学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
作戦会議の後、雲川チームの面々は、第一試合の対策を踏まえた上での訓練メニューをこなしていった。
雲川は興味が持つ事ができた狙撃分野に関して、特に集中的な訓練を行った。
また合同訓練時での課題から、シールドで狙撃を防御された際の攻撃法についても考案した。なお、これは雲川自身が考えたわけではなく、主に、鷹一・種村・一之瀬が、雲川の能力や癖から、考案したものだが、雲川の努力の面もあった。
そうして雲川の新技『対シールド突破狙撃法』が生まれた。この技は、鷹一・種村・一之瀬・雲川の間での極秘開発であり、『初見殺し』の要素を持った技であった。そこで、実験的に、金崎・石井・反町・梶田に実戦形式での対戦――狙撃手である雲川が相手を一方的に視認できる状況での狙撃、を行い、新技の性能を確かめた。
3回ずつ戦った結果。金崎には三勝、石井に一勝、反町・梶田には勝てなかったものの、梶田の武器の破壊に成功した。
これは雲川の能力を考えれば、存外に良い結果であった。鷹一・種村は、この結果に感動する一方で、大きな問題点にも気付いてしまった。
それは、この『対シールド突破狙撃法』は、かなりムラが大きい技であるという点だった。雲川は狙ってできる時とできない時があるのだ。再現性に問題があった。実際、金崎相手の二回は新技ではなく、ただの狙撃であったし、石井・梶田相手には一度しかこの技を使えなかった。そして反町相手には、そもそもこの技を使えなかったのだ。12回の攻撃チャンスのうち3回しか発動しなかったのだ。
そこで、再現性を求めた鷹一・種村・一之瀬の三人は様々な実験を通した結果、謎の考察を導き出した。それは、『雲川がリラックスしているという条件の下で、寿司について集中して考える時に、成功率が高いのではないか』という、理解しがたい考察であった。
鷹一は『試合中にそんな条件を満たすのは難しいな』と半分諦めたが、一方で、種村は『この必殺技に名前を付けよう……!』と謎の方向に意欲を出した。
なお、技名に関しては、『どうでもいい』と思っていた一之瀬が適当に「『うにうにいくら』とかでいいんじゃないですか?」と投げやりに言った言葉がそのまま採用されてしまった。雲川がその響きを気に入ったからであった。鷹一と一之瀬は呆れ、種村は「まあ、雲川さんがいいならいいか」と頷いた。
気分により出せたり出せなかったりする技『うに、うに、いくら!』を雲川が学んでいる一方で、金崎は真っ当に能力を伸ばしていった。
目標としていた、『射撃反応プログラムレベル3』は達成できなかったが、合同訓練での隠蔽技能、梶田から教わった連射攻撃方法やシールド破壊方法などを復習し、攻撃面で成長を遂げた。
また、第一試合までの期間中、梶田が、金崎の訓練を2度ほど見に来て、その時、激励の言葉を投げつけた。なお、その内容はあまりにも私的なモノであった。梶田は、以前、柚木チームの狙撃手である安倍と、やや揉めたことがあり、そのことを根に持っていた。よって金崎には、強く次のような言葉をかけた。
――安倍を見つけたら必ず撃破しなさい。どっちが上か分からせるのよ。
梶田の冷酷な支配者のような圧を浴びた金崎は、恐怖を感じつつも、「できるだけ頑張ります」と必死に告げた。金崎の態度、特に『ちゃんと丁寧語』で対応したことに満足した梶田は、金崎に射撃によるシールド破壊方法の仕方について指導した後、訓練室を後にした。なお一緒にいた種村は、金崎の態度を見て、「コイツの言葉は話半分でいいからね」と気を遣った。
チームメイト二人の特訓と並行するように、鷹一もまた個人的な訓練を進めた。そして、それだけではなく、鷹一は合間合間に、石井に技術を教えたり、梶田チームの面々への訓練相手にもなった。次の梶田チームの対戦相手には高い接近戦能力を持った相手や機動力を持った相手がいるので、その対策のためだった。
※
このように雲川チームの面々は訓練に励みつつも、その他に各自が必要とすること、やるべきことも進めていった。
鷹一は、五月からの規定の一つである、『チームエンブレム』の考案を行った。四月のチーム戦では、各チームはそれぞれ学園の制服で戦っていたが、五月からは、チームのエンブレムが制服に刻まれることになっていた。なお、Aランクのチームは、エンブレムだけではなく、各チームごとに『戦闘衣装』を設定し、それを纏って戦うことになっていた。鷹一は、学園側に提出するエンブレムに関して、チームメイトに意見を募った。なぜなら、鷹一は、『あまり目立たないエンブレムや識別しにくいエンブレムだと試合で少し有利に立てるかもしれない』ぐらいしか思いつかなかったからだ。
なお、鷹一は金崎・雲川に「灰色とか目立たない色が良いかと思ったが良いのが思いつかない」と言って意見を募ったこともあり、金崎は「安直になっちゃうけど、灰色なら『雲』の絵はどうかな? 俺たち、雲川さんのチームだし」と意見を出し、一方で雲川は少し悩んでから「うにの絵がいい……」と言った。ちなみに、うにの色は灰色ではない。
悩んだ末、鷹一は、折衷案と言う名の、無茶苦茶な選択をした。結果、雲川チームのエンブレムは『うにをイメージした橙色の周囲に雲をイメージした灰色が配置されている』というものになった。
雲川は、珍しく熱心に訓練しつつも、空いた時間では天沢・明星とほのぼのと過ごした。小さな交流ゆえに、特記すべき出来事はなかったが、それでも雲川のモチベーション維持には役だった。
金崎は、以前と同じように神岡チームの樋口と友好を深めつつ、それ以外の人物とも友好を深めた。
それは、乱闘事件の恩人、大町チームの所属の城守誠一であった。
※
鷹一から、乱闘事件の顛末や、大町チームの負傷を知った金崎は、重傷を負った城守と大町へお見舞いにいっていたのだ。これは謝罪と感謝を伝えるためだった。
この時、金崎は、まず城守の病室を訪れた。先客として女子生徒――舞島チームの鹿子田がいることに、金崎は驚いた。城守は、鹿子田に席を外すよう頼むと、鹿子田は無言で病室を出た。
それから、金崎は城守と話し合った。金崎の感謝と謝罪に対して、城守は最初意味がよく分からなかったが、金崎の拙い説明から意味を察し、心の底から『気にしなくていい』ということを伝えた。
城守の偉大さに金崎は気圧されそうになりつつも、その後、話を続けた結果、二人は仲良くなった。
理由は単純に、互いに良好な人格を持っており、また意外な共通点もあったからだ。それは試合が苦手という共通点だった。
現実での戦闘は得意だが、試合は苦手という城守に、金崎は少し不思議に思いつつも、共感するところがあった。城守も、人柄が良く、また会話の隅々から、試合に向けて努力を続ける金崎の姿勢に感じ入るものがあった。
そうして、ほぼ初対面ながらも、かなりの友好を深めた金崎は、城守と連絡先を交換し、また見舞いに来ると宣言し病室を出た。来るときよりも遥かに朗らかな気持ちであった。なお、病室を出た瞬間、ずっと病室の前のベンチで座って待っていた鹿子田が、じっと金崎を睨んだ。金崎は訳が分からずおろおろした。
この後、金崎は、少し悩みつつも大町の病室へも向かった。悩んだ理由は大町の見た目が怖そうに思えたからだ。雲川ほどではないが、金崎も少し臆病な面があった。
大町の病室にも先客がいた。そして、その人物は、金崎からすると、かなり意外な人物――Aランク2位飛山チームの針谷であった。
(確か、あの佐々木を倒した人だ……)
第四試合の経験や、普段から鷲島が警戒していることもあり、金崎は『佐々木緑山』のことはしっかりと記憶しており、彼の被撃破記録も頭に入れていた。それ故、針谷のことも、第三試合で佐々木を討ち取った人物として記憶していた。
針谷は金崎の姿を確認すると、「じゃあ、頑張ってね。願い、叶うといいね」とだけ大町に告げ病室を出ようとした。針谷は、金崎とすれ違う時、一瞬だけ立ち止まり金崎を見た。何か告げようか迷い、しかしすぐに興味を無くしたように無言で金崎の横を通り過ぎた。
それから金崎は、緊張しつつも大町に感謝と謝罪を告げた。
大町は金崎を見て、内心では、憎々しいものを感じたものの、それを堪えて、淡々と『気にするな』『むしろよくやった』とだけ伝えた。
歓迎されていないことに気付いた金崎はお見舞いの品を置き、逃げるように病室を去った。
谷崎と戦えた喜びを思えば、本来なら大町は金崎を歓迎できた。何か食べ物を驕ることも考えたかもしれない。けれどそうはならなかった。なぜなら、谷崎と戦えた喜び以上に、鷹一と二度と戦えない絶望の方が大きかったからだ。そして、金崎や雲川といった軟弱な生徒との付き合いが本来の鷲島を変えてしまったのではないかと大町は考えていたのだ。それ故の憎さであった。
逃げる金崎の背中を見て、大町は一瞬だけ『よこしまな考え』を思い浮かぶが、すぐに首を横に振った。それはあまりに道理に外れていることだと分かっていたからだ。同時に、金崎に少し悪い事をしてしまったかと大町は考えたのであった。
そうして、一週間は瞬く間に過ぎていった。