学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
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二年生。Aランク2位鎮西チームのリーダー。
他人に冷たく厳しい。飛山のことを非常に高く評価している。
今回の試合では解説を担当。
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二年生。壊滅した元Aランク島田チーム所属で現Bランク生天目チーム所属。
今回の試合では解説を担当。
【
二年生。壊滅した元Aランク島田チーム所属で現Cランク神室チーム所属。
今回の試合では実況を担当。
観戦席で梶田と種村が言い合っているのと同じ時、実況・解説席に座る二年生もまた動き出した。
『さて、そろそろいい時間になったので、次の試合の事前解説などボチボチやっていきます! 実況は、この私、二年Cランク相良和真がお送りします! 解説役は、Bランクの高砂選手、そして、なんとなんと、凄い人に来てもらいました……! 二年生Aランク2位、偉そうな感じなら1位、鎮西リーダーです……! 一年生の皆、ここ拍手!』
ぱちぱちぱちと拍手が会場内に響いた。それに対して、紹介された鎮西は白けた表情で、高砂は無表情で受け止めた。
『…………』
『拍手ありがとうございます。解説の高砂です。相方二人が大型爆弾みたいな二人で、自分も基本喋らないタイプなので、今日の試合は放送事故にならないか心配です。事故になっても温かく見守ってください』
高砂と名乗った二年生はそう言って、両隣に座る実況の相良と解説の鎮西を見た。
『爆弾魔はお前のところのリーダーだろが!』
相良は素早く高砂の指摘を撃ち返した。二年生Bランクには、二年生で現在唯一刺突爆雷をメインウェポンとして使う生天目というリーダーが存在し、高砂は彼女のチームに所属していたからだ。ランクが近い故に、生天目の被害を被ったことがある相良としては打ち返さずにいられない内容であった。
『鎮西リーダー、何かありましたらどうぞ』
相良を無視しながら、高砂はもう一人の解説役である鎮西に言葉を向けた。
『おい無視するな!』
『…………』
片側からは相良のヤジ、もう片側からは無言の圧を受けた高砂は、再度内心で『今日は放送事故の日だな』と思いつつも、一応再度の言葉をかけた。
『鎮西リーダー、何かありましたらどうぞ』
『おい無視するな! あと鎮西も何か喋れ』
相良から再度の高砂へのヤジとともに、無言の鎮西へも注意が向けられる。
声をかけられた鎮西は、ちらりと二人を見た。そして、鋭く、刺すように睨んだ。
『俺に話しかけるな。雑魚ども』
『いつも通りですね』
『なんなん! こいつら!?』
鎮西の言葉に対して、高砂は納得し、相良は怒りの声を上げた。
『あー! もう! なんかムカつくけど、こいつら呼んじゃった俺にも責任があるので、頑張って実況します! もしかしたら、一年生の皆さんは、『あっ! 二年ってヤベー奴ばっかりだなっ!』って思うかもしれませんが、ご安心ください。やべーのはABEFランクだけです。CDランクはだいたいまともです。過半数まともじゃねーじゃんって思うかもしれませんが、大丈夫です。この学園はだいたいそんな感じです!
あ、ちなみに、こいつら呼んだ理由は、俺が話せる中では、まあ、強い方の生徒だったのと、あとなんか、さっきからツンツンしてる鎮西リーダーですが、なんか今日のマッチング教えたら、『行きたい!行きたい!見たい!見たい!』とか遊園地行く前の子供みたいに騒いでたので連れてきてあげました』
『黙れ、カス』
『挑発しない方がいいのでは?』
鎮西の暴言、高砂のやる気をあまり感じさせない指摘を受けつつも、それを無視して相良は観客席へと語りかける。
『ツンデレって言うには可愛げまったくない人ですけど、たぶん一年生には噛みつかないので、大丈夫だと思いまーす。それでは、私からの感想はこれ位にして、今日の試合についてお話したいと思います。
五月の第二試合、七月最初のランク更新までにある八つの試合の二番目の試合。そのAランク帯の試合になります。参加チームは、暫定二位の飛山チーム、暫定七位星川チーム、暫定八位中チーム、暫定九位雲川チームになります。雲川チームは三人チームと、二年生視点だとかなり少ないチームですね。四月のランク更新後の順位であることを考えると、かなり凄いですね。少数精鋭です。あとのチームは、四人、四人、五人、とこれまた少し少な目。がっつり五人は中チームのみとなりますが、この辺り、Aランクにずっといる鎮西リーダー的にはコメントありますか?』
話しながらも徐々に怒りが収まってきた相良は一人称を実況用に変えつつ、本日の試合の話を始め、実況役として鎮西に問いかけた。
『…………、ないな』
相良に問いかけられた鎮西は、一瞬何かを言いかけようとしたが、すぐにそれを止めた。
『なんか間がありましたね』
『時間は有限なんで、タメは少なめでお願いしまーす』
鎮西の微妙な態度に高砂が疑問を口にし、相良は一応とばかりに煽っておいた。
『黙れ、雑魚ども。人数には意味がある。それぞれのリーダーがそれぞれの戦略に基づいて人数を決める。リーダー経験のない奴には分からないだろうがな』
『でも、いつもの鎮西リーダーなら、人数不利について指摘されると思いますが、これは逆に飛山リーダーを高く評価している、ということですか?』
高砂が素早く切り込んだ。
相良は『いいぞ! いいぞ! さすが元島田チーム!』と心の中で親指を立てた。
『勝手な妄想で俺を語るな。第一、人数が少ない方が不利とは限らない。もっと広い視点で物事を見ろ。だからお前らは足を引っ張ることしかできないんだ』
鎮西の酷薄な言葉に、相良は顔をしかめた。
『試合前の解説しろや! 俺らの解説をするな! ええっと、気を取り直して、各チームの詳細解説、あ、その前に、試合のマップは先週の第一試合と同じく【第五管区南東部】、マップの南北を高架鉄道が分けているが特徴的です。高密度と低密度の地域があるため、射線や視界が通ったり通らなかったりするため、若干複雑なマップです。二年生でも、ここに慣れてない生徒は多い印象です。得意な人は得意だと思います。
参加チームに関しましては、一年生不動の二位である飛山チーム、比較的上位を維持している星川チーム・中チーム、Aランク帯とBランク帯の試合を行ったり来たりしている雲川チームとなります。これらのチームに関して、高砂選手、何か注目ポイントがあればお願いします』
『はい。チームとしてを考えると、中チームと飛山チーム、星川チームと雲川チームはそれぞれ対比できる点があるかと思われます。連携が得意な中チーム・飛山チーム、エースの活躍を支援する星川チーム・雲川チームという形でしょうか。実際、このチーム同士の組み合わせでは対戦経験があると言うのも面白いですね。ただ、やはりそれぞれ個性があって……
そうですね、たとえば、中チームは連携に特化している一方で、チーム戦術に関してはやや不安定で博打気味の印象を受けます。作戦担当が攻撃的な作戦を好んでいるのかもしれません。チーム全体としては喜多見選手以外は機動力が高いです。この機動力と攻撃的戦術と連携能力がかみ合った時の爆発力が凄まじい一方で、その歯車が狂った時の大敗も目立ちます。
所属生徒の能力で言うと西選手が頭一つ抜けていますが、それを支える南選手・東選手両名の能力も高く、中リーダーも射撃型軽装備の理想的な動きができていると思います。少々欠点もあるチームではありますが、一年生の五月ということを考えると普通にレベルが高く、Aランクというのも納得できます。いえ、むしろ逆にこれほど強いチームであってもAランク10位というのは、今年の環境の厳しさを示しているのかもしれません。
個人的には一番気になってるチームです。あと、たまたまだと思うんですけど、名前が方角の選手が多いのも気になりますね。まあ流石に方角で決めたわけではないと思うんで、たまたまだとは思いますけどね』
相良に促された高砂は、流れるように中チームについての考えを述べた。
『ありがとうございます。個人的には、このチームは方角で名前を決めたような疑惑が、正直私にはあります。理由は中リーダーの顔立ちが、二年生の某爆弾魔と似ている感じがするからです。ただ、爆弾魔の所属選手が、たった今、『方角で決めたわけではない』と申していますので、私はそれを信じようと思います。えー、では、その他チームについて語られること、語りたいことあるでしょうか? 高砂選手』
思ったより高砂が話をしたことに少しの驚きと少しの納得を感じつつ、再度、相良が高砂に解説を促した。
『1チーム解説したので、順番的に鎮西リーダーに話振った方がよくないですか?』
『――と、高砂選手から指名が入りましたが、鎮西リーダー、お考えをどうぞ!』
相良がチャンスを活かし鎮西へと話を振る。
『あ、自分のせいにしましたね』
『ないな。そもそも論評するような試合でもないだろう』
高砂が淡々と言葉を口にし、同時に、鎮西も興味なさげに相良の質問に答えた。
『はい! 出た! 強者ムーブ! 偉そう! なんで論評するような試合じゃないですか? というか、解説なんで、仕事してください! 解説、解説、解説!』
『喚くな雑魚。そもそも、これまでの試合の流れを結果を見ろ。論ずるまでもなく勝敗は分かっているだろ。仮にも元A――いや、お前ごときを元Aランクと評するのも違うか。仮にも元寄生虫なら、自分のマッチング経験から答えを導け』
次々と早口でまくし立てる相良に対して、鎮西は酷薄に答えた。
『あのー、すみません、実況と解説は仕事なんで! 仮にどのチームが勝つか分かっていても仕事をやめる理由にはならないんですよね! というか、どのチームが勝つか、この試合は読めないですよ……! どこが勝つか私は未だに悩んでます……!』
『あれ、相良選手、悩んでます? 自分は飛山チームが勝つと思ったんですが……』
相良の言葉に対して、高砂が口を挟んだ。そしてその言葉に相良は驚いた。
『え、ちょ、そこで裏切るの? てか、おまえ、さっき中チーム応援するって言ってたじゃん。そっちも裏切ってるじゃん。俺と中チームへの二重の裏切りじゃん』
『あ、いえ、一番気になるチームですけど、試合的には飛山チームが勝つかと。戦力も戦術も飛山チームが飛びぬけています』
高砂の言葉を聞いて、鎮西は鼻で笑った。
『分かったか? 雑魚。お前の雑魚仲間もそう言っている。この試合は飛山チームが勝つ。それ以外の結果はない。論評するまでもない』
『まあ、説明はした方が良いと思いますが』
高砂の呟きに鎮西は答えなかった。
『……ええっと、待ってどうしよう。本当に放送事故っぽくなってきた……どうしよう、本当……ええっと、じゃあ、もうしょうがないから、俺が今から星川チームの解説するから、高砂が雲川チームの解説して、んで、鎮西は飛山チームについて語って。どうせ、飛山チーム好きなんでしょ? 好きなチームくらいなら語れるでしょ? じゃあ、俺からいくよ。ええ、ごほん……』
協調性がない二人の解説に困りつつも、相良は何とか道筋を立てた。そして一拍置いてから、星川チームの解説を始めた。
『……では、星川チームですが、高砂選手の言う通り、エースの西山選手の活躍を支援するチームです。ただ、雲川チームほどエースに特化しておらず、星川リーダーも獲得得点が高いです。
エースというより点取り担当の西山選手、対応力と戦闘力に長ける星川リーダー、サポート能力の西山選手・姫乃選手という形がより正確かもしれません……! 西山選手は近接型ですが、『ウルミ』使いですね、これも珍しい。わりと使い手が少ない武器で、二年だと確か一人しか使ってないです。あー、まあ厳密には某爆弾魔がたまに使いますが、実質的に常用してるのは一人です。噂に聞くところ、一年生はウルミ使いがそこそこいるらしいので、一年生は魔力だけではなく技術力も高いですね……! 西山選手は、ウルミで崩しブレードでトドメというスタイルの他、ブレード突撃を必要なタイミングで使う点取り担当です。あとダブルアクセルを使えるっぽいので、その辺りも普通に凄いですね。
星川リーダーは、かなり色々な武器を器用に使うタイプの生徒です。いや、本当に器用、おまけにシールドも上手で機動力もあり、試合ごとに役割を柔軟にこなしています。こういうタイプの生徒は貴重で、しかも選手じゃなくてリーダーというのが珍しい印象を受けます。
星川チームは全体的に技術力が高いので、個人的には応援しているチームです……! というか、わりとワンチャン勝ち目あると思います。飛山チーム以外のチームにも今回勝ち目があると私は思っていて、星川チーム・雲川チームは十分可能性があると思います……! ええっと、じゃあ次、高砂選手、雲川チームの解説をお願いします……!』
『了解です。雲川チームですが、こちらは星川チームをより偏らせたチームです。星川チームは星川リーダーの得点も大きいですが、雲川チームはこれまでの29点の得点のうち、なんと21点が鷲島選手によるものです。また雲川チームは第一試合に欠場しているという剛のチームなので、鷲島選手の一試合あたりの平均得点は5点越えになります。
一年生は試合数がまだ少ない方なので偏りもあるでしょうが、それでも平均5点を超えているのは、やや異常な面があります。特に、鷲島選手は高ランクでの戦いが多く、また今年の一年生は歴代最強疑惑もありますから、その中で、これほど高得点を維持するのは凄まじいことです。
そして鷲島選手は、戦い方も特徴的な選手です。一言でまとめると高機動近接型なのですが、素の機動力が速すぎる点、非常に高いブレード技術と、圧倒的なアクセル制御技術、また分散シールドによる防御力や生存性も高く、単に高機動近接という枠に収まらない強さを持っています。ハンドガンを利用した奇襲攻撃や、それを絡めたブレード投擲や独特の歩法による突撃など、特異な戦い方も多い選手です。
あ、あと、これは自分のチームのリーダーからの伝言ですが、『何度も殺しの検定持ち絶殺グリッチャー』という渾名を、鷲島選手に贈りたいようです。当然、受け取り拒否してもらっても大丈夫です。雲川チームはこのように圧倒的な技術力と戦闘力を持つ鷲島選手が暴れまくり、その鷲島選手を、雲川リーダーと金崎選手が支えるという動きが多いです。雲川選手は狙撃を、金崎選手は偵察を得意としています。こんな感じでいいですか?』
どこか他人事のような雰囲気を出しつつも高砂が雲川チームについて話し、そして途中で、今のリーダーからの伝言を思い出し、それを付け加えた。
『もうちょっと雲川リーダーと金崎選手について語ってもいいんだよ?』
笑顔を作りながらも相良が高砂に話しかけた。
『相良選手は、黒井選手と姫乃選手について語りましたか?』
高砂は無表情で言葉を返した。
『あー、もー、高砂はさぁー、お前ほんと、昔からそういうとこあるよな……! もういいや、次、鎮西、どうせ、飛山チームのこと語りたくてうずうずしてるんだろ? いいよ、好きに語って』
『なぜ、俺がお前の指示に従うと思っているんだ?』
解説を促す相良に対して、鎮西は冷酷な雰囲気を崩さず言葉を紡いだ。
『いやいやいや、俺が実況でお前が解説だからだよ。お前ほんとちょっと恥ずかしいから。あと一年生引いてるから、引いてるから。ていうか、時間押してるから、語って、語って、飛山チームについて語って! というか、飛山チームが勝つと信じてるなら、強さとか、なぜ勝つのかとか説明してもいいだろが!』
『まったく……この低能を採用したことが島田の人生で二番目の過ちだな。飛山は戦術の量・質の両面で秀でている。多彩であり、そして一つ一つが洗練されている。戦術の妙を極めていると言っていい。一年、いや、僅か一か月でこれほどのリーダーはいないだろう。魔力はそれほどではないが、戦闘能力も優れ、チームメイトもよく訓練している。総合的なリーダーとしての技量は俺とそう変わらないだろう。
ただ駒に関しては少し甘いな。今の一年Aランクの環境におけるエース級がいない。狙撃手の道合は成長性こそ異常だが、これを最初に勧誘しエースに育てた理由が分からない。針谷と伊舎堂にしてもそうだ。最低限のモノはあるが、飛山ならもっと良い駒を取れただろう。あいつは少し甘いところがある。Aランクで匂坂チームとトップを争うならば、甘さは捨てるべきだな。
まあ、だが今回に試合に限って言えば、問題はない。中チームと星川チームは飛山チーム相手に勝負にならない。頭の差がありすぎる。読み合いで飛山に勝てるわけがない。投入で多少飛山が不利になっても、その不利を一瞬で覆す強さが飛山にはある。
しかも中チームと星川チームに至っては戦力でも飛山チームと同等以下だ。戦力でも戦術でも劣る以上、これらのチームに勝ちはない。状況把握能力、判断と指揮の的確さ、状況に応じた戦術の利用、全体を動かし勝ちの絵図を浮かべる能力、これまでの試合のデータを見るに、星川も中も、飛山に比べれば圧倒的に劣る』
『あのー、ヘイトスピーチやめてもらっていいですか?』
『全て事実だ』
相良の困惑と批判を、鎮西は一瞬で切り捨てた。
『いや、あの、まあ、語れっていったのは俺だけどさ、飛山チームの良いとこアピールしろって言っただけ、星川チームと中チームを叩けって言ったわけじゃないんだよな。
ていうか、もうお前、飛山チームすら叩いてるじゃん。褒めてるの飛山ちゃんだけじゃん。何? そんな好きなの? なんか、Aランクの高級スパでめっちゃ楽しそうにお前が飛山ちゃんと話してるって噂あるの、あれ本当なの? 言っとくけど、楽しいのお前だけだよ。たぶんだけど、飛山ちゃんはお前と話しても楽しくないと思うよ。だってお前、偉そうだもん。たぶん飛山ちゃん、先輩立てて上げてるだけだよ。いや、まあ俺は話したことないからよく分からないけど。あとさ、言っとくけど……あー、やべ、俺までこいつに引きずられてきた……
ええっとですね、普通に、中リーダーと星川リーダーは、優秀ですよ! 二人ともそれぞれ個人の動きや、チームの動きを見るに、高い戦術能力と指揮能力を併せて持っています。勿論、飛山リーダーも優秀なリーダーではありますが、三人の差はそこまでかけ離れたものではないでしょう!』
『そうだな、大した差ではないかもしれないな。お前が、人間と犬の知能の差を大したことないと思うならそうだろう』
『クソみたいな例え話入れてくるじゃん。てか、犬に例えるのは本当にヘイトスピーチなんで止めてくだーい!
あと、なんか雲川チームについては言及しなかったみたいですけど、そこ泣き所ですか? ですよね? 有名ですもんね、鷲島選手。鷲島選手は本当に優秀な選手ですよね! 高い近接能力に機動力、高砂選手も言ってましたけど、本当に凄い選手です! てか、あの四宮選手がべた褒めしてますからね……! これは、飛山チームに対する、強いカウンターになるんじゃないですか!?』
相良の指摘――『四宮』と言う言葉に鎮西は強く反応した。不快そうに眉を顰めて、そして普段以上に周囲に圧を飛ばした。
『雲川チームの鷲島も強さと人気が独り歩きしているだけで、実際の試合での動きを見ると粗が多く隙だらけだ。飛山なら簡単に隙を突けるだろう。こんな欠点塗れの鷲島を、あれほど持ち上げるとは……四宮の眼力も落ちたな』
『すげぇ! マブダチの四宮の論評すら否定し始めたよ……! 独裁まったなし!』
『黙れ雑魚』
相良の言葉を、またしても鎮西が切り捨てた。
『飛山ちゃんの話じゃなくなると急にボキャ貧になるじゃん』
相良の指摘を鎮西が鼻で笑うが、そこに、それまで沈黙を貫いていた高砂が口を挟む。
『あ、盛り上がってる所すみません。鎮西リーダー、もしよければ、飛山チームの勝つ流れや、使用されると思われる戦術、鷲島選手に対する対抗策など、考えられるものを教えてもらってもいいですか?』
丁寧で、それでいてどこか他人事のような口調。そんな高砂の言葉を聞いた鎮西は、一拍間を置いてから、言葉を作った。
『……初期配置や各チームの初動によって戦術は変わる。特に飛山のように多彩な戦術を使い分けるタイプには、事前の予想など意味は無いが……そうだな、飛山はまず、鷲島の位置の特定と、その初動から奴の考えを読み取ろうとするだろう。同時に優先度は下がるが、他のチームの駒の位置の特定と、初動の分析を平行して行う。そして、この初動の間に、隙を見せた駒を何枚か落とすだろう。
ただ、今回の試合は、全隠蔽もあり得る。そうなれば飛山チームの初動攻撃は遅れる可能性はある。といっても、飛山チームは索敵力がある上、飛山の分析能力と対応力は特級だ。最序盤で最低でも二枚は落とせるだろう。そして、この序盤の攻撃と各チームの初動分析から盤上を整え、勝利に導く流れを作る。そういう意味では飛山は、今回もいつもと同じ流れを踏襲するだろう。
鷲島の処理が少し面倒ではあるが……最悪放置して数点を恵んでやることも飛山は考えるだろう。雲川チームのような『穴』がAランクに残留した方が、飛山は得だろうからな。後は、飛山チームの誰かを囮にして鷲島を引きつける策もあるな。意志薄弱な鷲島の精神を突くという手もある。まあ飛山が生きていれば、他の駒は多少死んでも巻き返しがつく。あとはそうだな……敢えて言うならば、序盤、道合を伏せて戦うだろうな。チーム戦で考えても、対鷲島と考えても、ベターな選択だ』
『……鷲島選手は精神的に強い選手と四宮選手は言っていましたが、鎮西リーダーは別の考えをお持ちですか?』
高砂が淡々と問いかけた。
『鷲島はチームメイトを気にし過ぎる。悍ましい程に。意志薄弱を絵に描いたような存在だ。もう少し意志が強ければ見てやれなくはないが、『雑魚を切り捨てる』という基本すらできないとなると、AランクどころかBランクすら危うい』
『…………鎮西リーダーらしい考え方ですね』
『……、…………』
鎮西の冷淡な言葉。それに対して、高砂は、これまでとは違い、少しだけ感情が籠った声で納得を示した。そして、相良は言葉が出なかった。
本来なら、いつもの相良であれば、即座に『偉そう!』『上から目線の解説!』などと言ってヤジを飛ばしただろう。しかし、それはできなかった。
なぜなら、鎮西の表情――冷たさの中に、どこか哀愁を感じるような表情を見てしまったからだ。
それを見てしまったが故に、相良は無言になってしまう。そして、基本的に口数が少ない高砂と、塵芥相手に言葉を交わさない鎮西では話題を広げることはできない。
相良が再び話し始めるまでの少しの間、実況解説席は沈黙に包まれた。
一部の一年生は『本当に放送事故みたいになっている』と思ったのであった。
※
これまで見た中で一番無茶苦茶な実況解説だな、と種村は思いながらも隣に座る少女を見た。
リーダーであり、腐れ縁である梶田霰は、見るからに苛立っていた。
「――低魔力の浅はかな考えね」
そう言うと梶田は威嚇するように種村やその後ろにいる有賀・樋口を見た。神岡チームの二人は素早く視線を落とし無言を貫いた。そんな二人の気配を感じ、種村は仕方がないとばかりに言葉を作った。
「いや、あの人、結構魔力あると思うぞ」
しっかりとしたような口調に反してふわふわとした種村の言葉を聞いて、有賀は内心で驚いた。
「種村、あんたぼんやりし過ぎて、魔力探知能力まで衰えたようね。あの程度の魔力、四等級魔力である私と比べればゴミみたいなものね。低魔力がいくら集まっても高魔力には勝てない。第一、飛山チームなんていう軟弱なチームの勝利を確信するなんて、愚かで考えが浅いわね。所詮、投入運で二位にいるチーム。全力で当たれば私たちが勝つし、まあ私たちには劣るけど鷲島がいる以上、私の下僕チームが勝つわね……金崎もいるし」
「いや、あの人、二等級かワンチャンそれ以上ある……ていうか、今回の試合、中さんのところも星川さんのところもそこまで魔力ないから、魔力総量なら飛山さんのチームが一番じゃない? 道合さんと伊舎堂さんがいるし」
種村のほのぼのとしつつも妙に冷静な回答に、梶田はさらに苛立った。有賀は内心で、『種村はわざとやっているのか』と判断に迷った。
「種村、不敬よ。あんたも四等級の端くれなら弁えなさい」
言葉と共に、梶田は、『冷酷な支配者の圧』を種村へと飛ばした。しかし、もはや慣れている種村には効果がなかった。単に、『また不機嫌になったな』とだけ種村は思った。
「いや、意味が分からん。お前は何を言っているんだ……?」
その言葉を言い終わった後、種村はふと、もしかしてと気づきを得た。
(ん? これ、あれか……! 梶田なりに雲川さんたちを応援したいのかな? なんだ、こいつ、素直じゃないな……ん? あれ、もしかして今まで金崎君の訓練に口を出してたのって、もしかして、梶田なりに気を遣ってたりしたのか……? いや、そんなことないな、梶田だし。どうせ、その日の気分で決めただけだろ)
あまりにも遅すぎる気づきであった。そしてまだまだ、種村は気づけていないことばかりであった。
そんな超高魔力の二人を横目で窺いつつも有賀は、二年生の言葉から思考を深めた。
(確かに、飛山チームは強いし、勝つ可能性は高い。僕も、そう思う。中チームと星川チームもに対する考えも、そこまで違わない。五月第一試合での姫乃の振る舞いは少し気になるけど、たぶん大局には影響を及ぼさないと思う、少なくとも今は……ただ、鷲島の評価は僕とは違うな。彼は、隙も粗も無い人に見える。それに人気も強さに比べれば少ない方だ。チームメイトを気にかけているというより……単純に野心や欲望が希薄な人なんだと思う。そして、それはむしろ強さだ。目的に拘束されない、拘束されるべき目的が本人の強さに対して極端に低いんだ。それは彼の戦略や政略の自由性を強くする。『読みにくい』はそれだけで強さだ。たぶん、しがらみが少ないだけで、そこまで甘い人ではないと思う。むしろ、切り捨てる時は一瞬で切り捨てるタイプに思える……まあ、これは少し外見的な雰囲気に頼り過ぎる考えかな……? 神岡が言うには、かなり理性的で平和的なタイプのようだし、見方によっては『甘い』と評価するのも間違いではないのかもしれない。でも僕は、あの強さで平和的な考えをしている上に、理性的な人格っていうのは、あまりにも強すぎるし、警戒に値する人だと思うけど……)
そして、三人を観察していた樋口もまた無言で思考を回していた。
(有賀君はたぶんかなり色々考えてる。恐らく、今は黙っておく方がいいかな。本当はもう少し、種村さんと梶田さんとは話してみたいけど……有賀君の足は引っ張れない。金崎君は大丈夫かな……第一試合では厳しい結果で、気にしてるみたいだったし、今回は強い相手が多い。投入次第だけど、第一試合と同じことになっちゃうかも……それに梶田さんの期待も、もしかしたら今の金崎君には重荷になってるかもしれないし……自分が何かした方が……? でも、同盟でもないチームに近寄り過ぎるのは嫌がられるかも……雲川さんは気にしないかもしれないけど、鷲島君は気にしそうだし……どうしよう……?)
チームの参謀の有賀の足を引っ張らないようにしつつも、友人である金崎の心配もする。そんな樋口の穏やかな思いとは裏腹に、金崎飛燕の新たな試練の場となる五月第二試合の開始が刻一刻と迫っていた。