学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第一試合観戦⑥ 決着

 

『おっと! ついに追いつきました! 松本選手を捉えた根崎選手が大型バトルライフルを発射! 松本選手がハチの巣になりダウン! と、なんとここでほぼ同時に南側にいた木村選手が動きました。一気に北側に動き出します! 五条選手が慌てて木村選手を追いかけますが……! あ! 木村選手! ダウンです! ヘッドショット! 潜んでいた有坂リーダーの狙撃です! 上手い! そしてすぐに有坂リーダーは建物から飛び降り、大通りを西側に走ります。五条選手は慌てて東側に移動してますが、時すでに時間切れ! 木村選手は死んでます!』

 

『今の狙撃は上手かったですね。有坂リーダーは通信担当っぽかったですし、おそらく隠蔽装備で固めてます。隠蔽装備は狙撃とも相性が良いので、上手く装備を選んでますね』

 

『ただ大通りを西側に逃げるのは……あ、根崎選手が北上しました。これは狙撃で場所が割れましたね。急いで移動していますが、このままだと根崎選手とぶつかります』

 

『有坂リーダーもレーダーを持ってそうなので気付きそうですが、そのまま西側へ! そして南から根崎選手が出現! 有坂リーダーの進路を妨害し、またしても大型バトルライフルで射撃! 有坂リーダーはシールドを展開しながら回避しますが……! ダメです! 有坂リーダー、ダウン! これで有坂チームは全滅です!』

 

 有坂チームの全滅により、残る盤上の駒は零チームの零・上村・根崎・五条、淡路チームの淡路、そして水渕チームの水渕だけとなった。

 

『松本選手と有坂リーダーの動き的に、無理やりな西進だったので、二人とも任務点が西側っぽかったですね。任務点が取れたかどうかは試合終了後に分かります』

 

『それまではお楽しみですね! さて南西方面以外も試合は動いています。西の大通りでは零リーダーと上村選手が頑張って少しずつ南下しています。そして水渕リーダーは淡路リーダーと遭遇することなく植物園の近くまで来ました。任務点目当てっぽい動きです。そして淡路リーダーは……! うぉお、凄いところにいる! 高速道路! 高速道路です! マップ東端の高速道路を南下しています! どうも気付かぬうちに凄い速度で移動していたようです!』

 

『恐らく、アクセルを使って移動しましたね。移動速度が速いです! しかし、目立つところを通っているので気付かれました。根崎選手が大型バトルライフルから軽機関銃に装備を変えました』

 

『あ! これは! 根崎選手の掃射です。建物が間にありますが、無視して撃ちまくりです! しかし、距離と遮蔽物があるためか、命中はしません。そして淡路リーダーはさらに加速してマップの南東端に! これは、もしや、任務場所でしょうか!?』

 

 実況役の二年生の予想は正しかった。淡路の任務地点はマップ最南東であった。

 

『凄い場所選ばれましたね。任務場所はランダムで決まるようですが、それにしてもマップ端とは運が悪い』

 

『五条選手、根崎選手は淡路リーダーを追い詰めるべく南東に移動します!』

 

『単純に考えると零チーム優勢ですが、淡路リーダーには【ブレード突撃】があります。しかも、上村選手は恐らく淡路選手の【ブレード突撃】を見ていないので、根崎選手にとって初見殺しになりそうです』

『おお! これはワンチャンあるかもしれません淡路リーダー! そして、淡路リーダーは高速道路を降りてマップ南東部のオフィス区画に入りました』

 

『遮蔽物も多いので、根崎選手の攻撃を防ぎやすいです。そこから【ブレード突撃】に持って行けば根崎選手を倒せる可能性もありそうですが……ただ、根崎選手には拡張弾倉があります。また足が死んでますが、近くに五条選手がいます。安全策なら五条選手と足並みを揃えて、軽機関銃+拡張弾倉のコンボでオフィス街ごと淡路リーダーをなぎ倒すという手もありそうです』

 

『ああ! その手がありますか! そうすると厳しそうですが! そして言ってるそばから根崎選手が五条選手と合流! これは薙ぎ払い戦術やりそうですが……! おっとここで、淡路リーダーはさらに西側へ抜けます!』

 

『そうですね。淡路リーダーとしては五条選手の足負傷は宮田選手との通信で知ってるはずなので、この手が取れます。西側に逃げて一時潜伏でも良いわけですし……』

 

 解説役の言葉の途中、戦場で根崎が動いた。

 

『いえ! 根崎選手も動きました! 五条選手を置いて単独で淡路リーダーに仕掛けるようです!』

 

『逃げられたくないようですね。ただ、今、西側には零リーダーと上村選手もいるので、そっちから挟めそうですが……』

 

『おっと、ここで零リーダー動きました! 上村選手を置いて一気に東側へ移動! 間違いなく狙いは淡路リーダーです』

 

 一連の動きにより、淡路を中心に北からは根崎、そして西からは零が迫る形となった。

 

『根崎選手と零リーダーで挟む感じ? あれ? でも、これ零リーダー間に合わないような』

 

『間に合いません! 根崎選手と淡路リーダーが会敵! 根崎選手はバトルライフルで淡路リーダーを射撃! 淡路リーダーも射撃で返しますが、これは根崎選手が圧倒的有利! 淡路リーダー大ダメージです! あ! ここで【ブレード突撃】です。淡路リーダーが根崎選手の足を切断して、そのまま前進離脱! これは後ろにいる五条選手を狙っ! あ! 淡路リーダー、ダウンです! 根崎選手は足を切られながらもバトルライフルで淡路選手を射撃! トドメを刺しました!』

 

『今の攻防、凄かったです。淡路選手は根崎選手の意識の隙を突き、【ブレード突撃】を決めました。ただ、根崎選手も直前で気付き、ギリギリ回避。致命傷部位を避けて足負傷に留めた上で、淡路リーダーを仕留めました。淡路リーダーの【ブレード突撃】の技量は非常に高いですし、それをいなした根崎選手も異常です。ちょっと根崎選手が異常すぎますね』

 

『はい! 異常な一年生たちです! そしてこれで淡路チームも全滅です。残っているのは零チームの四人と、潜伏している水渕リーダーのみです。水渕リーダーは一度も戦闘をしていないため無傷ですが、零チームは根崎・五条・上村の三選手が足を負傷しているため動きにくいです。お! ここで零リーダーが北上しました! 凄い速さでマップ北東へ移動していきます!』

 

 足を負傷した上村・五条・根崎を置いて、零は一人で全速力で動いた。これは少なくなった残り時間で任務点を確保するためだった。

 

『方向的に水渕リーダーを捕捉した訳では無さそうなので、恐らく任務点ですね。どうやら零リーダーの任務点は北側だったようです。ということは任務発行直後の動きは上村選手の護衛でしたね。試合会場から見ると、完全に無駄な行動ですが……零チーム視点だと、おそらく水渕リーダーと有坂リーダーがレーダーに映ってないと思うので、それを警戒したんだと思います』

 

『個人的には、もうちょっと判断早くしたほうが良かったですね。根崎選手の足が切られ損感あります』

 

『北東に向かった零リーダーはここで西側へ移動! もう残り時間一分くらいですが、何かやるようです!』

 

『おそらく生き残っている生徒――水渕リーダー探しですね。零チームは動けるのがもう零リーダーだけなので』

 

『見つかりますかね?』

 

『難しいと思います。残り時間も、あ……』

 

『おっと! ここで試合終了です! 最後、ちょっと動きが薄かったですが! 凄い試合でした! そして得点の発表です! 中央画面と手元端末に、各選手の得点とチームの獲得得点が表示されます! ご確認下さい!』

 

 鷹一が端末を覗くとそこには次のような表示がされた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

試合結果:零チームの勝利

獲得得点

零チーム:撃破点9点+任務点2点=11点

淡路チーム:撃破点1点+任務点1点=2点

水渕チーム:撃破点1点+任務点1点=2点

有坂チーム:撃破点1点+任務点0点=1点

 

詳細得点

零アリシア:撃破点2点+任務点1点=3点

根崎彩:撃破点5点+任務点0点=5点

五条愛:撃破点0点+任務点1点=1点

上村聖:撃破点1点+任務点0点=1点

秀川明:撃破点1点+任務点0点=1点

淡路高広:撃破点1点+任務点1点=2点

……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 試合結果を見ながら、鷹一は先日の零の言葉を思い出した。

 

「圧勝だな」

 

 そして、自然と言葉を漏らした。

 

「ええ、結果だけ見ると零チームの圧勝でした。選手一人一人がとても優秀でした。おそらくAランク候補となる筆頭チームでしょう。私も今からでも零さんとは仲良くした方が良いかもしれません」

 

「……そうだな。Aランクともなれば、かなりの好待遇だ。Aランクの選手やリーダーと関係を持っておくのは、この学園において良い選択だろう」

 

「鷲島君が仰るのでしたら、確実ですね」

 

「……ただ、お前にはあまりメリットが無さそうな行動かもしれないな」

 

「…………、それは、どういうことでしょうか、鷲島君?」

 

「それはお前が…………いや、すまない。これは俺の勘違いだ。忘れてくれ」

 

 鷹一が言葉を濁し、それと同時に実況の声が再び大きく響いた。

 

『はい! 試合結果は、11-2-2-1で零チームの勝利です! いやー、強すぎでしたね、零チーム!』

 

『ええ、運に恵まれた面もあったとはありますが、非常に地力が強いチームでした。特に序盤の水渕チーム三名撃破と、淡路チームの二名を撃破した点が戦況に大きな穴を開けました。これにより東西の戦場の主導権を握った形になったのが試合展開を決めたと思います』

 

『気になった点としましては、零リーダー・淡路リーダーのブレード突撃が個人芸として一年生とは思えない程の切れ味でした。また根崎選手・五条選手の軽機関銃+重シールドの攻防一体の技は非常に強烈で、おそらくこの会場にいる人たちの大半の記憶に焼き付いたと思います。あと根崎選手に関しては単体でも非常に優秀な選手で1対1の状況で次々敵を打ち取っていたのが印象的でした。彼女、この試合だけで5人倒してますからね。それに、ブレード突撃にもある程度対処できており、一年生としては考えられない程完成されている火力役の選手です。メタ読みかもしれませんが、入学成績の戦闘適性順位の一位か二位の選手ではないでしょうか。あと、1対3で粘った秀川選手や、1対2で圧勝した零リーダーも非常に強力な駒であり零チームは、チーム戦ランク1位候補筆頭と言っても過言ではないでしょう』

 

『負けてしまいましたが、水渕チームの連携能力は良かったです。これは完全に、相対した秀川選手と零リーダーが強すぎました。また淡路リーダーの判断力と肝っ玉はなかなかのものです。有坂チームも暗殺チャンスや狙撃チャンスなどを積極的に狙っていった点は、一年生とは思えないほどのチームです。というか、これが入学一週間のチームとは到底思えないですね』

 

『はい! お二人とも、講評ありがとうございます! また、今回はチーム戦により各チームに報酬が振り込まれます。一年生の四月の報酬形態は結構謎でして、まず参加賞として全てのチームのリーダーに2万ZPが振り込まれ、さらに、勝利したチームのリーダーには10万ZPが振り込まれます。なお、この報酬形態は四月のみです。五月からはまた変わるので一年生の各リーダーはよくよくご確認下さい!』

 

 試合の解説も終わり、ぽつぽつと生徒たちが会場から退出し始める。そして、その動きに乗るように匂坂もまた立ち上がった。

 

「それでは、鷲島君、紫苑さん。学園で何かありましたら、その時はよろしくお願いいたします」

 

「ああ、こちらこそ、その時はよろしく頼む」

 

「う、うん……キッカさん、またね……」

 

「ええ、また…………一つ、大事な事を話忘れていました」

 

 二人に背を向けて立ち去ろうとしていた匂坂だったか、途中で足を止めて、二人に、いや、鷹一に振り返った。

 

「鷲島君。もしよろしければ明日に試合を見に来てください。私のチームが午前中に出場することになっています。……応援、していただけると、嬉しいです」

 

 匂坂は、僅かに頬を染めた。

 

「すまない。チームのことで忙しいから会場では見ない予定だ。ただ、アーカイブには目を通しておく」

 

 鷹一の淡々とした言葉に対して、匂坂は表情を変えなかった。一方で隣にいた雲川は『え! 断るの!』と驚いた。

 

「直接、リアルタイムでは見ていただけませんか?」

 

「悪いが、忙しい」

 

「そうですか……残念ですが、仕方がありませんね。せめて、鷲島君がアーカイブを見る時にがっかりさせないように、精一杯、明日の試合に取り組みますね」

 

 そう言って、今度こそ匂坂キッカは観戦会場をあとにした。

 

「な、何で断ったの……?」

 

 雲川が恐る恐る鷹一に問いかけた。

 

「忙しいからだ。今日の試合の再確認と各チームの戦略・戦術の分析、各選手の力量の分析。他にもチームメンバーの勧誘に実戦準備、やることは多すぎる。まずはそれらを片づけてからだ。それが終わったら匂坂のチームの動きと弱点を調べる」

 

「じゃ、弱点……キッカさん、あんなに良い人なのに……?」

 

「良い人であっても、別のチームというのは潜在的には競争相手だ。そして、ついでに言うと、匂坂は危険な……いや、これはいいか。兎に角、匂坂のチームについての分析はいずれ行うつもりだ。まあ、俺たちのチームでは匂坂のチームと戦う機会は無さそうではあるがな」

 

「? どうして?」

 

「匂坂は強すぎる。先程実況で言われていた根崎とは比べ物にならない程だ。いや、俺が今まで見たどの生徒よりも強い。奴は本物の化物だ。人間じゃない。そしてそんなやつが率いるチームを人間の基準で考えるべきではない。恐らく、匂坂チームこそがチームランク一位候補筆頭だ。ゆえに、匂坂のチームはAランク帯で戦うことになるだろう。Bランクを目指す俺たちとは関わらない可能性が高い。匂坂チームと関わるのは、零チームか、あとは飛山チームとかその辺りだろう」

 

「キッカさんは化物じゃないよ……優しいよ」

 

「分かった。訂正しよう。優しい可能性を持った最強リーダーだ」

 

 不満そうな顔をする雲川を見て、鷹一は匂坂についてもう一つ言うべきか悩んだことがあった。しかし、すぐに『余計に話がこじれるな』と思い、口を閉ざした。

 

 

 

 

 そして翌日、驚くべき試合結果に観戦会場が、いや、一年生全体が騒めいた。

 曰く――匂坂チームが14-0-0-0の完全試合を成し遂げた、というものだった。

 

 

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