学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
『そして、ここで、倉上選手がダウンしました。追いかけっこは上村選手の勝利です! 十字路の生き残りである淡路リーダーは北東方面に逃亡しました。また南西で水渕チームを下した零リーダーは大通りを北上し、上村選手と合流の構えを見せます。水渕リーダーは戦闘開始時から南下していましたが、途中で引き返し、北に移動しました。有坂リーダーも北側へ移動。そして最強タッグ――根崎選手と五条選手は負傷させた松本選手を追いかけ南へ向かいます! そしてここで、各生徒に任務が発令されました。任務戦のお時間です!』
『濃密な序盤戦でした。試合展開が速すぎます。既に八人の選手がダウンしています。零チームが各方面で暴れすぎです』
『しかも、肝心の零チームでダウンしたのは秀川選手だけです。これからの任務戦では生き残っている人数が重要になりますので、そこでも零チームがかなり優位です』
『現在の得点は零チーム6点、淡路チーム1点、水渕チーム1点、有坂チーム0点です。圧倒的に零チーム優勢です!』
序盤戦が終わり、試合は任務を意識する中盤戦へと入る。序盤戦のおさらい、そして中盤戦におけるポイントを二年生たちが語り出す。
『残り人数的にも4人、2人、2人、1人なので、任務点的にも優勢です。というより、ほぼ零チームの勝利は決まりです。あとはそれぞれのチームが何点取れるかですね』
『再度おさらいになりますが、任務点は各生徒ごとに目標地点が与えられて、そこに向かう形になります。試合時間内に目標地点へ到達すれば1点です。その後死んでも獲得した点数は消えません。しかし、到達前に死んだら当然獲得できません! また、今回のように試合展開が速く、任務発行前にダウンすると、当然点数は獲得できません。なので、任務点の上限は残りの生きている人数ですので、零チームが4点、淡路チーム2点、有坂チーム2点、水渕チーム1点までとなります。任務達成できれば零チームがさらに点数差をつけるということです! いや! 酷いゲームだ!』
『ちなみに、試合で得たチームポイントは引き継がれます。試合ごとの勝敗はその試合内での獲得チームポイントで決まりますが、一番重要なチームランクは各試合で獲得したチームポイントの累計になります。なので、負けそうな試合でもどこまでチームポイントを稼げるかは重要です』
『そういう意味では任務点を取るために、任務発行まで生き残ることも重要なところです。まあ、今回は8人も死んでますが』
『8人死亡は結構酷い状況です。ただ、しょうがない気もします。零チームが強すぎです。瞬間火力もさることながら、機動力がある生徒が多いです。零リーダー、根崎選手、上村選手の機動力が高く、実際、零リーダーと根崎選手はこの機動力もあって撃破点を稼いでいます』
『さて、各選手動き出します。任務の地点は残念ながら秘密情報なので、私たちには分かりません。ですが、おおよそ、各チームはポイント獲得のために任務地点に選手を向かわせることが多いです』
『序盤戦で落ちたコマ、戦場の状況、得ている情報、残っているコマ、上位ランク達成のために獲得しなければいけないポイント、様々な要素がリーダーたちを悩ませます。中には個性的な決断をするリーダーもいますが、任務発行後のリーダーの選択は大きく分けて三パターンになります』
『ほうほう! どんなパターンになりますか?』
解説役の言葉を聞き、またしても実況役が無知を装い会話を広げる。
『一つ目は安全重視、生き残っている仲間で集まり、仲間ごとに一つずつ任務の場所へ向かっていきます。妨害されにくく確実に任務点を取れることが大きいですが、任務の場所次第では、時間がかかりすぎてしまい、撃破点を逃す恐れがあります。また、稀によくあることですが、任務先があまりにもバラバラすぎて全部回れないことがあります』
そこで一度言葉を切り、解説役は僅かに喉を湿らせてから次のパターンについて話し始める。
『二つ目は個別達成、各選手がそれぞれ自身の任務地点に直行します。安全重視策よりも時間的効率が良く、他チームに遭遇しなければ任務点の確保がしやすいです。欠点は安全重視のチームと遭遇してしまうと、一対複数の展開になり、撃破されてしまいます。任務達成前だと獲得できる任務点も失うのがキツイです。どちらかというと、大駒が多いチームが使う作戦です』
『最後に、三つ目は撃破重視、これは任務点を達成を狙う他チームを襲撃し撃破点を稼ぎます。上手くいけば他チームを倒した後に自分たちだけ安全に任務点を取ることも可能です。リターンも大きいですがリスクも大きく、任務点の確保に失敗することも多々あります』
『今回は、残りの駒数や配置的に安全重視は無さそうですね。淡路チーム・有坂チームは選手同士の距離がありますし、水渕チームは既に一人、そして零チームは他の選択肢の方がリターンが大きいです』
『そうですね! そして言ってる傍から動きます。水渕リーダーは西へ、そして淡路リーダーは東へ向かいます。これは任務点確保っぽい動きですが、二人はどちらも北側にいるので遭遇戦がありそうです! 零リーダーは上村選手と合流し、二人で南に向かいますが、上村選手が足を負傷しているため、動きが遅いです』
『おや、意外ですね。これは零リーダーが上村選手を守る感じの動きです。安全重視でしょうか……?』
解説役の二年生が興味深そうな声を上げた。
『上村選手が足を負傷していることと、レーダーに映っていない選手の介入を嫌っているのかもしれないです。あと、もしかしたら、単純に二人の任務先が近いのかもしれません』
『そして興味深いのは南西の動きです! 北上していた有坂リーダーは一転して南下し初期位置に戻ろうとしています。また松本選手は西へ逃亡。松本選手を追いかけていた根崎・五条選手は分かれました。根崎選手が松本選手を追いかけ、五条選手は南に向かったみたいです。これはもしや、木村選手を捕捉したのでしょうか?』
『その可能性もありますが、単純に五条選手が足を撃たれていて、その速度に合わせて根崎選手が行動すると、松本選手との距離が縮まないからだと思います。実際、今、根崎選手は尋常でない速度で走り松本選手を追います。松本選手もビル群に潜り込み、根崎選手と射線が通らないように走りますが、根崎選手の方が足が速いので、追いつかれるのは時間の問題です……って、根崎選手、どう考えても重装備なんですが、何でこんなに足が速いんですか!?』
『そういう選手もいます。基本的に重装備の選手ほど戦闘では頼りになりますが、隠蔽と機動性が落ちます。隠蔽が落ちるのは防げませんが、機動性は元々足が速い選手だと、わりと落ちないケースもありますが……でも、根崎選手は異常ですね。コレ、二年生の軽装備組くらいの足の速さです。根崎選手は少なくとも、大型バトルライフル・大シールド・軽機関銃という重装備で固めているので、ちょっと異常です。零チームは選手の質が反則レベルに強いです。これ、今年のチームランク一位は零チームで確定じゃないですかね?』
『そんな気がしますが、こんな事言ってると、もっと強いチームが出てくるんじゃないかと恐怖しています。今年の一年生怖いですね。一年分生まれてくるのが早くて良かったです』
二年生の実況・解説を聞き、雲川は体を震わせた。彼女は自身が最弱のリーダーであると知っていたからだ。一方で隣にいる鷹一は淡々と試合展開を見ていた。そして、そんな鷹一に再び匂坂が声をかけた。
「鷲島君の試合を見たら、二年生の先輩方はどんな反応をするのでしょうか?」
「……推測になるが、そこまで盛り上がらないだろう。俺の戦い方は根崎や五条のような圧倒的なものではない」
「そうでしょうか?」
「俺はそうだと認識している」
鷹一は淡々と答えた。
「フフッ、では、鷲島君の試合を楽しみにしていますね」
「匂坂。やはり、お前は俺を過大に評価している。おそらく期待には応えられないだろう」
「そんなことはありません。私は何度も鷲島君の詳細成績を読み込んでいます。恐らくですが、全てのリーダーの中で、最も鷲島君の成績を読み込んだのは私です。これに関しては自負があります」
そう言って、匂坂は少しだけ得意げな顔をした。
優し気で穏やかな少女の誇らしげな顔を見て、雲川はほっこりとした気持ちになった。雲川には、鷹一と匂坂の会話はよく分からなかったが、それでも分かっていることがある。それは、隣に座る鷹一は見た目によらず優しいし、そして鷹一の向こう側に座る匂坂はとても優しそうな外見をしているという点だ。だから、きっと悪い話はしていないだろうと、雲川紫苑はぼんやりと考えていた。
一方で、鷹一はそんな雲川の考えを読み取り、『相変わらず、すぐ気を抜く少女だな』と思った。そして、鷹一が僅かに雲川の方を見た事を匂坂は見逃さなかった。匂坂は、再び唇に弧を描いた。