軍に強奪される事も無かった。

 

 唯依からすれば悔やんでも悔やみきれない。

 

「いいから唯依おいで」

 

 武は自分が寝っ転がるベッドの隣に唯依においでおいでーをする。

 

 唯依は申し訳なさそうに武の横に寝っ転がる。

 

「大丈夫だよ【フリーダム】は、だからそんなに思い詰める顔をしなくても」

 

「ですが中佐・・・・」

 

「だから大丈夫だよ唯依」

 

 武は唯依を慰めるかの様に唯依を抱き締める。

 

「つ・・・・」

 

 今の唯依には武の優しさが辛かった。自分を助けに来なかったらアメリカ軍はグアドループ基地を襲撃しなかったに違いないから。

 

 唯依は抱き締められた腕と胸の中で嗚咽を漏らす。

 

 帝国政府が事態を知るのも時間の問題だし、知れば【XFJ計画】は強制中止は確実な上、国内の反対を跳ね除け計画を実行した巌谷中佐も失脚し、五摂家も篁家の御家御取り潰しに動くだろう。

 

(悪夢だ・・・)

 

 本来なら武は国連第4軍が手配したHSSTを使い【フリーダムMarkⅢ】と共に国連横浜基地に帰還していたはず、武が悪天候の中【フリーダムMarkⅢ】で助けに来た時、胸中で熱い思いが込み上げて走り出して武の胸の中に飛び込んだ。

 

 唯依はこの時一人の年頃の女子としての幸せの本懐を感じていた。

 

 武と唯依は数日間の休養を貰い、2人でトロピカルビーチでの休日を楽しみ、昨夜は婚前交渉を行い、男女の契りを結んだ。ロストバージンは痛かったが、それ以上に武と男女の契りを結べた喜びが勝った。

 

 ある意味幸せの絶頂期と言えよう。後は武と【フリーダムMark3】の帰還を見送り、心機一転で来年の春まで【XFJ計画】を完遂するのを考えれば良かった。

 

 それをアメリカ軍のちゃぶ台返しに遭い、足元から自分が守り集った物が音を立てて崩壊しようとしていた。

 

 

 

 

 国連本部と第4軍から唯依がミニ台風並に発達した低気圧が原因で遭難したとの報せを受けた武は、自分が持つ権限を使って【フリーダムMarkⅢ】を大気圏往還機ロケットブーストを使って宇宙に上がり、最短距離でカリブ海の衛星軌道上に上昇。そこから更に大気圏突入を敢行、機体は何事も無かったかの様に国連第4軍グアドループ基地に到着した。

 

 グアドループ基地は国連横浜基地から、

 

『内の馬鹿が好きな女を助けに【フリーダム・ガンダム】で向かったから後は宜しく』

 

 の一報を受けていたのだが、国連横浜基地とグアドループ基地との距離を考えたら、質の悪い冗談にしか思えないでいたのだが、国連横浜基地から出発して僅か1時間程で大気圏離脱&大気圏突入&低気圧嵐を強行突破して、グアドループ基地にやって来たので基地司令部全員が口をあんぐりと開けてしまう。

 

 武は【フリーダムMarkⅢ】から降りると出迎えた士官と一緒に基地司令部に入り、捜索救助がミニ台風並に発達した低気圧の嵐の影響で捜索すら出来ずにいる事を知ると、唯依達が行方不明になった位置を尋ね、大凡の位置を知ると【フリーダムMarkⅢ】で単独で捜索救助に向かうとする。だが、これまで常識から二重遭難の恐れがあると、グアドループ基地司令部は武を引き留めようとするが、そこにソ連赤軍のサンダーク中尉が武に味方をする。

 

『シロガネ中佐、もし宜しければこの子を連れて行って貰えませんか?』

 

『この子は・・・・』

 

 武はサンダーク中尉に紹介された少女を一目見て、霞に良く似ているのに気付く。

 

『サンダーク中尉、何を言う。夜明けまで待てば、悪天候は回復するから、それまで待つべきだ!』

 

 基地司令部の士官の一人がサンダーク中尉に噛み付く。

 

 常に沈着冷静で義眼級(『ドライアイス』)の異名を持つサンダーク中尉は動じない。

 

『この子の名前はイーニャ・シェスチナ少尉、YOKOHAMA基地所属のシロガネ中佐なら、この子の価値は分かるかと』

 

 サンダーク中尉としてはここで第4計画の事実上の副責任者の立場に在る武に、貸しを作って置きたかったし、改めて【フリーダムMarkⅢ】の性能を確かめたかった。

 

 そして武はその一言でシェスチナ少尉が霞の姉妹かそれに近い立場なのを悟る。

 

『シェスチナ少尉、一緒に来るか?』

 

『うん、行く!』

 

 シェスチナ少尉は途端に笑顔になる。

 

『じゃあ強化服に着替えて来るんだ』

 

『はい!』

 

 シェスチナ少尉は脱兎の如くロッカールームに向かう。

 

『・・・サンダーク中尉、俺は【フリーダム】に先に行っている。あの子は28番ハンガーに連れて来て暮れ』

 

『わかりま…『シロガネ中佐、サンダーク中尉、二重遭難の可能性がある以上、悪天候下の捜索救助は認められない』

 

 武とサンダーク中尉の会話に口を挟んだのはグアドループ基地の司令官コネリー大佐だ。

 

 これまでの常識を考えたらコネリー大佐の口挟みを非難は出来ないだろう。

 

 ましてや【フリーダムMarkⅢ】と武は人類の希望だ、それをそう簡単に失う訳には行かないのだ。

 

『・・・【フリーダム】は並の戦術機とは違います。事実上第7世代機に該当する機体です。この程度の嵐はビクともしませんよ』

 

『小官もシロガネ中佐と同意見です、大気圏の摩擦熱と低気圧の嵐に耐え抜いた【フリーダム・ガンダム】の性能は隔絶していると見て良いでしょう』

 

『我々のこれまで常識で【フリーダム・ガンダム】を論ずるのは逆に危険かと』

 

『それはそうかも知れないが・・・・』

 

『大丈夫です、コネリー大佐。3人を無事に連れ帰って見せますよ』

 

『分かった・・・、君が其処まで言うのなら信じよう』

 

 グアドループ基地司令官コネリー大佐は許可をした。

 

『お待たせー!』

 

 暫くをして28 番ハンガーで待機をしていた武の前に、サンダーク中尉に連れられてシェスチナ少尉が表れた。

 

『シロガネ中佐、お待たせしました』

 

『サンダーク中尉ありがとう。じゃあシェスチナ少尉、3人を探しに行こうか?』

 

『うん!』

 

 そして武は昇降ロープにシェスチナ少尉が手と足を掛けた時そっと耳打ちをする。

 

 武に耳打ちされたシェスチナ少尉はサンダーク中尉に振り向いて、さらっと無邪気な爆弾を放り込む。

 

『パーパ行って来るね』

 

『なっ・・・・』

 

 予想外の一言に面喰らうサンダーク中尉。

 

 【フリーダムMarkⅢ】は2人を乗せると強風と大雨が吹き荒れる中、何事も無かったかの様に10枚の蒼き翼を棚引かせてあっという間に空中へと飛翔して行く。

 

 それを見送るサンダーク。

 

『私にはお前達にそれを言われる資格は無いのだよ・・・シェスチナ・・・』

 

 何故ならサンダーク中尉はこのπ3計画を立てた時点で、人の情を捨てたからだ。

 

 BETAは人の情を捨てなければ勝てる相手ではないと判断した。

 

 サンダーク中尉はベクトルは違うが、夕子とは似た者同士なのかも知れない。

 

「ふん、うっとおしい奴等め」

 

 サンダーク中尉も軟禁されているホテルの一室から、ホテルの外を完全装備で警戒するアメリカ軍MPに毒吐く。

 

「この暑い中、御苦労な事だ」

 

 アメリカ軍の国連第4軍グアドループ基地への突然の襲撃に流石に驚いたが、入って来る数少ない情報からアメリカ軍の狙いがグアドループ基地に在る【フリーダム・ガンダム】なのを察していた。

 

 ただアメリカ軍も十分な準備とは言い難いのか、広域通信の妨害も十全では無かった為、バックアップとの交信は可能な状態だ。

 

 どうやらアメリカ軍は【フリーダムMarkⅢ】を真っ先に確保した後、一番近いルゴジェ空軍基地に運び込んだのだけは確認が取れた。

 

「あれ程の機体だ。厳重なセキュリティが掛けられているに違いない。機密保持の為に自動的に核自爆するやもしれん」

 

「シェスチナ少尉が言うには【フリーダム・ガンダム】の動力は小型の熱核融合炉なのは間違いない。正に脅威の技術力では或るが、当然の事ながら日本帝国と国連日本支部からすれば最重要機密と言えよう。それを守る為に核自爆装置は組み込まれているだろう・・・」

 

 アメリカ軍が【フリーダムMarkⅢ】の核自爆で基地事消滅するのはアメリカ軍の自業自得で、全く同情する気はサンダーク中尉にはないのだが、【フリーダムMarkⅢ】の核自爆に巻き込まれる方は溜まった者ではない。

 

「さて、どうしたものか・・・・」

 

 考え込むサンダークだが、さりとて名案が浮かぶ訳でもなかった。

 

「やはり、アメリカ軍に警告を促すか・・・」

 

 消去法ではあるが、それしか頭に浮かばなかった。

 

 

 

 

 

「あーもう、うっとおしいー!何なんだよ彼奴等は!」

 

 別のコテージの一室ではマナンダル少尉がアメリカ軍MPを睨みながら苛ついていた。

 

 予定していた耐環境試験も中止となり、全く身動きが出れないでいる。

 

「もー仕方ないでしょう。少しは落ち着きなさいタリサ」

 

 同室のブレーメル少尉がマナンダル少尉を諌める。

 

「だけどよー、予定していた計画が全部中止なんだぜ。アメリカ軍に何の権利があって、邪魔をするんだよ」

 

「アメリカも焦っているのよ。だからこの暴挙に出たのよ」

 

「焦ってる?」

 

「アメリカ太平洋艦隊壊滅と第1海兵軍団消滅以降、アメリカの威信低下は著しく、各地でアメリカに力で押さえつけて要られた反国連・反アメリカ勢力が暴れているのはタリサも知っているでしょう」

 

「知っているけど・・・」

 

「アメリカの狙いは【フリーダム・ガンダム】よ」

 

「いっ!?」

 

「アメリカは【フリーダム・ガンダム】を手に入れて、【フリーダム・ガンダム】の力を使ってアメリカの敵対勢力を潰す気でいるのよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 マナンダル少尉は沈黙をしてしまう。

 

「世界の盟主に返り咲く為なら、アメリカは良心の呵責に苦しむ事も無く、平気で人類を殺せる国よ。アメリカに取って最大の敵はBETAではなく、私達人類なのよ・・・」

 

 ブレーメル少尉は一息を吐く。

 

「間違いなく【XFJ計画】も中止になるでしょうね」

 

「なんでだよステラ、何で中止になるんだよ」

 

「アメリカが自国の利益の為なら、平気で人類に対して後ろ弾を撃てる国なのを証明したからよ。それを良く知っている日本帝国が、これ以上【XFJ計画】を続けられる筈がないでしょう」

 

「そんなぁ、俺、戦術機で宇宙を自由に飛び回りたかったんだぜ・・・」

 

 マナンダル少尉はがっくりとベッドに座る。

 

 紆余曲折が有りながらも中身を大幅に見直された【XFJ計画】は、アルゴス試験小隊の予想を遥かに上回る計画としてスタートを切った。単なる既存機の改修ではなく、宇宙戦使用を前提にした戦術機開発計画へと計画が変更されていたのだ。

 

 今現在ボーニング社のタコマ工場では、日本帝国から供与された【94式不知火・一型丙】を元にした【94式不知火・弐型】の組み立てが進んでいる。

 

 この【94式不知火・弐型】こそ日米の技術の粋を導入されている宇宙・地上両用機だった。

 

 【フリーダムMarkⅢ】に及ばなくても、世界初の宇宙・地上両用機で第4.5世代機としてデビューを果たす予定だった。

 

 唯依が日本帝国からアラスカ・ユーコン基地に持ち込んだ2機種の第一世代機の【79式撃震・改】と第二世代機の【89式陽炎・改】は、其々大幅に性能が向上しており【79式撃震・改】は第2.75世代機に【89式陽炎・改】は第3.75世代機へと生まれ変わっていた。

 

 それまで使っていたF-15ACTVも日本帝国と国連横浜基地の最新技術を使って改修されており、もう間もなくF-15ACTVも第3.75世代機にアップデートされアルゴス試験小隊へと引き渡される予定だ。

 

 そしてこのグアドループ基地で、ボーニング社のタコマ工場で改修され、第4世代機に進化をした【94式不知火・一型改】に乗った時の感動は大きかった。

 

 まさか戦術機で成層圏を音速飛行が空を自由に飛べる日が来ようとは、半年前まで思っていなかった。

 

 他軍の試験小隊からの嫉妬の視線すら心地よかった。

 

 それをアメリカ側の一方的な暴挙で失う、マナンダル少尉からすれば、こんな理不尽な話しないだろう。

 

「タリサ、それは私も同じ。でもこうなった以上は仕方ないでしょう」

 

 そうアメリカが【フリーダムMarkⅢ】を実力で強奪する暴挙を働いた以上、日本帝国が【XFJ計画】を続行する理由がどこにも存在しないからだ。

 

 【XFJ計画】に全面的に協力しているボーニング社にしても、この様な事態になってしまった以上、手を引くのは時間の問題と言えた。

 

 

 

 

 

「何、コクピット内に入れないだと?」

 

 ルゴジェ基地の会議室で待機していたターナ大統領補佐官は分析班班長から、奇妙な報告を受けていた。

 

「はい、赤外線やX線探知機ではどうしても分からない所がありましたので、強制解除でコクピット内に立ち入ろうとしたのですが、どうも機体のコンピューターが異常を感知したのか、コクピットの強制解除にも応じません」

 

 ターナ補佐官とカブス大佐の2人は互いの顔を見る。

 

「どこが分からないのだね班長」

 

「機体のコンピューター部分と動力炉です」

 

 カブス大佐に言われて、分析班班長は赤の印を付けた部分に指を差して説明する。

 

「何とかならないのかね班長」

 

「機体のコンピューターにアクセスをして、内部から機体のロックを解除するしか手がありません」

 

「ならばそうしたまえ」

 

「ですが・・・・」

 

 言葉を濁らせる分析班班長。

 

「どうかしたのかね?」

 

「【フリーダム・ガンダム】は余りにも未知の要素が強過ぎる機体です。これ以上調査をしない方が宜しいのではありませんか?」

 

「【フリーダム・ガンダム】には我がアメリカ合衆国の未来が掛かっている。その力を物にする迄は調査の中止は認めない。即刻コンピューターを掌握したまえ」

 

 ターナ補佐官は自身の政界進出が掛かっている以上、ここで引く気はなかった。

 

 それは強い出世欲を持つカブス大佐も同様で、ここでターナ補佐官に恩と貸しを売り、将官への昇進を実現する気満々でいた。

 

「分かりました・・・」

 

 分析班班長はターナ補佐官の説得を諦めた。

 

 

 その頃【フリーダムMarkⅢ】のコクピット内では・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

G-eneral

 

U-nilateral

 

N-euro-Link

 

D-ispersive

A-utomic

 

M-aneuver

 

 

 

 モニター画面にOSが不気味に表示された。

 

《捜索探知範囲内に搭乗者タケル・シロガネを確認出来ず》

 

《定時連絡も無し》

 

《現在位置はグアドループ基地でない》

 

《当機はグアドループ基地から強制移動されたと確認》

 

《これより自己防衛プログラムに従い自己防衛活動を開始》

 

《該当する全ての存在を敵と判断》

 

《殲滅モ゙ード【スロウター】を実行せよ》

 

《V-MAX機能起動》  

 

 次の瞬間【フリーダムMarkⅢ】は眩い黒き光を放った。  

 

 スロウターとは、オーブ連合首長国の古い言語グロース語では【大量虐殺】を意味する。

 

 装甲の色が冥界の闇色へと変わり、全ての拘束を引き千切り破壊して【フリーダムMarkⅢ】は立ち上がった。  

 

 

 

 その頃国連横浜基地では・・・・

 

「鏡少尉、社少尉、大至急【デストロイMarkⅡ】の動力を停止して降りなさい」

 

『武ちゃんを助けに行くんです、発進の許可をください!』

 

「駄目です、許可出来ません!」

 

 いつの間にか目覚めていた純夏と霞の2人が、最終調整を終えたばかりの【デストロイMarkⅡ】に乗り込んでいた。

 

『出ないと基地を破壊しますよ』

 

「もう良いわ、発進の許可を出しなさい」

 

「香月副司令?」  

 

「【デストロイMarkⅡ】に乗り込まれた時点でもうどうにもならなくてよ。それとも横浜基地を破壊されたいの?」

 

「分かりました香月副司令・・・」

 

 管制官は諦めた。

 

「いい鏡、社、その代わりあの馬鹿は必ず連れ帰って来る事いいわね」

 

『はい、ありがとうございます香月先生』

 

「先生ねぇ・・・・」

 

 夕子はそう呼ばれた時点で、00ユニット鑑純夏の正体をほぼ悟った。

 

(少なくともシリンダー内の鑑純夏ではないわね)

 

 発進許可を得た純夏と霞の2人は、【デストロイMarkⅡ】を横浜基地から発進させ、浦賀水道から太平洋へと出る。

 

「霞ちゃん一気に行くよ!」

 

「はい、純夏さん行ってください。太陽炉、イオン・プラズマ・エンジン良好です」

 

「トランザム!」

 

 純夏の掛け声で【デストロイMarkⅡ】のモニターが一斉に赤く光り、【デストロイMarkⅡ】は一気に急上昇を開始。

 

 一筋の赤い矢と化して宇宙へと向かった。

 

「武ちゃん待っててね。今霞ちゃんと一緒に助けに行くから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと遊び過ぎたかな?


武ちゃんは別にピンチでも無いんだけどね(笑)
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