マブラヴif短編集   作:地獄の一丁目

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キルケ・シュタインホフ初登場です。


武ちゃん何周目? 93式不知火開発裏話し

《1992年8月下旬》

 

「ぐううううう、まさかこれ程とはな」

 

 帝国陸軍の巌谷榮二少佐は出来上がったばかりの【第3世代機試作戦術機不知火】試作1号機を、帝国陸軍富士教導団が管理する南富士裾野演習場で試運転をしていた。

 

 時速800kmを超えて、なおも加速を続ける93式水素・ジェット燃料混合跳躍ユニットの推力には未だ十分に余裕が残されていた。

 

 下では日本帝国政府国防省、日本帝国陸軍参謀本部、富士教導団、帝国海軍、帝国斯衛軍、在日アメリカ軍、極東国連軍、光菱重工、河崎重工、富嶽重工、大日本電気通信、東春電工、マーキン・ベルガー社、大欧州連合代表団、発足したばかりの大東亜連合、統一中華戦線、オセアニア連合代表団等顔触れが揃う。

 

 試運転が続く試作戦術機【不知火】の眼下では、日本人は歓声の雄叫びを上げ、アメリカ人は複雑な顔を浮かべ、他は感心しきりの顔をしていた。

 

 両肩上部に取付けられた可動式カナード翼は高速跳躍飛行時での気流の乱れを制御し、時速800kmを超えても安定した跳躍飛行を戦術機に与えていた。

 

 コクピットも一新され、従来の網膜投影技術に頼らない液晶技術を使い、パイロットの目の負担を軽減し、前方左右に十分な視界を確保。更にパイロットの身体を保護する耐Gキャンセラーとリニアシートの採用で、パイロットの負担も大きく軽減されると、大きな期待を寄せられている。

 

 何よりも特筆されるのは日本帝国が独自開発した即応性を大幅に上昇させる新型OS・XM2だ。1年も前から新型OSの開発に力を入れていたのだが、新型半導体、戦術機に搭載可能な並列処理戦術コンピューターの開発出来たので、試作戦術機【不知火】の搭載が決まった。

 

 【先行入力】と【キャンセル】の併用で、これまで出来なかった3次元立体機動を可能とし、戦術機の硬直時間帯を殆ど無くす事で連続運動が可能にもした。

 

 機体の駆動部と間接部にはパワーロスを減らす目的として新開発の小型電磁モーターを採用。更に機体の負荷と摩耗を減らす為に合成樹皮ゴムを採用。水素電池も開発され連続稼働時間は従来の5割増し、水素燃料の燃費と調達費用はジェット燃料の数分の1と見積もられており、石炭と水さえかれば幾らでも作られるとあって、今後の発展に大きな期待が寄せられている分野だ。

 

 石炭に頼らない水素エネルギーの開発も始まっているが、実用化には後数年は掛かる模様だ。

 

 従来の戦術機のコクピット関連の特許を数多く持つマーキン・ベルガー社幹部達の顔は特に複雑だ。試作戦術機【不知火】のコクピット関連は野心的新機軸満載で、マーキン・ベルガー社が持つ特許に殆ど抵触をしていないのだ。

 

 マーキン・ベルガー社からすれば、持っても安定した金払いが良い上客を一度に大量に失ったに等しい。会社を経営する側としては最悪の事態と言える。

 

「何とかならないかね?」

 

「何とかしたいのは山々なのですが・・・・」

 

「こうなったら日本側に提携を申し入れをするしか」

 

「金を出すから、共同開発の申し入れかあ・・・」

 

「現状はそれしかないかと・・・・」

 

 来日していたマーキン・ベルガー社幹部達は与えられた席でひそひそ話をしている。

 

 在日アメリカ軍と極東国連軍には、高速で上空を飛び回りながら『蝶のように舞い、蜂のように刺す』3次元立体機動を繰り返す試作戦術機【不知火】の姿に、露骨に不機嫌顔を隠そうともしない者もいた。特にアメリカ軍からの極東国連軍への出向組のアメリカ人にはその傾向が強い。

 

 生粋のアメリカ軍人に取って国連軍は左遷先に等しい扱いだからだ。ペンタゴンは将来性を見込んで経験を積ませる目的もたるのだが、何しろアメリカ軍からの出向組のアメリカ人は、他国出身者に命令を出されるのを嫌うし、対BETA戦争で亡国となった者達を見下す傾向が強い。

 

 中には敢えて問題を起こしてアメリカ軍に戻ろうとする者も少なくない。はっきり言って士気は低い。この姿勢と士気の低さが史実の敵前逃亡に等しい日本脱出と、国連軍の援軍未到着で『横浜の惨劇』を引き起こして仕舞う原因となる。

 

 まぁアメリカ軍も国連軍アメリカ人も、急激に進歩する日本帝国の戦術機開発で、アメリカ産の戦術機が売れなくなるのではとの危機感も強い。

 

 かと言って、アメリカの負担を和らげてくれる優秀な工業力兼強い軍隊を持つ同盟国が居ないと困るのも事実。

 

 アメリカ政府は悪化の一途を辿る亜大陸、東南アジア、中近東戦線に注力している今、日本帝国の戦術機開発を妨害している余裕はなく、日本帝国には独力で対BETA戦争を戦える力を持って貰わないと困るのだ、今は。

 

 後はまあ、キリスト教恭順派の影響もさほど大きく無かったのもあるだろう。

 

 だからと言って面白くないのは面白くない。

 

 生涯軍人となれる人数なんてたかが知られているし、高給取り兼高給退職兼高給年金取りになれる将官なんてほんの一握り。

 

 大抵は佐官で終わる。

 

 ともすれば退役後の生活をどうするかのだが、大抵は軍産複合体が用意する軍需産業への天下りだ。

 

 当然の事ながら天下り先のポストも限られているので、現役時代に軍産複合体に対して利益を齎さなかった者にはポストは用意されていない。

 

 今日本帝国にいる在日アメリカ軍人と国連軍所属アメリカ人にのって、日本帝国が自力で第3世代機の開発に成功してしまうのは自分達の円満なセカンドライフに困るのだ。

 

 だからどうしても不機嫌になるしかない。

 

 【不知火】の試験運用実証なJIVES(ジョイブス)統合仮想情報演習システムに移り、【不知火】は4丁の突撃砲を構える。

 

 演習場には大隊規模のBETAが映し出された。それに向けて4丁の突撃砲が火を吹き、次々とBETA群に命中弾を浴びせて行く。しかも殆ど取り零しなしで。

 

「やってくれたな影行、武君」

 

 テスト・パイロットを務めるの巌谷榮二少佐の顔から笑みが溢れる。

 

 【不知火】は大出力にして燃費が良い新型【93式跳躍ユニット】の利点を活かしては一度も着地せずに、高速移動を繰り返しながら次々と撃破認定を与えながらBETAの数をどんどん減らして行く。

 

「そんな馬鹿な。一度も着地しないだと」

 

「高速移動を繰り返しながら、撃ち漏らしが無いだと」

 

「一体どうやって」

 

 観戦していた軍関係者の顔が驚きに変わる。

 

 それは新型半導体と新型並列処理戦術コンピューターの高性能があればこそで、同時に50もの攻撃目標を定め、ほぼ同時にそれらへの攻撃を可能とした。

 

 巌谷榮二少佐は新型CPUが次々と処理して行く攻撃目標に対して引き鉄を引けば良いだけの話し。

 

 20分もしない内にJIVES演習は終了し、巌谷榮二少佐は管制の誘導に従い機体を一度ハンガーに戻す。

 

 拍手喝采の中、試作戦術機【不知火】はハンガー内へと戻り安定装置が肩に固定され、コクピットが開放されて巌谷榮二少佐が【不知火】から出て来る。

 

 コクピットから出て来た巌谷榮二少佐の姿に、更なる拍手喝采が起きる。巌谷榮二少佐は困惑しながらも手を振る。

 

 観客席で観戦していたアメリカ軍と国連軍アメリカ人士官達の衝撃は大きかった。何故なら【不知火】が見せたJIVESで見せた戦闘機動こそ、アメリカ軍が戦術機に求める理想的な戦闘機動だから。

 

 一度も着地せずに跳躍飛行高速機動攻撃を繰り返すとは言っても、ソフト、ハード共に技術的な問題から、一度も実現出来なかった問題だからだ。

 

 ソフトでは情報処理能力で、ハードでは燃費の悪さで一度も実現出来ておらず、向こう20年間は実現不可の結論が出ており、地道に研究して行く方向で結論が出ていた。

 

 だが戦術機開発でアメリカより遅れている筈の日本帝国がそれを実現あるいは、実現間近の認識の意味は大きい。

 

 何しろ戦術機の航続距離は戦闘ヘリとどっこいどっこいに過ぎず、広範囲での攻撃力は対地攻撃機に劣る。対BETA戦でも無ければ、到底開発されなかった兵種。

 

 では何故戦術機の開発が世界各地で進むかと言うと、戦術機の利点は人間がこれまで開発した兵器の共通の欠点、真上と真下からの攻撃に対処可能なのと、BETAの光線級属種に対抗出来る唯一の兵種だから。

 

 BETAは意外と身軽で小回りが利き、ジャンプ力に優れているので、戦車、装甲車、自走砲、戦闘ヘリ、対地攻撃機がBETAに取り憑かれては撃破されてしまう。

 

 だが戦術機は人形の利点を最大限に活かして、小回りと跳躍飛行で、BETAの取り付きをそう簡単に許さない兵種。

 

 なら戦術機には、戦闘時には常に跳躍飛行をさせながら一機辺り多数のBETAを多数撃破させようと考えるのが当然と言えよう。

 

 しかしそれは、技術的な問題から実現不可能だった。

 

 先ほど述べた、情報処理能力低さと燃費の悪さに尽きた。

 

 アメリカ軍にしても手を拱いていた訳では無い。戦術機の大型化で燃料タンクの増大と、空きスペースに戦術機用の情報処理に優れたCPUを搭載したが、理想的とは言い難いのと戦術機のこれ以上の大型化は、量産性と整備性と信頼性の低下を招くで、戦術機開発は行き詰まりを見せていた。そこに試作戦術機【不知火】が見せた従事高機動戦闘の実現は2010年頃まで諦めていた。

 

 一機辺りの連続稼働時間の大幅延長と燃費大幅向上が本当に実現すれば、兵站部門への負担が大きく減るからだ。

 

 兵站能力を重視するアメリカ軍に取って、その意味は大きいのだ。

 

 だが日本帝国がもし20年先の技術の実現に成功ないし実現しつつあるのなら、戦術機運用は革命的変化を齎す。

 

『それでは観客の皆様。次は新OS搭載機部隊と旧OS搭載機部隊の模擬戦をお見せいたします』

 

 集まっていた各軍の関係者達は、次で判断する事にした。

 

 出て来たのは帝国斯衛軍の戦術機部隊【82式瑞鶴】一個中隊12機と、帝国陸軍富士教導団所属の【89式陽炎】の一個中隊12機だ。

 

 帝国斯衛軍の戦術機【82式瑞鶴】はF-4シリーズの機体の中では最も軽量化された機体で、近接戦闘を重視した機体として有名でもある。

 

 一方の帝国陸軍富士教導団の【89式陽炎】はアメリカ陸軍のF-15Cをベースにして帝国軍向けに改良・調整されたライセンス生産された機体でもある。

 

 アメリカ軍も自軍が使っているF15-C寄りも高性能機なのは認めており、これが理由で【F-15Eストライク・イーグル】の開発とアップデートを進めていた。

 

『【82式瑞鶴】には【不知火】と同じ新OS・XM2が搭載され、機体の即応性が20%から25%も向上しています』

 

 司会役の説明にどよめきが起きる。

 

「そうか、それであの動きなのか・・・」

 

 他国の軍関係者のが呻く様に言う。

 

 即応性20%から25%とは口では簡単に言えるが、それがどんなに難しい事かは彼らがよく知っている。

 

 ほんの数%でも革新的と言われているのが実情なのだ。

 

 理由は対BETA戦ではあまりソフトウェアや電子戦は重要視されていないのだ。

 

 そもそもBETAには電子戦は通用しないのが常識で、あらゆる欺瞞措置が無視されてしまう。それでいながら優れたコンピューターや、人間を含めたあらゆる生命体には反応しては食い尽くすか踏み潰そうとする。

 

 世界中の研究者や科学者は頭を痛めているが、未だ誰も納得が行く回答を占め出してはいない。

 

 帝国斯衛軍と帝国陸軍富士教導団は開始位置に付き、模擬戦開始の合図を待つ。

 

 開始の信号弾が上がると同時に、両部隊は一斉に動き出した。

 

 双方共に小細工抜きで正面からぶつかり合う。

 

 だが模擬戦開始僅か5分で、富士教導団の方に被弾機が出始める。

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

 観戦をしていたアメリカ軍軍人が呟く。主機と跳躍ユニットの出力では【98式陽炎】が優っている筈なのに、即応性=俊敏性と反応速度に優れた【82式瑞鶴】に遅れを取ってしまう。射撃は全て【瑞鶴】の旋回・回避能力に躱され、返す掌で命中弾を受けてしまう機体が続出。

 

 開始10分後には最初に撃墜認定を受けた機が出た事で、帝国斯衛軍と富士教導団の戦力拮抗が崩れ、局所的劣勢を余儀なくされてしまう。富士教導団も態勢を立て直そうとするのだが、数的不利はどうともしがたい。数的優位に立った帝国斯衛軍はお得意の近接戦闘を開始、富士教導団も近接戦闘は苦手ではないのだが、数的劣勢とほぼ全機が被弾機していたので【89式陽炎】の近接戦闘能力を活かせず、次々と各個撃破されて行き、開始25分後には富士教導団部隊は全機撃墜認定され富士教導団部隊は敗北した。

 

 

 

 

 富士教導団部隊の敗北後、日本人側でちょっとした騒ぎが起きた。

 

「白銀武君だね?ちょっとだけいいかな」

 

 先頭バッターは富嶽重工専務の伊香保氏だ。

 

「何でしょう?」

 

「実は私には今年小学生になったはかりの孫娘がいるんだがね。写真を見せて上げよう」

 

「はい?」

 

 武は咄嗟に逃げようとするのだが、9歳の身体では大人からは逃げられない。襟首掴んで引き戻されてしまい、孫娘とやらの写真を見せられてしまう。

 

 写真は小学校の入学式の写真で、一般だが良家の子弟が通う某有名私立大学の附属小学校の入学式の写真。

 

「どうだね可愛いだろう。うん、どうだね。私の孫娘と一度会って見ないかね?」

 

「あの、どうして急にそんな話しに?」

 

「だって君だろ?新OSを始めとした、新機軸や新技術を父親経由で帝国軍と斯衛軍に持ち込んだのは」

 

「な、何の話しでしょう?」

 

「白銀武君、誤魔化さなくていいよ。調べは付いているんだからさ♪」

 

 伊香保専務の顔には『逃さん!』と書いて合った。

 

 武は父親に助けを求めようにも、当の父親は帝国軍と今後の打ち合わせの為に席を外していた。

 

「ずるいですぞ伊香保さん。彼を狙っているのは私も同じなのですからな」

 

 2番打者は大日本電気通信社常務の四万十氏だ。

 

 武の腕を引っ張る四万十氏。

 

「どうかね武君、私には遅くなって出来た娘がいてね。君と同い年なんだ。君と丁度良いと思わないかね?」

 

「あの、自分を狙っているって?」

 

 ジタバタと抵抗する武だが、頭は大人でも身体は子供では如何ともしがたい。

 

「シュミレーター限定だが、正規パイロットも顔負けの操縦技能も持っているそうじゃないか。当に文武両道。うん、君なら安心して娘と婚約させられる」

 

「ちょっと待ったあー!武君のお父さんは我が社の社員なんだぞ!『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』見たいな真似は止めて貰いたいな!』

 

 ここで武に助け舟を出したのは光菱重工副社長の万座氏だった。

 

「さあ武君、君はこっちだ」

 

「た、助かりました」

 

「いや、なに、礼には及ばんよ。あはははははは」

 

 渇いた笑いを見た武は逃げ出したくなった。

 

「いや実はね私には君より6歳年上の娘がいるんだがね。どうだい写真を見て見ないかね?」

 

 

 

 

 日本側の賑やかさとは逆に、アメリカ側は御葬式状態だ。

 

「これでは【ストライク・イーグル】を作った意味がない」

 

 【ストライク・イーグル】の正式名称は【F-15Eストライク・イーグル】だが、日本帝国がF-15Cを自分達向けに改修した戦術機【F-15CJ・89式陽炎】がアメリカ軍が採用していたF-15Cを上回っていたので、急遽【F-15Eストライク・イーグル】が開発された経緯を持つ。

 

 まあ常に自分達がNo.1でならないと我慢出来ない、アメリカ特有のアメリカ病を発症したとも言える。

 

 試作機が去年ロールアウトし、今は世界各地で先行量産機型が対BETA戦に使われている最中だ。

 

 カテゴリーで言えば【F-15CJ・89式陽炎】が第2.25世代機で【F-15Eストライク・イーグル】は第2.5世代機に入る。

 

 アメリカ軍はF-15、F-16、F-18の3機種を主力戦術機と位置付けており、第2.5世代機へと大量生産化とアップデートに邁進中。I 行く行く《ゆくゆく》はステルス機能を持たせた第3世代機を開発する予定でもある。

 

「必ずしもそうではなかろう・・・」

 

 日本帝国がF-15Cをベースにした新型戦術機の開発をしている情報は掴んでいたが、まさかここまで、アメリカ軍の戦術機開発思想を実現した機体だとは思ってはいなかった。

 

 水素電池・燃料を開発し戦術機の稼働時間と行動半径の大幅な拡大。水素燃料の爆発的エネルギーを制御し、地上に着地せずに高速機動を行いながら、50の攻撃目標を選定。更にほぼ同時にそれら(50の攻撃目標)を攻撃可能とした戦術機用新型戦術用コンピューターの実現。第1.5世代機が第2.25世代機を即応性で大きく上回ることをさせる新型OS・XM2。衛士の目の負担を大きく軽減させ死角を大きく減らす液晶モニター。衛士の身体を保護する対Gキャンセラーの開発。機体のパワーロスなく機体全体に伝える駆動部・間接部小型電磁モーター。合成樹皮ゴムを使った機体の衝撃を和らげるショックアブソーバー等、従来の戦術機とは一線を画す新型機だった。

 

「一番の問題は新型OSと戦術機用新型戦術コンピューターだろう、これを戦術機に搭載するだけで、戦術機の即応性が20%から25%も向上し、なおかつ戦闘力を第3世代機並に引き上げられるんだぞ。これでは大金を投じて新型機を開発する意味が無くなってしまう」

 

 世界中の戦術機の過半数以上が第1世代機なのを考えたらその意味は大きい。

 

 アメリカはもう既に第1世代機の生産から手を引き、第2世代機へと移り、第1世代機の生産は前線国家や第2世代機を造れない国に委ねていた。そのパテント料だけでもかなりの金額なのだ。しかし、第1世代機ではBETAの侵攻を遅延させる事は出来ても押し返せないのは解っているので、アメリカは自分達の言い値の輸出金額で、暴利を貪ろうと企んではいた。だが、日本帝国が【93式新型OS】と【93式並列処理高速電算機】を開発した事で色々と怪しくなった。

 

 第2世代機を造れない国々からしたら、高価なアメリカ製第2.5世代機を買う寄りも、今使用生産している第1世代機を第2.5世代機以上にアップデートした方が安上がりだ。

 

 また、そう言った国々は国産志向が低い。

 

 まぁ日本帝国やアメリカみたいに新型戦術機を開発・生産出来ないのも大きな理由だが、国産品志向や拘りが低い分だけ外国の技術や製品購入への意識ハードルは低い。

 

「間違いなく、日本帝国の技術に食い付く国は複数出て来るな・・・」

 

「戦術機開発は金食い虫だからな。余裕が無い前線国家は間違いなく食い付く」

 

「だがそれでは日本帝国も【タイプ93 】が売れなくなってしまうのではないか?」

 

「もし日本帝国の狙いが戦術機の輸出ではなく、新型OSと新型戦術コンピューター等の新技術の輸出が狙いだとしたらどうなる?」

 

「そうか!最初は【タイプ93】の輸出ではなく、関連技術と装備の輸出が狙いか。なら、【タイプ82・ズイカク】に新型OSと新型戦術コンピューターを搭載したのも頷ける」

 

「それはそれで、我が国の第2.5世代機の輸出が出来なくなってしまうぞ」

 

「かと言って前線国家や中進国に第1世代機を造るのは止めろとは言えないしな・・・」

 

「なら我が国の戦術機にも日本製の新型OSと新型戦術コンピューターを搭載すれば良いのでは?」

 

「安直過ぎるな。マンハッタンの軍産複合体、ワシントンの連邦議会とロビイストがそれを許すと思っているのか?」

 

 だが魅力的な考えだ。新型OSと新型戦術コンピューターを搭載しただけで戦術機の性能が一世代機分もアップデートもするのなら、自国の戦術機にも載せたくもなる。

 

 だがそれには大きな壁が聳え立つ。

 

 国産品優遇奨励法【バイアメリカン法】がだ。

 

 例えばアメリカ国内で事業を行う場合、1ドルでもアメリカ連邦政府のお金を使用すると、販売する製品の90%以上をアメリカ製部品の使用が義務付けられてしまう。

 

 特に軍関係は厳しく、使用するビス、ナット、ネジ一本に至るまで、アメリカ産であるのを要求されてしまう。外国の技術や製品の購入には、アメリカ連邦議会が首をそう簡単には縦に振らないのが彼らには解っていた。

 

 そんなもんだから何処にでも売っている1個10$のステンレスの灰皿が1個300$だったりもする。流石にこれはアメリカ連邦議会でも問題視され、納品業者が吊るし上げに遭ったが。

 

「何とかしてアメリカ単独で開発するしかないな。幸いな事に日本帝国が開発した新技術の数々も、アメリカでも研究開発している物が多い。向こう数年間は我慢するしかない」

 

「チッ、第3世代機や支援装備の開発で日本帝国に遅れを取ってしまうとはな」

 

「後発国の強味だな。忌々しいの一言だが」

 

「だったら今度は我が国の番だな。【タイプ93・シラヌイ】を上回る高性能戦術機を開発すればいい」

 

 

 

 

 

 

 富士教導団の格納庫では【82式瑞鶴】の摩耗状態の確認作業が入念に行われていた。

 

「やはり新OSを使っている機体の部品の摩耗が早いですね。一応許容範囲ではありますが、数回戦闘を行っただけで、部品総取っ替えのD整備が必要になります」

 

 【82式瑞鶴】の整備班長の説明に帝国陸軍の巌谷榮二少佐、帝国斯衛軍の篁裕唯少佐、光菱重工横浜小机研究所主任の白銀影行の3人は渋い顔になるしかない。

 

「まあある程度は覚悟はしていたが・・・」

 

「いきなり機体の即応性が20%から25%も上がったからな」

 

「ソフトウェアの急激な発達にハードが追い付いていない」

 

 上から順に巌谷榮二、篁裕唯、白銀影行だ。

 

 この3人は日本帝国の戦術機開発の黎明期からの関係で、『戦術機開発の三羽烏』とも言われている。

 

 新OS導入に伴って懸念されていた事が、表面化した共言えるだろう。

 

「【82式瑞鶴】も十年前の機体だからな。今の技術に置いて行かれるのも無理もない」

 

「部品一つを取っても製造技術は日月進歩だからな・・・」

 

「【93式不知火】は数度の設計変更のどたばたはあったが、新OS採用機として設計されていたからな」

 

「その分下請け企業には迷惑を掛けてしまったが・・・」

 

 巌谷榮二は下請け企業の工員達のご機嫌取りの為に、山の様な菓子折りと酒類を持って行った日々を思い出し、苦笑いを浮かべる。

 

 新OS導入で機体の即応性が20%以上も上昇して、めでたしめでたし。と行かないのが世の常で、【82式瑞鶴】も日月進歩で進む戦術機開発製造技術で、開発されてから僅か11年で旧式機の仲間入りしようとしていた。

 

「今度は瑞鶴で新型電池と新型跳躍ユニットを試して見るか?」 

 

「余計に機体に負荷が掛からないか?」

 

 白銀影行は瑞鶴に水素電池と水素・ジェット燃料混合跳躍ユニットの使用を提案するが、巌谷榮二は機体に掛かる負担を懸念する。【93式不知火】にしても、まだまだ改善の余地は残されているのが実情。

 

「無論機体の補強を十分に行った上でだよ。これでは折角開発した新OSを第1世代機に使う案が御蔵入りになる」

 

「そうだな、影行の言う通りだ。折角武君が全ての戦術機の即応性を20%以上も向上させるOSを作ったんだ。やって見る価値はあるだろう」

 

「その後は戦術機の部品の統一規格化と交換性向上も急がないとな」

 

「そうだな、最低でも70%台には持って行きたいものだ」

 

「恐らくだが、今日の件は世界中に波紋を投げ掛けると俺は予想しているよ。何しろOS一つで、戦術機の性能を一世代分も向上させるのだからな」

 

「XM2でこれだ。武君が理想とするXM3が完成したらどうなる事やら・・・」

 

「正に戦術機革命時代の到来だ。影行よ、お前とんでもない息子を世に送りだしたな」

 

「紅蓮中将が武君を【鳳雛】と評価するのも納得だ」

 

「そうなると武君の身辺に警護を付けるか・・・」

 

「榮二、それは大袈裟ではないか?」

 

「いいや、私も榮二と同意見だ。今後武君の存在はこの国とって重要な意味を持って来る。やはり武君には身辺警護を付けた方がいい」

 

 何しろ【93式不知火】は待ちに待った純国産戦術機。しかも当初の予定寄りも半年以上も早く、期待した以上の高性能機として試作機がロールアウト、。れもこれも白銀影行の一人息子白銀武(若干9歳)の協力があればこそだ。

 

 篁裕唯も巌谷榮二の2人ももし武の身に何かあれば、日本帝国の戦術機・支援装備・特殊兵装の開発に支障を来たすのではと恐れる。

 

 しかもこの後には、武が発案・設計をした3種類の電磁砲兵器の他、高周波刀、蚕の繭からヒントを得た新型電磁伸縮炭素帯、フライトユニット、全天周囲モニター、対レーザー電磁シールド、リニアクラフト、3Dプリンター等の開発が目白押しだ。

 

 高性能新型半導体の開発を継続しながら、新型CPUのアップデートもしながら、武が理想とするXM3の開発も。

 

 帝国陸軍技術廠、各開発製造企業の研究・開発部の士気は盛り上がる一方だ。湯水の源泉の如く新知識・技術を惜しみなく考え出す武の評価は右肩上がり。

 

 だからこその警護案だった。

 

「影行、そんな顔をするな。武君をもっと伸び伸びとさせてやりたい気持ちは分かる。だが武君は我が国の至宝とも言っていい存在になりつつあるのだ。その武君に何かあったら、それこそ国家の一大事だ」

 

「分かった・・・・・・」

 

 

 

 

《1992年9月上旬・アンゴラ国・ベンゲラ州》

 

 西ドイツ国防陸軍司令部に急遽呼び出されたキルケ・シュタインホフ少佐は、1週間前に日本帝国が独自開発した世界初の第3世代機【93式不知火】の試作機のお披露目と、複数の模擬戦の映像を見て終始無言でいた。

 

 今日は彼女の30歳の誕生日なのだが、遠いアフリカ大陸アンゴラ国に身を置いて居る立場で、自分の誕生日を祝う気なんか更々なかった。

 

 両親と兄2人からは結婚を催促されているのだが、彼女は悲願の欧州奪還するまで結婚する気はない。

 

 家の家督はもう既に長男が相続しているので、余裕で婿を迎える余裕もある。

 

 今は第2世代機【F-5 EADVトネード】の後継機、欧州連合独自の第3世代機の開発を急ぎたかった。

 

 だが、世界初の第3世代機の栄誉と称号は日本帝国に持って行かれてしまったようだ。

 

(戦術機があんな動きをするだなんて・・・)

 

 従来の戦術機とは一線を画する機動を見せる日本帝国が独自開発した【タイプ93・シラヌイ】の機動力変形自在の動きに目を奪われた。

 

 亜音速に近い最高時速1000kmを出し、戦闘機動は常に500km前後を維持しながら、硬直時間が殆ど無い。鋭い直角ターンを何度も繰り返し、ランダム回避機動を行って行く。中のパイロットの身体が持つのかと心配してしまう程に。

 

 そこには戦術機に求められる理想的な姿が合った。

 

 最初見た時は合成映像か何かを疑ったが、上官達は合成映像を完全に否定をした。

 

 JIVESでは【シラヌイ】単機で大隊規模のBETAを翻弄し、突撃砲4丁で撃ち漏らしの無しでBETAを駆逐して行く映像が映る。

 

(もし10年前にこの機体があったら、欧州陥落はなかった)

 

 そう思わせるだけのポテンシャルを【タイプ93シラヌイ】から感じ取ってしまう。

 

 1983年冬から欧州連合は量産が始まったばかりの第2世代機【F-5EADVトネード】を中心として、大地を埋め尽くすBETAの欧州侵攻を阻止しようと必死に抵抗したが、1990年にイベリア半島が陥落して遂に欧州連合は欧州から追い出されてしまう。

 

 欧州連合は第2世代機【トネード】の性能不足を痛感させられ、欧州資本企業の避難先であるアフリカで第3世代機の開発に乗り出したが、その矢先に日本帝国が第3世代機の世界初の独自開発に成功してしまった。

 

 【93式不知火】1機対【89式陽炎】6機の模擬戦では数で勝る【89式陽炎】が勝つと思ったが、【93 式不知火】は蝶のように舞い、蜂のように刺すの諺通りに、【89式陽炎】の攻撃を毎々躱しては、【89式陽炎】を1機ずつ倒して最後の1機を長刀で倒した。

 

 ここで映像が途切れた。

 

「さて、模擬戦の映像はこれで終了だ」

 

 部屋の灯りが点くとざわめきが起きる。

 

「ここで諸君らの奇譚のない意見と考えを聞きたい」

 

「意見と考えと言いますと?」

 

「・・・日本帝国の第3世代機と関連技術を購入するかどうかをだ」

 

 ブリーフィングルー厶に緊張が走る。

 

「待って下さい。それでは欧州連合独自の第3世代機の開発を断念すると言う事ですか?」

 

 若い士官が立ち上がって聞く。

 

「いや、そうではない。欧州連合独自の第3世代機開発は予定通り通りに行うが、その繋役としてだ」

 

 そこには欧州の苦しい事情が合った。

 

 欧州連合は北フランス・ドーバー海峡を緩衝地帯としてリヨン・ハイヴのBETAと対峙しているが、一時は人口6億を数えていたが、長期に渡るBETA大戦で欧州の人口は2億人まで激減し、その内4割強が難民と化していた。

 

 本当なら難民の支援に乗り出したかったが、欧州最後の砦とも言うべきイギリス・アイルランドにBETAの大侵攻が再開されるか分からない時期が長期化。イギリス・アイルランドへの圧力緩和目的で、ジブラルタル海峡を打通し、シチリア島を奪還する作戦を目前に控えているので、難民の支援は後回しにされていたし、それと同じに新型戦術機の開発計画も遅々として進まないのが現実。

 

 未だ後方国家の立ち位置に立つ日本帝国はそれを横目に世界初の第3世代戦術機を開発した訳だ。

 

 してやられた感情よりも、日本帝国への嫉妬の感情がどうしても表に出てしまう。

 

 欧州連合は幾度となく日本帝国に援軍を要請したが、日本帝国政府は準備不足を理由に欧州連合への援軍要請を拒み続けてきた経緯がある。

 

 だが日本帝国側にも言い分があり、過去幾度となく複雑怪奇な欧州情勢に振り回され、幾度も苦い思いした。

 

『イタズラに欧州に援軍を送っても、欧州の複雑怪奇な政治情勢に振り回されて、帝国軍将兵を無駄死にさせるだけだ』

 

 の声が圧倒的多数を占め、欧州に援軍を送れないでいた。

 

 それに日本帝国の最優先は東アジア、東南アジア、オセアニアの防衛だった。

 

 今年に入りBETAの東進が本格化し、中国領甘寧省ドゥンファン市が陥落、BETAは同地にハイヴの建設を始めており、このままでは中国南部と東南アジアが分断されるのではと懸念が強まっていた。

 

 中国政府と国連からは、大陸への派兵要請が出ており、日本帝国政府内でも、大陸派兵やむなしの声が日に日に強まってもいた。

 

 外国にエネルギー、資源、食料を東南アジアとオセアニアに依存している日本帝国に取って、対岸の火事として見過ごす事は出来ない事態。

 

 そんな情勢化では地球の裏側に援軍は出せない。

 

 日本帝国に取って欧州は余りにも遠く、戦術機も衛士の数も未だ充分に揃っていない。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 ブリーフィングルー厶に重苦しい空気が漂う。

 

 欧州奪還にはより高性能な戦術が必要なのはここに居る全員が理解している。

 

 が、自分達のプライドが邪魔をして、感情を納得させられないでいた。

 

「・・・・・・仕方ないと思います。欧州製第3世代機の開発に日本帝国の【タイプ93】と技術が必要なら、購入を躊躇うべきではありません・・・・・・」

 

 キルケ・シュタインホフ少佐はいささか躊躇いながらも言う。

 

「少佐、私は反対です。欧州連合はあくまでも戦術機の独自開発をするべきです」

 

「ではどうするのだ?我々は【F5E トネード】の改修すら遅々として進まないでいるのだぞ」

 

 【F5E ADV トネード】はアメリカが開発した【F-5E タイガーⅡを欧州向けに改修開発された機体だが、軽量機の悲しさから拡張性の無さが災いして、第2.5世代機へのアップデートが進まないでいた。

 

 これは大元である【F-5】シリーズが軽量機だったのが原因でもある。【F-5】シリーズは機動性を重視する余り、徹底的に軽量化された機体で、量産性、整備性は【F-4】シリーズ寄りも優れてはいるのだが、いかんせん軽量化が原因で拡張性を持たせられるなかった。

 

 ならばと欧州連合は【EF-2000 タイフーン】の開発を進めてはいるのだが、現時点では第2.5世代機止まりに過ぎず、欧州連合軍が期待する第3世代機化は無理との結論が出ていた。

 

 何故第2.5世代機止まりかと言うと、欧州大陸喪失が大き過ぎた。欧州連合は1980年代に基幹産業をアフリカやカナダ東岸に南米東海岸に移したが、移したからと言って万事つつがしくなくと言う訳には行かないらしく、各方面へと悪影響を出していた。

 

 その悪影響は兵器開発生産にも及ぼしているのが実情で、海外に工場を移したからと言って、必ずしも上手く行くとは限らない。

 

 欧州連合は頭を抱えても状況の打開を模索していた所に、日本帝国が新型戦術機、しかも世界初の第3世代機の開発に成功したニュースと映像が飛び込んで来た。

 

 

 

 

 

 

「すまないなシュタインホフ少佐、残って貰って・・・」

 

「いいえ、構いません」

 

 ブリーフィングが終わった後、キルケ・シュタインホフは名指しで残らされた。

 

「これはまだ正式決定ではないが、貴官には欧州連合技術協力派遣隊隊長として、日本帝国に赴いて貰う事になる」

 

「日本帝国に、ですか・・・・」

 

「そうだ、日本帝国から技術協力を引き出して、【F-5Eトネード】の第3世代機へのアップデートと、【EF-2000タイフーン】を第3世代機として開発させたいのだ。その為の技術協力派遣隊派遣となる」

 

「それ程までに、日本帝国が開発した新型戦術機の性能は凄まじいのですか?」

 

「我々が一番注目しているのは、日本帝国が開発した新型OSと新型CPUだ。これを搭載しただけで、全ての戦術機の即応性が何と20%も上昇する・・・」

 

 それを聞いた彼女は驚き目が点になる。

 

「何かの間違いなのではありませんか?」

 

 戦術機の即応性は数%上昇させただけでも革新的だと言われている、なのに日本帝国は一気に20%以上も上昇。

 

「いや、間違いではない。しかも新型OSと新型CPUの発案者と設計者、新しい機動概念の発案・開発が同一人物で、驚いた事に未だ10歳にもならない子供との情報がある」

 

「・・・あの、情報部はきちんと仕事をしています?」

 

 昨今ユーラシア大陸の前線では、15歳未満の少年兵が徴兵強制動員されるのは珍しくはなくなったが、10歳の子供が新型OS、新型CPUの発案・設計、戦術機の新しい機動概念の発案・開発するなど、絶対にあり得ないからだ。

 

「その辺りに関する情報は精査中だし、日本帝国側に問い質している最中だ。判り次第貴官に報せる物とする」

 

「分かりました・・・」

 

「そこでだ。日本帝国に到着したら、真っ先に接触をして欲しい人物がいる」

 

「誰です?」

 

「光菱重工で戦術機開発部門の主任を務めているカゲユキ・シロガネとか言う人物だ。日本帝国の戦術機開発は、この光菱重工が中心でカゲユキ・シロガネは重要な立ち位置に立場にある。ちなみに聞くが少佐は付き合っている男とかはいるかね?」

 

「・・・いいえ、いません・・・」

 

 シュタインホフ少佐は、上が自分に何をやらせたいのかを理解した。

 

「そうか、それは良かった。貴官なら上手くやれるだろう」

 

「一つ、ご質問宜しいでしょうか?」

 

 彼女も30歳で嫁ぎ遅れ、男性経験は無いが、今更初心な恥ずかしい思いをする歳では無いと覚悟を決める。自分一人の身体を犠牲にする事で、悲願の欧州大陸奪還なるのなら、安い物だと・・・・。だが危惧も覚える。

 

「何かね少佐」

 

「何故、小官なのですか?」

 

 美人でスタイルが良いのなら、何も自分で無くても良い。何か理由があるとしたら?

 

「君がカゲユキ・シロガネ氏の奥さんに似ているからだ。特に身長と容姿がね。あぁ胸の大きさは、君が勝っているから安心したまえ。他に何か質問はあるかね?」

 

「いいえ、何も・・・・」

 

(ふん、私に一つの家庭を壊せと言うのね・・・)

 

 彼女は目の前の上官を軽蔑する事に決めた。

 

 そして彼女は日本帝国で、とんでもない少年と出会う事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キルケ・シュタインホフは一度は使って見たいキャラなんですよ、あのまま御蔵入りさせるのは勿体ないと言うか。

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