学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第二試合① おもろ場外乱闘

 

 五月第三週の日曜日。

 前日の土曜日には、『第二試合』のうち半数が終了していた。

 残る八試合のうちの一つ、『飛山・星川・中・雲川のチーム戦』開始時刻まで20分を切っていた。

 

 

 

 

 鷹一はチームメイトを引き連れ、投入室へと向かっていた。

 前日の時点で最終的な調整を終え、作戦などには変更はない。

 

 いつもと同じように初期の通信は雲川が行い、雲川がダウンすれば金崎が引き継ぐ。

 また、『逆認識』を装備した二人は、暗殺警戒のため、『逆認識』が発動したらすぐに報告することを徹底する。そして、『逆認識』発動後は待避を急ぐ。

 

 さらに鷹一は、本日の雲川の調子も種村・反町と一緒に確認した。反町がプリンを雲川に差し出し、それを笑顔で雲川が食べるが、なぜか種村が気まずそうな顔をして、また雲川も笑顔でプリンを食べつつもどこか不思議そうにプリンを見つめる、などといったエピソードがあった。種村の気まずさを犠牲にすることで、雲川の詳細なコンディションを掴んだ反町は鷹一へ報告、曰く次の通りであった。

 

――第一試合と同じで不思議な緊張と弛緩状態にある。恐らく雲川にとってベストコンディションである。

 

 鷹一は第一試合での雲川の活躍を思い出し、彼女に指示を出した。大きな指示は鷹一が行う。また試合開始直後や試合が停滞した場合など、鷹一が指示を出せそうなタイミングでは鷹一が指示を出す。しかしそれ以外のタイミング、たとえば鷹一が戦闘中などの場合の細かな動きは雲川に一任した。雲川の本番の強さ、アドリブ力に任せたのだ。一応、可能ならば、雲川が狙撃対象の名前を口にすることで、連携の強化を図った。

 なお、この際、雲川の『他者への顔と名前を一致させる』能力の低さが足を引っ張りそうになったが、追加のプリンで事なきを得たことをここに示しておく。

 

 試合への準備を完遂し、投入室へと向かう三人。

 

 鷹一は、普段と同じように、淡々とした表情であった。

 雲川は、どこかリラックスした不思議な感覚とともに、『うにの力』を高めていた。

 そして、金崎は、九割の緊張、そして一割は別の感情に占められていた。高揚感・万能感・そして不思議な快感。普段ならば金崎は、試合の直前にそのような感情を抱くことはなかった。ただ、今日は不思議とそんな感情が体を駆け巡っていた。体に注ぎ込まれた黒いナニカ、それが活性化し、鼓動とともに金崎の体を巡り、普段とは異なる感覚を彼に与えていた。

 

 投入室にたどり着いた三人を十三人の生徒で出迎えた。対戦相手である、飛山チーム・星川チーム・中チームの面々であった。雲川チームは珍しく最後の到着だった。

 

 室内の人口密度には濃淡があり、四人の生徒が飛山チームを半包囲するような形をとっていた。これは中・西・南がフォーメーションを組みながら飛山チームに迫り、飛山と伊舎堂が道合・針谷を庇うように前に出て三人に対応、そしてそこに星川が近づいたがためであった。なお、東と喜多見はそれぞれ離れた場所におり、黒井・西山・姫乃はかたまっていた。

 

 室内の生徒たちの中で、真っ先に鷹一に気付いたのは、手持ち無沙汰であった西山であった。

 

 鷹一と雲川を流し見て、その後、金崎を視界に収めると、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。

 ぞわりとした何とも言えない恐怖が金崎に襲い掛かる。しかし、すぐにそれは止んだ。体を駆け巡る黒いナニカが、西山への恐怖を遠ざけたからだ。

 金崎が圧を弾いたのを見て、思わぬ獲物の成長に再度西山は邪悪な笑みを浮かべた。

 

 西山と金崎の攻防をぼんやり眺めていた雲川はムムムと顔に力を込めた。

 

(かっぱまき……) 

 

 意味不明な評価を西山に下した雲川は、どこか喉につっかえるものを感じながらも、西山の周囲にいる二人へと目を向けた。

 

(うに! うに!)

 

 またしても意味不明なことを考えながらも雲川は部屋の端にいる東・喜多見の方を見た。

 

(か、かっぱまき……? うに!!)

 

 それから最後に雲川は最も多くの集団が集う飛山チーム・星川・中・西・南を見て、息を、いやかっぱまきを飲んでしまった。

 

(わ、わ、わ、か、かっぱまき、かっぱまきがたくさん……詰まっちゃう……)

 

 まるでかっぱまきの軍団だと雲川は感じた。いくらの軍艦は好きだがかっぱまきの軍団は好きではないと雲川は思った。意味不明である。

 雲川は特に強くかっぱまきを感じた六人――飛山チーム四人と星川・西から視界を外した。

 これ以上見ていたら、喉が詰まってしまうと雲川が感じたからだ。

 

 雲川が意味不明なことを頭に思い浮かべている間に、飛山が大きく手を振った。

 

「おー! 鷲島君たちが来た~! 今日はよろしく~! 今、皆で集まってわちゃわちゃやってるよー! 鷲島君も入る~? おもろ!」

 

 いつものように明るく良く通る飛山の声が鷹一へと向けられた。

 

「ああ、飛山、今日はよろしく頼む。ただ、試合はもうすぐだ。そちらに集中したいから、俺たちは端の方に集まることにする」

 

「うぉー! 真面目だ~! 了解! 中さん、どうする? おもろ!」

 

 鷹一に返答に、飛山は頷きつつも近くにいた中へと言葉をかけた。

 

「どうしようかな、鷲島君の方行きたいんだけど、なんか相手してもらえ無さそうだし、ここで飛山さんから逃げたら負ける気がするからこのままここにいる。おもろ!」

 

「そうだ、ここで引いたら判定負けになる。引くな引くな! おもろ!」

 

 中の言葉に、西が檄を飛ばした。西にとって負けられない戦いだからだ。当然もうすぐ始まる試合のことではない。今やっている『おもろバトル』のことだ。

 一方で、昂る西に対して、南は違う意見を持っていた。

 

「この語尾に『おもろ』ってつけるゲームもう飽きたから止めたい! おもろ!」

 

 南の言葉を聞いて、彼女たちから距離を取った東は次のように思った。そもそもお前のせいだろうと。そして次の瞬間、東に悲劇が襲い掛かった。

 

「言い出しっぺのお前のせいだぞ、南! おもろ!」

 

 西のツッコミであった。それを耳にした東は自己嫌悪で苦しんだ。

 

(くっ……! 俺が、西と同じことを思ってしまうなんて……!)

 

「最初に止めたやつが負けで、試合中アクセル禁止だから私は止めない! でも早く終わりたいから誰か負けろ! おもろ!」

 

「お前が唯一アクセル装備してないんだから、お前が負けろ! おもろ!」

 

 西に責任を追及された南は、自身が負けたくない理由を口にしたが、それを素早く西が切り捨てた。

 

「いや、ワンチャン飛山さんが負けて欲しい。試合中アクセル使わないで! おもろ! 道合さんとかでも可! おもろ!」

 

 西と南の言い合いを聞きつつも、リーダーである中は飛山チームに矛先を向けた。

 

「道合さん、絶対喋らないで下さい! おもろ!」

 

 中の言葉に反応するように、伊舎堂は後ろにいる道合に忠告した。道合は力強く頷いた。

 

「伊舎堂って結構ノリ良いね。こういう話は付き合わないタイプだと勝手に思ってたから今、感動してる! おもろ!」

 

 南の言葉に一瞬伊舎堂は表情に陰が差しそうになるが、すぐに普段と同じ人の好さそうな笑みを作った。そんな南と伊舎堂の会話を聞いて、即座に飛山が話題の転換を図った。

 

「アレ、というか、ちょっと気になったんだけど、中さんってアクセル使ってたっけ? 実は使えるの? おもろ!」

 

「それはご想像にお任せするね。おもろ!」

 

「おい! 西、お前のせいでチームの機密情報が露見してるじゃねーか! 責任取って負けろ! おもろ!」

 

 飛山の質問に対して、中は曖昧に答え、南は戦犯を求めた。ついでにそろそろ本気で止めたいので、敗北も求めた。

 

「違います! 今、飛山を混乱させるために俺は敢えて誤情報流したんですー! あと俺がアクセル使えなくなったら、ただのアサルトライフルの名手でブレードが使えて機動力があって頭も良くて顔も良くておもろなだけな人になっちゃうから、俺は負けません! おもろ!」

 

「嘘だぞ、アクセル使える以外取り柄ないぞ! おもろ!」

 

 西の長々とした自慢に対して、すぐさま南は切り捨てた。

 

「ウソジャナイ! ウソジャナーイ! おもろ!」

 

 鷹一は部屋の端で、雲川・金崎とともに、飛山チームを半包囲する中たちと、可愛らしく微笑みつつもなぜか何も喋らない星川、合計八人を見ながら次のように思った。

 

――投入まで、残り数分だが、いつまでやってるんだろうか。

 

 この鷹一の疑問の答えは、数分後明らかになった。

 つまり、投入数秒前までこの『語尾おもろ』は続いてた。結果は敗者なし。最後まで、飛山・伊舎堂・中・西・南はぺらぺらと喋り続けていたのだ。

 

 そうして、なんともふざけた形のまま投入となり、五月第二試合『飛山・星川・中・雲川のチーム戦』が始まった。

 

 




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