学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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勧誘活動

 

 第一試合が終了した翌週の火曜日。

 既に多くの生徒がチームに所属していた。第一試合を経験したチームの中で定員である五人に達していないチームは、戦力増強のためさらなる選手を求め、勧誘活動に勤しんだからだ。また、第一試合に出場しなかったチームのリーダーも実戦を見ることで、駒数の重要さを改めて理解し、勧誘合戦が学園内の各地で行われた。

 しかし、鷹一が所属している雲川チームの人数は未だに二人であった。内気な雲川と、雰囲気が良くない鷹一の二人には『勧誘』という行為が難しかったのだ。勿論、元々難易度が高い行動だった。どのリーダーたちも必死に選手たちを勧誘しており、また選手も優秀そうなチームやリーダーを求めた。弱そうに見え、さらに言うと実際に戦闘適性・筆記順位双方が弱い雲川紫苑のチームには誰も入りたがらなかった。

 

 選手勧誘に収穫が無かった鷹一は、最後の手段を使うことにした。

 夕方、鷹一は自然体で一時寮に戻った。相変わらずプライベートな空間を持てない狭い寮室にげんなりしつつも、使命をこなす為、室内にいた二人に声をかけた。

 

「渡辺、金崎。ちょっといいか」

 

「ん?」

 

「なんだ? 鷲島?」

 

 金崎と渡辺がそれぞれ返事を返す。

 

「少し聞きたい事がある。二人は、もうチームに入っているのか?」

「――おいおい! お前ら、またその話かよ」

 

 鷹一の質問に対して、最初に答えたのは聞かれた二人ではなく、同室の秀川だった。

 

「おい、秀川。鷲島はお前には聞いてないだろ。勝手に会話に入るな」

 

 そしてそれを渡辺が鋭く制した。秀川は渡辺を鼻で笑った。

 

「お前、チームに入れたからって調子に乗ってるな。第一試合を見たが、お前が崇拝する劉のチームはせいぜい二流止まりのチームだ。良くてCランクかそこらだろう。しかも劉のチームは男も女もいる。Cランクには二部屋しか与えられない。つまり、お前は来月も相部屋決定ってことだ。今のうちに狭いベッドで寝る練習でもしてな」

 

「勝手に決めるな。あと別に俺は劉を崇拝してない。ただ、リーダーとして頭の回転が速くて優れた奴だと言っただけだ」

 

「動きはトロくて雑魚だったけどな。俺なら30秒で劉を蜂の巣にできるぜ」

 

 秀川は、観戦会場で劉の試合を見ていた。そして、劉を『脅威ではない駒』と判定していた。

 

「岩崎に蜂の巣にされた奴が言うと説得力があるな」

 

 そして、同時に、渡辺もまた秀川が所属する零チームの試合を見ていた。

 

「1対1の撃ち合いを碌にやってないやつが喚くな。お前程度じゃ、俺が殺した吹石相手でも100%負けるぜ」

 

 言い合う二人をよそに鷹一は金崎を見た。金崎は困っているような表情を浮かべていた。

 

「金崎、お前に聞くことではないかもしれないが……二人の会話から察するに、渡辺はもうチームに入ってるのか?」

 

「あ、ああ……そうみたい。さっき話したんだ。俺も、その件で、渡辺と。で、もう渡辺は劉のチームに入ったみたいだ。凄いよな。劉って暫定11位のチームだもんな。秀川なんて暫定3位の零チームだし、それに鷲島はめっちゃ頭良いし、正直、この寮室のメンバーだと俺だけ――」

「――おい! 暫定じゃない。言っとくが、俺のチームは2位以上は確定のチームだ」

 

 金崎が全てを話す前に秀川が上段ベッドから鋭く言葉を投げつけた。

 

「あ、ああ、ごめん……えっと、まあ、それで、凄いよな、皆。あ、ああ、そういえば、鷲島はチーム決まったのか? やっぱり?」

 

「一応な……それで、もし良かったらなんだが――」

 

「おいおいおい! アホの鷲島もチーム決まったのかよ? どーすんだよ、金崎! アホの鷲島でもチームに入ってんのに……! 金崎、あと、お前だけだぞ!?」

 

 鷹一の言葉の途中で、またしても秀川が言葉を金崎に投げつけた。その声音には揶揄する響きが強く含まれていた。それを聞いた金崎は俯いた。そして、渡辺は強く秀川を睨んだ。

 

「おい、やめろ」

 

「何が『やめろ』なんだ? ん? この学園はこういう所だ。実力ある奴は優遇され、金崎みたいなカスは当然冷遇される。渡辺、お前もカス寄りだが、アホの鷲島や金崎よりはマシだ。ギリでな。お前も金崎の境遇くらいは鼻で笑え、もしくは金崎見てから飯でも食え。ちょっと美味いぞ。あと、狭い相部屋で寝る練習でもしろ」

 

「……お前、いい加減に――」

「――そういえば、今更だが、一回戦おめでとう。秀川。念願の零チームに入れてよかったな」

 

 渡辺の言葉に被せるように、鷹一が言葉を発した。

 

「は?」

 

「……?! ……?」

 

 秀川は困惑したようにベッドの下に目を向けた。渡辺もまた困惑したように斜め下のベッドにいる鷹一を見た。

 

「あの試合は、俺も観戦会場で見ていたが、二年生の実況や解説が、今年のチームランク首位筆頭候補だと言っていたのを聞いた。お前も1対3の状況で切り抜けられたのは流石だな」

 

「……鷲島、このアホ野郎。馬鹿にしてるのか?」

 

「していない。お前は、もしかしたら試合中にダウンしたことを気にしているのかもしれないが、それはおかしいと俺は思う。数で攻めるのは、最も強い戦術だ。三方向から攻撃されて一人と相打ちになるだけでも難しい。お前は一人を撃破するどころか、さらにもう一人の片手を負傷させ、零チームの勝利に貢献した。お前の言う通り、お前は優秀な生徒だった。馬鹿にしていない。お前のチームのリーダーの零も、そう思うべきだろう」

 

 鷹一の淡々とした言葉を聞き、秀川は苦虫を嚙み潰したような顔をした。そして上段ベッドを降りて、下段ベッドにいる鷹一を強く睨んだ。淡々とした殺人鬼のような視線が秀川を貫いた。秀川は大きく舌打ちした後、無言で寮室を出た。

 数秒程、無言が室内を支配した。

 

「それで、金崎、さっきの話の続きをしていいか?」

 

 そして沈黙を鷹一が破った。話かけられた金崎は、驚きつつも鷹一を見た。一方で、渡辺は笑いを噛み殺し、『やっぱり鷲島はちょっとズレてるな』と心の中で思った。

 

「あ、ああ……えっと、なんか、言ってたよな?」

 

「ああ、もし良かったら、俺の所属しているチーム、雲川チームに入ってくれないか?」

 

「…………え?」

 

 鷹一の言葉を聞き、金崎は唖然とした。あまりに予想外の言葉だったからだ。数秒程硬直する金崎を見て、鷹一が再び口を開いた。

 

「もし良かったら、俺の所属しているチーム、雲川チームに入ってくれないか?」

 

 先程と全く同じ言葉だった。

 

「あ、ああ、それは、全然! あ、いや、でも、俺で良いのか? 俺、かなり順位悪くて……正直、誘ってもらって、すげぇ嬉しいけど……その雲川ってリーダーが許してくれるか?」

 

「リーダーの件なら恐らく大丈夫だ。金崎は、雲川チームに入る条件を満たしている。ただ、俺もリーダーの許可を貰ったわけではないから、一度会ってもらう必要があるが、恐らく大丈夫だ。俺のリーダーとお前は相性が良い」

 

「そ、そうなのか? 俺と相性が良いリーダー……? ど、どんなリーダー……? あ、いや、それはいいか。えっと、俺は全然大丈夫だ。会うよ、その雲川リーダーに。むしろ、会わせて欲しい。正直な話、さっき少し渡辺とも話したんだけど、俺、全然勧誘とか来なくて、こっちから何人かリーダーに話してみたんだけど、全然駄目でさ。だから入れるならどんなチームでも、あ! でも、俺、全然鷲島のチームが嫌って意味じゃない! むしろ! 嬉しい! 鷲島は頭いいし、優しいし、正直、できれば一緒のチームになりたかったっていうか! だから、その俺も、その雲川リーダーに頭下げるよ! 何時会えばいい!?」

 

「…………そこまで、喜んでもらえるなら、誘って良かった。というか、すまなかった。お前はそこまで悩んでいることに気付けなかった。正直な話、お前を勧誘するかを少し悩んでいた。理由は、俺のチームは大きな欠陥を抱えているからだ。具体的に言うと、チームメンバーがまだリーダーと俺の二人しかいない。あと戦略も戦術も未定のチームだ。ついでに言うと志も低く、最低Dランクを目標としている。それでもいいか?」

 

「全然大丈夫だ……! というか、俺は下手したら学園追放だったと思うし、下手しなくてもFランクのチームになってたと思うから、Dランクってだけでかなり高い目標だと思う。正直付いていけるか……ああ、いや! 勿論、Dランクになれるように、精一杯頑張るよ」

 

「分かった。少し待ってくれ、リーダーに確認を取る…………紫苑、俺だ。一人チームメイト候補を確保した。今、時間あるか? ……そうか、よし、金崎、リーダーは今、暇らしい。会うか?」

 

 鷹一は端末を使い素早く雲川に連絡し、返事を聞き、すぐに金崎に向き直った。

 

「え!? い、今からか……ああ、いや、そうだよな。わ、分かった。会う、会うよ」

 

「よし行こう」

 

 その言葉とともに鷹一は歩き出し、金崎は慌てたようについて行った。

 

 

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