学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
一時寮から抜け出した雲川は、再び鈍足を走らせた。先ほど感じた恐怖がまだ消えていなかったからだ。
そして数十秒ほど走ってから、疲れてしまった雲川は、速度を落として、さらに数十秒ほど歩き、そして、立ち止まった。
どうしようかと途方に暮れた。
幸い、制服で寝ていたため、服装は学生服であったし、靴箱で靴を取り違えることもなかったため、自分の靴を履けていた。運よく、ポケットに小型端末を入れていたこともあり、その気になればZPの使用や情報の閲覧も可能だ。もう随分遅い時間であるが、授業行くことだってできるだろう。
しかし、雲川は途方に暮れた。
なぜなら、なにをすればいいか分からないからだ。
雲川はリーダーだ。ゆえに、四月中に誰かをチームに入れなければ追放処分となる。他にも、チーム戦で勝たなければ、五月以降の生活も悪くなる。
貧弱で脆弱な雲川には、強い選手が必要だ。雲川はそこまで深くは考えてなかったが、それでも、誰か誘わないといけないのではということは理解していた。
特に、先ほど、
雲川は夜には一時寮に戻らなければならない。寝る場所がそこしかないと思っているからだ。雲川は寝ることが好きだ。一時寮には不幸なことに青井がいる。チームメイトができれば青井が怖くなくなるかもしれない。
思考がぐるぐる回りつつも、雲川は、誰かを誘おうと考えた。
そして、すぐに困った。
(どうやって誘えばいいんだろう……?)
困った雲川は辺りを見回した。一年生らしき生徒が何人かいたが、誰も雲川のことなど気にしていないようだった。
(話しかけたりする……? なんて言えば……? それに、どんな人を誘えば……?)
雲川は、うーんうーんと悩み始めた。
(一緒のチーム……優しい人がいい……麻倉さん……? でも、麻倉さんはリーダーだから勧誘できない……?)
悩む雲川の少し前を女子生徒が通り過ぎようとした。その女子生徒は、優し気な顔立ちのように雲川には見えた。
(今の人とか……? 話しかけてみる……? でも、ダメだったら――)
「どうしたの?」
ぼんやりと少女を見つめていた雲川に突然声がかかった。雲川はびくりと体を大きく震わせた。
「お、おふ……? なんか跳ねたね。びっくりしちゃったのかな? 大丈夫? どうかしたの?」
優し気な顔立ちの女子生徒――先ほど、雲川がちらちら見ていた女子生徒が、急に方向転換し、雲川の知覚を超える速さで急接近したのだ。
少女の謎の機敏さに雲川は驚きつつも、恐怖は感じなかった。なぜなら彼女は、柔和な顔立ちで、怖くも無いし厳しくもないからだ。麻倉のような慈愛のオーラこそないが、普通に優しそうな感じがしたのだ。
初対面でありながら、雲川の警戒レベルは大きく落ちていた。
「う、うん……えっと……」
「うんうん、どうしたの? 私の事さっき見てたから、何か用かな? 違ったかな?」
おっかなびっくり話す雲川に目線を合わせた優しく話す少女を見て、雲川は思った。
(この人だ……!)
思いついた雲川は、いつもよりも素早く行動した。
「あ、あの、チームって、もう入ってます、か……?」
詰まりつつも必死に雲川は口を動かした。鈍くて弱くて遅い雲川にしては非常にレベルの高い行動であった。
本来、雲川は思いついたら即行動という人間ではない。どちらかというとやや行動に時間がかかるタイプだ。ちなみにこれは計画を練っているわけではない。遅い上、よく考えられてもいないのだ。巧遅ならぬ拙遅だ。
だが、今は、拙速に近い動きであった。青井への恐怖や学園追放への恐怖、そして、この学園は『優しい人』が少ないのではないかという恐怖。目の前の少女が売り切れる前に、雲川は必死に手を伸ばしたのだ。
「うん? 勧誘かな? リーダーさんかな? それとも同じ選手同士、情報交換みたいな感じかな?」
「え、えっと……り、リーダーです……か、勧誘したくて……その……」
「うーん。なるほど。そっかそっか。勧誘かー。順位的にしかたないけど、昨日からずっとだねー。うーんどうしよう? 一応、毎回同じ質問してるんだけど……んー、その前に、どうして、私なの? やっぱり順位?」
昨日から今日に至るまでの間に、少女は何度も勧誘されていた。そして、その理由は、彼女の戦闘適正順位の高さにあった。それ故の問いかけであった。
だか、その問いは雲川には無意味だ。
「え……? 順位……?」
雲川を普通のリーダーと比較してはいけない。雲川は順位表など見ていないのだ。
「うん、戦闘適正順位か、筆記試験の順位見たんでしょ? あれ、違うの?」
「よ、よくわからない……」
雲川の正直な言葉に、少女は頭に疑問符を浮かべた。そんな少女に対して、雲川は勧誘の理由を告げる。
「あの、えっと、優しそうに見えたから……」
精一杯の本当の気持ちであった。
「そっか、なるほどね。うーん? 他は?」
少女は頭に疑問符を半分ほど残しつつ、穏やかに問いかけた。
「他……? 他は……、えっと……」
「うんうん」
必死に口を動かす雲川に、少女は優しく相槌を打った。
「えっと……特にないです……」
だが、雲川のターンはそこまでであった。
高尚な説明ができる程の理由も、頭も、口も、雲川は持っていないのだから。
「ふむ。勧誘終わり?」
「はい……」
気まずくなった雲川は視線を彷徨わせた。
「うん? ちょっと聞いていい?」
「う、うん……」
雲川は緊張した。なんとなく駄目だと分かってしまったからだ。
そんな雲川に対して、少女は予想外の言葉を放った。
「今の話ってオチはどこにあるの?」
「お、おち……?」
言葉の意味が分からず、雲川は首を傾げた。
「話のオチ。ないよね、今の話」
「な……、えっと……おち、ってなに……?」
「話のオチがない統治区画から来た……? これはオチに入れていいのか……? うーん、悩むなー。どうしよう……えっと保留でいいかな? 何か面白いこと思いついて、その時まだ私がどこにも所属してなかったら話を聞こう。では、さらばだ……!」
雲川の返事も聞かず、少女は背中を向け歩き出した。
立ち去る少女を見ながら雲川は困惑した。
(おちってなに……?)
十数秒ほど固まっていた雲川であったが、飛んでくる蝶が目に入り、慌ててその進行ルートから離れた。
そうして、周囲をきょろきょろと見回しながら、『ほのぼのレーダー』の感度を高めた。
チームメイトを探すためだ。できれば、優しい人がいいと思いながら雲川が動き出すのと、二人組が雲川に話しかけたのは同時であった。
「コンニチハ」「コンニチハ」
どこか訛ったような片言の言葉。女の声と男の声。左右からそれを耳にした雲川は左を見て、すぐに右を見た。
人の好さそうな男女が雲川の左右を囲んでいた。
「こ、こんにちは……?」
挨拶を返すと、二人は目を見開いた。そして、二人は満面の笑みを浮かべた。明るく人の好さそうな人たちが、心の底から嬉しそうな笑みを浮かべる。雲川の警戒度は大きく下がった。そして、雲川の秘めたる小さな野心が疼いた。この二人なら、と。
「オー! 素晴ラシイ! アナタは、神を信ジマスカ?」「アナタは、今、幸セ、デスカ?」
左の女と右の男、二つを左右から流し込まれた雲川の頭は混乱した。
「神を信ジルと、幸セに、ナレマス」「争イのない、ホノボノとした、世界ニ、ナリマス」
混乱した雲川に追撃をかけるように、さらに二人が言葉を続けた。
「私タチ、神を広メル、活動ヲ、シテイマス。学園の皆サン、大好キ、です」「……アナタも、神ヲ、信じましょう。あ、やべ、普通に喋っちゃった。今のノーカンで。もう一回言うから良く聞いてね。アナタも、神ヲ、信ジ、マショウ」
左の女は流暢に片言を繰り広げたが、右の男は何を思ったのか、僅かに詰まり、そして途中で片言が解けてしまった。
「コノ男は、信仰心ガ、欠ケテマス。火炙リに、ナリソウ、デス。ソウスルト、私ノ、チームメイトが、イナクナリマス。私ヲ、助ケルと、思ッテ、チームに入リマセンカ?」「その誘い方ハ、やべー独裁者ッポクテ、この子ガ、引くノデ、ヨクナイ、です」
急に相方を批判し始めた左側と、それに応えるように反発する右側。間に挟まれた雲川は、二人を恐る恐る見ながら、小さな口を開いた。
「あ、あの……」
「ナンデスカ?」
困ったよな雲川を見て、男子生徒の方は少し躊躇したが、女子生徒の方は素早く踏み込んだ。
言葉を促された雲川は、ちっちゃな勇気を出した。
「ち、チームに入って欲しくて……」
雲川の突然の勧誘。勧誘されていた雲川が勧誘を始める。やや文脈が読めず、意図も読みにくい状況であったが、二人の生徒は、素早く読み取った。
「……あ、そうだ、順位表にこんな子いなかったわ。リーダーだ。駄目だ、この子は勧誘できない。はい、終わり終わり、宗教勧誘終わり」
左の声が急に普通になった。雲川は驚いて左を見た。
「ちょっとちょっと、自分からやるって言っといて、そのオチは無いって。というか、ちゃんと順位表に乗ってるキャラ全員覚えろよな。リーダーなんだから」
さらに右からも普通の言葉が聞こえて、雲川は再度驚いて右を見た。
「まだ、一日しか経ってないのに、全キャラは無理。180人もいるから完璧に覚えられないって」
「いやいやいや、さっき全員覚えたって言ってたじゃん。嘘じゃん」
そう言うと、右側にいた男子生徒の方が、左側の女子生徒の頭を指で軽く打った。
「きゃっ! イケメンに凸《デコ》ピンされちゃったっ! 下の凹が疼いちゃう!」
赤みを帯びた声で女子生徒が答えた。
「急に下ネタやめろや。てか、昨日からキャラが不安定すぎるわ。不安定ボケ倒し状態だわ!」
「イケメンなのは否定しない流れ?」
先ほどまでとは打って変わって、怜悧で冷めた問いかけが男子生徒に向けられた。
「毎日鏡見てるからなら。自分を客観視できる男子なんで」
そういって、彼は整った顔を得意気に見せつけたが、女子生徒の方はそれを無視して雲川を見た。
「そうだ、リーダーだよね? 私たちまだ二人チームなんだけど、なんか良い感じの人知らない?」
「ボケたんだから突っ込めよな。さっきから俺だけ突っ込んでんじゃん。俺もボケやりたいんだけど? あとまだチームはギリ組んでないよな」
「さっき、良い人が……」
騒がしい二人に圧されつつも雲川は頑張って口を動かした。
「あっ! なんかレア度高そうな情報な気がする。イケメン黙って! イケメン無罪にしてあげるから!」
「『無罪にしてあげる』って言い方が既にイケメン無罪の概念壊してるじゃん。てか、俺の声聞こえてる? 突っ込みしてるのに、入場拒否されてんじゃん。これじゃあ突っ立ちじゃん」
「イケメンは無視して情報下さい! 『さっき、良い人が……』の続き……!」
女子生徒は、雲川の声音をほぼ完璧に模倣しながら、答えを促した。
「あ、あの、さっきまでいて……あ、あの人、あの女の子っ……!」
雲川は、先ほどの『おち』がどうのと話していた少女を見つけた。遠い所に、『おち少女』と思われる後ろ姿を見つけたのだ。雲川の視力からするとギリギリ捉えられるか捉えられないかの距離であり、実は雲川は確信はなかった。だが、目の前の独特な女子生徒の勢いに飲まれて、不確定な情報を口にしたのだ。
「うぉ! アレか! よし行くぞ! イケメン! 後ろ姿から見るに、アレはドパガキだ! イケメンホスト勧誘で一撃だ! 次はホストのキャッチっぽく行くぞ!」
そう言うと、女子生徒の方は勢いよく駆け出した。雲川が目を丸くしている間に、男子生徒の方も動き出した。
「うわぁ! 変顔で走り出した! あ~止まらねぇ。しゃーない行くか。なんかごめんね、騒がしちゃって。あと怪しい人に声かけられたら無視した方がいいよ。それじゃ、またねー」
雲川に明るく告げると、男子生徒もまた駆け出した。女子生徒の速さは雲川からすると信じられない程、速いものであったが、しかし、男子生徒はそのさらに上を行く速度であり、すぐに彼女に追いついていた。
嵐のように現れて嵐のように去っていく男女二人組に、雲川は再び困惑したのであった。
★アンケート
次の試合は従来とは違った試合になります。
試合ルール上、金崎は出場しません。
そこで、この一週間、金崎に何をしてほしいかアンケートです。
①ゆっくりしてもらう:最近金崎は頑張り過ぎです。ここで心も体もリフレッシュします。コンディションが「10」になります。交友関係のあるキャラクター1人(雲川・梶田チーム以外)と交流し、なんらかのメリットを得ます。20%の確率で「毒の蓄積」の最大値が20上昇し、現在値が最大値まで回復します。さらにこの時、新たな灰被りパネルを一つ以上獲得します(獲得するパネルの一つ以上が必ず青の灰被りパネルになります)。「毒の蓄積」上昇イベントが発動しない場合は、毒の現在値が「1」低下します。
②自主練してもらう:今まで通り自主練してもらいます。ただ、あまりハードにし過ぎない程度の訓練です。パネル習得に努めます。また、確定で「毒の蓄積」の最大値が5上昇し、現在値が最大値まで回復します。通常のパネル以外に新たな灰被りパネルを一つ以上獲得します(パネル色は概ね白です)。
③合同訓練に参加!:次の試合には出ませんが、それはそうと鷲島・梶田チームのハードトレーニングに参加します。様々なイベントが発動します(金崎の人柄から概ね良性イベントです)。コンディションが「7」になります。毒の現在値が「2」低下します。(金崎が参加する場合に限り、雲川選択肢で雲川をハードトレーニングに合流させる選択肢が出現します)
④そうだ!岩切に見てもらおう:自主練させつつ、岩切に金崎を見てもらいます。岩切との今月の契約分を消費します。金崎はパネル習得に努めます。毒の現在値が「1」低下します。また10%の確率で金崎・岩切の関係上昇イベントが発生し、さらに現在値が「1」低下します。
現在コンディション「8」(最近のハードトレーニング及び試合ダウンの連続で減少傾向です)
現在の毒の蓄積(現在値/最大値):2/5
毒の蓄積:特殊な毒に浸食されている状態です。戦闘力が上昇し、灰被りパネルを使用可能になります。現在値が高いほど戦闘力上昇・灰被りパネル効力が上昇します。戦闘中に『力』を解放することで、現在値が低下します。また時間経過や、『なにか集中できること』をすることで、現在値が低下していきます。現在値・最大値ともに自然には上昇しません。現在値がゼロの時は戦闘力上昇効果と灰被りパネルを一時的に喪失します。現在値がゼロの時に、現在値が低下する場合は最大値が低下します。現在値・最大値がともにゼロとなったとき、毒の蓄積および灰被りパネルを完全喪失します。
依存症:最大値と現在値の差が大きい時、その差に応じて依存症のような症状が発生します。「5」程度であれば「少し毒が欲しいな……」くらいの気になる程度ですが、差が大きいほど、アルコール依存症患者、薬物依存症患者のような振る舞いをします。目安としては、差が「10」でかなり気になって体がそわそわします。差が「25」で体が震え、集中力が低下、強い不安感に襲われます。差が「100」ある場合、金崎は毒のためなら何でもします。文字通り何でもします。
毒の補充:現状、金崎の毒蓄積現象は鷲島にバレていません。また金崎はその性格上、補充チャンスがあれば、簡単に補充可能ですので、依存症が発生するケースは殆ど起こりません。安心して補充することができます(最大値も一緒に上がるのでご利用は計画的に!)
※金崎の毒の最大値および現在値は、いくつかのイベントの発生トリガーや分岐トリガーに影響を与えます。
※毒が増えていった場合は、毒を大きく減らす選択肢も今後現れますが、そこには代償やリスクがつきまといます。
毒の戦闘力上昇:現在の金崎の力量+毒の現在値「100」があれば、概ね正面から木山・犬伏には完全勝利、柚木・滝本クラスにも十分勝負可能です。また、力を解放して「100」の毒を一気に消費することで、柚木・滝本クラスにはほぼ完全勝利、堂前・下水流クラスにも十分勝負可能です(初見ならほぼ確定で撃破できます)。ただし代償として一時的な虚脱感に襲われます。さらに毒の最大値と現在値の差が「100」を超えるため、試合終了後早急な毒補充をしないと頭がおかしくなります。
※現在の金崎の力量+毒の蓄積「5」+「5」を消費+初見技+特殊ギミック技+相手の情報不足+相手の油断などにより、西山相手に少しの間金崎は耐久しました。なお西山は正面からなら堂前・下水流クラスを一方的に倒せる実力者です。
再掲:五月第二試合前の金崎パネル表
【挿絵表示】
岩切との契約:鷲島は岩切の時間を月に一定まで使用可能です。まだ今月分は使っていません。未使用の状態で月末に近づいた場合は、鷲島が岩切に外交補佐・諜報などの低リスクな指示を出し契約分を使い切ります。
※今週は5月20日から26日です。
※5月25日26日に第三試合が行われます。
※第四試合が行われる週は5月27日から6月2日です。
金崎はどうしよう?
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ゆっくりしてもらう
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自主練してもらう
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合同訓練に参加!
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そうだ!岩切に見てもらおう