学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
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Eランク47位、天沢チームのリーダー。高魔力。鷹一からは『戦闘スタイルは興味深い』と評される。
4月に学園内で雲川・明星と知り合い、相互に友人になる。雲川とは相互に明星を譲り合うが、雲川が、天沢チームの選手確保を優先したため、明星と無事にチームを結成することに成功する。
雲川経由で鷲島に感謝を伝えた。
休み期間では明星とともに雲川と絆を深めた。良い人で少し天然。少しぼーっとしているように見えるが、思考は深い。
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天沢チーム所属。高魔力。
雲川とは友人関係。
天沢とともに、雲川経由で鷲島に感謝を伝えた。
休み期間では天沢とともに雲川と絆を深めた。ちなみに雲川に『ウニの軍艦のストラップ』を渡したのは明星であったりする。これも絆エピソードの一つ。
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Cランク24位、秩父チームのリーダー。
過去に鷲島を勧誘したが失敗した。現在も鷲島とのパイプを持っている。
よく言えば人柄が良く、悪く言えば、甘い。
鷲島からは「能力は高くはないが、人格面は良い」と評価されている。
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秩父チームのエース。チームをCランクの引き上げた立役者。
色々あって甘ちゃんの秩父のチームに所属したが、やや先行き不安のチームなため、色々と考え中。
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秩父チームの足手まとい担当。第四試合から参戦。
戦闘能力も頭も弱い。そのこともあってか、第三試合終了時、まだチームに所属していなかった。このままいけば追放となることに気付き、一発逆転を狙い暫定Bランクの雲川チーム加入を狙う。
人の良さそうな金崎に目を付け、近寄るが、怪しんだ金崎により鷲島を呼ばれてしまう。金崎・雲川の心情を気にした鷲島により秩父を紹介され、なんとかチームに所属する。
最初は暫定ランクが低い秩父チームよりも雲川チームを好んだが、チームメイトの楠木と郡上のレベルが低そうなので、ここなら自分でも活躍できるかもと思い直し第四試合に挑む。
第四試合で秩父チームは大勝し、門倉も僅かに活躍(長山を少しの間足止めしたが、長山に討ち取られた)したため、「これは私のおかげです! 私のおかげでCランク昇格! やったー!」と秩父に自慢しながら、ZP配分を増やすようにお願いした。秩父は、「ま、まあ、頑張ったわよね……」と褒めつつ、1000ZP余分に分配してあげた。
トラブルメーカーで、しょっちゅう問題を起こす。
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Cランク23位、天野チームのリーダー。
明るく人柄の良い。戦闘人格共に優良。鷹一から能力と人格を高く評価され、雲川チームに勧誘された(選手は、生徒がリーダーか分からないため)が、リーダーだったため断った。
高魔力。実は鷹一には「天野と進藤が同時に攻めてきた場合は、少し危険」と評されている程度には警戒されている。鷹一とは、第二試合後に、連絡先を交換している。
第二試合では雲川チームに敗れるが、足りない所をチームメイトとともに補い、さらに新たな仲間を集めて、元々強かったチームをさらに強化した。
第三試合では大勝するものの、第四試合では下水流チームに敗れ、まだまだ精進が必要と懸命になる。Cランクの生活には、個人的には不満はないが、自分について来てくれた仲間たちにはBランク以上で報いたかったため、反省中。
次の試合に向けて、信頼できる同盟先として鷹一に連絡を取るが、反町の速さに負けてしまった。しかし、最終的には麻倉チームという強大な同盟相手を獲得する。
【サイモン・T・ウォズ】
天野チーム所属。第三試合から参戦。
高魔力狙撃手。狙撃手としての腕も良いが、サブマシンガンによる戦闘やブレード戦までこなす多才な人物。
柔和な面と不愛想な面、繊細な面と勇敢な面、複雑な二面性を持つ。
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Aランク2位、飛山チームのリーダー。機動戦術を得意とする。
金髪の美少女。好奇心がまあまあ強め。戦闘・統率・戦術・戦略・謀略・運営と隙が無いリーダー。天は二物も三物も与える。
零とは学園に来る前からの親友であり、現在同盟中。親友とともに鷲島を勧誘したが失敗した。現在も鷲島とのパイプを持っている。
親友をサポートしつつ、チームの管理もしつつ、自己訓練も行いつつも、今後を見据えた策謀も進行中。
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飛山チームの狙撃手。通信担当も兼任。新入生最強の狙撃手であり、機動力と狙撃能力を高レベルで両立している。チーム戦において、活躍度合いも高く、鷹一には警戒されている。
一生懸命な努力家。リーダーの飛山のことを尊敬している。またチームは違うがストイックな努力家である鷹一のことも尊敬している。金崎も頑張ってるので一方的に好感を抱いている。
本質的には明るくよく喋るタイプだが、情報の流出やチームの足を引っ張ることを警戒し、あまり喋らないようにしている。
合同訓練の後、鷹一は、Aランク高級マンションに向かい、柚木からの減額条件である――安重チームの乾と会談を行った。リーダーである安重からの許可が下りたためだ。
なお、安重は自身も参加すると鷹一には伝えたが、会談の場には現れず、そのことを鷹一が乾に問うと、乾はにやりと笑い「安重を説得したんだよ」とだけ答えた。
鷹一は、乾に対して、やや苦手意識を感じたものの、会談自体は、比較的問題なく進行した。
むしろ鷹一にとっては翌日に起こった、二つの出来事の方が印象的であった。
一つは天沢チームの同盟話であり、もう一つは匂坂キッカと谷崎ミホという怪物二人とのティータイムであった。
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まず、天沢チームの同盟話であるが、これは少し複雑な事情から発展したものだった。
この日、朝から、鷹一の部屋に雲川がやってきた。
鷹一が用を尋ねると、雲川は気まずそうにしながらも「招待券」が欲しいと言い出した。
最初、鷹一は、匂坂と一緒に行った高級スパにもう一度行きたくなったのかと訝しみ、少し悩んだが、「梶田チームから提供してもらえないか頼んでみよう」と返した。しかし、雲川は「そっちじゃなくて……」と言って、さらに言葉を続けた。雲川は「Bランク大浴場の招待券」を欲したのであった。
招待券は、AランクとBランクの生徒に与えられる特殊なチケットだ。月に三枚、Aランクの各生徒には「高級スパ体験券」、Bランクの各生徒には「大浴場体験券」が与えられる。これらはそれぞれAランク・Bランクの生徒の特権の貸出版である。
本来であれば、学園の高級スパはAランクの生徒しか利用できず、また大浴場はBランクの生徒しか利用できない。しかし、この券を他ランクの生徒に渡すことで、その生徒も1回だけ利用できるようになるのだ。この券をA・Bランクの生徒は月に3枚ずつ発行することができる。雲川チームの面々もBランクの生徒であるため、その気になれば、「大浴場体験券」を三枚まで発行し、Cランク以下の生徒に与えることができるのだ。
そして、雲川は、今月の発行上限である3枚を使い切ってしまっていたのだ。
鷹一は、少し心配した。つまり雲川が喝上げされているのではないかと思ったのだ。
そこで、詳しく事情を聞いたところ、雲川は友人であるEランクの天沢チームに招待券を全て渡してしまい、さらにもっと渡したくなり、鷹一の発行分を求めたのだ。また、特に天沢チームに強請られているわけではなく、雲川の自由意志によるものだった。
なぜなら、Eランクの酷い待遇――浴槽はなく、シャワーのみであり、またその使用回数・使用時間・温度に制限があるというものに、雲川はとても可哀想だと思い、少しでも友達にリフレッシュして欲しいと、大浴場招待券を全て天沢チームに渡したのだ。天沢と明星は、雲川に非常に感謝しただけで、追加の招待券などは求めることはなかったが、ほのぼの頭の雲川は、利益などは考えず、ただただ友人たちを思って追加の招待券の獲得を考えたのであった。
全てを白状した雲川は、再度鷹一に招待券を求めた。しかも、全てを白状して、謎の図々しさを解放した雲川は、ついでに金崎の分の招待券も求めた。『使わないなら、天沢さんたちに……』などと雲川は小さい頭で考えていた。
なお、鷹一は、下位のランクとの交渉で使う可能性を十分に考えていたため、「使わない」わけではなかった。ただし、一方で、Eランクの待遇に関しては鷹一も知っており、またその待遇について納得しかねる面も持ち合わせていた。学園と対立しようとまでは、まだ考えていなかったが、それでも、Eランクに知り合いがいれば、援助をしていたと思っていた。だから、雲川の気持ちは鷹一には伝わった。
鷹一は、雲川に、「招待券」は直接会わなければ渡せないため、天沢を呼んで欲しいと頼んだ。雲川は自分の思いが伝わって、嬉しそうに頷くと、すぐに天沢に連絡した。なお、鷹一の言葉には、やや真実でない面が含まれていた。「工夫」することで、直接会わずとも招待券を渡すことは可能なのだ。しかし、鷹一はそれをしなかった。一度、雲川の友人である天沢と直接話をしたかったのだ。
――理由は僅かな興味と少しの警戒心だ。
興味は、天沢と天沢チームの戦い方が鷹一には少しの関心と少しの奇妙さを感じたからだ。
そして、警戒心は、単純に雲川が利用されている可能性を考えていたからだ。頭がふわふわの幼馴染だ。もし利用されているならば思う所はある。ただ、一方で、このふわふわ感ゆえの生き方もあり、それを自分で勝手に咎めたり制限を課す気はなかった。つまり本人が傷付かない範囲であれば、多少利用される分には構わないと考えていた。しかし、あまりにも度が過ぎているものや一線を越えているならば、自分が対処することも視野にあった。
そうして、呼び出された天沢と対面することになったのだが、ここで一つアクシデントが発生した。
それは、天沢だけではなく、彼女のチームメイトの明星も来たことだ。鷹一は呼び出していない人物が来たことに、疑問と、同時に感じる天沢チームへの奇妙さの再確認、そして嫌な予感があった。
一方で、天沢の方もやや状況が読めていなかった。
なぜなら、雲川は「鷹一くんが呼んでる」とだけしか言わなかったのだ。自分が招待券を準備していることや、鷹一がそれを渡そうとしていることなど説明せずに天沢を呼んだのだ。天沢は疑問に感じつつも、お人好しゆえに、雲川の呼び出しにほいほい出向いたのだ。また、鷹一に呼び出されたことを明星に伝えると、何を考えたのか明星も同行を希望したのだ。天沢は一瞬、明星と鷹一を会わせて良いかどうか悩んだものの、友人の気持ちを尊重することにしたのだ。
天沢・明星の二人組の言葉と態度から、幼馴染がちゃんと説明していないことを察した鷹一は、一から説明した。勿論、自身が、天沢たちを疑っていることは隠した上で。
鷹一の言葉を聞いて、状況を理解した二人は、最初は申し訳なさを感じ、固辞した。しかし、雲川の珍しくも強い意志と、二人組を見て思う所があった鷹一の言葉もあり、最終的に二人は招待券を受け取った。
深く感謝する二人組を見て、鷹一は内心でずっと考えていた天沢チームの「奇妙さ」を指摘するか悩んだが、それよりも早く明星が動いた。
明星は、「招待券を貰った上で、さらにご迷惑をかけてしまって、申し訳ないのですが」と前置きした上で、鷹一に知恵を借りたいと言い出したのだ。
鷹一が了承すると、明星は話しを始めた。
それは5月の試練である同盟結成試練に関してだった。
まず、天沢チームは現時点では同盟相手がいなかった。そして、各チームは非常に速いペースで同盟相手を見つけており、この一週間で半分以上のチームが同盟を結成させていた。天沢チームは完全に乗り遅れていたのだ。
そんな中、天沢チームに声をかけるチームがいた。Dランク38位の鈴木チームであった。天沢と明星は、このチームと組んでよいのか、ずっと悩んでいたのだ。そして、鈴木チームへの回答期限は明日までであった。
明星は、鷹一ならば、正しい選択肢を教えてくれるのではないかと期待したのだ。
鷹一は、明星の語り口と、押し黙る天沢を見て、このチームの『奇妙さ』をさらに強く感じた。悩んだ末、それには口を出さず、純戦略的な視点で質問に答えた。
――鈴木チームは魅力ある選択肢の一つではある。人数が四人で、リーダー以外は高魔力というのが、とても魅力的であり、またエースの金剛とサポート要員の小橋のタッグは、状況次第ではマスタング相手にもギリギリ戦いを成立させる程度の強さがあった。この点はDランクでは非常に評価できる点であった。しかし一方で問題が多いチームであった。チームメイトの水上は素行不良かつ試合での動きに問題があり、リーダーの鈴木は指揮能力と戦闘技量・魔力量に問題を抱えていた。また他のチームともやや揉めがちである点も、Dランクであることを考えると、欠点としては大きいように鷹一には感じられた。
総合的に、自分ならば組まないチームであると鷹一は感じていた。しかし一方で、現状、残っているチームで質が高いチームはほぼなく、鈴木チームはかなり良い方のチームではあった。
そこで鷹一は次のような提案をした。
――まず同盟を狙うならば、秩父チームか清沢チームを狙うべきだろう。この二つのチームに打診を行い、駄目なら鈴木チームと組むといい。
まだ同盟を組んでいないCランクの二チームを挙げた。
Aランクは既に全てのチームが同盟済みであり、Bランクは下水流チーム以外が同盟済みであった。単純な強さは下水流チームが突出していたが、鷹一はこのチームは勧めようとは思わなかった。鷹一は下水流チームについて情報が少なかった。ただ、リーダーの下水流が『他者と揉めるタイプ』であるという噂は耳にしていた。
一方で、秩父チームも清沢チームも悪い噂はあまり無いチームであり、また五人構成という人数が強みのチームであった。ただし『強さ』には大きな差があり、清沢チームは連携と戦術力があり、滝本チームや零チームと戦える程のチーム戦能力を持っているが、秩父チームはエースの岩切以外は頼りないチームであった。
なお、秩父チームに魅力が無いわけではなく、リーダーの秩父は人格的には良好……を通り越して甘すぎる人物であり、また、秩父チームは全員が女子生徒で構成されるが、清沢チームは全員が男子生徒で構成されるチームであった。それゆえ、生活や交流という面を考えると秩父チームにも分はあった。
鷹一の答えに対して、明星は「秩父さんのチームと清沢君のチームですか……」と困ったように呟いた。どちらとも交流が無いチームだったからだ。明星のそんな仕草を見て、天沢がさらに困った。これは流石に良くないと天沢は思ったのだ。鷹一は困る二人組を見て、特に、『困った明星を見て、さらに困った天沢』を見て、少しだけ行動を起こすことにした。
二人に対して、鷹一は、『自身が秩父と良好な関係を築いていること』『秩父も同盟を欲していること』『天沢と秩父は相性が良く、チームとして見ても補い合えるチームであること』を指摘し、『もし良ければ、自分が秩父に話を持っていっても構わない』と言った事を告げた。
明星は申し訳なさそうに天沢と鷹一を見た後、遠慮がちに、消極的に、遠回りに、鷹一に仲介をお願いできないか、ということを提案した。天沢は明星と鷹一を見て、強い苦しみを覚えるものの、鷹一にお願いできないかと、頭を下げた。
鷹一も天沢の考えを察し、できるだけ天沢が気負わないように気遣いながら言葉を紡ぎ、秩父チームとの交渉を約束した。なお、雲川も明星も、鷹一と天沢の深い考えを読むことはできなかった。
鷹一は、まず天沢と同盟の条件やどういった関係を期待しているかなど詳細を詰めた。その後、ある二人の人物に連絡をしてから、秩父へと連絡した。秩父とは、互いに近況報告を行い、話を温めた後、鷹一は天沢チームの話を切り出した。
秩父は思わぬ話に深く混乱した。受けるべきか、受けないべきか。様々な考えが秩父の脳内を巡った。悩み悩んだ結果、結論を出せなかった秩父は、チームメイトと相談させてほしいと願い一度通話を切った。
その後、しばらくして、鷹一がある人物と通話を済ませた後、秩父から鷹一に通話があった。そして、一度、直接話をしたい、ということになり、天沢は一人、秩父チームの部屋へと向かった。雲川・鷹一・明星の三人は雲川の部屋で天沢の交渉を待つことになった。
そして、結果。
天沢は同盟相手を勝ち取った。CランクとEランク、5人チームと2人チームという同盟ということもあり、ZP配分は70万対30万となった。つまり、六月一日に秩父から天沢へ30万ZPというEランクでは手にできない大金が渡されることになった。
なお、水面下では、秩父の知らない策謀が巡らされていた。
まず、鷹一は秩父に連絡する前に、反町に連絡していたのだ。そして、彼女から、秩父チームのエースである岩切の連絡先を手に入れた。秩父のこれまでの言動から推測される人格や人間関係、そして、試合で見た岩切の動きから予想される人格像とチーム内でのポジションを推測した鷹一は、『岩切こそが、秩父チームの行動を決定する要だ』と判断したのだ。
岩切は、
野心的で自分本位な面を持つ岩切は、報酬として、招待券と
また、鷹一も譲歩するだけではなかった。優秀な面を持ち、同時に、利害関係があれば裏切らない岩切を『使える』と考えたのだ。鷹一は交渉の末、『月に3時間だけ、岩切の時間を好きに使う権利』を得た。この権利は、今のところは、金崎の訓練相手としての利用を想定していた。勿論、Cランクの密偵や、秩父チームへの影響力調整などに使うということも頭の片隅にはあった。どのように使うにしろ、岩切は役立つと鷹一は考えたのだ。
(特に、匂坂と相性が悪いのが良い。現状、岩切が、俺を裏切る場合、可能性がある相手は匂坂だ。極僅かに、蓮や青井という可能性もあるが、岩切は青井とは取引しないし、蓮は岩切から俺のチームの情報を抜くという選択肢は取らないだろう。匂坂と相性が悪い以上、岩切は基本的に裏切らない)
一瞬、鷹一の脳内に飛山と反町の顔が浮かんだが、すぐに首を振った。その可能性は薄いし、もしそうであったならば、既に今更の話であると考えたからだ。そこを考察する意味が無いのだ。
同盟成立後、秩父から鷹一に連絡があった。内容は、『信頼できそうな同盟相手を見つけてくれたことに対する感謝』であった。この言葉は鷹一の罪悪感を刺激した。今回の件では、裏から手を回していたこともあったため、真っすぐな秩父の言葉に、鷹一は申し訳ないと感じてしまったのだ。
そういった感情もあったため、鷹一は秩父に対して、『天沢たちはリーダーの友人だったこともあって同盟相手を見つけて欲しかった事』、そして、『今回の件でも借りができた事』を伝えた。これで鷹一の秩父に対する借りは二つとなった。秩父は『借りと思わなくて良い』などと甘い考えを口にしたが、鷹一の願いもあり、『一応借り』ということで話は落ち着いた。
ここで、この話が終われば最高であったが、そうはいかなかった。
翌日、秩父が鷹一に泣きついたのだ。昨日の借りを使わせてほしい、と。
なぜなら、秩父チームの門倉が天野チームとトラブルを起こしたからだ。
天野チームは秩父チームと同じCランクではあるものの、非常に強力なチームであり、またBランク筆頭である麻倉チームと同盟を組んだこともあり、Cランク内では影響力が強いチームであった。
一方で、秩父チームは戦闘力に欠け、頼りの岩切も「門倉のバカが犯した問題だし、ほっとけ。良い人ぶってる天野チーム相手なら大した問題にならない」などと吐き捨てどこかへ行ってしまったこともあり、鷹一に泣きついたのだ。秩父は、門倉の普段の奔放さとトラブルメーカー具合に思うところはあった。ただ、それでも自分のチームメイトだったのだ。見捨てられなかった。
鷹一は、内心で『天野チームは安全なチームのはずだが……』と思いつつも、珍しい秩父の頼みゆえ、即座に引き受け、天野に連絡を入れた。その後、現場である天野チームの部屋に向かい、事情を聞き、双方納得の下、門倉がウォズに謝罪することで、禍根を残すことなく、天野・秩父危機を回避することができた。
また、その際、天野チームの面々と言葉を交わした鷹一は、『天野チームは、以前戦った時よりも、質・量ともに遥かに強くなっている。恐らくそう遠くないうちにBランクに来て戦うことになるだろう』と感じた。
秩父は、無事危機を回避でき、鷹一に深く感謝し、『これで借りは十分返してもらった』ことを告げた。鷹一としては、『まだ二つ目の借りがある上、今回の件は、そこまで大した話ではなく、むしろ、秩父一人でも十分解決可能だったから気にしなくて良い』、と告げた。双方譲り合い、最終的には借りを一つ消費し、秩父に対する鷹一の借りは一つとなった。
ここで、この話が終われば最高とは言わずとも、ほどほどの結果であった。しかし、そうはいかなかった。
さらに翌日、今度は門倉はAランク2位である飛山チームと揉めたのだ。一年生でも最高クラスと名高い飛山率いるチーム。そこと、揉めてしまったのだ。秩父は顔を真っ青にし、嗚咽を漏らしながら鷹一に懇願した。どうか助けてほしいと。鷹一は、借りがまだ一つあったことが半分、秩父への哀れみが半分から、少し溜息を漏らしつつも介入を決めた。
今回の件でも、飛山に即座に連絡を取り、秩父・飛山・鷹一の三人で現場調査や双方の事情聴取を行い、最終的に、門倉が道合に深く謝罪することで飛山・秩父危機は回避された。
なお、こちらは僅かにだが禍根を残した。門倉が内心で、『今日のは、私、悪くないもん』と思い、道合も内心で『龍華さんと鷲島君が言うなら、私は、全然良いんですけど、でも! この人絶対反省してないと思います……!』と思っていたからだ。
二人の心を知らない秩父は、事態が解決したことを喜び、道合・飛山・鷹一に対して自分からも謝罪と感謝をした。門倉と道合の心を知る飛山と鷹一は、『秩父はCランクで生き残るのは難しい』と感じた。
こうして、鷹一と秩父の間にある貸し借りは清算された。
その後、飛山と友情の再確認を行った鷹一は、甘くて手綱が緩い秩父の評価を僅かに下げ、そしてトラブルメーカー門倉の評価を大きく下げた。
なお、鷹一が飛山たちと分かれて一人になった後、狙ったかのように岩切から連絡が入り、次にような会話が行われた。
『今回のゴタゴタは秩父と門倉の問題だから、それでこっちの評価を下げないでよ』
どこか呆れた声で岩切が言葉を発した。
「そうか。ところで、なぜ秩父を助けなかった?」
『もしかして、一昨日の契約の話をしたいの? 私は自分からは秩父を裏切ってないし、鷲島さんとの契約違反にはなってないでしょ。門倉がバカなのと秩父が甘ちゃんなのが悪い』
岩切の冷めた声に、鷹一は、一理あるなと感じた。
「そうか。分かった。別に俺も、お前を非難するつもりはない。ただ、今後は、可能な範囲で秩父を補佐してほしい」
『ふーん? それは、それは月3時間の権利行使と見ていいの?』
どこか試すように、岩切が問いかけた。
「いや、権利行使ではない。秩父を補佐して欲しいというのは、権利を使いたいわけではなく、ただの願いだ。俺は秩父と交流があるし、敵対的ではないリーダーは有益だ。できれば今後も秩父が上手くいくように願っている。だが、権利を行使しようとは思っていない。だから拒否しても構わない。だが、拒否しないことはお前の利益に繋がるだろう」
鷹一の冷たい声が岩切の耳に響いた。
『利益に繋がるね……ちょっと気にくわないし、あんまり必要以上に利用されたくはないけど……まあ、こっちに選択肢はないか。分かったよ。パトロンの機嫌を取るのも芸術家の仕事の一つだしね。その代わり、月に招待券二つと、何かあった時は、ちゃんと助けてね』
「ああ、助かる。秩父のことは任せた。招待券と、有事の時は助けよう。ただ、前にも言ったが、俺は既に今月の招待券は使用済みだ。今月の分は、金崎から渡す」
『別に、それは大丈夫だよ。ただ、来月からは鷲島さんから直接貰いたいな。金崎からじゃなくてさ』
「それは、構わないが……なぜだ?」
岩切の言葉の意図が読めず、鷹一が問いかけた。
『直接会う理由が欲しいからだよ。月に1回直接会ってたら、少しは切りにくくなるでしょ?』
「契約を守っている限り、俺からお前を『切る』つもりはない。お前は、どうかは分からないがな」
鷹一は思ったことをそのまま口にした。
『そりゃそりゃ、とても嬉しい言葉だね、本当なら。……私も鷲島さんと敵対するつもりはないよ。死にたくはないしね』
探りと本心、両方を織り交ぜながら岩切が言葉を返した。
「たまに言われるんだが、俺はそんなに人を殺しているように見えるか?」
岩切の声音から、彼女の考えを読んだ鷹一が、以前から気になっていたことを聞いた。
『どうかな? 殺しているかは分からないけど『殺す』覚悟はある人だと思うよ。そして、その能力も十分にある。ああ、でも、思ったより、優しい人なんだな、とも思ったよ。秩父のこと結構気にかけてやってるみたいだしね』
答えを聞いて、鷹一は僅かに固まるが、それを態度には出さなかった。
「……ありがとう、参考になった。礼というわけではないが、俺のCランクに対するスタンスを開示しよう。とはいっても特に深い考えがあるわけではないが……個人的に関係がある源内と秩父の二チームには今後もCランク以上で残って欲しいと思っている。ただ、実力的にはどちらもBランクは少し厳しいとも感じている。
天野チームは人柄が良く好感が持てるが、どちらかというと警戒している相手だ。あのチームは強すぎる上に佐々木が背後にいる。場合によっては対立することもあるかと思っている。他のチームは今の所、特に考えはない。特別、邪魔をしたいわけでも支援したいわけでもない。現状、俺がCランクで支援する可能性があるチームは源内とお前の所属する秩父チームだけだ。だからお前は秩父チームに残った方がいい」
この鷹一の言葉は、『自身の支援』がCランクにおいて強い影響力を持ち得ると示しているかのようであった。そして、それは岩切には、はっきりと伝わった。
『……なるほどね。こっちこそ、ありがとう。参考になったよ。でも凄い自信だね、鷲島さん。他のランクのチームに干渉する機会なんて無さそうだけど……もしかして、今後の『試練』とか試合形式とか色々知ってたりするの?』
探るように岩切が問いかけた。岩切は自分の持っている情報はCランクの一選手の情報に過ぎないと考えていた。もしかしたら、リーダーや高ランクの生徒は、自分が持っていない情報を学園から説明されているのではないかと考えたのだ。
「何とも言えないな。ただ、今回の同盟推奨試練や、これまでの学園側の考えを踏まえると、他のランクと協力・敵対する機会はあるように思える。Cランクとの協力が必要な展開があれば、秩父チームは候補になりえる」
『推測の段階ね……。分かったよ。もしもの時、秩父を助ける気があるなら、こっちも普段からもう少し秩父を助けておくよ』
「ああ、頼む」
岩切と通話を終えた鷹一は、改めて、岩切を『有用』だと考えた。
(秩父チームにいてもらう方が俺にも秩父にも都合が良いが……もし、最悪のケースになった場合は、雲川チームの四人目候補ではあるな。まあ、秩父は人柄が良いし、天沢の同盟相手でもあるし、秩父チームが壊滅するようなケースになっては欲しくはないがな。だが、四人目については少し考えておいても良さそうだ)
雲川チームの人数問題。現状Bランク維持ならば問題はないが、一応、様々なケースを想定し、『候補』は考えておこうと鷹一は考えた。そして、その候補の中には、『特殊なケースに限り』という条件付きで岩切モカを加えるのであった。
※
そして、もう一つのビックイベントである匂坂・谷崎とのティータイムであるが、こちらは結論から言うと、鷹一が危惧していたこと――抹殺されることはなかった。また暴力なども発生しなかった。
ただし、当然匂坂の言うような「ほのぼの」ティータイムにはならなかった。鷹一は、何とか雲川チームと大町チームの罰則である50万ZPを回収することには成功したものの、沢山の大変な思いをしたのであった。
そうして、一週間の休みの期間が終了し、授業と訓練の日々が始まった。そして、次の試合――5月・6月の部の第一試合が近づいてくるのであった。