学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
『だいたい予想通りの任務点だったか~。下水流ちゃんは状況的に任務取る選択も出来そうだったけど、任務場所が良くなかったのかな?』
表示された各生徒の得点を確認しながら、生天目が納得の表情を浮かべた。
『可能性はありますね。それでは、一応、最序盤から見返していきたいと思います。かなり序盤は北部南部ともにスピード感がある展開でしたし、解説ができなかったところが多かったと思います。序盤の解説をまずやって、そのあと、中盤以降で気になった点を見返していこうと思います』
『うんうん、いいね、それでいこうか』
坂口の提案に生天目が頷いた。
『はい、では、最序盤。まずは北部で滝本リーダーが南部では金崎選手が落ちましたが、これに関してましては、どう見ますか?』
『もう鷲島君の殺法に関しては解説いらないでしょ? いつもの即死コンボで〆ました。以上。ていうか、異常。とにかく速い。速すぎる。『初見殺し』って言いたいけど、これ第二試合からずっとやってるのに未だにハメが効いてるから『何度も殺し』だね。滝本ちゃんは相手が悪かったね~。まあでも、星川ちゃんの緊急展開球形シールドがあるんだから、それを頑張って習得して欲しいところ。仮にもAランク帯で戦ってきたんだからさ~』
生天目は、感心半分呆れ半分で鷹一の技量について締め、一方で敗者である滝本には表面的には同情しつつも、問題点についても口にした。
『しかし、鷲島選手の殺法は普通に対応が困難かと。二年生でも初見で殺される生徒は多そうですし、そこそこの数の生徒が何度も殺されるかと思われます。正直、私も、三回以内に対応できる自信がないです』
一方で、坂口は純粋に、鷹一が強すぎる故に困難であったことを、自身の技量を踏まえた上で正直に述べた。
『まあ、坂口君はサポートタイプだしいいんじゃない。とりあえず、この殺法にある程度耐えられたら鷲島検定合格だね』
『謎の検定作らないで下さい』
『いや、謎でもないんじゃない? たぶん鷲島検定合格は一年生Aランクの証だよ。実際、これ防げてるのって一年生だとAランクかAランク相当の生徒だけだし』
生天目の言葉を聞き、坂口は脳内でこれまでの鷹一の対戦成績を思い出し、一拍置いて考えた後、ある程度の納得を示した。
『……なるほど、確かに、そうですね。鷲島選手のハンドガンを防げているのは、上位の選手が多いです。ということは、検定の合格条件はハンドガンを防いだ上で鷲島選手にブレードを抜かせることですか?』
『ああ、そうなるかな? ……うん、そうだね。ハンドガンを防いで、鷲島君にブレード投擲かブレード戦を使わせたら検定合格だね。あと、まあブレード突撃をさせても実質合格かな? 鷲島君に『速攻で倒さないと不味い』って思われてる生徒の可能性が高いし』
『なるほど、相性等もあるので、絶対視はできませんが、一考の価値はあるかもしれませんね。それでは南部の金崎選手のダウンについては……? これは実況時も気になりましたね。百田選手がかなり強引に撃破しています』
気を遣うタイプである坂口は、やや慎重に生天目に尋ねた。
『百田君はフツーに強いんだよね。高魔力・重装備・拡張弾倉のいつもの数え役満コンボ持ってるし、フツーに強くて、フツーに面倒な相手。壁抜きは強引だったけど、成功してるし、金崎君を確実に屠るというのは、雲川チームの躍進を考えると、結果的には正しかったと思う。
あとちょっと先の話を今やっちゃうけど、木山ちゃんも壁抜き射撃してたよね。下水流チームは壁抜き射撃多いね。今までの下水流チームの試合だと使ってなかったと思うけど……うーん、壁抜きって結構難しいし、精度が低いから、ちょっと微妙な技だけど。でも、基本格下にしか使ってないから、格下抹殺用に練習してたのかもね~』
生天目の「格下」という単語に坂口が反応した。
『金崎選手も雲川リーダーもBランクとして見ると、防御面に若干不安は抱えてはいます。しかし、二人とも強みを持つ生徒です。金崎選手は過去の試合では偵察や支援射撃などで鷲島選手を支え、また雲川リーダーは必殺の狙撃を今回見せてくれました』
『ん? あ~、いや、別にそんなに侮ってるわけじゃないよ。相変わらず坂口君は真面目で優しいねぇ~。でもさ、『そういう強みがある駒だけど、防御能力に欠ける』っていうのは、むしろ壁抜きとかの技が刺さる相手じゃない?
特に雲川チームはエースが強すぎるから、そのエースを支援する駒がいて、しかもそれが落としやすいんだったら、まずはそっちを狙うのが自明だよね。まあ、百田君に拡張弾倉まで使わせたのはやり過ぎ感あるけどね。というかわりと博打だよね。安倍君隠れてたら、ここで百田君を失うケースもあったわけだから』
拡張弾倉の弱点――シールドを併用できないことから、狙撃されるリスクについて生天目が言及した。
『…………意外ですね。その点に関しては、むしろ下水流リーダーを高く評価するかと思っていました』
一方で、坂口は不思議に感じた。坂口から見た生天目というリーダーは同じBランクのライバルであり、刺突爆雷などという特異な武器を用いる不合理な生徒というイメージがあったからだ。
『私ってそんなに博打好きに見える? 坂口君にはリスク取ってるように見えるけど、私としては普段のチーム戦はリターンを『私の考える中で』最大化してるだけなんだけどなぁ~』
『まあ、その辺りは、見解の相違がありそうですね。ええっと、とりあえず、次は北部の戦いでしょうか。南部は比較的見て回った気がします』
自身と生天目の議論が本題から逸れると判断し、坂口は話題の焦点を試合へと戻した。
『それでいいけど、その前にちょっと下水流ちゃんについて少し語らせて。竹田君を倒した方法とかだね。この辺でちょっとカスタムの話をしたいと思う。今回、安倍君は結構普通に狙撃銃で来てるけど、下水流ちゃんと雲川ちゃんはかなり銃の性能をカスタムしてるから、その辺も解説したいかなーって思って』
『なるほど、たしかに一理ありますね。ではお願いします』
『了解。じゃあ、まず竹田君VS下水流ちゃんね。まあこれは、滝本ちゃんが即死しちゃって、南西でマスタング君が戦ってたから援護として竹田君が北から南に降りてきた形かな。まあどっちかというと、マスタング君を援護するためというより、竹田君をさっさと合流させて、マスタング君の庇護下に置きたかったって考え方かもだけど、どちらにしろ滝本チーム視点で北側は鷲島君がいた以外よくわかんないし、竹田君を南に移動させるのは良いと思う。
一方で下水流ちゃんは動き的に竹田君が来るのが分かってたみたいな動きだから、たぶん竹田君をレーダーで捉えていたんだと思う。そこから、竹田君が通るルートを待ち伏せして狙撃で撃破って流れだね。単純に動きの読みや狙撃のタイミング、狙撃の腕とかが良いっていうのもあるけど、今回はカスタムに注目するね。具体的に言うと弾速変動カスタムね』
そこで生天目は一度言葉を区切って、チラリと坂口の方を確認した。坂口は小さく頷き続きを促した。
『まず銃、まあブレードとかもカスタムできるんだけど、ちょっとここだと話が逸れるから銃についての話だけするね。皆も知っての通り……いや、もしかしたら下位とか中位の子は知らないかもだけど、銃はカスタムできるんだよね。基本となるベースの銃がいくつかあって、その仕様を変える感じ。弾速を上げたり、装弾数を上げたり、威力を上げたり、まあ色々だね。
ちなみに下げることもできるよ。銃の性能を上げると基本的に何らかのデメリットが発生する。消費魔力が増えて、重量が重くなるってケースが多いかな。あとカスタムによっては銃の形状が変わって、取り回しが悪くなるって場合もあるかな。銃の性能をあえて下げる場合は、消費魔力や重量を抑えるって意味合いがあるね。
ただし、基本的に、ベースとなっている銃をそのまま使用する方がコスパは良いよ。カスタムすればするほど総合的なコスパは下がる感じ。ここで言うコスパっていうのは消費魔力に対する性能とか、重量に対する性能って意味ね』
『下水流リーダーのベースはどのような銃になりますか?』
再度、生天目が息を入れるタイミングで、坂口が問いかけた。
『下水流ちゃんは自動装填式の狙撃銃の高性能型をベースにしてるね。魔力消費が結構あるし少し重いんだけど、性能が良い感じ。これをさらにカスタムで尖らせてるね。外見からは判断が付きにくいけど、とりあえず威力は上げてるかな。あとは照準関係を良くするカスタムも入れてるんじゃないかな? ラストの自爆の前の走り撃ちとか、それで上手く成立させたんだと思う』
『確かに、あの狙撃銃を使った走り撃ちは予想外の技でした』
『うん、あれは痺れたね。んで、一番のポイントは弾速変動カスタムだね。これはね、魔力に依存するスライダーみたいなのを搭載してるんだよね。これを搭載すると、武器に供給する魔力が自動でなくて手動になるんだよね。
これはどういうことかって言うと、普段皆が使ってる武器は、使用時、魔力を自動的に回収してくれる、吸ってくれるって言うといいかな? だから、実は細かい魔力調整とかいらないんだよね。魔力って一定に出力するとか結構難しいから、この基本的な機構はとても助かる。ただ、一方で、性能が常に一定になる。基本は常に一定の性能を出力してくれる武器っていうのは信頼性が置けて良いんだけど、試合展開によっては『今、武器の威力を高めたいとか、もっと弾幕張りたい』とかあると思うんだよね。
そういう時にこのスライダーは役立つ。魔力に依存するスライダーを搭載することで、その魔力量に応じて、何か一つ、性能を変化させることができる。威力の変動カスタムとかは分かりやすい例かな。魔力をたくさん武器に込めると弾丸の威力が増してシールドを壊しやすくなる。運用面でも魔力を『とにかく込める』『そんなに込めない』の二択にすればいいから、やりやすい方かな? まあ、それでも威力のカスタムできる人は普通に魔力操作が上手い方だね。
そして、下水流ちゃんがやったのはこれの弾速バージョン。いや本当に凄い。特に狙撃銃なのが凄い。何度も言うけど、魔力操作って繊細だから、そんなに上手く調整できない。だから普通に弾速変動カスタムなんて入れたらら、射撃するたびに弾速が変わちゃって、狙撃なんてできなくなっちゃう。でも下水流ちゃんはこれを絶妙に使いこなしてる。かなり魔力操作が上手いんだね。下水流ちゃんはこの弾速を変える機能を使って、二連射の狙撃の一発目を通常速度、二発目を超高速にするって方法で相手のテンポを乱してるんだよね。実際、急に弾速が変わるから、これ撃たれる方はかなり困るよ』
うんうんと心地よさげに生天目は頷きながら解説した。評価していた下水流が、自身の想像以上の人物だったことに感動と満足感を感じて、それを噛みしめていたのだ。
『なるほど、下水流リーダーは戦闘技術や戦術能力だけではなく、装備の準備の面でも自身の戦い方に合った最高のものを用意していた、ということですね』
『うんうん、試合前から、下水流ちゃんは良いと思ってたけど、想像以上だったかな。んで、次は、流れに乗って、同じ狙撃手の雲川ちゃんの解説をしたいかな。まあ、アサルトライフル使いだから若干狙撃手からブレるけど』
下水流について一通り述べると、生天目は、今度は雲川に焦点を絞った。
『雲川リーダー対堂前選手の対決ですね。これは雲川リーダーが始終翻弄していたように思えます』
試合序盤における雲川と堂前の対峙。全体を見た上で坂口が感想を口にした。
『そうだね。単純な正面戦闘だと堂前君の方が強いと思うけど、チーム戦は正面戦闘だけじゃないからね。索敵・地形・射程・戦術、色々なものが噛み合うから、単純な力比べって思うと足元掬われるよ~』
『そういう煽りはいいんで、解説お願いします』
『はいはいはい、雲川ちゃんもだいぶカスタムしてる感じがする。ベースは小型軽量型のアサルトライフルだね。連射性能がアサルトライフルにしては低いから、多少落としてるかも? あと銃身を少し長くしてる分、取り回しは悪いかな? まあ、そもそも小型版だからそこまで取り回し悪くないと思うけど。
んで、この戦い見ると、この雲川ちゃんの射撃って威力が殆ど無いんだよね。堂前君がシールド展開した時、全然シールドがダメージを受けてないんだよね。ハンドガンと良い勝負じゃない? だいぶ威力削ってるね。魔力貧者かぁ?』
どこか探るように生天目が雲川のカスタムについて考察した。そして、素早く坂口がフォローに入った。
『しかし、戦い方がシールドを壊すことではなく、シールドを避けて本体を狙うことですから、むしろ上手くカスタムしていると言えるのでは? 下水流リーダーに負けず劣らず雲川リーダーは良いカスタムをしているように思えます』
『それはそう。狙撃の狙いが結構良いし、それに三連射の狙撃っていうのもいい。アサルトライフル使ってるおかげで、狙撃手にしては連射がかなり速いし、狙う部位が毎回変わるし、微妙に嫌な部位狙ってくるから対応がしにくいと思う。特に初見だと厳しいかな。下水流ちゃんの狙撃ほどではないけど、こっちも割と『わからん殺し』だと思う。そういう意味で堂前君は運が悪かったね。んで、勿論、雲川ちゃんのカスタムセンスも良いね。坂口君が言ったように、カスタムがとてもあっている。
自分の得意不得意を考えて、戦い方を決めて、三連射攻撃を成立させるようなカスタムにした。自分のとって最高のカスタムをするのは射撃役の醍醐味だけど、一年生でここまで上手いのはすごいね。下水流ちゃんも雲川ちゃんも、はなまる、だね』
なお、この生天目の指摘は一部間違いであった。下水流のカスタムに関しては実際に彼女自身の手によるものであったが、雲川のカスタムは全て鷹一が調整していたからだ。今回の試合における、雲川の活躍の裏には、彼女自身の『ほのぼの体験』のほかに、鷹一が考えた雲川に適した訓練プランと精緻なカスタム技術があった。
『雲川リーダー、下水流リーダー、ともに準備の大切さを教えてくれました。あとは、序盤の北部の戦いとなると、安倍選手と鷲島選手の戦いでしょうか』
そして次なる話の焦点は、雲川チーム最強の男へと向けられた。
『そだねー。やっぱりそこ抜きには進められないよね。まあ展開としては、鷲島君が速攻で南下して、安倍君を轢き殺したって感じだけど……とにかく鷲島君がヤバかった。というかキモかった。何で建物の間飛び跳ねてるの? 怪物かなんかなの?』
『これは、流石に私も驚きました。鷲島選手、壁を蹴って飛び跳ねていましたからね。もちろん、建造物が高密度に固まっていたとか、色々条件が良かったというのもありますが、それにしても異常な能力です。安倍選手も狙撃でかなり足止めしようと努力はしていましたが……』
生天目の言葉に対して、本来であれば掣肘するはずの坂口も同意を示した。坂口にとっても困惑するほどの事態だったからだ。
『うん、結構頑張ってたんだけど、相手が悪すぎたね。まあ、あえてディスるなら、ハンドガンの速射は1発くらいはシールドで耐えたかったかな。星川ちゃんが前の試合で皆にヒント渡してるんだから、できなきゃね』
『安倍選手はポジション的にも狙撃手ですから、シールドの訓練は後回しになりやすいので仕方ないかと。それに鷲島選手の殺法は非常に速いです。安倍選手以上の戦闘力がある滝本リーダーでも防げませんでした。先ほどの鷲島検定じゃないですが、おそらく現在のBランク帯では防御が困難な技でしょう。
……あと、なぜか鷲島選手、明らかに建物間の距離があって飛び移れない時、空中で一瞬静止しているようなのですが……これは……? フロートを一瞬だけ展開しているのでしょうか?』
坂口が言及したアクティブ装備『フロート』は、足場を生成し、魔力を込めることで、その足場を徐々に浮遊させるという装備だ。空中での足場の生成の他、簡易的なエレベーターのように使うことができ、高所を取ることを意識する選手が使用することがある装備であった。
『確かにフロートっぽいけど……うーん? なんか違うな……ちょっと拡大して……うわぁ、そうきたかー。え、これはちょっと気持ち悪い。えー、マジか~』
あることに気付いてしまった生天目は露骨に気持ち悪がった。
『生天目リーダー、何か分かりましたか?』
『いやーキツイっす……これこういう装備じゃないんだけどなぁ……こういう使い方って運営が後で修正するやつでしょ』
坂口の問いかけに答えず、ただただ鷹一の人外の技量について気持ち悪がった。
『生天目リーダー、もったいぶらずに、解説をどうぞ』
『分散シールドを集中させて、ちっちゃい足場作ってた。それそういう装備じゃないからな、って私はツッコミしたい。フロートじゃないんだからさ』
もはや感心よりも呆れが強い声音で生天目が、鷹一の所業を口にした。
『えぇ……? あぁ……本当っぽいですね。鷲島選手、なんと分散シールドを使って足場を作っていました。フロートと違い長時間の維持はできませんが、鷲島選手程の技量があれば、一瞬足場が持てばよいということでしょう……いや、それにしても、何というか……』
坂口も思わず呆れと驚きが混じった声を漏らした。
『これわりとマジでチートじゃない? いや、グリッチ? こういうことしていいのかな~?』
『気持ちは分かりますが、個人的には技術力の応用だと思います。というか、鷲島選手も刺突爆雷悪用してる人に言われたくないと思います』
坂口は、生天目の言葉に対して納得感はあったものの、同時に普段の試合での生天目の無法っぷりを思い出し苦言を呈した。
『いや、刺突爆雷は私の使い方が本来の使い方だし、運営もそれを望んでるでしょ』
『いや、それは……いえ、これは水掛け論になりそうですね。ええっと、話を戻しまして、安倍選手、鷲島選手の跳躍の隙を狙った狙撃は良かったと思います。最序盤のマスタング選手への狙撃も見事でしたし、狙撃手として正統派的な魅力を感じました』
『それはまあそうだね。相手が悪かったに尽きる。あ、でもちょっと気になったポイント。安倍君の狙撃銃って、下水流ちゃんと同じで自動装填式だね。単発射撃が多いから、魔力効率が良いボルトアクション式の方が良さそうだけど、これ何か理由あるのかな? カスタムもあんまりしてないし、装備は適当路線? それとも瞬間火力を重視した戦い方もするのかな?』
生天目は、坂口の意見認めつつも、気になった点――安倍が雲川・下水流と違いカスタムの意識が低いように見えた点について言及した。
『……確かに、それは少し気になりますが……安倍選手は狙撃手としての動きが上手い選手ですから、火力以外は自身の技術力でカバーできると考えているのかもしれません。ゆえに、武器は瞬間火力が高い自動装填式を選んでいるのではないでしょうか?』
『あー、それはあるかも。やっぱり、ばんばん撃てるのは魅力だからね~。ここらへんはボルトアクションでは絶対勝て――あ、いや、今年の新入生は例外がいるんだっけ?』
『例外というと、飛山チームの道合選手のことでしょうか?』
生天目の問いかけに、坂口はすぐに答えた。
『あ、そうそう、確かその子。なんか、ボルトアクション式の狙撃銃で無茶苦茶速いみたいな話をぼんやり聞いた』
『はい、道合選手は、ボルトアクション式の狙撃銃で自動装填式以上の射撃速度です。恐らく、自動装填式で上位の使い手であろう下水流リーダーより早いです。ちなみに機動力も最高クラスです。恐らく二年生で速度で勝てる生徒はAランクでも少ないかと』
道合杏奈――Aランク2位飛山チームのエースにして、新入生最強の狙撃手と言われている彼女の名声は二年生にも轟いていた。
『私の彼ピは勝てそう?』
『実在しない存在について言及するのやめろ、ください』
坂口は『やめろ』と言いかけて、最後に語尾を取り繕った。
『もー意地悪だな~、四宮ピのことだよ~』
生天目の言葉に坂口は一度大きく溜息をついた。
『……四宮選手もだいぶ機動力がある方ですが、恐らく道合選手の方が速いかと。ただ、総合力では流石に四宮選手が勝つでしょう。あと、すみません、脱線を加速させたの私ですけど、一度話を今の試合に戻しましょう』
『えーっとなんだっけ? あー、安倍君のカスタムの話だったか。で、道合ちゃんの話だ。うんうん、なんというか、ありきたり二年生っぽい話をしちゃうけど、今年の新入生ヤバい子多くない? てか、この学年大丈夫?』
現在の高等部一年は魔境である、というのは二年生の間では通説であった。
『大丈夫じゃないですね。そして、これからする話も大丈夫じゃない話です。つまりマスタング選手対鷲島選手の戦いについてです。これ、どう解説します?』
少し困ったように坂口が問いかけた。
『それねー、どうしよう。正直、一番の山場だけど、ちょっと解説が難しい感じがした。てかこれ二人とも私たちより強いよね』
『その可能性は高いです。ただ、解説という面なら多少はできるのでは?』
『まあ、それもそうなんだけど……まあいいか~、じゃあ、まず最序盤、柚木ちゃんを追いかけて二人が遭遇戦みたいな形。ここはまず鷲島君が仕掛けたけど、マスタング君が気づいて、射撃で足止め。柚木ちゃんはこのおかげで難を逃れるけど、下水流ちゃんに嵌め殺される形になった。んで、ここ、下水流ちゃんの方を見てて、ちゃんと怪物バトル見てなかったんだけど……
うーん、やっぱり分からん。なんでマスタング君の弾幕を鷲島君は防げたんだろう? どう見ても防げる感じじゃないんだけなー。うーん、マスタング君がテンパっちゃって、射撃精度が極端に落ちた、のかぁ? 今までの戦歴見ると、マスタング君はそんな感じはしなさそうだけどな~』
どこか訝し気に生天目が鷹一とマスタングの戦いに言及した。この生天目の勘は正しかった。この攻防には鷹一の理外の技術が詰め込まれていたのだ。しかし、生天目はあくまで感覚的に変に感じただけであり、それを立証するだけの技術を持ってはいなかった。ただただ、魚の骨が喉に詰まったかのように、変な感覚のみあった。
『コンディションや精神的な面は複雑です。滝本チームが下がり調子であったという点なども考慮するべきかもしれません。あと、単純に鷲島選手のシールド能力が私たちの予想よりも高かったという解釈でいいのではないでしょうか?』
一方で、常識人の坂口は、一般的な視点から状況を理解しようとした。これは決して彼が無能なわけではなく、むしろ、統計的な、実学的な正しさを求め、それをはじき出す能力を持っていたが故であった。鷲島鷹一は常識では測れない怪物なのだ。鷹一が非常に優れた選手であることを理解したとしても、どうしても一般的な常識が彼への理解を妨げてしまうのだ。
『うーん、なんか、それだけじゃ説明できない気がするんだけどなー。あ~、私の彼ピなら分かるかな?』
『四宮君はアンタの彼ピじゃないので、諦めてください。
……とりあえず、鷲島選手とマスタング選手の戦いの流れとしては、ここで二人が射撃戦を行い、双方千日手に近い形、いえ、後半はダメージを負っていたので鷲島選手がやや不利といった形になったところで、下水流リーダーの狙撃がマスタング選手に入ります。これで鷲島選手が接近することができ、ブレード戦へ。一方、ブレード戦が始まると、今度は下水流リーダーがマスタング選手を援護。しかし、これで戦況は膠着。
最終的には狙撃しながらも接近した下水流リーダーの刺突爆雷で鷲島選手が大ダメージを受けるも下水流リーダーを撃破。最後は、マスタング選手優勢のブレード戦になりましたが、狙撃位置についていた雲川リーダーの援護により、相打ちという形になりました。何か注目ポイントはありますか?』
こうして、マスタングと鷹一の間で行われた射撃戦の謎は終ぞ解説されなかった。しかし、一方で、鷹一は別の謎を暴かれることになる。
『正直、マスタング君と鷲島君の射撃戦の謎が気になるけど……まあ、解説できそうにないし、いっか。実際、マスタング君がテンパってたとか鷲島君が思ったより強かっただけかもだしね。ええっと、他は、とりあえず、まず気になったのは下水流ちゃんの初見殺し、変動弾速カスタムを使った狙撃なんだけど、これ、最初マスタング君相手に使ってないのが面白いね。んで、鷲島君相手には使ってる。
たぶんだけど、竹田君に使ったからマスタング君には初見技にならない可能性があったっていうのと、鷲島君に初見殺しやりたかったっていうのはありそうだね。逆に初見で防いだ鷲島君はやばいね。ここ、淡々と冷静に分散シールドで防いでるから、見逃しちゃいそうになるけど、冷静に考えるとおかしいよね。なんで防げるの』
理外の狙撃対応能力であった。下水流ほどの狙撃手が弾速変動という初見殺しを携えて挑んだが、鷹一には一切ダメージを与えられなかったのだ。
『確かに、あまり意識していませんでしたが、この技、鷲島選手が防げたのは……まぐれではないですよね、鷲島選手ですし。となると元から警戒していた、とかでしょうか? 鷲島選手もチームメイトの雲川リーダーがかなりカスタムした狙撃手です。ゆえにカスタムについての知識があり、奇策を好む下水流リーダーならばという警戒があったのかもしれません』
『そんなとこまで警戒してたら、警戒することだらけになっちゃうよ。たぶんだけど、純粋に反応したんじゃないかな? 鷲島君って分散シールドをピンポイントで防げるし』
『それはそれで、鷲島選手の超人性が強調されますね。他に解説すべき点は……ああ、いえ、折角ですから、下水流リーダーが使った刺突爆雷についてお願いします。二年生では恐らく生天目リーダーが第一人者なわけですし』
坂口は鷹一の余りにも超人的な技術力に対して、これ以上説明するのは困難に感じ、話題を切り替えた。
『お~、まかせろー! って、言っても、仕組みは単純な武器なんだけどね。槍の先端が何かにぶつかると爆発します。下水流ちゃんがやったみたいに、シールドに接触させて大爆発に相手を巻き込むって方法は使い方の一つだね。
かなり高威力の武器で、高魔力の子がやるとイイ感じの爆発が発生する。わりとシールドで防がれちゃうことも多いけど、至近距離で爆発させるから、爆風が回り込んだりして、多少のダメージは与えられるケースが多いかな。今回の鷲島君みたく、シールド面が小さい相手には効果抜群だね。そういう意味でも下水流ちゃんは鷲島君の弱点をついた見事な攻撃。これは初見じゃ防げないね。ちなみに射程がブレードとそこまで変わらないのが不人気の理由。まあ、爆発属性の攻撃で威力が高いっていうのが売りだからね。
あと、最大の欠点は、基本的に自分も巻き込んじゃうところ。一応、私はシールド張りながら使うことが多いけど、爆発の制御って難しいし、シールドに半端に力を注いで、相手を倒せなかったら意味ないから、結構ダメージ食らう。というか、今回の下水流ちゃんみたく、生還度外視で使うこともあるかな。
ちなみに爆発で自殺しちゃった場合、その人の撃破点はAIが判定して、もっとも撃破する可能性が高かった人の得点になります。今回は、鷲島君が倒したから鷲島君の得点だったけど、ブレード投擲で倒せてなかったら、下水流ちゃんの得点は、もしかしたらマスタング君の得点ものになった可能性はあるね。そういう意味でも鷲島君はナイスキルだった。といか、下水流ちゃんの初見殺しに対して、自爆とほぼ同時に鷲島君が下水流ちゃんをダウンさせてるのがフツーに凄い。よく対応できたな、って感じ』
生天目の説明を聞きながらも、坂口は内心で『まさか、生天目の刺突爆雷知識が役に立つ時が来るとは』と思っていた。
『あ、あと、大事なこと。自分や仲間を殺しちゃった場合は、AIが勝手に敵チームの誰かの点にしちゃうから、意図しない自爆には注意ね。刺突爆雷は先端部分は基本的に何かに当たった時点で爆発しちゃうから、たとえば、走ってて建物に当てちゃったり、地面に当てちゃったり、あと誰かの射撃が当たったりしても、普通に爆発するから気を付けてね。仲間と行動中とかにそれやったら戦犯だよ~。
ちなみに私の彼ピは鬼畜だから、私の刺突爆雷ちゃんを遠距離から狙撃してくるんだよね。もう何回強制自爆させられたことか』
刺突爆雷の重大な欠点について語る生天目を見て、坂口は内心で『だから、誰も使わないんだけど、なんでこの人は使い続けるんだろう』と思ったが口には出さなかった。
『四宮選手は射撃が上手いですからね。あ、あとアンタの彼氏じゃないんで。ええっと、あとは鷲島選手とマスタング選手の戦いについては……やはり、下水流リーダー爆発後の戦いでしょうか。雲川リーダーの射撃が逆転の目を作りましたが……』
『あれは中々だったね。まあ、でもあれに関しても、『逆転の目』を作った雲川ちゃんより、その『逆転の目』をしっかりと活かした鷲島君の方が凄いと思う。あんな死にかけでよく相打ちに持ってったよね。ん? よくよく見返してみると、鷲島君、爆発に巻き込まれた後、
『専門用語やめてください』
二年生の一部の間で使われている用語を耳にし、坂口は呆れつつも訂正を求めた。
『えー?
『下水流リーダーの爆発後は、相打ちが限界だったことを考えると、その可能性は高いです』
『うんうん、改めて、見れば見るほど、
この生天目の予想は間違っていた。実際は、雲川の魔力量が足りず鷹一は通信ができなかったのだ。この連携は、鷹一がただただ雲川を信じて待っていたのだ。
『雲川リーダー、鷲島選手の見事な連携でした。……そういえば、鷲島選手、この攻防では新技はありませんでしたね。いえ、もちろん、安倍選手相手に跳躍接近や、分散シールドを足場にするなど曲芸をしていますが、マスタング選手との激しい戦いでは今までのような新技はありませんでした。既存の技の強化で挑んだ、という印象があります』
『うん、そうっぽいかな? ちょっと気になる点もあるけど、上手く説明できないから、それでいいか。そうだね。鷲島君は既存の技も強いから、それを強化すると順当に強いんだよね。なんかこれまでの試合のせいで、隠し技の選手のイメージがあるけど、普通に正面から戦って強いんだよね。零ちゃんを打ち取って、今回マスタング君相手に接近する時に使った、旋回性極高のアクセルとか普通にやばいと思う』
この解説も完全に正しいとは言えなかった。なぜなら、鷹一は、マスタングとの攻防において、これまでに使っていなかった魔力中和や魔力攪乱といった高等技術を使っていたからだ。
『確かに、鷲島選手の強さに関しては、まさしく超人級です。そして好条件が重なったとはいえ、その鷲島選手と相打ちになったマスタング選手も超人的な強さを見せました。……っと、そろそろ時間も良い感じですね。ラストの隠蔽戦に関しては解説などはありますか?』
『木山ちゃん・萩田ちゃん・雲川ちゃんの攻防か。ここは、ちょっとゆっくりペースの試合だったから、わりと説明したんだよね。まあ、雲川ちゃんが頑張ったかな。
というか、これ全体の話なんだけど、狙撃手三人組が良かったね。下水流ちゃんが凄すぎて霞んじゃったけど、普通に安倍君と雲川ちゃんは良かったと思う。安倍君は相手が悪かったけど、狙撃手として求められているものをこなしている感じがして、こういう子、好きなリーダーは多いんじゃないかな。
雲川ちゃんは、凄い頑張った感じ。必殺技みたいなの持ってきたし、それで二人撃破に、さらにマスタング君の撃破のアシスト。まだまだ駄目な点は多いけど、これ知ってたら、私、試合前で雲川ちゃんも褒めるくらいには活躍してたと思う。金崎君はもっと頑張れ~、あとお前だけだぞ~』
『おい煽るのやめろ』
素早く、坂口が生天目の言葉を制した。
『いや、事実じゃん』
『いえ、金崎選手は今回相手が悪かったです。これまでの試合で活躍がなかったからこそ見逃された雲川リーダー、逆にこれまで貢献してきたからこそ攻撃が集中した金崎選手という見方も重要かと思われます』
『まあ、それは一理あるね。今回の金崎君の死に方はしょうがない感が強い。相手が悪かった、というか下水流チームの殺意が凄かった。坂口君の言う通り、それだけ金崎君……というか鷲島君を警戒したんだろうね~。んん~、あとは……あれ? 今、手元の端末で録画見てるんだけどさ、雲川ちゃん、最後萩田ちゃんを狙撃で倒した時、口元がぱくぱくしてる。なんか喋ってるのかな?』
『え? あ、本当だ……口が動いてますね。ルーティンとかでしょうか?』
『音を拾おう、何か言ってるよ、これ。決め台詞かも』
そうして、雲川の口元が拡大され、それと共に、その時の雲川の言葉が再生される。
『うに! うに! いくら!』
気合の入った声が観戦会場に響き渡った。
『……?』
『……?』
生天目と坂口は互いに疑問符を浮かべながら顔を見合わせた。