学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
「いやー、やっぱり、先輩方も注目している試合みたいですね。どこが勝つんでしょうか。やはり1位の鷲島君がいる雲川さんのチームでしょうか。それとも弾幕有利のマスタング君がいる滝本さんのチームでしょうか。いやー、読めませんね~」
実況解説を聞きながら、伊舎堂が言葉を紡いだ。そして、それとなく両隣の二人を確認した。
(二人とも興味無さそうですね。喜多見さんは少しでも中さんたちと離れたかった……離れる理由を欲して観戦会場に来た、感じですかね? 明星さんは観戦会場の快適な環境を求めて来た、といったところでしょうか? 二人とも、自分のことでいっぱいいっぱいみたいですね)
伊舎堂は内心で少し呆れつつも、喜多見に言葉を向けた。
「喜多見さんはどうです? どこが勝つとかわかりそうですか? 中さんチームの偵察担当としての着眼点とかありますか?」
「え……? 偵察担当……? あ?! そうですねっ! ええっと、やっぱり、鷲島君とマスタング君に注目してますねっ! 二人とも強いと有名ですからっ! 伊舎堂さんはどうですかっ?」
どこか慌てたように質問に答える喜多見の姿を見て、伊舎堂は内心で苦笑した。
(二年生の言葉をそのまま口にしましたね。意見が一致しているというより、意見がない、いやそれ以前に……今回の四チームについて殆ど何も知らなそうですね。というか、鷲島君とマスタング君についても知らなそうですか。うーん、困りましたね。ここまで知識が無いと話題のきっかけが掴みにくいです。チーム戦ではなく、もっと日常系とかで攻めますかね。同じAランクですし、待遇関係……いや、それをEランクの明星さんの前でするのもアレですか……二人とも小市民っぽいですし、そこを突けば……ZPの節約法とか、ですかね……? いや、喜多見さんには流石に微妙ですか。喜多見さんのこれまでの人物像と、明星さんの推定される人物像から予想するに……とりあえず、喜多見さんに日常の穏やかな過ごし方と中チームでの立ち回りに関してそれとなく教えますか。上手く明星さんの興味も引いて、チャンスがあったら明星さんの懐に入れそうな質問をしましょう)
自身とは価値観が異なる二人との会話の糸口について思案しつつも、伊舎堂は大型モニターに表示されている参加選手を改めて確認した。
「そうですね。私もだいたい同じ感じです。鷲島君とマスタング君は要注目ですね。あと下水流さんは戦術が上手いみたいな噂を聞くので、ちょっと気になっている感じですかね。今回の試合の結果によって次のマッチングに関わるかもしれませんしね」
適当な言葉を口にしつつも伊舎堂は思案した。
(実際、これはありそうなんですよね。ううん……これまでの試合結果から考えると、雲川チームが勝てば今回で暫定Aランク入りもあり得る。明日の試合の予想点を踏まえた上で、マッチングの傾向を考えると……雲川チームは、次の試合、匂坂・
そこまで考えて、伊舎堂は内心で嘆息した。
(――馬鹿正直に戦いで落とすのは間違っている気がしますが……なんというか、短剣で片付く問題にわざわざ剣を用いているような、効率の悪さを感じますね。まあ、飛山さんの考えもありますし、あまり私の方で最強さん周りで勝手なことはしない方がいいでしょう。飛山さんの気分を害してまで、私の方で動くことではないですし)
伊舎堂はリーダーの飛山に対して、敬意と畏れを抱いていた。そして、この理由は四月試練に遡る。
四月試練において、伊舎堂は、チームを選ぶ際、二つの点を意識した。
――最も自分を高く評価してくれるリーダーか、最も敵にしたくないリーダーを選ぼう、と。
飛山龍華は伊舎堂にとって前者の理由で選んだリーダーであった。飛山は、戦術・戦略・謀略、すべてに隙がなく優秀であり、伊舎堂の才を高く評価し、十全に使いこなすことができる。仕えるに足る人だと感じたのだ。100%の忠誠心は捧げられなくとも50%は預けられる。初対面の時にそのように感じた。そして、出会ってから時間が経ち、忠誠の比率は徐々に高まっていった。
また、同時に、伊舎堂はあることにも気づいた。それは飛山龍華は前者だけではなく後者も満たすリーダーであった。つまり、伊舎堂にとって最も『敵にしたくない』リーダーであったのだ。
ゆえに、怖いもの知らずの伊舎堂であっても、飛山の感情には配慮した。彼女の怒りは買いたくはないと考えているからだ。
そして、優秀であることを示す必要もあった。それは自分を最も評価する主に対する義務であり、
だからこそ、伊舎堂は『やれることは、やる』。その一つが、現在飛山チームと関係が薄い中チームとの縁を作ることだ。可能であれば、連絡手段だけではなく、諜報と謀略の糸口も。
――そのためならば、無能を煽てて木に登らせるくらいはしないと、ですかね。
「ところで、喜多見さん。ちょっと気になったことがあるのですが、いいですか?」
「はい……?」
「いえ、私の気にし過ぎなのかもしれませんが……前よりも少し元気がないように見えて。何か、良くない事でもありましたか?」
「えっ!? …………ええっと、その、実はちょっと……あ、でも言ったら迷惑になるかもですし……」
どこか遠慮気味に、しかし、同時にどこか期待するように喜多見は伊舎堂を見た。
伊舎堂は内心で苦笑しつつも、人好きのする笑みを浮かべた。
「いえいえ! 私と喜多見さんの仲です。同じ一時寮の絆がありますからっ! 何でも言ってみて下さい。相談なら、乗りますよっ!」
明るく朗らかな伊舎堂の言葉は、中チームで荒みつつあった喜多見の心を少しだけ癒した。
(やっぱり、伊舎堂さんは良い人だ……!)
「えっと、じゃあ、その、実は――」
『おお! 時間になりました~! それでは『雲川・下水流・滝本・柚木』のチーム戦開始です!』
実況担当による試合の開始の合図を耳にしながら、伊舎堂加奈美は今日も忙しなくチームのために活動するのであった。