学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
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Bランク15位、下水流チームのリーダー。高魔力で高い戦闘力を持つ。器用な人物で、軽重どちらの装備も使いこなす。また、戦術能力も高く、特に隙を突く戦い方が上手い。
自己中心的で、軽薄な上、嘘つきで、倫理観が低い。そういった人柄ゆえに、よく問題を起こし、またそのような人物ゆえにBランクでありながらも未だに同盟相手を作れていない。
入学当初から、人間関係上のトラブルが絶えなかったが、能力だけは優秀だったため、僅か二試合で、個人としては9点、チームとしては20点を取り、Bランクの地位を獲得した。
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下水流チームのメイン戦闘担当。高魔力かつ、Aランクでも戦える戦闘力を持つ。
求道者気質で、自分を高めたいという意識が強い。入学後、ある理由から、下水流チームに加入し、下水流の為に働く。
よく下水流の名前を呟いているため、チームメイトの木山からは『下水流BOT』と思われている。
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下水流チームの通信・レーダー担当。唯一の常識人のため、ツッコミも担当。
平均程度の魔力に、Cランク以下の戦闘力しかないが、リーダーの下水流からは重宝されている。
真面目で常識人なので、そうでないチームメイトに日々疲弊させられている。よく今のチームに入った事を後悔しているが、同時に、今のチームでなければ、Bランクにはなれなかっただろうと思い、内心で苦慮している。
学園で仲の良い平和そうなチームを見るたびに、「うらやましいなぁ……」と思っている。
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下水流チームの高速戦闘担当。B・Cランクで戦える程度の戦闘力を持つ。
利己的で、協調性に欠ける。いつも小型端末を弄っているが、チーム戦や学業のためではなく、娯楽と暇つぶしのため。
なんと、今回、作戦会議に参加すらしていない。うそでしょ。
五月の第一試合のマッチングが決まったとき、歓喜の声を上げたリーダーがいた。
「うひょ~~~~!!! きたきたきたきた!!! 鷲島! 鷲島来た! 大当たり来ましたー!」
Bランク15位のリーダー、
「ちょ、いきなり奇声を上げないでよ……ビックリするじゃない……」
リーダーの奇行を前に、チーム唯一の常識人である木山が注意を促した。なおチームメイトである残りの二人、百田蓮と街道海姫はリーダーの奇行に驚くようなことはなかった。理由は、百田はただただじっと手を合わせ、目を瞑って下水流の方に祈り続けており、街道に至っては作戦会議に参加すらしていなかったからだ。
「すみませんね、木山。ちょっと嬉しすぎて我を忘れました。このチームの最終目標がこうもあっさり達成できるかと思うと、わくわくしちゃいまして」
うずうずとした表情の下水流を見て、木山は雲行きの怪しさを感じた。このリーダーが、こんな表情をする時は――否、このリーダーは常に、どこかおかしいからだ。
「え? ちょ、ちょっと待って? 最終目標って何? あたし、知らないんだけど?」
「鷲島粉砕です!!!」
問いかけるチームメイトに対して、下水流は満面の笑みで叫んだ。木山は思わず、耳を抑えた。一方、近くにいた百田は、突然のリーダーの叫びにも動じることなく、ただただ目をつむり、ひたすら下水流の方を祈った。
「ちょ、だから、そんなに大声出さないでって……いえ、それより待って、今、鷲島粉砕って言ったの……?」
「鷲島粉砕です!!!」
再度、下水流が叫んだ。
「だから、分かったから、大声出さないでって……それより、何なのその目標。あたし、全然知らないし、そもそも目標が意味不明なんだけど……Aランクになるとかじゃないの?」
意味の分からぬ目標とリーダーに対して、木山は常識的な質問をした。それに対して、下水流は露骨に『がっかりした』とばかりの表情を作った。
「はぁ~~~! これだから、木山は木山なんだよな……」
下水流は大きく溜息を吐いた。
「ちょっと、あたしの名前を悪口みたいに言わないでよ。それより説明しなさいよ。なんで、鷲島粉砕なわけ? あんた、鷲島と何か因縁でもあるわけ?」
「いえ? 話をしたこともないです。ちなみにこの学園で初対面です。あ、嘘です、まともに会ったことないです。私、授業とか出てないので。まあ、でも、食堂とかで会ってるかもしれませんね」
常識人たる木山の質問に、下水流は『なぜ、そんな質問をするか分からない』とばかりに心底不思議そうな顔をした。その表情が木山を苛立たせた。
「『しれませんね』じゃないわよ……! なんで碌に話したことも相手を粉砕しようとしてるのよ……!」
苛立ちからか、木山の声も少しずつ大きくなっていくが、下水流はそれに気にすることも無く、自分の心の内を再度示した。
「理由は粉砕したいからです!!」
下水流の満面の笑みとともに説明されない言葉を聞いた木山は呆れるように溜息を吐いた。なお、近くにいた百田は、祈りながら、『下水流様……』と小さく呟いた。
「あんたに少しでも『まともな』説明を求めたあたしが馬鹿だったわ。というか、そもそもとして、その目標は無理でしょ。鷲島って最強の選手なんでしょ。あんたの言う粉砕って『試合で勝つ』みたいな意味なんでしょうけど、勝てないでしょ。あの、アリ……零のチームと引き分けたのよ。うちじゃ相手にならないでしょ」
「試合で勝つって意味じゃないですよ?」
「へ? じゃあ何なのよ?」
下水流の思わぬ言葉に、木山は驚き、疑問符を浮かべた。
「粉砕するって意味ですよ?」
「いや、だから何なのよ?」
再度説明にならないリーダーの言葉に対しては、木山は必死に説明を促そうとした。
「ははっ! 今日はやけにボケますね! ボケ老人の物真似ですか? 似合ってますよ!」
「違うわよ! 『粉砕』とかあんたが言い出すからよ。意味不明なのよ! ちゃんと説明しなさい!」
急な下水流の挑発に、木山は声に怒気を含みながら、説明を求めた。
「『粉砕』は粉砕です! 鷲島の心と体をズタボロにします! 私の前に這いつくばらせたいです!」
下水流の答えは、あまりにも意味不明なものだった。
「いやいやいや、あんた何言ってんの? 鷲島とは話したことも無いんでしょ!? なんで、そんなに悪意丸出しなのよ……」
「理由なんてありませんよ?」
「は?」
先ほどの焼き直しのように、木山は再度疑問符を浮かべた。
「理由なんてありませんよ? 私、天才タイプなんで。ノリと感覚で生きています!」
「いや、説明になってないわよ、それ」
「それでは、今回の作戦を説明します!」
下水流は木山の指摘を当然のように無視し話題を進めた。
「話を聞きなさいよ!」
「鷲島が所属しているチームを集中攻撃します! 鷲島もそれ以外も見かけ次第、
再度、木山の指摘を無視した下水流は、あまりにも露骨すぎる作戦を喜色の笑みとともに宣言した。それを耳にした百田は感動に打ち震えながら、再度『下水流様……』と呟いた。叫ぶ狂人、祈る狂人、二人の狂人と同じ空気を吸いながら木山は必死に抵抗しようとした。
「いや、話を聞きなさいよ! なんでそんなことするのよ!?」
「任務前に倒せば、任務点獲得機会を強制的に喪失させられるじゃないですか。そんなことも分からないんですか? この低能がっ!」
木山の質問に珍しくも答えた下水流であったが、なぜか、その言葉はやけに辛辣であった。
「いきなり真顔で罵倒しないでよ……というか、雲川チームの邪魔をして、あたし達に何のメリットがあるのよ!?」
「メリットなんてありません、ただ鷲島の足を引っ張りたいだけです」
先ほどの罵倒口調が嘘のように丁寧に、下水流は言葉を紡いだ。なお、その言葉は、あまりにも下衆な精神性をしていた。
「そんなことしてたら、得点を取れないし、Bランク維持も怪しいわよ!」
「大丈夫です。今回は実質『捨て回』です。目標点も少なめでいきます」
柚木・滝本の二人に続いて『捨て』を宣言するリーダーであったが、その目的は前者二人とあまりにかけ離れていた。
「捨て回って、あんたね……!」
「ちなみに目標は10点です!」
下水流のふざけた宣言を聞き、近くの百田は、まるで神の声を聞いた信者のように震えて、『下水流様……』と呟き、祈りを強めた。その呟きを耳にした木山は、内心で、『本当に、この祈りBOT、戦闘以外で頼りにならないわねっ!』と毒づいてから、下水流に向かって切り込んだ。
「それ絶対捨て回じゃないでしょ! そんなに点取ってたら勝ち試合よ! ていうか、どうやってそんな点を取るつもりよ!」
どこかふざけているような下水流に苛立ちながらも、木山は必死に真面目な試合対策の話をしようと試みた。
「安心してください。そのための作戦があります。まず実は五月から新装備がこっそり追加されているのは知っていますか?」
「え、いや知らないわよ……」
「ははっ! 情報収集能力がカスですねっ!」
再度、下水流の辛辣な言葉が木山に投げつけられた。
「ホントこいつムカつくわね……それで新装備って?」
「刺突爆雷です!」
再度、喜びとともに叫ばれた下水流の言葉に、木山は本日何度目か分からない疑問符を浮かべた。
「なにそれ? 武器? 爆発するの?」
「触ると爆発する近接武器です。魔力を込めるほど威力と範囲が上がります。特に威力が高いです。上手く当てれば、高魔力のシールドでも破壊できます」
珍しくまともそうに聞こえる説明に、木山は少しだけ気分が上がった。しかし――
「強そうじゃない! あんたにしてはまともな……ん……? ちょっと待って、近接武器って言ったわよね。それに『刺突』爆雷……? まさか、それって爆弾を槍の先端にくっつけてるとか、そんなふざけた武器じゃないわよね……?」
――すぐに木山は、説明にある違和感に気付いてしまった。
「ほぅ……やりますね、木山」
下水流は感心したように木山を見た。
「なにが『ほぅ』よ! やっぱりそんなことだろうと思った! そもそもなんで、そんな意味不明な武器があるのよ!」
「私が運営に作らせました」
「あんた息を吐くように嘘吐くのやめなさいよ!」
にこにこと笑みを浮かべる下水流に木山が一喝した。
「木山の全裸写真3枚送ったら作ってくれました。運営が貧乳派で良かったですね!」
「え!? 嘘でしょ! てか、貧乳じゃないわよ!」
「あ、今の嘘です」
慌てる木山に対して、下水流が平然と答えた。
「そうよね。良かったわ流石にあんたも最低限の常識はあるわよね……」
「ちなみに木山が貧乳なのは嘘じゃないです」
再度、下水流が平然と言葉を紡ぎ、それが木山を苛立たせた。
「いちいち余計なのよ! あんた!」
「それで、作戦ですが、次の試合では、全員で刺突爆雷を持って鷲島に突撃します!」
下水流の作戦を聞いた百田は大きく体を震わせた。そして、『下水流様……! 下水流様……!』と懸命に祈った。
「なんでそんな馬鹿なことをするのよ!」
「はぁ~、天才の発想は凡人には理解できないかぁ~」
木山のまっとうな指摘に対して、下水流は馬鹿にするような表情を浮かべた。
「いちいちこっちを馬鹿にするのやめなさいよ! 感じ悪いわよ!」
怒るチームメイトを見ても下水流は態度を変えず、再度、どこか嘲笑するように溜息を吐いた。
「はぁ。いいですか? まず鷲島の分散シールドの仕組みを説明します。
分散シールドは本来、1つしか展開できないシールドを分割して複数展開する装備です。ただし、このシールドは全部合わせて、同出力のシールド発生装置と同程度のシールド展開出力しかありません。そして、消費魔力は同出力のものより大きいです。つまり魔力効率は悪い装備です。
長所としては、1つの装備で2つ以上のシールドを展開できるところです。十字砲火を防ぎながら反撃できるところが魅力ですね。
欠点は大きく2つあります。1つは総シールド体積は変わらないので、分割するほど、シールド面と厚さが小さくなります。つまり高魔力相手には簡単に破壊されてしまいます。
2つ目は単純に操作難易度が高いです。本来1つのものを無理やり2つ以上に分けてるんだから当然ですね。感覚的な話ですが、分散の数を増やすほど、指数関数的に難易度が上がります。ぶっちゃけ脳が死にます。私、この前やってみたんですけど、六分割したところで死にかけました。同時に十個以上出してる鷲島は頭おかしいです。てか、たぶん人間じゃないです。
あれ? 鷲島人間じゃないってことは、人権発生しませんよね? 誰かあいつの人権剥奪しませんか? 鷲島の人権剥奪して、この世の地獄見せたいです!」
「やめなさい! 話逸れてるわよ!」
禄でもない事を語りだす下水流を、必死に木山が止めた。
「はい分かりました。鷲島の人権剥奪シチュエーションは今度の機会に取っておきます! それで、ええっと、どこまで話しましたっけ?
ああ、そうだ、分散シールドの長所と短所でしたね。それで、鷲島ですが、あの化物はシールドの精度が究極レベルで高いので、シールド面積を極小にまで減らして厚さを極太にすることで、高魔力相手にも防御力を維持しています。ピンポイントで弾丸に極小極厚シールド当てればいいだろうって発想ですね。小学生みたいな発想で笑えますね! …………、笑えねぇよ!! ボケがぁ!!!」
急に大声で叫ぶ下水流に、木山は驚き体を震わせた。なお、百田は一切取り乱すことなく、祈り続けていた。
「ちょ、ちょっと……急に大声出さないでよ……」
びくりと体を震わせた木山を見て、まるで悪戯成功とばかりに下水流が微笑んだ。
「木山のツッコミ、マネしました!」
「あたし、そんなツッコミしてないからね!?」
木山の本当のツッコミを見た下水流は、まるで興味を失ったかのように、次の話をし始めた。
「あ、そうだ、とりあえず、今の話ですが、解析用のデータを動画にしておきましたので、見てください」
そう言うや否や下水流は近くにあったモニターに、鷲島が分散シールドを使用した第四試合の映像ログと、そのログに対する解析情報、注釈が表示されていった。
データの一つ一つは、非常に丁寧で分かりやすく作られており、作成者の能力の高さを示していた。
動画を見ながら、木山は内心で嘆息した。
(こいつ、無茶苦茶だし、頭おかしいのに、能力だけは本当に優秀なのよね。正直、もう少し能力低くていいから、常識と良識を身に着けてほしかったわ……)
第四試合の動画の中で鷲島の分散シールドの使用が終わると、下水流が再び口を開いた。
「つまり、鷲島のこの技は手品です!」
「いや、手品じゃないでしょ!?」
神業のような鷹一の技術を形容するのにあまりにも不適切な言葉と感じた、木山が抗議の声を上げたが、これは当然無視された。
「手品には、こっちも手品で行きます。それが刺突爆雷です。刺突爆雷は性質上、シールドに触れた時点で爆発します。この時、普通のシールドが相手だと、ある程度のシールド面と厚さがあれば、爆発の威力が軽減されてしまいます。ですが、鷲島の分散シールドは対貫通を意識し過ぎていているせいで、シールド面は小さく、至近距離の爆発には極端に弱く、対応できません。この大爆発で鷲島を殺します!」
「え……いや? それ、いろいろ聞きたいんだけど、そんなに上手くいくの? 鷲島って反応速度凄いんでしょ? それに、至近距離で大爆発って、こっちも死なない?」
「鷲島に致命傷を与えられるかは運ですが、大ダメージは与えれるはずですよ? まあ、確かに、鷲島の反応速度的に、見切ってシールド面を咄嗟に広げて防ぎそうではあります。
ただ、刺突爆雷は見た目的には槍に近いです。槍を防ぐには対貫通でシールドを小さく厚くする必要があります。しかも丁度いいことに、今、一年生に槍使いはほとんどいません。鷲島も私たちがこんなネタ装備で突っ込んでくるとは読めないはずです。鷲島がこちらの装備を槍と誤認する可能性は十分ありますよ! ワンチャン狙いです!」
「あんた今、自分でネタ装備って言ったわね……!」
木山の指摘を受けると、下水流はすぐに人を馬鹿にしたような表情を浮かべた。
「は? 言うわけないじゃんっ! おもろっ!」
「言ったでしょう!!」
叫ぶ木山を見て、下水流は満足し、真面目そうな表情を作った。
「冗談です、木山。ただ、私は虚を突く攻撃が重要だと伝えたいだけです」
「……まあ、確かに格上相手に勝つなら虚を突くのも……いやちょっとまって、大爆発で使用者が死ぬかどうかについて答えなさいよ!」
「こちらの生還は考えてません。鷲島を殺せるなら何でもいいです」
心底真面目そうに下水流が答えた。
「いや、それ、やっぱりあたし達にメリットないじゃない……! というか、最初にあんた10点取るって言ってたわよね! 結局、対鷲島の作戦で、10点どうやって取るのよ!? 肝心の作戦だって、相打ち前提だし、それだって上手くいくかわからないし……!」
「鷲島倒せば、実質100点なので、目標の10点は達成ですよ?」
当然の真理を告げるかのような表情で下水流が答えた。近くにいた百田は、神から与えられた答えを聞いた信者のように深く頷き、『下水流様……! 下水流様……!』と祈りを深めた。
「そんなわけないでしょうが!!」
「ははっ、何か叫んでる、おもろっ!」
「あんたいい加減にしなさいよ!!」
それからしばらくの間、木山は憤慨し、下水流はそれに対して、ふざけた対応をするばかりであった。
そして、数分後、先に木山の怒る気力が尽きると、二人の争いは沈静化していった。
さらに数分後、木山が呆れたように、そしてどこか投げやりに下水流に問いかけた。
「あんたさ、なんで、そんなに鷲島にこだわるわけ? 今回の試合も、もう正直なんかどうでもいいけど、せめて理由くらい聞かせなさいよね」
「ははっ、ちょっとキャットファイトしただけで屈服ですか? クソチョロいですね! そのうちEランクぐらいのオスの子供孕んでそうです!」
リーダーの挑発に木山は言葉を返さなかった。ただ、呆れたように深く溜息を吐いた。
数十秒ほど沈黙を挟んで、何を思ったのか、下水流が作ったような笑みを浮かべて口を開いた。
「1位ってムカつくじゃないですか。なんか見下されてる感じがします!」
リーダーの言葉の意味と、それが先ほどの自分の問いかけに対する答えだと木山が気づくのに数秒を要した。
「それアンタの被害妄想でしょ……」
再度、木山が呆れた声を出した。
「いえ絶対見下されてます。だって私が1位だったら、他全員見下しますから」
「それアンタが性格悪いだけだからね? 他のやつはもっとまともよ」
木山は一瞬脳内で、赤髪の美少女を思い出した――この学園で出会って、たまたま少し話をして、なんとなく気が合った生徒。Aランクのリーダーであり、背負うものが自分よりも遥かに大きい相手。本当は、彼女のチームに入れれば、と思ったこともある。だが、すでに彼女のチームは定員に達しているし、実力者ばかりの彼女のチームに自分のような小物は入れないだろうと木山は悟っていた。
そして同時に、自分のような本来はCランク以下の生徒が今Bランクにいるのは、この頭のネジが全部腐りきった『下水流雲母』というリーダーのおかげなこともまた気づいた。
木山はじっと下水流を見た。下水流は少しだけ照れ臭そうに、口を開いた。
「すみません木山、さっき私、嘘つきました。私、1位じゃなくても、全員見下してます」
そんな舐め腐った言葉を紡いで見せた下水流雲母は、朗らかに微笑んだ。木山は、やっぱりコイツ駄目だわ、と思った。
黙り込むチームメイトなど気にせずに下水流はさらに言葉を口にした。
「とにかく1位って時点でアウトです。その名誉ある地位から引きずりおろして、この世のありとあらゆる屈辱を味わわせます。手始めにまず私の靴を舐めさせます!」
(せめてこいつを止めるくらいはした方がいいのかな? いや、なんであたしが……?)
あまりにも短期間で怒り続け体力を消費した木山は、億劫な気持ちを抑えつつ、必死に言葉を作った。
「絶対不可能だし、そもそも他のチームに迷惑かけるのやめなさいよ……」
「チームじゃありません。鷲島という選手がターゲットです」
「どっちにしろ迷惑かけるからやめなさい……」
「今、嘘言いました。本当は憎んでるチームがあります。そのチームも鷲島と同じように地獄に堕とす予定です」
下水流は、キリリと真剣そうな表情を浮かべた。
「……聞きたくないけど、一応聞いておくわ。どのチーム?」
強い徒労感を覚えつつも、懸命に木山は口を動かした。
「匂坂チームです! だって1位ってムカつくじゃないですか! なんか見下されてる感じがします!」
「あんた本当にそればっかりね……」
再度、木山が大きく溜息をついた。
この後、木山は下水流から『鷹一と匂坂チームに対する溢れんばかりの憎しみ』を聞くという苦行を十数分間味わったのであった。
なお、最後まで、百田はずっと下水流の方を向いて祈り続け、そして、下水流チームの最後の一人、街道は姿を現すことはなかった。