学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
『東側でも戦闘が激化しています! 松本選手から攻撃を受けていた五条選手を横合いから宮田選手の射撃が襲います。五条選手は重要部位は守りましたが足を負傷しました。そして、そこに根崎選手がサポートに来ますが、これを松本選手が射撃で妨害……! しますが、ここで根崎選手、シールドでガード! これまた厚いシールドだ……! 零チームはちょっと魔力が強すぎますね! さらに、うわ、デカ……! 根崎選手、大型バトルライフルで射撃。松本選手シールドを展開しますが、なんと貫通。左肩を持ってかれました。これは大ダメージです。松本選手たまらず後方へ下がります。根崎選手は追撃はせずにそのまま猛ダッシュで五条選手に駆け寄ります。根崎選手、凄いフィジカルです』
東と西でそれぞれ独立して動き続ける戦場を必死に実況と解説が追っていく。
『松本選手が後方に下がり、根崎選手が五条選手と合流しますが、同時に長山選手も宮田選手に合流しました。根崎選手と松本選手が撃ち合ってる間も宮田選手が五条選手に射撃していましたが、最初の足ダメージ以外は与えていません。しかし両選手に援軍が来たことで、実質零チームの二人と淡路チームの二人が向かい合って戦う形になります。見た感じの使用武器とシールド強度的には火力・防御力共に零チームが有利に見えますが……』
『いえ、どうも長山選手に考えがあるようです。宮田選手がシールドを二枚展開しました。そして、長山選手がそのシールドに身を隠して、アサルトライフルのフルオートです。連射速度が尋常じゃないので、これは拡張弾倉をアクティブ装備枠に仕込んでますね』
『拡張弾倉! あれですね、銃器系と同時に使用するアクティブ装備枠で、使用中に銃器の性能を格段に上昇させます』
『はい。欠点としては銃器+拡張弾倉でアクティブ装備枠を二枠使うので、シールドなどを同時に使えない点です。なので射撃戦では中々使えないのですが、宮田選手のシールドに隠れているので、欠点を補えます。良い連携ですね! 一年生チームの初陣とは思えないほどの戦闘です!』
『ええ、凄まじい火力です。これは五条選手のシールドでも難しいでしょう…………? あれ、……?』
ここで解説役の生徒が言葉に詰まった。試合会場の異常の光景を目にしたからだ。
『…………全然貫けませんね。シールドに傷が入りません。ちょっと五条選手のシールド固すぎますね。これ大シールドじゃなくて重シールドですね。いや、重シールド使えるとかちょっと反則級の魔力ですね。これ今年入って来た一年生で最大の魔力量なんじゃないですか、五条選手』
本来であれば拡張弾倉を使った銃器の攻撃はシールドを容易に破壊する必殺の攻撃だ。それが、シールドに傷一つ与えられないのだ。五条のシールドは厚く大きく、そして、それだけのシールドを維持するには尋常でない魔力が必要であった。
『そうですね。恐ろしい魔力量と防御力です。そして、根崎選手、おもむろに何か顕現させました……軽機関銃ですね。しかも、なんか凄い駆動音して……あ、発射しましたね。いや、ちょっと凄い量の魔力弾が出てるんですけど……』
『どうやらミラーマッチだったようです。根崎選手も拡張弾倉を仕込んできていたみたいです。五条選手のシールドに隠れて撃つのも同じです。ただ、両者の火力と防御力が違い過ぎましたね。根崎選手はただでさえ高威力である軽機関銃に拡張弾倉です。宮田選手・長山選手のそばにあった建築物が倒壊しています。そして、直撃を食らった宮田選手・長山選手はダウン判定です。宮田選手のシールドでは無理でした』
『一応、一瞬長山選手もシールドを出して宮田選手の防御力を上げていたみたいですが、根崎選手の暴力的な掃射の前には無理でした』
『残念でしたね! まあ、これにて零チーム二点獲得……ってあれ、ちょっと待って下さい、なんか気付いたら零チームの得点が四点に、あ、今五点になりました。えっと秀川選手でしょうか? え、もしかして、あそこから逆転したのでしょうか、カメラを南西の戦場に――って、零リーダーです! 零リーダーが先程秀川選手がいた場所にいます! 開始時は北端にいたはずの零リーダーがなぜか病院前にいます! そして何と他には誰も居ません! 秀川選手・山辺選手・吹石選手は既にダウンしています! あ! 南にいた岩崎選手もダウンです! ええっと得点を見ると、根崎選手2点、零リーダー2点、秀川選手1点、岩崎選手1点となっております……』
実況の中島は、無知を装うのではなく、純粋に驚きの声を上げた。
『今、録画確認しました。どうも、東側でミラーマッチしている間に南西の戦闘も大きく動いたようです。まず秀川選手が吹石選手をダウンさせますが、その直後横合いから岩崎選手の射撃を受けてダウンします。しかし秀川選手の死に際の攻撃で岩崎選手は片手を負傷。そしてそこに何と零リーダーが現れます。どうも試合開始から全速力で南下し秀川選手との合流を目指していたようです。零リーダーはアサルトライフルの連射で山辺選手・岩崎選手の動きを瞬間的に封じたあと、アクセルを使い岩崎選手に急接近しブレードで岩崎選手の体を両断、そのままアクセル加速を維持し山辺選手の心臓を貫き即死させました』
『今、零リーダーが使った【アクセル】はアクティブ装備枠の一つです。移動速度を劇的に上昇させますが、制御が大変難しい装備です。これを使いながらブレードで相手に斬りかかることを【ブレード突撃】と言います。本来、ブレードは遠距離武器である銃器には無力です。しかし、ブレードはシールド貫通能力が非常に高いです。一方で銃器でシールドを破壊するのは結構時間がかかるので、シールドを突破する方法として使用されます。また今回のように、射撃をシールドで受けさせて、その間にアクセルを使い突撃してシールドごと刺すみたいな戦術も使われます。ただ、何度も言いますが、これは一年生の初試合でやるような技じゃないです。僕らの世代で【ブレード突撃】初めてやったのって四月の三戦目くらいだったと思います。ちょっと零チームは強すぎますね』
『尋常じゃないですね。最初にダウンした秀川選手も何だかんだで、三対一の状況で一人落としてますから、凄く優秀な選手ですし、東側の戦場で圧倒的な射撃戦を展開した根崎選手・五条選手ペアも尋常でない力量の持ち主です。まだまだ、試合展開は読めませんが、零チームは間違いなく、今年のチーム戦でのAランク候補ですね。ちょっと強すぎる』
二年生たちが、零チームについて賞賛の言葉を送りつつ、適時解説をしていく。そしてその間にも時間は経ち、マップ北西部の戦況も動こうとしていた。
『そうですね! 零チームは強すぎます。そして今、名前が出なかった上村選手ですが、現在北西部の十字路の戦闘に干渉しようとしています。十字路では試合開始時のまま淡路リーダー、早木選手が撃ち合いをしています。これは早木選手がかなり優勢です。淡路リーダーはダメージ中といったところですが、早木選手はほぼ無傷です。そして、ここに北部から来た上村選手がこっそりと十字路を狙える大学に侵入、キャンパス内から早木選手を狙っています。狙撃ですかね?』
『その可能性が高そうです。北から合流すると淡路リーダーと早木選手に挟まれる可能性があるので、それを避けようとした形だと思います』
『興味深い流れです! しかし、一方で、上村選手を追う倉上選手も大学に侵入しました。これは明らかに上村選手を狙っているようですが、上村選手は気付いていないのでしょうか!』
『たぶんレーダー範囲に映ってないんだと思います。零チームのレーダー担当は恐らく五条選手です。五条選手の距離だと、倉上選手は映らない可能性が高いです』
『とすると、状況が面白いですね! 淡路リーダーに対して早木選手が射撃戦で優勢。しかし、その早木選手を上村選手が狙撃しようとしていて、それをさらに倉上選手がつけ狙ってる形ですね!』
『おそらくそうなります。それに、早木選手と倉上選手が同じチームというのもポイントです。まだ有坂チームは誰も落ちていないので、通信システムは生きています。なので、倉上選手が【上村選手が早木選手を狙っている】情報を共有していると思うので、早木選手は警戒しているはずです』
『逆に、早木選手が上村選手の狙撃を警戒している分、淡路リーダーに対する射撃圧が減りそうですね。たぶん有坂チームとしては上村選手に撃たせて、それを早木選手がガード、そして撃った直後の隙を付いて倉上選手が上村選手を射殺するという作戦だと思うので』
実況役と解説役の言葉により、北西部の四人の攻防が明らかになっていく。観客席でそれを聞いていた三人はそれぞれ別々の反応を示した。鷹一は鋭い目線で淡路の動きを観察し、匂坂は全体を俯瞰するように眺めてから意味深に微笑み、そして雲川は少し眠そうに体を揺らした。
『それは確かにありそうで――おっと! 上村選手、撃ちました! そして予想通り、早木選手はシールドでガード! 倉上選手が背後から上村選手を射撃っ! これは上村選手にっ……! あ! 防ぎました! 上村選手、背後にシールドを展開してギリギリガード! 倉上選手に撃ち返します。倉上選手は足に被弾するも逃げますっ! 上村選手は追いかけますが、こちらも足を負傷しています。倉上選手の攻撃を全ては防げなかったようです。一方、早木選手は――って! ええぇ! 早木選手ダウンです。首を切り落とされました! なんと淡路リーダー、【ブレード突撃】です! 零リーダーに続いて二人目です! 今年の一年生どうなってんだ!』
『上村選手の狙撃を防いだ一瞬の隙で、淡路リーダーはアクセルを起動させ、距離を詰めてブレードで首を刎ねました。見事な【ブレード突撃】です。ほぼ無傷だった早木選手を一撃で仕留めました。これがあるのでアクセル持ちのブレード使いは怖いです』
「見事なブレード突撃でしたね。早木君が射撃戦で淡路君を圧殺すると思っていましたが、予想外です。そして、鷲島君、淡路君の力量、見事に読み当てましたね。さすがです」
会場の実況を聞きながら、匂坂は隣にいた鷹一に声をかけた。
「俺も、これほど強い生徒だとは思わなかった。正直な話、驚いている」
「フフッ、先程、淡路君は実戦に長けると仰っていたではありませんか」
そう言うと、匂坂は口元に弧を描いた。
「直感のようなもので、確信はまるでなかった。もし俺が早木の立場であったならば、淡路に討ち取られたかもしれない」
「ご冗談を……淡路君は私の予想を超える優秀な生徒でしたが、しかし、鷲島君には大きく劣ります。鷲島君の力を持ってすれば、淡路君だけではなく、北西の四人――淡路君・早木君・上村君・倉上さんの全員を同時に相手にしても無傷で蹂躙できるでしょう?」
「…………それは、難しいだろう。今、名前を挙げた四人はどれも優れた能力を持つ生徒たちだ。正面から同時に相手をすれば、負ける可能性は高いだろう。匂坂、お前は俺を過大評価し過ぎている。戦闘適性順位はそこまで万能ではない」
鷹一の真剣な声音を聞いても、匂坂の笑みは崩れなかった。