学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
第二試合開始の投入直後、鷹一はすぐに周囲を確認し、敵影がないことを確認すると大出力レーダーに魔力を込めた。また同時に大通りから僅かに顔を出し、東西に敵がいないことを確認した。
一瞬のうちにそれらを成し、さらに素早く仲間の位置を確認し、雲川の配置を決め座標データを送信した。
『周囲に敵は見えない。紫苑、敵が見えなければ南側の指定した座標へ移動するんだ』
『うん……! 私も誰も見えないから、そっち行くね……』
雲川のリラックスしつつもどこか力んだ声を耳に入れつつ鷹一は素早く思考した。
(アンノウンが4体。北西・北東・南西・南東。距離的に南西は隠蔽装備の可能性もあるが、少なくとも3人以上が中装備以上で来たか。となると中チームは隠蔽していないな。いや、むしろ、中チームだけ隠蔽していないか……? 紫苑はこのまま少し南に移動させて、この大通りを監視させる。金崎との合流を考えて南東の敵を狙うか? それても隠蔽の可能性がある南西を狙うか?)
そして金崎に指示を出そうとしたが、それよりも早く彼から通信が入った。
『今、建物の中にいる。高所から良く見える……! ちらっと奥で見えた! 鷲島の南東のアンノウン……! 南がいる……! あ、え、……わ、鷲島! 南がこっちを一瞬見たかも……?』
金崎の通信を聞いて、鷹一は決断した。
『南だな? 分かった。俺が南を倒してそっちに向かう。紫苑は指定場所で待機して大通りを見張るんだ。誰か見つけ次第報告をしてくれ。金崎、念のため待避の準備を。暗殺の警戒だ。すぐ向かう』
南東方向へ駆けながら、金崎・雲川への指示を出す。そして周囲――特に狙撃を警戒しながらも、鷹一は走りながら思考を回した。
(南東は南だったか。それに南西の駒が消えた。……リスクのあるケースを追うなら、南西は高隠蔽・高機動・逆認識持ちで俺に索敵されたから逃げた、とも考えられる。つまり飛山チームの誰かの可能性がある。だが金崎が南に捕捉された可能性もある…………それに、どれをとっても1点だ。金崎と合流することを考えれば、この選択は悪いものではないはずだ……)
脳内で思い返される第一試合終了後の金崎の痛々しい様子。そして、懸命にチームのために努める彼の姿。
今、考えることではないと僅かに首を振り、鷹一は試合に集中する。そして、再度、金崎が声を上げた。
『鷲島! 南が砲撃してきた! 待避する! 東の高密度帯に行く!』
通信の先から聞こえてくる、慌ただしい音を聞きつつも鷹一は咄嗟に通信を返した。
『待て! 金崎! 砲撃は陽動! 暗殺に警戒!』
(あの位置、あの距離で、軽量曲射砲を使って金崎を仕留めるのは難しい。ならば、砲撃であぶり出し、暗殺するために隠れた敵がいるはずだ)
移動する雲川やレーダーに映るアンノウンたちを確かめつつ、鷹一は駆ける。既に砲撃音は鷹一にも聞こえている。南を撃破し、金崎への砲撃を止めさせる。
そう考えながら、鷹一は金崎の返信がないことから再度声を上げた。
必死に通信を飛ばしながらも、鷹一は駆けた。砲撃元を叩くために。
ポンポンと懲りずに打ち続ける音。
いつまでも続くかのように思えた音であったが、しかし、それはある時、急に止んだ。同時に、鷹一のレーダーから南の反応が消えていた。
(リロード、ではないな。取られたか。暗殺か……? いや、それより金崎は?)
金崎の返信がないことを心配しつつも鷹一は砲撃元へとついにたどり着いた。周囲を確認し、南を倒したと思わしき相手やその痕跡を探し、さらにレーダーも確認する。
そして、再度金崎から通信が入った。
『鷲島! 今! 西山と戦闘中! にらみ合ってる!』
焦るような金崎の声音から状況を読み取ろうとする鷹一であったが、『睨みあう』という言葉が理解を妨げた。
『西山!? にらみ合い? 他に誰かいるのか?』
鷹一はすぐに三つ巴の状況を考えた。金崎と西山が向かい合っていれば『睨み合い』にはならないからだ。金崎は努力しているが、しかし、西山と戦えば一合は持たないと鷹一は考えていたからだ。
『いや、他にはいな――』
途中で切れる言葉から、鷹一は金崎の末路を察した。しかし、すぐに疑問が湧いた。レーダー上で金崎はまだ健全だったからだ。
鷹一は通信と並行して行っていたこと――周囲に南を撃破したと思わしき人物の痕跡調査を切り上げた。見つからなかったからだ。
(恐らく相手は早々に離脱した。いや、南と相打ちした可能性もゼロではないか……)
再度、鷹一は、レーダー上に残っている金崎を救援すべく彼の元に向かおうとして――
『西山はずっと一人だ。俺の周りには誰もいない。西山は無傷。ごめん、鷲島、たぶん落ちる!』
――その通信を聞いた。
そして、それが本当に最後の通信であった。
レーダーから消えた金崎の反応。最後まで彼に謝らせてしまったことに、鷹一は僅かな悔いを覚えが、すぐ気持ちを切り替えた。
(初期の俺の南西にいた怪しい相手は消えている。南を倒したと思わしき駒がマップ南側のどこかに潜伏している可能性もある。北側の中装備と思われる二枚は、どちらも移動中。金崎を倒したマップ南東部にいると思われる西山。あとは――)
得点確保のために思考している中、再び通信が入った。
『鷹一くん……! 飛山さん! 飛山さんがいる……! 東の方のレールの上にいる……! レーダーに映ってない。座標送るね……!』
「……! 飛山か……! 分かった、そのまま飛山をマークしつつ、他の敵がいないかも調べてくれ……!」
「う、うん……!」
(飛山の位置はマップ中央部の高架鉄道上、なぜそんなところにいる? 初期位置が高架鉄道上だったか? それとも索敵か……どちらにしろ、飛山は真っ先に倒すべきだ。飛山を狙う。可能なら撃破後は北側の二枚を狙う。位置が分かる相手からだ)
鷹一は思考を回しながらも、素早く移動し、高架鉄道付近の建造物に入り階段を駆け上がる。ちょうどいい高さまで来たところで、鷹一は助走をつけて跳び、高架鉄道上に着地する。そして素早くマップ東側へ駆けながら雲川へと通信を入れる。
『紫苑、飛山はまだ高架鉄道上にいるか?』
『うん……! 西側に走ってきてる……! 鷹一くんの方に来てるよ……! あれ……?』
雲川が小さな疑問符を浮かべた時、鷹一もまた疑問符を浮かべた。高架鉄道上を東に駆ける鷹一は、狙撃を警戒しつつ、雲川へ通信を入れつつ、作戦を考えつつも、高所の優位性を利用するために周囲を索敵していたのだ。そして、もう一人厄介な相手を捕捉したのだ。新手に対して思考力を割り当てつつも気になる言葉を口にした幼馴染へと声をかけた。
『紫苑、どうした……?』
(伊舎堂……! 南側にいたか。初動は南西部、今は南東部へ向かっている……それなら飛山チームの初動索敵は不発か……? 今のうちに伊舎堂を倒したい気持ちもあるが……距離があるな。隠蔽能力から考えて伊舎堂は再度捕捉はしやすい。何より飛山を逃せない……! 今、目が合ったな――))
フロートを足場にすることで、建物の屋上部分を飛び跳ねて移動する伊舎堂の移動先を見ながら鷹一は思考した。
『あ、うん……えっと、なんか変な気が――あ!? 飛山さんが引き返した……! びっくりした顔してる……! 東側に戻ってる……!』
(伊舎堂は俺と並行するように東側へ移動していたが、俺と目がった瞬間、南側に寄った。それに、驚いたような挙動をしているように見えたが……まさか、俺が見つかったのは『今』なのか? 最序盤、伊舎堂は何らかの理由でレーダーを使えなかった……? そして、今使えるようになり、レーダーを使い、俺を探知し、さらにそれを目視し確認した、そして同時に飛山に通信を入れて、俺に気付いた飛山は慌てて引き返した……筋は通るように思えるが……いや、どちらにしろ今は飛山だ。こっちに来てくれるかと思ったが、逃げるならば追い続けるだけだ。必ず飛山は倒す。あんな厄介な相手を見つけた以上、見逃すことはできない)
非常に速い速度で高架鉄道上を東へと駆ける鷹一。そして、鷹一には劣るものの飛山もまた高い機動力を持って東側へと逃げる。
『紫苑、俺は飛山を追う。伊舎堂はおそらく南東を調査する気だろう。大丈夫だと思うが、伊舎堂がマップ中央に来た場合、レーダーに紫苑が映る可能性がある。一応、『逆認識』にはこれまで以上に警戒してくれ』
チームメイトに注意を促しつつも、鷹一は次の盤上を読むために思考を回す。勿論、思考を回しつつも、走る速度は緩めず、同時に狙撃への警戒も怠らない。
(伊舎堂は南東を調査する動きに見える。飛山がこのまま東端から南下して伊舎堂と合流……いや、伊舎堂の戦闘力を考えると下策になりかねない。恐らく飛山は北に逃げる、か……? 北側の推定中チームのアンノウンを盾にしつつ行動し、伊舎堂と南側にいると思われる飛山チームのもう一人で南東の駒を洗う、か……? 実際、南東には西山がまだ残っている可能性がある。星川チームが不明瞭だが……先ほどからマップ北東部にいた駒の動きが妙だ。こっち側に寄っているが……妙な経路だ。これは敵に追われている、ないし敵を追っている動き。恐らく、レーダーに映っているのは西か東のどちらか。隠蔽の駒に追われるとすれば……飛山がアクセルを使っていない以上、星川は狙撃装備、よって状況的に追手は針谷。極薄い線で、星川か軽量銃撃戦装備ないしブレード特化装備で来ていてそれを飛山がまだ察知していないという線もあるが、これはかなりレアケース。逆に西か東が誰かを追ってるならば、逃げているのは姫乃・黒井・道合・狙撃星川か……? だが、道合ならば飛山の初動が意味不明すぎる。よって星川チームの誰かだ。一番面倒なケースは西ないし東が逃げていて針谷が追っているケース。このケースだと飛山チーム二人を俺が相手する必要がある)
思考しつつもマップ中央東部へと逃れる飛山を追い続ける鷹一。
そして、ついに、目視情報だけではなく、レーダーで飛山を捉えた。また同時にいくつかの新しい光点が現れる。
(ここにきて新手……高架鉄道上の光点は飛山だが、一応確認だ)
『紫苑、飛山はまだ見えるか?』
『うん。見えてるよ……! あ、レーダーにも映ってる……! 映ってるのが飛山さん……あ、あれ、いっぱい映ってる……』
レーダーに映る光点について思考を回しながらも鷹一は雲川へと指示を出す。
(北側の新手は隠蔽。位置的に隠蔽が追われていた。ということは恐らく、この新手は星川チームの誰か。南側の新手も隠蔽。誰でもあり得るが、状況的に金崎を倒した西山が北側に来たか? ここからだともう視認はできないが、伊舎堂もレーダーには映っている。やはりマップ南東側を探る動きに見える。北側の二枚、今から向かえば間に合いそうだが、しかしそれをすれば飛山は姿をくらます……)
『紫苑、そろそろ大通りに敵が現れるかもしれない。特に俺の北側の二枚は大通りを通る可能性がある。飛山も含めて、紫苑が狙えると思ったならば、狙撃して構わない』
『うん……! うに……!』
頷きつつも、雲川は魔法の言葉を唱えた。それは、精神を研ぎ澄まし、偉大なる力に触れるための重要な言葉であったが、鷹一はその言葉に関してはあまり深く考えないようにした。
そんなことよりも重大な動きがあった。
飛山が高架鉄道から飛び降りたのだ。
レーダーでその動きを認識した瞬間、鷹一もまた飛び降りた。そして飛山の動き――北側の二枚へと近づく動きに合わせて鷹一もまた北側の二枚へと近づく。
北側の二枚も飛山も鷹一も、示し合わせたように、雲川紫苑が待ち伏せする大通りへと近づいていった。