学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
第二試合終了後、中チームの面々は『緊急対策会議』を開いていた。中チームの『対策会議』とは即ちただの『お笑い会議』を意味する。しかし、僅かに毛色が違うときがある。それが試合終了後の『対策会議』だった。試合終了後に『対策会議』が行われる場合、普段とは違い、直前の『試合ネタ』が中心となるため、自然と、反省会の要素を帯びてしまうのだ。つまり、東の発言にいつも以上に付加価値がつくのだ。
勿論、東の発言の付加価値がついたとしても基本的にお笑い会議であることには変わりはない。最初の議題は、『中が変顔で投げ銭を稼いだこと』であった。今回の中チームの収益の半分以上が中個人の投げ銭だった。そのことに西と南は怒りで我を忘れそうになった。
――変顔で稼ぐのはズルい。『おもろ』としての諧謔がない。もっと『高等おもろ』してほしい。
そういった意見が次々と挙げられた。中は、チームメイトの意見を『客のおもろレベルに合わせるのも大事だから。自分勝手なおもろをしてはいけない』という言葉で制した。なお東は一人、『お前らはいつも自分勝手なおもろをしてるだろ』と思ったが、口にすれば一時間以上口論することになると感じていたため黙っていた。
前哨戦が一段落してようやく東がまともな話題を口にすることができた。
「そもそも何でお前は曲射砲を撃ったんだ。俺は何度も不用意に撃つなと言ったはずだぞ」
厳しい目で東が南を見た。
「
「金崎を見くびり過ぎだ。いや、そもそも問題はそこじゃない。鷲島や道合がいる試合で不用意な行動は自殺行為だ。というより、実際、自殺だった。お前は何を考えているんだ」
「いや、逆に道合の狙撃で負けたら元祖メテオシャワーっぽくて元ネタリスペクトでおもろいかと思って……」
南の言葉に対して、東よりも早く西が反応した。
「いや元祖は道合に勝ってるから、んで針谷に負けてたから、ちゃんと元ネタサーチして」
「私はオタクじゃないからいちいち元ネタサーチとかしてらんねーよ! 短期間でどぱどぱしてーんだよ……!」
「あー、これは末っ子ですね、間違いないです」
西が飽きれたような声で答えた。
「おいごら! 私はお姉ちゃんキャラだぞ! というか、西も黒井を倒すのに時間がかかり過ぎなんだよな。さっさとブレード突撃して、どうぞ」
「いや、俺だってそうしたかったけど、道合がいるしワンチャン星川あたりが狙撃する可能性もあったから、警戒でアクセル使えねぇんだわ。まあいなかったけど。てか、こんなことならもっと前からアクセル使えばよかったわ」
「結果論としてはそうだが、道合がどこにいるか分からなかったことを考えれば賭けの選択肢だ。いやそこじゃない。何で突撃銃を使わなかったんだ。そっちの方が問題だ」
鋭く西を睨む東に対して、西は不思議そうな顔をした。
「ん? いや『対策会議』で今回、俺、突撃銃使用禁止になってたじゃん。てかさ、お前らちゃんとルール守れよな。南は砲撃禁止、中は移動禁止、東は真面目ネタ禁止、喜多見は3分生存ってルールだっただろ。俺しか守ってないじゃんか」
「え、あれ本気にしてたの……怖い!」
「いや私以外は理論上守れるルールだから、私以外は有効だよ」
西の言葉に対して南は少しだけ距離を取り『恐怖』をアピールしたが、すぐにリーダーの中が自分だけの無罪を口にしながら南の梯子を外した。
「は? ドパガキが砲撃禁止とか守れるわけないし、東は真面目ネタ以外で『おもろ』できないから実質、私と東もセーフでしょ」
謎の理論で自身と東を守った南であったが、それに対して西が口を挟んだ。
「てか、そもそも南が『狙撃されない場所で砲撃してるから、へーき、よゆーよゆー』って言いながら即死したのが戦犯だわ。狙撃されてるじゃん、てか、即死してもいいけど、即死されるならちゃんと『道合にやられました』って言ってから即死しろよな」
「即死したら報告できるわけないだろ、バカヤロー」
「あー、これは戦犯ですね、間違いないです」
「戦犯ちゃうわ。そもそも今回の試合、一番意味のあることをしたのは私なんだよな」
西の言葉を否定した南はどこか得意げに言葉を紡いだ。
「元ネタリスペクト失敗したのに?」
胡乱げな目で西が南を見た。
「はー、クソデカ溜息。簡単な話なんだけど分からないかなー?」
「溜息って言いながら溜息しないやつ初めて見たわ。ちゃんと溜息もしろよな」
「はー、クソデカ溜息。はぁぁぁー。東は投入が西で西は投入が東で、北は投入が南で中は投入は北だった。私だけが、南で投入が南だった」
大きな溜息をつきながら南が、まるで真理を探究する学者のような瞳で、滔々と全員の投入位置を語りだした。南が何を言いたいのかを西は瞬時に理解した。
「運じゃん。運に身を任せる『おもろ』とか得点が低い。これは、おもろ学者として落第の評価をせざるを得ない。中の変顔以下だわ。もう駄目ですね。今回の試合の戦犯は南で決まりですね」
「突撃銃使わなかった上、アクセル使えなかった西が一番戦犯だわ」
西と南が互いに、両手の人差し指で相手を指し続けるという行為をもって戦犯を押し付け合う中、リーダーの中が穏やかな表情を作り喜多見を見た。
視線を浴びた喜多見は一瞬ビクリと体を震わせた。今回も特に役に立たずにダウンしていた喜多見は、いつものことなので罪悪感などはなかったが、それでも『怒られるのではないか……』という小さな恐怖があった。しかし、すぐにその恐怖も霧散した。なぜなら、中はいつも以上に優しそうな顔をしていたからだ。これは怒られないなと察した喜多見の心は穏やかになった。
それゆえだろうか、中の唐突な質問に喜多見は何も考えず素直に答えてしまう。
「
「え、あ、はい、見ました」
南が脳天を貫かれ、唖然としている間に喜多見もまた脳天を撃ち抜かれたのだ。そのため、南が狙撃されて死んだことを喜多見は知っていた。
「見たの? なら何で報告しないの?」
じっと中の瞳が喜多見を捉えた。
そして同時に音が消えた。戦闘適正順位上位陣であり、様々な優秀な面を持つ、西・南・東の三人は話に集中していても周囲の音くらいは簡単に拾える。それ故、中と喜多見の問答も当然聞いていた。
東は唖然としたように喜多見を見た。西と南も互いに向けていた両手の人差し指の照準を無言で喜多見に向けた。
一瞬にしてチームの注目を集めてしまった喜多見は、あわあわと震えた。無音の中、あわあわとする喜多見を無言で西と南が両手の人差し指で喜多見を指し続けた。
「…………あ、あ、あ、あの、違くて……えっと、見てないです……」
必死に声を作った喜多見は嘘を吐いた。
「どっちなの? 見たの、見てないの?」
「あ、あ、あの……えっと……」
「喜多見……」
「どっちだーどっちだー」「どっちだーどっちだー」
思わぬ戦犯の発見に、東は徒労感の混じった声を漏らし、西は南と喜多見を、南は西と喜多見を交互に指で指し続けた。
中チームの緊急対策会議は、まだまだ続くのであった。