学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
伊舎堂たちが実況席へ目を向けると同時に、席についた本日の実況担当の二年生が声を上げた。
『あ~、どうも~、一年生のひよっこの皆さん、こんにちは~。今日の実況のお姉さんは、この私、二年生Bランク生天目チームのリーダーの生天目でーす。解説には同じBランクの坂口リーダーに来てもらいました。よろぴく~』
生天目と名乗った女子生徒は、どこかふざけたような口調で自己紹介した。
『どうも、坂口です。くじに負けて、このやばい女子と実況することなりました。できる限り、平穏な実況解説を心がけたいのですが、相方がやばいので、大人しい私では抑えきれない可能性が大です。心臓に持病がある方や、常識から逸脱すると脳みそが爆発する方は事前に観戦会場から避難することをおすすめします』
一方で、もう片方、坂口は、生天目に比べれば最低限以上に真面目さと品格を持った男子生徒であった。
『またまた~』
『いや、あの、冗談ではないんで』
真剣な声音で坂口が答えた。
『はははー、こやつめー。今度戦うとき、尻穴に刺突爆雷突き――ああ、そういえば、解禁されたね。刺突爆雷。私たちの時は結構遅かった気がするけど、今年の一年生は五月で解禁みたいだ。こんな風に、たまにネタ武器解禁されてるから、みんな月初は要注意だよ~』
『ネタ武器なんで、そんなに注意しなくていいですよ』
生天目の言葉に対して、訂正するように坂口が言葉を重ねた。
『刺突爆雷は普通に良武器だよ~。というか私のメインウェポンだよ~』
『いや、それ使ってるの二年ではアンタだけなんで』
『はいはい、まあ小話はこの辺でいいかな? じゃあ、本題。今日のチーム戦だね。五月の第一試合。みんな新しい待遇の後だから気合が入る試合でしょ~。AランクやBランクは今の階級を守りたいし、逆にDランク以下、特にEランクとかの人は頑張らないとって思ったよね~。頑張ってー。大概実らないけど努力は大事だよ~』
どこか馬鹿にするような生天目の口調に対して、隣にいた坂口は小さく苛立った。
『あの、努力は実らないとか邪悪な話はやめてもらっていいですか?』
『いやー、Cランク以上なら可能性あるけど、四月試練でEランクとか、Fランクの人はもう厳しいでしょ。この会場にいるひよっこ軍団の中でもEランクとFランクは目立つよ~。ほらそこの君、Eランクでしょ、目が泳いでるよ~』
言葉とともに、生天目は観客席にいた一人の男子生徒の方を見て、にやにやと笑みを浮かべた。また、この生天目に予想は当たっていた。彼はEランクの一年生だったからだ。
『おい、さっそく一年生にイチャモンつけるのやめてください。あと一年生のことひよっこって言うのどうかと思うんで、そこも気を付けた上で本題に入ってください』
素早く、真面目な坂口が注意を飛ばした。
『坂口君、厳しいな~。まあいいか。それでは、今日のマッチングは『雲川・下水流・滝本・柚木』だね。ちょこっと調べた感じ結構独特なチームが多い感じ。何と言ってもまず、滝本チーム以外の三チームは第一試合に参加してない。下水流チームに至っては、第二試合も未参加。これでBランクは凄いね。下水流チームなんか平均得点が匂坂・飛山チーム並。まあ、二回しか試合してないから、偏りはありそうだけどね~。それじゃあルールなんかの解説よろ~』
『そこは実況担当の気がしますが……とりあえず、ルールはほとんど四月と同じです。確か、まだ投入方式も一緒ですね。任務も同じ。四月のチーム戦を戦ってきた皆さんとしては慣れてきたものだと思います。ただしマップは違います。今回のマップは第五管区南東部です。結構特徴的なマップです。高密度区画が多いのですが、一方で変なところに射線が通っているので要注意マップです。戦闘に集中していたら、変なところから狙撃が飛んできてダウンする、という展開をよく見ます』
『私、結構このマップ好き。ごちゃごちゃしてて点が取りやすい気がする』
少し弾んだ声音で生天目が答えた。そして、にやりと意味深な笑みで隣に座る坂口を見た。坂口は以前このマップで生天目の奇襲攻撃を受けてダウンしたことがあったのだ。坂口は、そのことを思い出しつつも、顔には出さず実況としての職務を全うすることにした。
『この辺は戦闘スタイル次第ですね。乱戦が得意な人は、このマップ好きなイメージがあります。さて、それでは、参加チームや注目選手の解説ですね。どこからいきましょうか』
『じゃあ暫定順位低い順で、柚木、滝本、下水流、雲川の順でいこー。まずは柚木チーム。三試合でBランク入りしたチームだね。ログは、あ~ごめん、あんまりちゃんと見てない』
生天目の意識の欠ける言葉に、坂口は眉をひそめた。
『ちゃんと実況としての自覚を持ってください』
『いやー、言っちゃ悪いけど、あんまりピンとこなかったんだよね~。どっちかというと第四試合の星川チームの方が気になったかな』
『いやいや、今日の試合は星川チームじゃなくて柚木チームなんで。いえ、まあ確かに星川チームは非常に優秀なチームではありますが……』
『顔がいいよね。皆すごく可愛い。ご奉仕してほしいって思った』
低俗な言葉が生天目の口から発せられた。
『いや、あの戦闘技術の方の話なんですけど……あー、駄目だ。ちょっと抑えきれそうにないので、私の方で解説します』
『そうだよ、解説役なんだから、しっかりしてよ』
急に咎めるように生天目が坂口を見た。坂口は睨み返しつつ言葉を紡いだ。
『そっちも実況としてちゃんとやってください。
それでは柚木チームですが、このチームは連携と戦術を意識したチームです。チーム内での役割分担も良くできており、戦闘力が高い堂前選手と七夜選手を軸に、柚木リーダー・犬伏選手がそれをアシスト、また狙撃手の安倍選手がしっかり狙撃手としての仕事――偵察、援護、撃破をこなす。安定感があり、試合運びも上手いです。正直、一年生のこの時期にそういったことをしっかりとまとめられているのは凄いと思います。
この辺りは、柚木リーダーをはじめ、選手一人一人が優秀なのだと思います。さすが三試合でBランクに入っただけある、という印象ですね』
『ぶっちゃけ、一番ぱっとしないチームかな。次のランク更新でAに入ることはないけどCに落ちることは十分あるってチームだね~』
『あの、そういう余計な事は言わなくて良いんで……ええっと次は滝本チームですが、説明する気ありますか? あ、ディスり中心なら、やらなくていいです。こっちでやるんで』
坂口は期待せずに生天目を見た。
『滝本チームはディスり中心だけど、マスタング君は上げるつもり。これどっち判定? 説明していい感じ?』
『あ、こっちで説明しますね。最後にマスタング選手の解説だけお願いします。
では滝本チームですが、このチームはほとんどをAランク帯で戦ってきた実戦経験豊富のチームです。どの学年もAランクというのは魔境になりやすいですが、噂によると、今年の一年生は尋常じゃない程強いらしく、特にAランクは二年生上位クラスに匹敵すると聞いています。そのAランク戦場を戦ってきたのは確かな経験でしょう。
ただ試合での不幸が続き、暫定順位を落とし、現在は16位。Bランクの維持と考えると十分な位置ですが、Aランク復権を考えるとなかなか難しいところです。チームとしては、個人個人の戦闘力に長け、特にマスタング選手の圧倒的な魔力と戦闘力が光るチームです。では生天目リーダー、マスタング選手についてコメントお願いします』
『いやー、マスタング君は強いね。他がわりと全然役になってない中、マスタング君の得点でほとんど決まっている感じ。まあ、萩田ちゃんは結構良さそうな感じがしたかな、顔も良いし。逆にリーダーの滝本ちゃんは駄目――』
『――はいはいはい! マスタング選手の解説お願いします!』
坂口は、生天目の言葉の途中で大声で遮った。
『はいはい。マスタング君はかなり良い選手だね。接近、近距離、中距離、隙が無い感じ。まあどっちかというと射撃戦の距離は近い感じだから、あんまり遠距離では戦わないタイプなのかな? 拡張弾倉持ちだけど、あんまり使ってない感じ。この辺は似たようなタイプである根崎ちゃんとの違いかな。体感だけど、根崎ちゃんの方がばんばん拡張弾倉使ってるし、センスがあるイメージ。実際の戦績はマスタング君の方がいいけど、将来性は根崎ちゃんの方がありそうかな~』
『拡張弾倉を無暗に使用しない、というのは逆に判断に優れる選手というイメージがありますが』
『シールドとの兼ね合いもあるし、それはそう。基本的には拡張弾倉は慎重に使うのが正解。でも根崎ちゃんはその上を行っている感じ。使うべきタイミングで必ず使うイメージがある。マスタング君は結構警戒してて使うべきタイミングで使ってない印象。
まあ零チームは根崎ちゃんが落ちても他の子が頑張ればいいけど、滝本チームはマスタング君が落ちると後がないから、単純に比較することでもないかもだけどね。英雄であっても、主と仲間は選べないっていう典型例だね~』
『はいはいはい、次いきますよ。次は下水流チームです。チーム解説、注目選手、ディスり抜きで語れるのありますか?』
滝本チームへの悪い評価を生天目が始めたため、坂口が大声で話題の切替を行った。
『おー、ここはディスりなし。正直、今回一番気になってるチームだから解説させて。
まず、リーダーの下水流ちゃんがいいね。美形で強い、おまけに器用で武器選択が豊富。戦術的なアプローチも上手いね。虚を突くのが上手い奇策タイプのようで、意外と正面戦闘もばっちりこなす。二試合でBランクに入っただけある。運が良い面もあったとは思うけど、Bランク維持は期待できそうな感じ。
Aランクは……下水流ちゃんと百田君がどれだけ他の二人を引っ張れるか、かな。まあ、下水流ちゃんの目標にもよるけど、あんまり心配いらないチーム。今回の試合は、マスタング君と鷲島君という超強いユニットがいるので、どんな奇策で立ち向かうのかが個人的には注目ポイントだね』
『わりとまともなコメントありがとうございます。それでは最後、雲川チームですが、どうでしょう、ディスり以外いけそうですか?』
『ここはエース以外は基本ディスる予定です』
『はい、じゃあエース以外はこちらで解説します。とはいっても、どうしてもエースに言及してしまいますが……雲川チームも柚木チームと同じく三試合でBランクになったチームです。特にAランク帯ともマッチング経験があるチームです。現Aランクの星川チームには勝利し、零チームとは引き分け。またBランクトップの麻倉チームには直接対決では点数をつけました。
エースの鷲島選手が非常に強い選手で、他のチームメイトが彼を支えるという形で得点を伸ばしています。特に名前を挙げると、金崎選手が要所要所で上手く立ち回っています。このエース特化戦術は現状のAランク帯にも有効な戦術となっています。この辺りは、チームの連携能力もありますが、それ以上に鷲島選手の個人的技量が他を超越しているという印象です。生天目リーダー、鷲島選手に関しまして補足があればお願いします』
坂口の言葉は、暗に他の二人に触れるなよ、というものであった。
『鷲島君は本当に凄いね。人外オーラが凄い。ログ見た感じ二年生のAランク帯にいてもおかしくない感じ。一か月でコレは本当に凄い。てか二年Aランクは猛省して。特に私の彼ピは猛省して~』
生天目の言葉に、坂口は大きな疑問符を頭に浮かべた。
『? すみません、アンタの彼氏になる命知らずに心当たりがないんですけど……?』
坂口は心底理解できず、それゆえ疑問を口にした。
『あー、まだ彼ピ候補だからね~』
生天目の言葉を聞いて、坂口は恐怖を感じ、露骨に距離を取った。
『え、彼ピ候補とか、怖っ……ちなみに誰ですか?』
『四宮君でーす』
『四宮君逃げて超逃げて』
坂口は、驚きと恐怖、そして大きな哀れみを感じた。
『傷つくなぁ~。四宮ピも私と結ばれた方が幸せだよ~』
『すんません、ちょっと普通に怖いんで、話を試合前解説に戻しますね。ええっと、どうしよう。というか、なんかもう実況と解説逆じゃないですか? とりあえず、試合展開の予想とかありますか?』
『ん~。どうかな~。鷲島君とマスタング君の対決が最終的にどこかで行われそうなので、それ次第かな。まあ対決が最後になる可能性もあるけど、中盤までには起こるだろうし、そうなったら、その時点での生き残りは、対決で勝った方のチームが撃破点にしちゃう流れになりそう。だから対決で勝った方のチームが勝つんじゃないかな。
なので、個人的には、雲川チームか滝本チームのどっちかが優勢かな。相性的にはマスタング君有利っぽいけど、鷲島君は隠し手が多い選手だから何とも……マスタング君が初見殺しに弱そうなイメージがあるのもあってメタ的には鷲島君の方が有利かも? チームとしては何とも言えないなー。正直どっちもエース頼りで、他がイマイチすぎる。まあ、でも、雲川チームの方が、もう全部エース頼りで他がエースを引き立てる役に徹するってしてる分、まだマシかな。チームとしては柚木・下水流チームの方が上な感じ。これチーム戦だから、そういう意味では柚木・下水流の方がちゃんとしていると思う。
ただ、鷲島君もマスタング君も超人系――1人で戦局変えちゃう系の人だと思うから、いるだけでチーム戦も強いっていうバグが発生してる。総合的には、勝ちそうな順で、雲川、滝本、下水流、柚木かな。チーム戦ちゃんとやってる順なら、下水流、柚木、雲川、滝本で』
生天目は自身の経験から、つらつらと考察を口にした。
『少し興味深い視点です。確かに、超人級の生徒が所属するチームは連携や戦術を破壊することはしばしば見られます。ただBランクともなると……ああ、いえ、違いますね。この一年生の初めの時期と考えると、連携や戦術はまだ成長過程にあるでしょうから、超人級の影響力もより強いかと思われます。ただ、柚木チームはかなり連携・戦術を上手く整えている印象がありますが、それでも力不足という認識でしょうか?』
坂口は、生天目の言葉に対して、内心で納得しつつも、さらに説明を促した。
『んー、まあ、一年生のこの時期って考えると、確かに柚木チームは頑張ってるかも。でもやっぱり、キツイんじゃないかなー? マスタング君は普通に強いし、実績的にも、柚木チームの上位互換っぽい舞島チーム相手に一対五でほぼ相打ちみたいな結果出してるし、柚木チームだと厳しい感じ。下水流ちゃんならワンチャンあるかもって期待があるかな』
『下水流リーダーをだいぶ高く評価していますね? 確かに個人として見るとかなり優秀な技術と魔力の持ち主ではありますが、連携は柚木チームの方が上手い印象があります』
『そこは否定しない。連携は大事だと思うよ。でも連携は時間がかかるし、ランダム投入式だと効果が限定的なんだよね。マップや投入位置によっては意味がないこともある。
下水流ちゃんは本人のタイミングの取り方が上手いっていうのもあるけど、チームとしてもそういうのが上手い感じがする。たぶん下水流ちゃんの戦術指揮が上手いんじゃないかな? 下水流ちゃんの動きを少し鈍感にしたら下水流チームの動きになるから、この予想はあってると思う。こういうタイミングの良さ……戦術と指揮っていうのは、どんな試合、どんな投入、どんなマップであれ、一定の力は発揮しそうだし、嵌ればかなり強いからね。まあ、鷲島君・マスタング君相手に有効打を出せるかは、まだ分からないけど、柚木チームには負けないんじゃないかな。
なので、まとめると、今回の試合は鷲島君とマスタング君の頂上決戦で勝った方のチームか、下水流ちゃんの対抗策の嵌り具合で決まる感じ。本命鷲島、対抗マスタング、穴下水流チーム、大穴柚木チームかな』
事前予想を一通り話した生天目に対して、坂口は小さく頷いてから、口を開いた。
『なるほど、解説ありがとうございます。なんかもう実況と解説の立場逆転してますけど、こっちの方がまだ安定しそうなので、しばらくこれでいきますが、生天目リーダーいいですか?』
『あ、ごめん、ぶっちゃけると、それを期待して坂口君を呼んだところがある』
『あーなるほど……? ん? 呼んだ……? いや、まあいいか。さて、そろそろ投入のお時間ですが、ちょっと時間が余りました何か言うことありますか?』
生天目の言葉に対して、坂口は疑問を覚えたものの、深くは追求しなかった。
『あんまり無いけど……なんかその言葉って『最後に言い残す言葉はあるか』って詰める悪役みたいだね』
どこかふざけた生天目に対して、坂口は小さく溜息をついた。
★アンケート再び
ちょっとしたアンケートです。
シナリオにちょこっと関わるかもしれませんが、気軽な気持ちで答えていただけると嬉しいです。
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