学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第二試合準備 星川チームの作戦会議

 

 五月第二試合が迫る中、他のチームと同様に、星川チームも作戦会議を行っていた。

 そう、作戦会議だ。星川チームは現在、作戦会議が作戦会議として機能していた。

 四月の時点では、チームメイトの我が強く作戦会議として成り立っていなかった。しかし、今の星川チームは作戦会議をするチームとなっていた。これには三つの理由がある。

 

 一つ目は星川の真面目さとチーム内での影響力向上だ。星川は真面目な生徒であり、常に、チームポイントの確保に努め、自身の個人戦闘力の強化のほか、戦術・戦略の改良や指揮能力向上に努めた。そして、それが結果に繋がった。チームメイトを活躍させチームポイントを確実に稼ぎ、Aランクという学園最上のランクへチームを導いたのだ。

 つまり、今の星川には実績があった。強く、『勝ちを引き寄せられる』リーダーとしての実績だ。そして、星川はどの試合も油断しない。彼女は真面目で、備えるリーダーだからだ。

 

 二つ目は、エースの西山の心境の変化だ。四月第三試合で鷹一に敗れ、さらには、五月第一試合では零にまで敗れた。しかも得意のブレード戦でだ。西山は、この敗北で弱気になるようなことはなかった。むしろ持ち前のドS精神から、戦闘意欲と自己鍛錬へと結びついた。

 そして、同時に、星川の指揮・戦術の必要性を強く感じた。より気持ちよく勝つ、相手を屈服させる、今までは自分一人でも十分であったが、星川の戦術の下で動いた方がより良いと西山は判断した。四月第四試合の快勝や、五月第一試合での撤退戦での星川の指揮・戦術能力を西山は高く評価していたのだ。また、今回の対戦相手が、戦術能力に優れる飛山チームと、過去に一度敗れた雲川チームであることからも、猶更、西山は星川の指示を聞くべきだと判断していた。

 

 そして、最後の理由は、短慮で目立ちたがり屋の姫乃が星川の作戦を遵守するようになったことだ。

 いや、より正確に言うならば、短慮で目立ちたがり屋の姫乃が作戦会議に参加しなくなったことで、スムーズな作戦会議を可能にしていた。そして、同時に、作戦会議に参加せずとも、姫乃は星川の指揮・戦術に従い完璧に動けるようになっていた。ある一定の条件下においてだが。

 

 ここにいない姫乃が地獄で苦しんでいる中、星川は真剣に各チームの戦力と戦術について西山と黒井に話していた。

 

「中さんのチームも飛山さんのチームも初めての相手ですが、どちらも強みがあるチームです。油断せず行きましょう……! そして、雲川さんチームは二回目です。前回のリベンジ、と行きたいところですが、実際のところは、、そちらに割く余裕はないと考えています……!

 というのも、鷲島君対策ではなく、飛山さんのチーム対策と、『取れる点』の確保を主眼に置くからです。詳しく説明します。

 まず、今回、私たちのチームは全員隠蔽装備で行きます。西山さんと黒井さんはいつも通りの装備を、私は狙撃銃を、姫乃さんは少し装備を軽量化してもらう形になります。私と姫乃さんの装備が軽くなった分、中さんのチームに対する優位性を少し失いますが、鷲島君や飛山さんのチームに索敵と隠蔽で負ける危険性の方が大きいです。

 なので序盤に上手く隠れて、『私が狙撃銃で来たこと』を飛山さんにも分かってもらいます。中さんのチームの出方がやや不透明ではありますが……ただ、中さんは恐らく今までと近い装備で出てくると思います。鷲島君も前回と同じように重めの装備で来る可能性が高いですから、序盤は私たちと飛山さんのチームが隠蔽、飛山さんのチームが中さんのチームや雲川さんのチームを襲撃するので、それを私と鷲島君が防ぐという形になると思います」

 

 星川はこれまでの試合のデータから鷹一が大出力レーダーを装備していることに気づいていた。

 そして、そこまで、星川が説明したところで、黒井が小さく手を挙げた。ちょっとした疑問を感じたからだ。星川が発言を促すと黒井は口を開いた。

 

「里菜ちゃん、ちょっと気になるんだけど、鷲島君のケアはしなくていいの? 私たちが隠蔽装備で来たら鷲島君も似たようなことする可能性ってないかな? あと、鷲島君はちゃんと飛山チームと戦ってくれるかな? この前と同じで、私たちを狙ってくる可能性もあるんじゃないかな? 実際、鷲島君の戦い方って『とにかく取れる点を取る』っていう飛山チームと少し近いし、序盤戦は、鷲島君と飛山さんたちで点の取り合いになったりしないかな?」

 

 黒井の質問に対して、星川は胸が熱くなった。なぜなら、ちゃんと作戦会議になっているからだ。

 『一人減っただけでこんなに良くなるのか』ということを強く感じた星川は、地獄にいる姫乃の冥福を祈りつつ、質問に答えた。

 

「はい。とても良い質問です。えっと、そうですね、まず鷲島君の隠蔽についてですが、これは雲川チームの性質上、恐らくないです。なぜかというと、鷲島君が冷静で賢い人だからです。もし鷲島君が隠蔽装備を選べば、雲川チームは索敵を失います。これまでの試合から考えて、鷲島君は大出力レーダーを持っていて、そして、それを代われる人がいません。飛山さんのチーム相手に大出力レーダー無しでは、後手に回ります。勿論、全体の動きや、目視による索敵、戦闘音などである程度戦場の予想はできますが、それでも最速で動くことはできません」

 

 そこまで言って星川は内心で僅かに鷹一のことを惜しく思ったが、それはすぐに自身のアイデンティティを崩すことに繋がると思い、表情には出さず言葉を続けた。

 

「――私たちは、『勝てる相手と勝てない相手』がいて、それは状況によって変わります。後手を取っても有利になる……いえ、今回の試合はむしろ、後手を取って少しでも不利を減らす試合です。でもこれは私たちだからこその視点です。『誰にでも勝てる鷲島君』は視点が違います。確実に居場所を知ることができる大出力レーダーは彼にとって必須装備なんです。

 特に、飛山さんは暗殺が上手いです。後手になると、雲川さんや金崎君を失う可能性が高い。できる限り、鷲島君は先手を取りたいんです、飛山さんのチームに対しては。だから、鷲島君は隠蔽できないんです」

 

 星川はそこで一度言葉を切った後、話を結論へと導く。

 

「――そして、このことは鷲島君も飛山さんも知っていて、私がそう考えることも、冷静で賢いあの二人ならば、予想して然るべきでしょう。よって初手で鷲島君の位置は飛山さんのチームに露見します。鷲島君は覚悟の上でそれを行うでしょう。飛山さんは鷲島君を襲撃するか、もしくは大きく迂回して他の相手を狙います。ただ、それは動きとして目立つので、鷲島君も看破するでしょう。結果的に、鷲島君はそんな動きをした飛山チームを狙う可能性が高いです。

 勿論、私たちや中さんのチームから点を取る可能性もありますが、しかし、飛山さんのチームは強すぎます。序盤で分散しているうちに一人か二人は倒したいと鷲島君は考えるはずですから、飛山さんのチームの誰かを鷲島君が見つけたら、そちらを狙う可能性が高いです」

 

 丁寧な説明を終えると、星川はアイドルらしい微笑みを黒井に向けた。以前から頼りになる通信担当である彼女のことを星川は個人的に信頼しており、また今の質問も好ましく思っていた。

 

「……そういうこと。ありがとう、里菜ちゃん。だいたい分かったよ。ただ、里菜ちゃんと鷲島君で飛山さんのチームを防ぐっていうのはどういうこと? 里菜ちゃんも飛山チームを狙いで、序盤は鷲島君と協力して、飛山チームの数を減らすってこと?」

 

「それも可能ならしたいですが、どちらかというと、私が隠蔽装備で狙撃銃を持ち込むこと自体に意味があると思っています。私が狙撃銃を持ち込んだら、より正確に言うと、『私が隠蔽で隠れている』という状況になった時点で、恐らく飛山さんはこちらの装備を察して、アクセルの使用を自重するでしょう。これで少しでも飛山さんのチームの機動力を落とします。

 そこからは投入や各チームの初動にもよりますが、鷲島君と飛山さんのチームの交戦は速いと思います。それを私が援護するか、もしくは、隠蔽に徹して飛山さんのチームに狙撃のプレッシャーをかけ続ける形にします。これが私の考える、『比較的あり得そうな序盤戦』を優位に進める方法だと考えています。勿論、投入次第ですし、鷲島君に期待している面が強い考えではありますが……」

 

 星川は少しだけ悩まし気に俯いた。星川の作戦は、怪物である鷹一や、格上である飛山チームの出方を待つという受動的な作戦である。相手の行動によって対応を変えなくてはならない立場上、星川はあくまで予想でしか作戦を立てられない。そのことを彼女は少し歯がゆく思った。

 そんな様子の星川を見て、西山が横から口を挟んだ。

 

「いいじゃないですか? 星川さんの予想は何だかんだで当たってますし、次も当たりますよ、きっと。それより、私は何すればいいですか? できれば何人か虐めたい相手がいるんですけど、星川さん的に、私、今回、いっぱい虐めできそうですかー? 金崎くんとか狙ってまーす。あと喜多見さんとかも候補でーす」

 

 にこにことアイドルらしい笑みを浮かべつつも、西山は内心で嗜虐的に笑った。

 

(喜多見さんも中々虐めてみたくなりますけど、やっぱり金崎くんですかね~。この前、一之瀬さんと一緒にいるの見て、思わず絡みたくなっちゃいましたし……二人とも真面目で頑張り屋さんだから、その頑張ってるところを折りたくなっちゃうんですよねー。一之瀬さんは、この前の試合で狩りましたし、やっぱり金崎くんですね。なんかちょっとずつ強くなってるみたいですし、このあたりで、一回、心をしっかり折っておきますかね……! うん! そろそろ狩りましょうか……)

 

 西山が脳内で想像を膨らませる一方で、ふと星川は喜多見について一瞬だけ思い出した。

 

(中チームの喜多見さん……よく話しかけれるんですよね。普通の人っぽい人ですが……はっ……! まさかアイドルに興味が……!? いえ、しかし、喜多見さんの力量(ルックス)だと、厳しい、ですね……)

 

 この星川の想像は誤解であった。喜多見はただただ真面目でまともそうに見える星川に惹かれたのだ。中チームなどというふざけたチームにいる喜多見は常識に飢えていた。ゆえに喜多見は、伊舎堂を求め、星川を求めたのだ。それはどちらも真面目で常識がありそうで、良い人そうに見えたからだ。一つ悲劇があるとすれば、喜多見に人を見る目がないということだ。

 

「ええっと、西山さんの撃破点は今回は非常に重要だと思っています。

 まず作戦ですが、先ほども言ったように、序盤は私が隠蔽しつつ狙撃圧を飛山さんのチームにかけます。姫乃さんも隠蔽しつつ活動し、必要に応じて射撃で、盤上のコントロールに努めます。どちらかと言うと、私は後手で動きたいので序盤は撃たないことを考えると、姫乃さんにたくさん活躍してもらうことになります。黒井さんには通信・レーダーなど情報面を中心とした全体のサポートをお願いします。

 三人で、状況を可能なら拮抗、そうでなくても、飛山さんのチームの躍進を止めるように振る舞います。そこまで持ち込んだら、西山さんが動いて、少しでも撃破点を稼いでもらいます。

 今回の試合、総戦闘力では鷲島君に次いで飛山さんはかなり強いですが、近接戦闘なら西山さんに分があります。乱戦に巻き込んだり、こっそり近寄ったり、隙を見てブレード突撃で仕留めたりと、手はあると思います。

 なので、そうですね……長々と言いましたが、西山さんは私の指示した相手を倒していってもらえると大変助かります。金崎君は隠蔽が高いので、中々難しいとは思いますが……ただ、誰を倒しても1点です。倒しやすそうと思ったら、西山さんの判断で倒して大丈夫です。あ、でも、私の撤退指示は聞いてもらえる嬉しいです……! 金崎君で釣って、鷲島君が現れるということも、あり得ますし」

 

 星川の丁寧な説明を聞いて、西山は少し考えを巡らせつつも、最後には納得して頷いた。

 

「うーん、まあ、分かりました。できるだけ星川さんの言うことは聞きますよ。その方が気持ちよく勝てそうですしね……! ま、金崎くんとか喜多見さんは見つけたら狩っておきますよ。そんなに時間もかからないでしょうから」

 

「あ、それと、一応、中盤以降の話もします。正直、投入や各チームの初動、序盤戦の結果にもよりますが……恐らく鷲島君が生き残り、作戦が上手く行けば飛山さんのチームの残りが二人から三人残っています。私たちのチームはおそらく姫乃さんが落ちて、他は不明といった感じです。

 西山さんが上手く得点を稼いでいると嬉しいですが……どちらにしろ、恐らく生き残った面々で任務を狙う形になります。不測の事態が起こればまた別ですが、序盤戦が終わったら任務を優先する形になると思います。今回は勝利を狙うというよりも、『少しでも点を取る』という形ですから」

 

 チームの戦術――『勝利を目指さない』という星川の説明を聞いて、黒井は内心で納得しつつも、より星川から考えを聞き出そうと口を開いた。

 

「今回、勝つのはかなり難しい、のかな? 里菜ちゃんの作戦、悪くない気がするし、里菜ちゃんも瑠香ちゃんもかなり強いから、状況次第では、瑠香ちゃんの暗殺と任務点の逃げ切りでなんとかなったりしないかな? 鷲島君と飛山チームの生き残りからは逃げられない?」

 

「……そうですね、少し難しいと思っています。

 まず、先ほど私が言ったケースは比較的理想的な展開であって、上手く行かないケースもあります。たとえば、正面戦闘力で突出している鷲島君が飛山さんのチームと干渉しないところから開始して、とにかく撃破点重視で動かれると、色々と前提が破綻しますし、投入が良くても、全員の動き次第で、私たちが序盤で壊滅するケースもありますから……

 ただ、黒井さんの指摘も決してないことはなくて、今回の試合、駒質なら、私たちも少し優位です。恐らく正面戦闘力で並べると、鷲島君がトップで二位が飛山さん、次が私と西山さん……いえ、私は狙撃隠蔽装備ですから、三位は西山さんですね。そのあとに中さんのチームの方々や針谷さんが続きます。

 道合さんと雲川さんは完全に狙撃手なので、ちょっと特殊ですが、正面からなら私も西山さんもある程度は勝負できます。連携すれば飛山さんの相手も十分できるでしょう。まあ、連携に関しては戦術と機動力に長ける飛山さんのチームの方が上手いので、結局チームで戦うとなると厳しいですが……ただ、それでも、『西山さんなら1対1でだいたい倒せる』というのは圧倒的な強みですし、もしかしたら、私たちが勝つこともあるかもしれません」

 

「そういえば、何で星川さんって重装備でいかないんですかー?」

 

 ふと、西山が疑問を投げかけた。

 

「ええっと……先ほども言いましたが、狙撃で飛山さんのチームの動きを止めるためです」

 

 星川は内心で『話、聞けよ。やっぱりコイツちょっと舐めてるよな』と頭に血が上りそうになったが、すぐに、以前よりもずっとマシになっていると感じ、怒りを抑えた。

 

「んー、でも、結局初動の時点では星川さんって飛山チームに見つかってない可能性が『まあまあ』ありますよね。飛山さんが、星川さんが隠蔽だと思い込んでるなら、盤上のレーダーに映った星川さんは中チームの誰かと誤認するかもですし、それなら、狙撃手の星川さんを警戒している飛山さんを重火力で奇襲できるじゃないですか。序盤で星川さんがばんばん点を取れば、星川さんが序盤で死んじゃっても元は取れますよね?」

 

 西山の言葉、星川は一瞬頭に血が上りかけるが、すぐに『これは納得できる指摘だ』と感じ、真剣に西山の指摘を受け入れ、説明のために口を開いた。

 

「それは私も少し考えました。確かに、私が重火力で行くというのは、序盤戦において有利です。西山さんの活躍を援護できますし、上手く行けば、序盤で私たちのチームによる支配を確立できます。

 ただ、結局、盤上的に、飛山さんのチームを止められる狙撃手がいないというのが問題です。いえ、正しくは、それが露見するのが極めて問題です。

 私がレーダーに映れば、そんなに時間がかからずに飛山さんに気づかれます。飛山さんのチームは索敵力が高く、飛山さん自身の盤上把握能力も高いですから、初動の僅かな動きで、私が重装備であることや、狙撃銃を持ち込んでいないことが露見します。そうすれば、飛山さんのチームは機動力を全力で使いますし、その際、飛山さんはこちらの支配を真っ先に破壊します。結果的に、私たちの早期退場を招くでしょう。

 鷲島君に狙われるのと同じくらい、飛山さんに『優先撃破対象』だと思われるのも危険です。なので、序盤は私が隠れていることは重要です。飛山さんのチームの強みである機動力を少しでも削ぐ必要がありますし、私が最序盤で落ちないためでもあります」

 

「うーん、複雑ですねー。まあ、でも、分かりました。とりあえず作戦通りに行きます。あ、でも、鷲島君、見かけたらどうします? 負けてあげる気はないですけど、正面からだと私たぶん勝てませんよー」

 

 新一年生で最強のブレード使い、鷲島鷹一。その名を口にする西山は少し複雑であった。『最終的にいつか分からせる候補』ではあったが、同時に、現実を理解している西山は、鷹一との戦闘は厳しいことも分かっていた。

 

「鷲島君に当たるのは正直最悪のケースですが……しかし、先ほど言った通り、恐らく鷲島君と戦うのは飛山さんのチームです。序盤、交通事故のような形で遭遇戦をすれば別ですが、そうでなければ、戦うのは終盤以降ですし、その場合は、こちらも逃げて任務を優先したり、他の点を取ったり、他のチームにぶつけたりと色々と状況次第で選べる策が変わってきます。ただ、基本は正面からは戦わないでしょう。

 一応、鷲島君が序盤から故意にこちらのチーム、特に西山さんを狙った場合の対策としては、盤上コントロールは一旦完全に飛山さんのチームに明け渡そうと思っています。そうすれば、飛山さんのチーム、というより全員で鷲島君を包囲する流れを作れますし、そうなれば鷲島君は自分の生存を優先するでしょう。というより、そういった雰囲気をこちらが出すだけでも、牽制になると思います。鷲島君は頭が良い人ですから」

 

「色々、考えてますねー。まあ私は星川さんに言われた相手を狩りますよ~。金崎くんに喜多見さん、伊舎堂さんなんかもいいですねー。あの人なんかチョロチョロしてて怪しいですし」

 

「そうかな? 伊舎堂さん、イイ人だと思うけど。私は道合さんより好きかな」

 

 西山の言葉に対して、星川よりも早く黒井が反応した。

 

「私は道合さんも伊舎堂さんも、分からせてあげたいですねー。ただ、どっちかというと伊舎堂さん優先ですけどね」

 

 そう言って西山は嗜虐的な笑みを作った。

 

「駄目です……! 西山さん、もう少し清楚に笑って下さい……! 西山さんは実力は確かですが、態度がまだ少しよくないです……! もっとアイドルらしくお願いします……!」

 

「星川さんが考えるアイドルって作戦とか戦術とか一生懸命考えるんですかー?」

 

 どこか挑発するように西山が問いかけた。星川は強く頷いた。

 

「ええ……! 格上との戦いでは特に準備が大切ですからね……! そして、今回の戦いが次への準備でもあります。今回は負け試合覚悟で、少しでも点を取ることに努めますが、同時に、飛山さんのような強豪との戦い方を少しでも学ぶことが大切です。それに、最強の鷲島君の動きを知ることも大事です。今は無理でもいつか鷲島君にリベンジしたいですからね……!

 あと今回の試合は、中さんの『読めない戦術』に関する情報集めも一応兼ねています。ただ、これはやはり中さんが読みにくい人なので、期待はできそうにないですけどね。匂坂さんのチームと一緒に少しずつ集める形になると思います……!」

 

 懸命に前向きに戦略について話す星川を見て、西山はくすりと笑った。

 

(星川さんのアイドル像って何なんですかね? ……それに匂坂さんは中チームとか興味無さそうですし、情報は星川さんが一人で集めることになりそうですね~)

 

「そういえば、匂坂さんからは特に指示はないの? 里菜ちゃん、あの人とは仲良くやってるみたいだけど、飛山チーム相手だし、妨害指示とかなかったの?」

 

「いえ? 特に匂坂さんからは……多少第二試合の話をしましたが、特に何かをしてほしいとは……あ、いえ、姫乃さんの件で少し話があったくらいですね」

 

 星川は少し前に匂坂に言われたことを思い出した。曰く彼女は今回の試合について次のように述べたのだ。

 

――星川さんの好きなように戦ってください。ただ谷崎さんから、星川さんの戦術を聞いておきたいと話を伺っています。あらかじめ姫乃さんの調教……いえ、訓練計画に入れておきたいとのことですので、決まり次第谷崎さんに伝えてください。

 

 地獄にいる姫乃の冥福を祈りながら、星川は今回の作戦をまとめたファイルをメッセージとともに谷崎へと送った。ファイルの中には星川チームの戦術の他、姫乃に隠蔽装備で戦わせたい事、装備させる武器の候補、その際の姫乃の行動パターンなどが含まれていた。

 これで、姫乃の準備は完了だ。このように谷崎に姫乃のやるべきことを伝えておくと、『なぜか』姫乃は試合で星川の戦術を完全に順守するようになるのだ。不思議なこともあったものだ。

 地獄にいる姫乃に再度冥福を祈りながらも、星川は、内心で僅かばかりの寂しさを覚えた。いや嘘だ。寂しくはなかった。むしろ、短慮な姫乃が自分を苛立たせるようなことが減ってほっとしたし、何より――

 

(今の姫乃さん、昔よりアイドルっぽくなってます……! 谷崎さんと会って姫乃さんは一皮むけました……!)

 

――少しずつ少しずつ自分のチームが良くなっていると感じながらも、星川は、チームメイトに次の試合までの訓練方針などを話すのであった。

 

 

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